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第5話

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「え? あぁ……うん、帰るよ」
「じゃあ途中まで一緒行きます?」
「うん……そうだね」

 こうして帰り道で唯菜ちゃんと話すことになったのだが、何を話していいのか。帰り道、方向は一緒だけれど特に話題もなく歩き進む。あまり車の走ってない道にも横断歩道はあり、信号に止められる。

「センパイ、時見センパイのこと知りたいンすか?」
「え、なんで……」
「だってめっちゃ見てるし」
「あはは、バレちゃってたか……。なんか、気になっちゃって」

図星をつかれて笑って誤魔化す。

「時見センパイって謎っしょ。でもまァ悪い人ではないっスよ」
「それは分かるよ。あの花壇の説明とかすごく分かりやすかった」
「そっか。まァあたしも最初はよく分かんなかったンすけど、この前一緒に帰った時にいろいろ教えてくれたんスよねェ」
「へぇ、そうなんだ」

 意外だ。やっぱり誰とも仲良くしないわけじゃなくて、人との距離感を測っているのかな。そういえば神藤先輩達と別れるまで一言も喋らなかったような。

「時見さんって何が好きなんだろう?」
「甘いもの、好きっスよ」
「そう、なんだ」
「意外っしょ」

 唯菜ちゃんに同意を促されて私も頷く。時見さんが甘いものを食べている姿……正直、想像がつかない。ビターチョコとかかじってそうだし。

「うん」
「アタシ、センパイのことも聞きたいッス」

 私の前を歩いていた唯菜ちゃんが、くるっと私の方を向く。後ろ歩きしていても、全く危うくないのは歩きなれているからなのか、唯菜ちゃんのバランスがいいのか。
 ……にしても、自分のこととなると話すことなんてほとんどない。

「私? 私は普通だよ」
「あー、そういうのいいんで。時見センパイのどこが好きなんですか」
「え!? 好きとか、そういうのっていうより……。あ……っと、優しいところ、とか」
「他には」
「他は……可愛いところとか」
「それじゃあ答えになってないですってば」
「……」

 どうしよう。どう答えるのが正解なのだろうか。私が黙り込むと、ちょうど信号が青に変わり、唯菜ちゃんが歩き出す。私もそれに着いていき、しばらくすると郵便局のある交差点に行きついた。

「んじゃ、アタシここ左に行くんで」
「そうなんだ。私、まだ真っすぐ」
「また委員の時に」
「う、うん」

 そう言って唯菜ちゃんと別れた。……私、時見さんのこと好きなのかな。唯菜ちゃんの中ではそういうことになっていそうだ。
 ……どういう、好き、なんだろう。自分一人で考えても、やっぱり答えは出なかった。
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