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アンソロジー
卒業(2) Side:叶美×紅葉×かおり 立成18年3月
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三月一日、星花女子学園は卒業式を迎える。既に寮の部屋は引き払っており今日は実家から両親と一緒の登校だ。退寮する三年生が二月末にバザーをするのが寮生の定番なんだけど、わたしは参加しなかった。紅葉ちゃんが引き取ると言って聞かないからだ。わたしが三年間過ごした部屋で過ごしたいとも言っていたけれど、流石にそんな私的な理由で部屋を変われはしない。実家や新居に移した物も多いから写真立てと上着かけくらいしかあげられなかったけど。
前に雪絵に対して、紅葉ちゃんはわたしに依存するほど弱い娘じゃないなんて言ったけど、やっぱりわたしが卒業するのは寂しいみたい。わたしだって寂しい。六年の星花生活だけど、思い出すのは高校二年の春以降……紅葉ちゃんやかおりちゃんと出逢ってからの思い出ばかりだ。もちろん、恵玲奈や雪絵と過ごした時間だって大切なんだけど、親友と恋人じゃやっぱり違うっていうか。
卒業証書を受け取る時はやっぱり涙腺が熱くなった。そして伊ヶ崎理事長の挨拶、在校生の合唱、卒業生の合唱、全校生徒での校歌、生徒会長の御津さんが送辞を読み、卒業生を代表して江川さんが答辞を読む……式は粛々と進んであっという間に終わってしまった。
クラスで記念写真を撮って解散になった。わたしたちは示し合わせたわけでもないのに揃っていた。
「叶美、恵玲奈、これからもよろしくね」
「「もちろん」」
部活はバラバラだし、クラスが違うことも多かった。でも途切れなかったこの縁をわたしは一生忘れないんだろうなぁ。そう思うと最後の年に同じクラスだったのも縁かもしれない
「恵玲奈、探しましたよ……あぁ、水藤さんと佐伯さん。ごきげんよう」
声をかけてきたのは恵玲奈のルームメイトの四方田恵さん。今年はクラスが一緒だったからついさっきぶりだ。
「写真、撮りましょうか?」
桜を背景に、なんて付け足して七分咲くらいの桜の前で写真を撮ってもらった。交代で恵玲奈と恵さんの写真も撮っていると、
「四人で入れば? 卒業おめでとう、お姉ちゃん」
見覚えのある女の子がすたすたとこっちに近付いてきた。
「星玲奈、あんた……髪」
「ちょっとあってねさ」
西星玲奈ちゃんは恵玲奈の妹、かおりちゃんと同い年で恵玲奈や恵さんが主宰するお茶会にも一緒に参加しているらしい。思えばかおりちゃんの交友範囲は広い。わたしが狭いだけかもしれないけれど。
「違う自分になりたいのやもしれませんね。ところで、皆さんに私も加わっていいんですか?」
「いいじゃん、いいじゃん。撮ろうよ。星玲奈、お願い」
星玲奈ちゃんに写真を撮って貰うと、今度は西姉妹をわたしが写真に収める。
「叶美ちゃん、撮ろうよ。ほら、紅葉ちゃんも」
いつの間にか、紅葉ちゃんとかおりちゃんも集まっているし、須川さんや白雪さんの姿も見える。
わたしの周りには、思っているより多くの人がいる。紅葉ちゃんとかおりちゃんの体温を両腕から感じながら、不意にそんなことを思った。
ありがとう、楽しい六年間。
前に雪絵に対して、紅葉ちゃんはわたしに依存するほど弱い娘じゃないなんて言ったけど、やっぱりわたしが卒業するのは寂しいみたい。わたしだって寂しい。六年の星花生活だけど、思い出すのは高校二年の春以降……紅葉ちゃんやかおりちゃんと出逢ってからの思い出ばかりだ。もちろん、恵玲奈や雪絵と過ごした時間だって大切なんだけど、親友と恋人じゃやっぱり違うっていうか。
卒業証書を受け取る時はやっぱり涙腺が熱くなった。そして伊ヶ崎理事長の挨拶、在校生の合唱、卒業生の合唱、全校生徒での校歌、生徒会長の御津さんが送辞を読み、卒業生を代表して江川さんが答辞を読む……式は粛々と進んであっという間に終わってしまった。
クラスで記念写真を撮って解散になった。わたしたちは示し合わせたわけでもないのに揃っていた。
「叶美、恵玲奈、これからもよろしくね」
「「もちろん」」
部活はバラバラだし、クラスが違うことも多かった。でも途切れなかったこの縁をわたしは一生忘れないんだろうなぁ。そう思うと最後の年に同じクラスだったのも縁かもしれない
「恵玲奈、探しましたよ……あぁ、水藤さんと佐伯さん。ごきげんよう」
声をかけてきたのは恵玲奈のルームメイトの四方田恵さん。今年はクラスが一緒だったからついさっきぶりだ。
「写真、撮りましょうか?」
桜を背景に、なんて付け足して七分咲くらいの桜の前で写真を撮ってもらった。交代で恵玲奈と恵さんの写真も撮っていると、
「四人で入れば? 卒業おめでとう、お姉ちゃん」
見覚えのある女の子がすたすたとこっちに近付いてきた。
「星玲奈、あんた……髪」
「ちょっとあってねさ」
西星玲奈ちゃんは恵玲奈の妹、かおりちゃんと同い年で恵玲奈や恵さんが主宰するお茶会にも一緒に参加しているらしい。思えばかおりちゃんの交友範囲は広い。わたしが狭いだけかもしれないけれど。
「違う自分になりたいのやもしれませんね。ところで、皆さんに私も加わっていいんですか?」
「いいじゃん、いいじゃん。撮ろうよ。星玲奈、お願い」
星玲奈ちゃんに写真を撮って貰うと、今度は西姉妹をわたしが写真に収める。
「叶美ちゃん、撮ろうよ。ほら、紅葉ちゃんも」
いつの間にか、紅葉ちゃんとかおりちゃんも集まっているし、須川さんや白雪さんの姿も見える。
わたしの周りには、思っているより多くの人がいる。紅葉ちゃんとかおりちゃんの体温を両腕から感じながら、不意にそんなことを思った。
ありがとう、楽しい六年間。
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