夜空に咲くは百合の花

楠富 つかさ

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#13 体育祭実行委員会

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 ゴールデンウィークの連休が終わると、中間考査の時期が近付いてくる。まぁ、私たちは特に不安な部分はないのだが。星花の寮は二人部屋の桜花寮と一人部屋の菊花寮があるが、菊花寮の入寮条件は学業か部活動など文化活動の成績。私も瑠奈ちゃんも菊花寮へ入るだけの成績ではあるんだけど、別々の部屋で寝るなんて考えられないということで桜花寮に留まっている。
 それより問題なのは五月末に行われる体育祭の準備だ。各クラスから実行委員を募り生徒会長を首班とする実行委員会を結成する。我々も生徒会役員の末席に名を連ねる者として準備を手伝わなければならないのだ……。

「本日が初会合となります。よろしくお願いしますね」

 小館先輩が挨拶をし、全員が着席する。ちなみに、うちのクラスの実行委員は朱里ちゃん。クラス委員長もそれなりに仕事を担当してもらうことから、夕陽ちゃんと一緒に居る時間を確保するために立候補してくれたのだ。健気だねぇ。
 中等部三学年四クラス、高等部三学年六クラスの代表と生徒会本部役員が一堂に会するため、会場は会議室を使っている。三年前に改築された本棟はどこもかしこも綺麗だ。一クラス分の人数が円卓を囲む光景はある種、壮観でもあった。

「今、副会長の白崎から資料が配付されたと思う。各自、今年の体育祭のテーマ案を次回の会合までに出して欲しい。それから、種目は概ね去年と同様の配置となっている。この並びに問題があれば今、意見を述べて欲しい」

 とは言え、ほぼ毎年同じ順番で競技をこなしてきたのだから、誰も意見なんて言わない。それから各クラスへの通達事項の確認をすると、会合はすんなり終わった。会議室を利用すると椅子や机の片付ける手間がないからありがたい。

「帰ろう、瑠奈ちゃん」

 実行委員には何人か寮生もおり、寮へ向かって歩く人も多い。

「体育祭なんて面倒なだけよ。去年も一昨年もそう」
「まぁまぁ、そう言ったって毎年ちゃんと頑張ってるじゃない」

 瑠奈ちゃんが頑張ってくれるのは、代休一日ずっと私といちゃいちゃするためなんだけどね。去年なんかは仕事が少なかったこともあって大会中の暇な時間にちゅっちゅしてたけど。

「お休みの日には美星にチアガールの衣装を着て貰おうかしら」
「えぇ!? 別に……いいけどさ」

 今更どんな格好をしても恥ずかしいとは思わないだろう。少なくとも、瑠奈ちゃんの前なら。その他大勢の前それこそ実際に体育祭の日にチアで応援に加われって言われたら無理だ。

「今のうちに通販で注文しておかないと」
「もう、仕方ないなぁ」

 今まで一回しか着たことのないコスプレ衣装が、貸しコンテナに何着か保管されている。勿体ないなぁとは思うけど、セレブな瑠奈ちゃんは気にする素振りがない。

「今日も相手、してくれるでしょう?」

 私は言葉にせず、制服を脱いで応じた。
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