ゆりいろリレーション

楠富 つかさ

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#5

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 早乙女と過ごした日、いつもより寝つきが悪いのは何故だろうか。答えはわかっている。けれどそれを認められない自分がいるのだ。

『七瀬さん、キスしてもいいでしょうか?』

 思い出すだけでもドキドキする。自分からするのもそれなりに緊張したが、まさかされる側になろうとは。額にされたとはいえ、確かな柔らかさを感じられた。

「……ダメだ、素振りでもするか」

 このままだと変なことばかり考えてしまいそうだ。あたしは木刀を手に取り、部屋を出た。
 素振りを百本ほどこなし、シャワーで汗を流して無理やり眠りについた。

 翌朝、普通に登校し早乙女と過ごす。恋人のふりを始めてかれこれ半月ちょっとが経っている。早乙女との関係も学校でそれなりにウワサになっている。方向性の違う二人が急に仲良くなりだしたらそれは確かに不思議に思われるだろうからな。

「じゃあ……七瀬さん、部活お怪我のないように気を付けてくださいね」
「あぁ。分かってるさ。早乙女も気を付けて帰れよ」

 授業をこなし、部活の時間になる。

「七瀬、今日こそは一本も取らせないからね」

 剣道着に着替えながら準備をしていると、同級生の麻生夏希に声をかけられた。夏希は中一から剣道を始めた中では飲み込みが早く、高校でも剣道を続ければそこそこいい成績が出せるんじゃないかとみている。あたしのそう多くない友人の一人だ。
 うちの学校の剣道部は各学年に女子だけでも三人か四人くらいの人数がいる。女子の部としては県大会の団体戦で四強くらいまでは進むそこそこの強豪校だ。東海大会にはなかなか出場できていないが、今年は一年生に大型新人が入っているから、今年こそ東海大会に出られるんじゃないかと思っている。
 男子の方は人数こそもっと多いが、あまり強い選手には恵まれておらず時折、中学から剣道を始めてめきめき上達した生徒が個人戦でそれなりにいい成績を残すことがあるくらいだ。団体戦だと女子ほどぱっとしない。
 練習への意欲に差があるのだろうか。一応、同じ先生が男女どっちも指導してくれているのだが。一応、人数の関係か部長は男子が任されている。

「三崎先輩、よろしくお願いします!」

 噂をすれば影が差すと言うが、まさにその大型新人である石津美憂が部室に入ってきた。つい数か月前まで小学生だったとは思えないほど上背が高く、体格もいい。道場でも一緒にいるが強く重く正確な竹刀の振りが出来る優秀な剣道部員だ。性格的にも真面目で信頼できる。

「おう、よろしくな」

 防具を揃えて体育館の端に整列する。剣道はスポーツであり武道である。練習は礼から始まる。気持ちを集中だ……今は早乙女のことは一旦考えない。

「これより練習を始める。正面に礼! ――お互いに、礼!!」
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