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大食いガールズ
大食いガールズ(ラーメン編) Side:みのり&雪乃 立成17年8月
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空の宮市のやや東側。学園からはやや離れた場所にその店はある。共学の公立校にほど近いそのお店は、うちと同様に学生向けで、ボリューム満点でお手頃な価格の店だ。そして、デカ盛りメニューも存在する。
「飛燕亭……私、初めて入ります」
「私もよ。さぁ、行きましょ」
一緒にお寿司屋さんで食べまくってから早二ヶ月。私、法月みのりは再び学校の先輩であり、うちの店の常連さんである白峰雪乃先輩と大食い巡りをすることになった。
「二名様ですね、こちらどうぞ」
夏休みということもあって、お店にはお客さんが数多くいた。誰もが一心不乱にラーメンを啜っている。ここは醤油ラーメンの専門店。最近よく目にする食券制のお店ではなく、注文は店員さんが聞くかたちになっている。
「メガラーメン序を二つ」
「かしこまりました。――メガ序二つおねっしゃーす」
先輩と世間話をしているうちに、注文したラーメンが私たちの前に現れた。屈強な男性店員でも二ついっぺんには持ってこなかったデカ盛り、メガラーメン序……。
「――――」
私か、先輩か、つばを飲み込む音が確かに聞こえた。飛燕亭のメガラーメン序、総重量およそ2.8kgの大半を締めるのは中細のちぢれ麺、デカ盛りラーメンにありがちな野菜の山はなく、醤油の芳醇な薫りと湯気の立つスープは目に見える状態だ。厚切りの叉焼と極太のメンマ、それからナルトの代わりに紅白のかまぼこが3枚ずつ。のりとねぎとワカメがその間に収まっている。
「「いただきます」」
麺の啜り心地はよく、スープもほどよく絡む。そのスープは醤油の芳醇な薫りと確かな深みがあった。シンプルだが、確かに洗練されておりいくら食べ進めても飽きない。デカ盛り最大の難点は飽きであると考えている私からすれば、このラーメンは革命的かもしれない。また、何故か付け合わせで出てくる半チャーハンもまた美味しい。家庭的な味わいの奥に、ラーメンのスープと同じ醤油ダレのコクが確かに伝わってくる。もはや雪乃先輩と言葉を交わすこともなく、もくもくとラーメンを食べ進め、いつの間にやら大きな丼はきれいなスープを残すだけになっていた。
「「ごうちそうさまです」」
お会計は一人たったの千円。ここまで安いのには流石にちょっとした裏があり、通常メニューを残すと1.2倍、メガ盛りメニューを残すと1.5倍のお支払いになる。だからこそ、食券にしないのだ。食べ残す心配の無い人にとってはお得そのものなのだが。お勘定を済ませてお店を出て、雪乃先輩と店内では話さなかった味の感想等を話す。それから、
「あれだけ美味しいと破や急もいけそうね」
「どれくらいの量でしたっけ?」
今回食べたのはメガラーメン序である。これは序破急の序ということで、さらなるメガ盛りがある。今回の会計時に、白いスタンプカードを貰い、そこには序のスタンプが押されている。破を食べるには序を5回、完食しなければならないことになっている。
「破が3.6kgで急は4.5kgね。これにそれぞれチャーハン並盛り、大盛りがつくから総重量はもっとね。急はチャーハンがなければいけそうなのよね……」
「雪乃先輩、最大でどれくらい食べるんですか?」
「そうね。流石に5kgは無理よ? でも、時間制限とかがなければ4.5はいけると思うわ」
後日、先輩からメガラーメン急の完食報告が届くのだが、それはまだ先のお話。
「飛燕亭……私、初めて入ります」
「私もよ。さぁ、行きましょ」
一緒にお寿司屋さんで食べまくってから早二ヶ月。私、法月みのりは再び学校の先輩であり、うちの店の常連さんである白峰雪乃先輩と大食い巡りをすることになった。
「二名様ですね、こちらどうぞ」
夏休みということもあって、お店にはお客さんが数多くいた。誰もが一心不乱にラーメンを啜っている。ここは醤油ラーメンの専門店。最近よく目にする食券制のお店ではなく、注文は店員さんが聞くかたちになっている。
「メガラーメン序を二つ」
「かしこまりました。――メガ序二つおねっしゃーす」
先輩と世間話をしているうちに、注文したラーメンが私たちの前に現れた。屈強な男性店員でも二ついっぺんには持ってこなかったデカ盛り、メガラーメン序……。
「――――」
私か、先輩か、つばを飲み込む音が確かに聞こえた。飛燕亭のメガラーメン序、総重量およそ2.8kgの大半を締めるのは中細のちぢれ麺、デカ盛りラーメンにありがちな野菜の山はなく、醤油の芳醇な薫りと湯気の立つスープは目に見える状態だ。厚切りの叉焼と極太のメンマ、それからナルトの代わりに紅白のかまぼこが3枚ずつ。のりとねぎとワカメがその間に収まっている。
「「いただきます」」
麺の啜り心地はよく、スープもほどよく絡む。そのスープは醤油の芳醇な薫りと確かな深みがあった。シンプルだが、確かに洗練されておりいくら食べ進めても飽きない。デカ盛り最大の難点は飽きであると考えている私からすれば、このラーメンは革命的かもしれない。また、何故か付け合わせで出てくる半チャーハンもまた美味しい。家庭的な味わいの奥に、ラーメンのスープと同じ醤油ダレのコクが確かに伝わってくる。もはや雪乃先輩と言葉を交わすこともなく、もくもくとラーメンを食べ進め、いつの間にやら大きな丼はきれいなスープを残すだけになっていた。
「「ごうちそうさまです」」
お会計は一人たったの千円。ここまで安いのには流石にちょっとした裏があり、通常メニューを残すと1.2倍、メガ盛りメニューを残すと1.5倍のお支払いになる。だからこそ、食券にしないのだ。食べ残す心配の無い人にとってはお得そのものなのだが。お勘定を済ませてお店を出て、雪乃先輩と店内では話さなかった味の感想等を話す。それから、
「あれだけ美味しいと破や急もいけそうね」
「どれくらいの量でしたっけ?」
今回食べたのはメガラーメン序である。これは序破急の序ということで、さらなるメガ盛りがある。今回の会計時に、白いスタンプカードを貰い、そこには序のスタンプが押されている。破を食べるには序を5回、完食しなければならないことになっている。
「破が3.6kgで急は4.5kgね。これにそれぞれチャーハン並盛り、大盛りがつくから総重量はもっとね。急はチャーハンがなければいけそうなのよね……」
「雪乃先輩、最大でどれくらい食べるんですか?」
「そうね。流石に5kgは無理よ? でも、時間制限とかがなければ4.5はいけると思うわ」
後日、先輩からメガラーメン急の完食報告が届くのだが、それはまだ先のお話。
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