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アンソロジー
決心 Side:清歌&莉那 立成16年6月
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生徒会役員として正式に迎えられてしばらく経った頃、姫奏に連れられて風紀委員室へと足を運んだ。どうやら校内で喧嘩があったようで、その当事者が姫奏のファンクラブに所属している人らしい。……姫奏の人気の高さは日々身に染みる思いで、そんな彼女の隣にいられることを幸せに思うし、そして誇りに思う。
「困ったものね、わたしは清歌のものだというのに」
憂いを帯びた眼差しでわたしを見つめる姫奏。長いまつげに縁取られた瞳は美しく、見入ってしまう。
「でも、仕事は仕事よ。さぁ、入るがいいわ」
委員会室の扉によりかかり、不遜な物言いをこちらに投げかける一人の少女。風紀委員長の櫻井先輩だ。綺麗なツインテールとマントをはためかせ、委員会室へと入っていく先輩に続き、わたしたちも委員会室に入る。普通教室と同じ広さに、生徒会室同様のインテリアが配されている。そんな部屋の真ん中で、俯いて座る二人の生徒。リボンの色を見る限り、わたしと同じ学年のようだ。
「ひ、ひめ、かさま……」
「はわわわ」
さっきまで以上にかしこまる二人。櫻井先輩からの連絡で来たんだけれど、本当に来るべきだったのか少し疑わしい。
「姫奏は牧野さんを。我と清歌嬢は宮下さんから話を聞くとしようか」
来たばかりではあるがわたしと櫻井先輩は宮下さんと呼ばれた彼女と共に別の教室へ移動した。櫻井先輩の物言いはやっぱり不遜だけど、その声色にはどこか優しさを感じた。
宮下さんの本音は聞いていて切なくなるものだった。確かに二人とも、姫奏のファンクラブ会員ではあったが、彼女が本当に好きだったのは牧野さんで、姫奏に恋人が出来た以上、諦めてくれると思っていたらしい。でも、牧野さんの気持ちは変わらなかった。それが苦しくて言い合いになってしまったらしい。姫奏がどこまで知った上でわたしを連れてきたのかは分からない。でも、でも……。
「牧野さんはわたしを憎んでるでしょうね……」
「恨まれたり憎まれたりすることが怖い?」
「先輩?」
櫻井先輩の声のトーンが一段低くなった気がした。
「わたしと姫奏はそれなりに長い付き合いなのだけれど、彼女は今となっては完璧な生徒会長さまだけど……ホントは完璧なんかじゃなくって、子供っぽい部分もあって。恋人の貴女なら知っているでしょうけど。でも彼女が優秀なのは事実で、それは幼い頃からそう。そして、人は得てして優秀な年下を疎みがちなのよ」
先輩の言いたいことが分かったような気がした。姫奏と約束した、生徒会長になるって。きっとそれは、誰からも慕われるわけじゃない。疎まれたり嫌われたりすることが絶対にある。でも、それを怖がっていたら一歩踏み出せないんだ。
「ありがとうございます。櫻井先輩」
「にぁ! ゆ、ユースティティア様と呼びなさい」
恥ずかしがる先輩がマントで顔を隠していると、扉が勢いよく開けられた。
「ごめん、さつき! あたし、ずっと……。さつきに迷惑かけて……」
駆け込んできたのは牧野さんだった。宮下さんを抱き寄せ、宮下さんもそれを受け入れていた。
「いいの。りーちゃんが側にいてくれるなら……」
「一件落着ね」
「姫奏……」
颯爽と現れわたしを抱き寄せる姫奏。わたしも……誰かの心を救える人になりたい。誰かの幸せを心から喜べる人になりたい。今日この日が、わたしが生徒会長になりたいと明確に思った日だった。
「困ったものね、わたしは清歌のものだというのに」
憂いを帯びた眼差しでわたしを見つめる姫奏。長いまつげに縁取られた瞳は美しく、見入ってしまう。
「でも、仕事は仕事よ。さぁ、入るがいいわ」
委員会室の扉によりかかり、不遜な物言いをこちらに投げかける一人の少女。風紀委員長の櫻井先輩だ。綺麗なツインテールとマントをはためかせ、委員会室へと入っていく先輩に続き、わたしたちも委員会室に入る。普通教室と同じ広さに、生徒会室同様のインテリアが配されている。そんな部屋の真ん中で、俯いて座る二人の生徒。リボンの色を見る限り、わたしと同じ学年のようだ。
「ひ、ひめ、かさま……」
「はわわわ」
さっきまで以上にかしこまる二人。櫻井先輩からの連絡で来たんだけれど、本当に来るべきだったのか少し疑わしい。
「姫奏は牧野さんを。我と清歌嬢は宮下さんから話を聞くとしようか」
来たばかりではあるがわたしと櫻井先輩は宮下さんと呼ばれた彼女と共に別の教室へ移動した。櫻井先輩の物言いはやっぱり不遜だけど、その声色にはどこか優しさを感じた。
宮下さんの本音は聞いていて切なくなるものだった。確かに二人とも、姫奏のファンクラブ会員ではあったが、彼女が本当に好きだったのは牧野さんで、姫奏に恋人が出来た以上、諦めてくれると思っていたらしい。でも、牧野さんの気持ちは変わらなかった。それが苦しくて言い合いになってしまったらしい。姫奏がどこまで知った上でわたしを連れてきたのかは分からない。でも、でも……。
「牧野さんはわたしを憎んでるでしょうね……」
「恨まれたり憎まれたりすることが怖い?」
「先輩?」
櫻井先輩の声のトーンが一段低くなった気がした。
「わたしと姫奏はそれなりに長い付き合いなのだけれど、彼女は今となっては完璧な生徒会長さまだけど……ホントは完璧なんかじゃなくって、子供っぽい部分もあって。恋人の貴女なら知っているでしょうけど。でも彼女が優秀なのは事実で、それは幼い頃からそう。そして、人は得てして優秀な年下を疎みがちなのよ」
先輩の言いたいことが分かったような気がした。姫奏と約束した、生徒会長になるって。きっとそれは、誰からも慕われるわけじゃない。疎まれたり嫌われたりすることが絶対にある。でも、それを怖がっていたら一歩踏み出せないんだ。
「ありがとうございます。櫻井先輩」
「にぁ! ゆ、ユースティティア様と呼びなさい」
恥ずかしがる先輩がマントで顔を隠していると、扉が勢いよく開けられた。
「ごめん、さつき! あたし、ずっと……。さつきに迷惑かけて……」
駆け込んできたのは牧野さんだった。宮下さんを抱き寄せ、宮下さんもそれを受け入れていた。
「いいの。りーちゃんが側にいてくれるなら……」
「一件落着ね」
「姫奏……」
颯爽と現れわたしを抱き寄せる姫奏。わたしも……誰かの心を救える人になりたい。誰かの幸せを心から喜べる人になりたい。今日この日が、わたしが生徒会長になりたいと明確に思った日だった。
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