34 / 61
アンソロジー
物色 Side:宮子×静流 立成18年4月
しおりを挟む
立成18年4月、わたくし……火蔵宮子は名目上所属している合唱部に久々にやってきた。中等部の頃はそれなりに練習にも来ていた。まぁ、当時付き合っていた先輩が目当てだったのだけれど。本家にいた頃に、声楽もピアノも習っていたから活動そのものは気楽だった。
歌うことは楽しかったが、先輩に覚えさせられた女遊びはそれより楽しくて……先輩が卒業してからは、そうそう通うことはなくなった。少し騒がしい先輩が入部してきたのも、少し関係しているかもしれない。
「こんにちは」
「おお! 珍しい、宮子ちゃんじゃん」
たぬきが人懐っこいかは知らないが、私の周りをぐるぐる走る小柄な先輩。それからもう一人、合唱部の中心人物は抜群に高い身長と長い四肢に恵まれていて、長くも細いその腕で小柄先輩――栗橋先輩――を引き戻す。
「お久しぶりです。如月先輩」
「あの……そちらは?」
新入生だろうか。セミロングの髪で、前髪が少し目元にかかっている彼女は肌が白く、目にあまり光を感じない……。少し暗いが顔はいい。
「わたくしの名前は火蔵宮子。高等部の二年で、ここに一応は所属しているわ。貴女の名前は?」
「……宵闇、鈴華です」
「ふぅん。貴女、わたくしを抱いてみない?」
その言葉に、如月先輩ががっかりとした表情を浮かべた。わたくしが心機一転、部活に力を注ぐとでも思っていたのだろうか。わたくし好みの女の子を探してふらっと来ただけだ。
「すみません。ボクは……もう……」
「そう。ならいいわ」
踵を返して音楽室を後にする。菊花寮に戻るのもいいが、もう少し校内をフラフラしていたい気分だ。部屋に戻ってしまえば一人だから……。
「あ、あの! 火蔵さん……!」
廊下の角から一人、女の子が声を掛けてきた。校章から見て同級生……他クラスだろう。わたくしからは見覚えがない。肩まで伸びるくらいの黒髪で、特徴があるかと言われれば微妙なところ。バランスよく配置された顔のパーツがかえって個性を薄めている。
「わ、私! 火蔵さんと、そういうことしたいです!」
「あら? どういうことかしら」
俯いてしまう彼女。伝わってはいるけれど、もっと直接的な言葉を聞きたい。
「火蔵さんの……おっぱいを吸いたいです……」
顔から火が出るのではないかというくらい、真っ赤に頬を染めて胸元を見つめながら告げる彼女が愛おしくて、彼女の手を引いて視聴覚室へ向かった。
夕日の差し込む視聴覚室で、多くの言葉は不要だった。互いを脱がせる。そっとわたくしの蕾に彼女の唇が触れる時……。
――ピピー!!!!!!!!!!!!――
空気をつんざくような警笛が鳴り響いた。この頃はまだ、氷の女王との長い物語はまだその序章に過ぎなかった。
歌うことは楽しかったが、先輩に覚えさせられた女遊びはそれより楽しくて……先輩が卒業してからは、そうそう通うことはなくなった。少し騒がしい先輩が入部してきたのも、少し関係しているかもしれない。
「こんにちは」
「おお! 珍しい、宮子ちゃんじゃん」
たぬきが人懐っこいかは知らないが、私の周りをぐるぐる走る小柄な先輩。それからもう一人、合唱部の中心人物は抜群に高い身長と長い四肢に恵まれていて、長くも細いその腕で小柄先輩――栗橋先輩――を引き戻す。
「お久しぶりです。如月先輩」
「あの……そちらは?」
新入生だろうか。セミロングの髪で、前髪が少し目元にかかっている彼女は肌が白く、目にあまり光を感じない……。少し暗いが顔はいい。
「わたくしの名前は火蔵宮子。高等部の二年で、ここに一応は所属しているわ。貴女の名前は?」
「……宵闇、鈴華です」
「ふぅん。貴女、わたくしを抱いてみない?」
その言葉に、如月先輩ががっかりとした表情を浮かべた。わたくしが心機一転、部活に力を注ぐとでも思っていたのだろうか。わたくし好みの女の子を探してふらっと来ただけだ。
「すみません。ボクは……もう……」
「そう。ならいいわ」
踵を返して音楽室を後にする。菊花寮に戻るのもいいが、もう少し校内をフラフラしていたい気分だ。部屋に戻ってしまえば一人だから……。
「あ、あの! 火蔵さん……!」
廊下の角から一人、女の子が声を掛けてきた。校章から見て同級生……他クラスだろう。わたくしからは見覚えがない。肩まで伸びるくらいの黒髪で、特徴があるかと言われれば微妙なところ。バランスよく配置された顔のパーツがかえって個性を薄めている。
「わ、私! 火蔵さんと、そういうことしたいです!」
「あら? どういうことかしら」
俯いてしまう彼女。伝わってはいるけれど、もっと直接的な言葉を聞きたい。
「火蔵さんの……おっぱいを吸いたいです……」
顔から火が出るのではないかというくらい、真っ赤に頬を染めて胸元を見つめながら告げる彼女が愛おしくて、彼女の手を引いて視聴覚室へ向かった。
夕日の差し込む視聴覚室で、多くの言葉は不要だった。互いを脱がせる。そっとわたくしの蕾に彼女の唇が触れる時……。
――ピピー!!!!!!!!!!!!――
空気をつんざくような警笛が鳴り響いた。この頃はまだ、氷の女王との長い物語はまだその序章に過ぎなかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる