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翌朝、いよいよドラゴンの肉を調理することになった。お城の厨房ではディルク料理長を筆頭に五人の料理人がアシスタントをしてくれることになっていた。
「あれだけの肉なら百人近いお客様に提供しても十分に足りる量だと思いますよ」
「ありがとうございます。早速始めましょうか」
冷蔵庫のようなマジックアイテムからドラゴンの肉を取り出す。まずはお腹に近い部分、赤身肉だ。。脂が少しだけサシのようにはしっている。やはり運動量が多い生き物だからだろうか、そこまで脂っぽくはない。あれだけ寒い空間で生きていたというのに、脂肪は控えめというのは地球の生き物とは大違いだ。あるいは、筋肉で熱を保っていたのだろうか。
すこしだけ切り落としてさっと炙って食べてみる。
「味は悪くないね」
「……少しだけ固い」
お腹に近い部分でこの固さとなると、四肢のお肉はかなり筋張っていそうだ。部位ごとに小分けにして下準備していく。
ひとまずこのお腹に近い部分のお肉はフォークでブスブス刺してからカットしていく。
「これくらいの量があれば十分かな」
「じゃあ、焼いていくよ」
雨月が調理台に火を灯すと、炎が勢いよく燃え上がった。
「うーん、魔法での火力調節はけっこう難しいなぁ」
戦闘用に訓練したわけじゃないから魔法の感覚はまだまだ掴み切れていない。まぁ、この先使うこともないだろうから、そういった補助の部分はこちらの世界のコックさんに委ねることにした。
なにはともあれ、少し硬いけれどその分噛めば噛むほど旨味の感じられるこのお肉はキノコや野菜と一緒にソテーすることにした。キノコの酵素で少し柔らかくなることも期待してのチョイスだ。本当だったらフランベとかしながら本格的なステーキに仕上げたいのだけれど、そういった技術はまだ習得していない。
「この辺は脚のお肉だね……さらに固そうだから、煮込みがいいかな?」
「……賛成。シチュー、できればホワイトシチューにしたい」
二足歩行ということもあって今回討伐したドラゴンの足はチキンにも似ている。どちらかといえば骨付きのまま丸焼きにするのが似合いそうな見た目だ。とはいえ最愛の妹のオーダーはシチューなので、とりあえずブロック状に切ってから鍋でコトコトと時間をかけてじっくり煮込んでいくことにした。そもそも私が煮込み系がいいだろうといったのがきっかけだからね。
「次は、腕の部分だよね」
「……油で揚げる?」
「えっ、フライにするの?」
「そう」
「ドラゴンフライ……じゃあトンボか。竜田揚げの方が意味の通りもいいかな?」
「小麦粉、いっぱい必要だね」
私のシャレを雨月はスルーした。ちょっと悔しい。が、腕の部分を揚げるのは賛成だ。脚ほど筋肉質ではなく、鳥の胸肉くらいの感じだ。私はモモ肉の方が好きだけど、鶏もも肉に近いような部位はなかったし、今回はよしとする。
「じゃあ、そっちは任せていい?」
「うん。……シチュー、よろしく」
「わかった!」
ここから先は分担して料理を進めることにした。あらかじめホワイトソース作りはアシスタントの料理人さんたちに任せていたので、それを受け取りつつ根菜類のカットもお任せしてしまう。異世界といえばジャガイモ……というのも変な話だけれど、ジャガイモやトマトが普通に食されているので異世界だけれど料理はしやすい。人参の色がベーシックなオレンジじゃなくて赤紫なのはまあホワイトシチューに向かないけど、彩りということで受け入れるようにしよう。あんまり色が出ちゃうとボルシチみたいになっちゃうんだよなぁ……。
「これってなんのミルクですか?」
隣で料理をしてくれている女性の料理人に尋ねる。地球の牛乳とはけっこう違う匂いがする。もっと甘い……例えるならば乳酸菌飲料みたいな香りがする。
「メリートという生き物です。毛を刈る方がメインなんですけど、甘みのある葉っぱを好んで食すのでミルクも甘いんです」
なるほど……ヒツジやヤギに近い生き物なのだろう。大きな角が生えていてそれを笛にするような人々がいるのだろうか。そんなことを考えながら、玉ねぎみたいな野菜をささっとカットして、試しに生で齧ってみる。
「あ、ノイノの実はあんまり生食に向いてないと思いますけど!?」
こちらの世界にある玉ねぎっぽい野菜はノイノと呼ばれているようだ。実際、生だとかなり辛い。これを煮込むことで甘みが出るのだろうか。
「……みたいですね。ですが歯ざわりはいい感じです」
玉ねぎと同じやり方でいいかは分からないけれど、取り敢えず水にさらしておく。
甘いミルクで作るシチューだから、玉ねぎの辛味はちょっとくらい残しておいてもいいかも、なんてことを考えながら調理を進めていく。作っていくうちにどんどんこっちの世界の流通や食文化が気になってくる。どうやら香辛料もけっこう手に入るようで、黒コショウがミルに入っておかれている。これならシチューを食べる直前に挽くこともできそうだ。……コショウがあるのならば。
私はアシスタントの料理人に欲しい香辛料の特徴を伝えていく。
「なるほど、そういったものでしたら用意できると思いますよ」
私はそのことを雨月に伝える。そしたら雨月、にっこりと笑ってくれた。
「メインディッシュ、決まりだね」
そのためにはちょーっと大変な作業が必要だけど、手はあるし頑張っちゃおうかな!!
「あれだけの肉なら百人近いお客様に提供しても十分に足りる量だと思いますよ」
「ありがとうございます。早速始めましょうか」
冷蔵庫のようなマジックアイテムからドラゴンの肉を取り出す。まずはお腹に近い部分、赤身肉だ。。脂が少しだけサシのようにはしっている。やはり運動量が多い生き物だからだろうか、そこまで脂っぽくはない。あれだけ寒い空間で生きていたというのに、脂肪は控えめというのは地球の生き物とは大違いだ。あるいは、筋肉で熱を保っていたのだろうか。
すこしだけ切り落としてさっと炙って食べてみる。
「味は悪くないね」
「……少しだけ固い」
お腹に近い部分でこの固さとなると、四肢のお肉はかなり筋張っていそうだ。部位ごとに小分けにして下準備していく。
ひとまずこのお腹に近い部分のお肉はフォークでブスブス刺してからカットしていく。
「これくらいの量があれば十分かな」
「じゃあ、焼いていくよ」
雨月が調理台に火を灯すと、炎が勢いよく燃え上がった。
「うーん、魔法での火力調節はけっこう難しいなぁ」
戦闘用に訓練したわけじゃないから魔法の感覚はまだまだ掴み切れていない。まぁ、この先使うこともないだろうから、そういった補助の部分はこちらの世界のコックさんに委ねることにした。
なにはともあれ、少し硬いけれどその分噛めば噛むほど旨味の感じられるこのお肉はキノコや野菜と一緒にソテーすることにした。キノコの酵素で少し柔らかくなることも期待してのチョイスだ。本当だったらフランベとかしながら本格的なステーキに仕上げたいのだけれど、そういった技術はまだ習得していない。
「この辺は脚のお肉だね……さらに固そうだから、煮込みがいいかな?」
「……賛成。シチュー、できればホワイトシチューにしたい」
二足歩行ということもあって今回討伐したドラゴンの足はチキンにも似ている。どちらかといえば骨付きのまま丸焼きにするのが似合いそうな見た目だ。とはいえ最愛の妹のオーダーはシチューなので、とりあえずブロック状に切ってから鍋でコトコトと時間をかけてじっくり煮込んでいくことにした。そもそも私が煮込み系がいいだろうといったのがきっかけだからね。
「次は、腕の部分だよね」
「……油で揚げる?」
「えっ、フライにするの?」
「そう」
「ドラゴンフライ……じゃあトンボか。竜田揚げの方が意味の通りもいいかな?」
「小麦粉、いっぱい必要だね」
私のシャレを雨月はスルーした。ちょっと悔しい。が、腕の部分を揚げるのは賛成だ。脚ほど筋肉質ではなく、鳥の胸肉くらいの感じだ。私はモモ肉の方が好きだけど、鶏もも肉に近いような部位はなかったし、今回はよしとする。
「じゃあ、そっちは任せていい?」
「うん。……シチュー、よろしく」
「わかった!」
ここから先は分担して料理を進めることにした。あらかじめホワイトソース作りはアシスタントの料理人さんたちに任せていたので、それを受け取りつつ根菜類のカットもお任せしてしまう。異世界といえばジャガイモ……というのも変な話だけれど、ジャガイモやトマトが普通に食されているので異世界だけれど料理はしやすい。人参の色がベーシックなオレンジじゃなくて赤紫なのはまあホワイトシチューに向かないけど、彩りということで受け入れるようにしよう。あんまり色が出ちゃうとボルシチみたいになっちゃうんだよなぁ……。
「これってなんのミルクですか?」
隣で料理をしてくれている女性の料理人に尋ねる。地球の牛乳とはけっこう違う匂いがする。もっと甘い……例えるならば乳酸菌飲料みたいな香りがする。
「メリートという生き物です。毛を刈る方がメインなんですけど、甘みのある葉っぱを好んで食すのでミルクも甘いんです」
なるほど……ヒツジやヤギに近い生き物なのだろう。大きな角が生えていてそれを笛にするような人々がいるのだろうか。そんなことを考えながら、玉ねぎみたいな野菜をささっとカットして、試しに生で齧ってみる。
「あ、ノイノの実はあんまり生食に向いてないと思いますけど!?」
こちらの世界にある玉ねぎっぽい野菜はノイノと呼ばれているようだ。実際、生だとかなり辛い。これを煮込むことで甘みが出るのだろうか。
「……みたいですね。ですが歯ざわりはいい感じです」
玉ねぎと同じやり方でいいかは分からないけれど、取り敢えず水にさらしておく。
甘いミルクで作るシチューだから、玉ねぎの辛味はちょっとくらい残しておいてもいいかも、なんてことを考えながら調理を進めていく。作っていくうちにどんどんこっちの世界の流通や食文化が気になってくる。どうやら香辛料もけっこう手に入るようで、黒コショウがミルに入っておかれている。これならシチューを食べる直前に挽くこともできそうだ。……コショウがあるのならば。
私はアシスタントの料理人に欲しい香辛料の特徴を伝えていく。
「なるほど、そういったものでしたら用意できると思いますよ」
私はそのことを雨月に伝える。そしたら雨月、にっこりと笑ってくれた。
「メインディッシュ、決まりだね」
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