14 / 14
#14 体育祭に向けて
しおりを挟む
体育祭の準備は例年のマニュアルがあることもあり、つつがなく進んでいった。各クラスではロングホームルームの時間を使って出場する種目を選んでいく。
種目は基本的に各学年共通のものと固有のものがある。共通種目は例えば徒競走やリレーといった全員参加型の競技や、二人三脚、大玉転がし、借り物競走、障害物競走といった各々が選んで参加する競技がある。
学年個別の競技は中一が大縄跳び、中二が玉入れ、中三が台風の目、高一が綱引き、高二が騎馬戦、高三がムカデ競争というように、学年ごとに割り振られた種目だ。
それに加えて、中等部はソーラン節の発表がある。高等部もかつては組み体操をやっていたのだが、各地で発生する事故を受けて、星花女子でも取りやめとなった。その一方で、部活数の増加に伴い、時間枠の調整は部活動対抗リレーや教職員の催しで何とかなっている。
「というわけでですね、皆さんが出る種目やリレーの走る順番について決めていこうと思います」
夕陽ちゃんと朱里ちゃんが教壇に立って、司会進行をしていく。私と瑠奈ちゃんは毎年、二人三脚に出場している。多少の身長差はあれど、それを補って余りある呼吸の一致で転んだことは一切無い。まぁ、もともとの脚力はさほど高くないから順位自体は微妙というか、まぁ平凡なのだけれど。
星花女子の高等部は基本的に四十人クラスなので、それぞれ十人ずつが選んで参加する競技に割り振られる。
「ではそれぞれ参加したい種目にネームプレートを貼り付けてください。二人三脚の場合は、ペアで横並びにお願いします」
黒板の左端に貼られた、名前の書かれた薄い磁石を剥がして瑠奈ちゃんの分と一緒に二人三脚の枠に貼り付ける。
「二人三脚と大玉転がしは決定ですね。えっと、借り物競走を選んだ人たちはじゃんけんして、負けた人は障害物競走に移ってください」
……ほ。無事に二人三脚に瑠奈ちゃんと一緒に出られる。一安心っと。
夕陽ちゃんも朱里ちゃんも、進行役が板に付いているというか。体育祭へ向けた準備と同じくらいつつがない。
じゃんけんの決着がついて、それぞれの種目の参加者が決まった。次の議題はリレーの走る順番。あまり後の方に走って、勝負が拮抗していたらプレッシャーで嫌だなあ。露骨に負けているならまだしも、圧倒しているはずが自分の走っている間に追いつかれるなんていう展開も正直勘弁だ。
「えっと、リレーの走順ですが、取り敢えずここに先日の体力テストの結果があります。50メートル走のデータを見つつ考えたいのですが、取り敢えず最初に入りたい人いますか?」
夕陽ちゃんが手元のプリントを見た後に教室を見渡す。あれが50メートル走のデータなんだろう。あまり足が速くないからなあ。勝負がまだよく分からない序盤にしれっと走っておきたいのだけれど……。
「先行逃げ切り型か、あとから追い上げる型のどっちにするの?」
クラスでも飛び抜け運動神経のいい女の子が発言する。夕陽ちゃんは少し悩んだ後に、後者でと言った。
「取り敢えず最初、わたしでもいいですか?」
夕陽ちゃんが続けて衝撃的な発言を放った。夕陽ちゃん、あの大きな重りがある時点で足が速くないことはお察しなのだが、敢えて一番を走る?
「ショートカットを走りたいのだけれど」
「各クラス二人まで本来200メートルのレーンから、内側にある150メートルのコースを走れるんです」
朱里ちゃんがショートカットの説明をしてくれる。なるほど、足の遅い生徒への救済措置は毎年行われており、理解はできる。けれど最初のランナーがそこを走るのはちょっと意表を突いてくるなぁとは思う。
「まぁ、いいんじゃない。委員長、そこ走るだろうと思ってたし」
そんな感じがクラスの多数意見だった。取り敢えず比較的足の遅い生徒から順番に走って終盤にスパートをかける作戦になった。そもそも徒競走は高等部にとって最初の競技だから、走りに自身がある生徒のウォーミングアップを入念にやった方が、成績も上がるのではという発想から始まった案らしい。
ということで、私も瑠奈ちゃんも比較的早い段階での走りが確定した。その方が生徒会としても動きやすいので、これは本当に助かる。
ということで、体育祭まで半月ちょっと。少しずつとはいえ、学内のボルテージが上がってきたような、そんな感じだった。
種目は基本的に各学年共通のものと固有のものがある。共通種目は例えば徒競走やリレーといった全員参加型の競技や、二人三脚、大玉転がし、借り物競走、障害物競走といった各々が選んで参加する競技がある。
学年個別の競技は中一が大縄跳び、中二が玉入れ、中三が台風の目、高一が綱引き、高二が騎馬戦、高三がムカデ競争というように、学年ごとに割り振られた種目だ。
それに加えて、中等部はソーラン節の発表がある。高等部もかつては組み体操をやっていたのだが、各地で発生する事故を受けて、星花女子でも取りやめとなった。その一方で、部活数の増加に伴い、時間枠の調整は部活動対抗リレーや教職員の催しで何とかなっている。
「というわけでですね、皆さんが出る種目やリレーの走る順番について決めていこうと思います」
夕陽ちゃんと朱里ちゃんが教壇に立って、司会進行をしていく。私と瑠奈ちゃんは毎年、二人三脚に出場している。多少の身長差はあれど、それを補って余りある呼吸の一致で転んだことは一切無い。まぁ、もともとの脚力はさほど高くないから順位自体は微妙というか、まぁ平凡なのだけれど。
星花女子の高等部は基本的に四十人クラスなので、それぞれ十人ずつが選んで参加する競技に割り振られる。
「ではそれぞれ参加したい種目にネームプレートを貼り付けてください。二人三脚の場合は、ペアで横並びにお願いします」
黒板の左端に貼られた、名前の書かれた薄い磁石を剥がして瑠奈ちゃんの分と一緒に二人三脚の枠に貼り付ける。
「二人三脚と大玉転がしは決定ですね。えっと、借り物競走を選んだ人たちはじゃんけんして、負けた人は障害物競走に移ってください」
……ほ。無事に二人三脚に瑠奈ちゃんと一緒に出られる。一安心っと。
夕陽ちゃんも朱里ちゃんも、進行役が板に付いているというか。体育祭へ向けた準備と同じくらいつつがない。
じゃんけんの決着がついて、それぞれの種目の参加者が決まった。次の議題はリレーの走る順番。あまり後の方に走って、勝負が拮抗していたらプレッシャーで嫌だなあ。露骨に負けているならまだしも、圧倒しているはずが自分の走っている間に追いつかれるなんていう展開も正直勘弁だ。
「えっと、リレーの走順ですが、取り敢えずここに先日の体力テストの結果があります。50メートル走のデータを見つつ考えたいのですが、取り敢えず最初に入りたい人いますか?」
夕陽ちゃんが手元のプリントを見た後に教室を見渡す。あれが50メートル走のデータなんだろう。あまり足が速くないからなあ。勝負がまだよく分からない序盤にしれっと走っておきたいのだけれど……。
「先行逃げ切り型か、あとから追い上げる型のどっちにするの?」
クラスでも飛び抜け運動神経のいい女の子が発言する。夕陽ちゃんは少し悩んだ後に、後者でと言った。
「取り敢えず最初、わたしでもいいですか?」
夕陽ちゃんが続けて衝撃的な発言を放った。夕陽ちゃん、あの大きな重りがある時点で足が速くないことはお察しなのだが、敢えて一番を走る?
「ショートカットを走りたいのだけれど」
「各クラス二人まで本来200メートルのレーンから、内側にある150メートルのコースを走れるんです」
朱里ちゃんがショートカットの説明をしてくれる。なるほど、足の遅い生徒への救済措置は毎年行われており、理解はできる。けれど最初のランナーがそこを走るのはちょっと意表を突いてくるなぁとは思う。
「まぁ、いいんじゃない。委員長、そこ走るだろうと思ってたし」
そんな感じがクラスの多数意見だった。取り敢えず比較的足の遅い生徒から順番に走って終盤にスパートをかける作戦になった。そもそも徒競走は高等部にとって最初の競技だから、走りに自身がある生徒のウォーミングアップを入念にやった方が、成績も上がるのではという発想から始まった案らしい。
ということで、私も瑠奈ちゃんも比較的早い段階での走りが確定した。その方が生徒会としても動きやすいので、これは本当に助かる。
ということで、体育祭まで半月ちょっと。少しずつとはいえ、学内のボルテージが上がってきたような、そんな感じだった。
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

星空の花壇 ~星花女子アンソロジー~
楠富 つかさ
恋愛
なろう、ハーメルン、アルファポリス等、投稿サイトの垣根を越えて展開している世界観共有百合作品企画『星花女子プロジェクト』の番外編短編集となります。
単体で読める作品を意識しておりますが、他作品を読むことによりますます楽しめるかと思います。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。

AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

実る果実に百合を添えて
楠富 つかさ
恋愛
私、佐野いちごが入学した女子校には生徒が思い思いのメンバーを集めてお茶会をする文化があって、私が誘われた”果実会”はフルーツに縁のある名前の人が集まっている。
そんな果実会にはあるジンクスがあって……それは”いちご”の名前を持つ生徒と付き合えば幸せになれる!? 待って、私、女の子と付き合うの!?
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。

僕(じゃない人)が幸せにします。
暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】
・第1章
彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。
そんな彼を想う二人。
席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。
所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。
そして彼は幸せにする方法を考えつく――――
「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」
本当にそんなこと上手くいくのか!?
それで本当に幸せなのか!?
そもそも幸せにするってなんだ!?
・第2章
草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。
その目的は――――
「付き合ってほしいの!!」
「付き合ってほしいんです!!」
なぜこうなったのか!?
二人の本当の想いは!?
それを叶えるにはどうすれば良いのか!?
・第3章
文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。
君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……
深町と付き合おうとする別府!
ぼーっとする深町冴羅!
心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!?
・第4章
二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。
期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する――
「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」
二人は何を思い何をするのか!?
修学旅行がそこにもたらすものとは!?
彼ら彼女らの行く先は!?
・第5章
冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。
そんな中、深町凛紗が行動を起こす――
君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!
映像部への入部!
全ては幸せのために!
――これは誰かが誰かを幸せにする物語。
ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。
作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

君の瞳のその奥に
楠富 つかさ
恋愛
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。それは時に甘く……時に苦い。
失恋を引き摺ったまま誰かに好意を寄せられたとき、その瞳に映るのは誰ですか?
片想いの相手に彼女が出来た。その事実にうちひしがれながらも日常を送る主人公、西恵玲奈。彼女は新聞部の活動で高等部一年の須川美海と出会う。人の温もりを欲する二人が出会い……新たな恋が芽吹く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる