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創作60分一本勝負
社長 Side:波奈×結唯 立成18年2月
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東海地方某県東部に位置する空の宮市、そこで七十年ほどの歴史を持つ私立の中高一貫女子校、星花女子学園。その理事長室で豪奢な椅子に腰掛ける妙齢の美女。この学園の理事長にしてこの街でその名を知らぬ者のいない統合企業、天寿の社長である伊ヶ崎波奈は最愛の女性にして副社長である彼方結唯に書類の束を手渡した。
「……アイドル、ですか」
あくまでも仕事用の堅い口調で零す副社長。被服部門の統括責任者でもある彼女に、波奈はこう続ける。
「いずれ天寿のアパレルブランドにも専属のモデルが欲しいわ。彼女は既に実績もある、広告塔としては充分ね。それにもうコスメ部門特にシャンプーのCMは彼女が担当しているもの。将来的には本校の生徒からファッションモデルを輩出したいわね。できれば、全世界に発信できるほどの逸材を」
「もしや、そのために国際学科を新設なさるおつもりで?」
少しだけ呆れの混じるその口ぶりに、波奈はまさかとおどけてみせる。
「国際学科は私が経営に首を突っ込む前から構想があったものよ。商業科の再編ど同時期を予定していたものを、私が服飾科を優先したために後回しになっていた。それだけのことよ」
「なるほど。で、学園の生徒からファッションモデルをということですが、今までのようにプロダクションを通じて、ではいけないのですか?」
「ダメってことはないさ。ただね、磨けば輝く原石がそこら中に転がっているのに、手を伸ばさないのは経営者としていかがなものなのかね。それにね、結唯……生徒達を本物の輝きで照らしてみたいのさ」
理想を語る波奈の姿に、どれほど絆されてきたか。結唯は諦観の表情を浮かべて再び渡された書類に目を通す。それは特待生として迎える生徒のリスト。リストといってもたった数名の名前しか記載されていないのだが。そしてその一番上に記載されている名は美滝百合葉。子役上がりで新進気鋭のアイドルである。確かに星花女子学園には見目麗しい生徒が多数在籍するが、本物のアイドルには及ばない。それは百合葉がその輝きの全てを放っているのに対し、生徒たちは一部を発揮しているだけに過ぎないためである。
人の輝く強度や時間は千差万別である。波奈のように輝き続ける人もいれば、早くに輝きを失ってしまう人、また晩年になってその輝きが放たれる人もいる。しかし――
「全ての女性を輝かせたい……波奈の理想は変わらないのね。いいわ、天寿にとって学園にとって、広告塔としての美滝百合葉に投資する価値があるとの判断を支持します。楽しみにしているわ」
「……アイドル、ですか」
あくまでも仕事用の堅い口調で零す副社長。被服部門の統括責任者でもある彼女に、波奈はこう続ける。
「いずれ天寿のアパレルブランドにも専属のモデルが欲しいわ。彼女は既に実績もある、広告塔としては充分ね。それにもうコスメ部門特にシャンプーのCMは彼女が担当しているもの。将来的には本校の生徒からファッションモデルを輩出したいわね。できれば、全世界に発信できるほどの逸材を」
「もしや、そのために国際学科を新設なさるおつもりで?」
少しだけ呆れの混じるその口ぶりに、波奈はまさかとおどけてみせる。
「国際学科は私が経営に首を突っ込む前から構想があったものよ。商業科の再編ど同時期を予定していたものを、私が服飾科を優先したために後回しになっていた。それだけのことよ」
「なるほど。で、学園の生徒からファッションモデルをということですが、今までのようにプロダクションを通じて、ではいけないのですか?」
「ダメってことはないさ。ただね、磨けば輝く原石がそこら中に転がっているのに、手を伸ばさないのは経営者としていかがなものなのかね。それにね、結唯……生徒達を本物の輝きで照らしてみたいのさ」
理想を語る波奈の姿に、どれほど絆されてきたか。結唯は諦観の表情を浮かべて再び渡された書類に目を通す。それは特待生として迎える生徒のリスト。リストといってもたった数名の名前しか記載されていないのだが。そしてその一番上に記載されている名は美滝百合葉。子役上がりで新進気鋭のアイドルである。確かに星花女子学園には見目麗しい生徒が多数在籍するが、本物のアイドルには及ばない。それは百合葉がその輝きの全てを放っているのに対し、生徒たちは一部を発揮しているだけに過ぎないためである。
人の輝く強度や時間は千差万別である。波奈のように輝き続ける人もいれば、早くに輝きを失ってしまう人、また晩年になってその輝きが放たれる人もいる。しかし――
「全ての女性を輝かせたい……波奈の理想は変わらないのね。いいわ、天寿にとって学園にとって、広告塔としての美滝百合葉に投資する価値があるとの判断を支持します。楽しみにしているわ」
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