夜空に咲くは百合の花

楠富 つかさ

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#12 曇り空デート

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「今日はいい天気だねぇ」

ゴールデンウィーク間近の金曜日。春の雨に苛まれた昨日とうってかわっての晴天であり、すがすがしい空模様だった。

「とはいえ、来週も中頃の天気は不安定だったわよね?」
「そうそう。ほんと、なんでだろうね。特に昨日の雨はすごかったね」
「そうね。まぁ、美星の喘ぎ声であんまり聞えなかったけれど」
「あ、ちょっと、瑠奈ちゃんだってひぃひぃ言ってたじゃん!」
「ちゅっ。ふふ、ちょっとイジワルが過ぎたわね」
「もぅ……まったくだよ」

桜はおよそ葉桜になり、木々も葉を青々と繁らせている。雨で落ちてしまった花や葉も多い。

「緑の綺麗な時季になったね」
「えぇ。どこか、ピクニックにでも行きたいわね」
「それいいね! 明日から連休だし、帰ったら考えようか」
「そうね。お弁当でも持って、少し遠くへ行きましょう」
「うん! ふふ、楽しみすぎて午後の授業きちんと受けられるか不安かも」
「私もよ。美星」

瑠奈ちゃんに呼ばれ、ぎゅっと抱き締められる。

「「んちゅ、じゅぶ……ずちゅぅ、ぬぷ、んむぅ……んふぅ」」

唇を離す刹那、銀糸が陽光を浴びて煌めく。

「これで午後も頑張れるわね」
「うん!!」

翌日、私と瑠奈ちゃんは空の宮中央駅からほど近い中央公園にやってきた。近くにある動物公園とは違い中央公園は多くの植物やベンチ、芝生の広場には彫刻など立体芸術品も展示されているなど、のんびりとした雰囲気を持っている。そんな人気の公園なのだが、今日は人がまばらだった。なにせ空はどんよりと鈍色でお出かけ日和とはほど遠いのだ。春の嵐とまではいかないが、全国的に天気が悪いようだ。雨は降っていないからと、出掛けてみたがこれでよかったのだろうか。薄曇の空、閑散とした公園。どこか寂しい雰囲気すらする。

「私は美星と二人ならどこでも楽しいわよ。ちょうど、スミレも咲いているし、いいんじゃないかしら?」
「あ、本当だ」

瑠奈ちゃんの指差した先に濃い紫色の花を咲かせているスミレがいた。ひょっとしたら花菖蒲かもしれないけど、違いが分からないのでスミレということにしておく。

「んちゅっ」

不意打ちで瑠奈ちゃんにキスをもらった。

「それに、ここならキスしても見られないからね」
「そうだね。えへへ」

瑠奈ちゃんの細い腰に腕を回し、そっと唇を重ねる。

「「っちゅ……」」

今度は瑠奈ちゃんからキス。舌が私の唇をこじあける。甘く濃密な口付け。

「「じゅぶ……ずちゅ、んちゅ、むちゅぅ……じゅぶ、んふぅ。……ちゅ、くちゅ……ん、ちゅ、れろ……んむ、ぅふ……」」

空も花も視界には入ってこない。ただ、私だけの月瑠奈ちゃんを見ていた。
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