夜空に咲くは百合の花

楠富 つかさ

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#10 ひざまくら

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週明けの月曜日、屋上でお昼ご飯を食べ終えてのんびりしながら、小守さんと木内さんの話を瑠奈ちゃんとしてみる。

「今頃あの二人、どんな話をしてるのかな?」
「もう、美星。私といる時に他の女のこと考えるなんて……どういうことかしら?」
「ご、ごめんってば。でもさ、好きだって自覚したら、すぐ伝えたいって思うから」
「私としては別にどうなったっていいわ。まぁ、両想いなのは薄々察せられるけれど」

この前、小守さんが委員長の会議だった日、木内さんとお昼を食べた時に相談を受けたのだ。女の子同士で付き合ってるカップルは、校内にそこそこいるけれど、自分から告白するのはやっぱり難しい。どうしたらいいか、みたいな相談を受けたんだけど、その前日の小守さんの話も混ぜて考えれば両想いなのは確かに分かりやすい。それを知っている私たちから木内さんには安心して伝えればいいくらいしか言えなかったけれど、幼馴染みらしいあの二人ならまぁ、すぐにお互いの気持ちを察せられるだろうから大丈夫だろう。

「それより美星、ほら」

スカートから伸びるしなやかな足をぽんぽんと叩きながら、膝枕に誘う瑠奈ちゃん。

「風、気持ちいいね」

瑠奈ちゃんのふとももに頭を乗せて空をみやる。屋上は本当なら入れないんだけれど、瑠奈ちゃんの家の力もあって、鍵を預かっている。その分、生徒会のお仕事に参加しているんだけど。

「次の授業、自習だったわね。……美星、ゆっくりお休み」
「あはは。後で小守さんに怒られそうだね」

午睡の時間はゆったりと過ぎていった。
その日の放課後、

「佐倉さん、紫雲寺さん」

小守さんと木内さんの二人から声をかけられた。繋いだ指を見るに告白は上手くいったらしい。

「あの、背中を押してくれてありがとうございました」
「私も、あなたたちと話していなかったら、自分の気持ちをきちんと理解できていなかったと思います。ありがとうございます」

二人に頭を下げられて、私も瑠奈ちゃんもちょっと慌てる。……瑠奈ちゃんは慌ててもいないか。

「えっと、二人とも、私たちは別に、そんな力になってないし、お互いを想うから二人はお付き合い出来たわけで」

私が頭を上げるよう促して、二人もそれにならう。

「あ、あの、お二人のこと名前で呼んでもいいですか?」
「……あまりなれ合うつもりはないのだけれど」

距離は縮まった気がするけれど、あまり仲良くすることに肯定的でない瑠奈ちゃん。

「まぁまぁ、そう言わずにさ。せっかく同じクラスなんだもん。打ち解けようよ」

私がそう促すと、まぁ……美星が言うならなんて言って理解してくれた。

「じゃあ、改めてよろしくね。夕陽ちゃん、朱里ちゃん」
「呼び捨てにさせてもらうわよ、夕陽、朱里」
「は、はい! よろしくお願いしますね。美星さん、瑠奈さん」
「私からも。夕陽ちゃん共々仲良くしてくれたら嬉しいです」

そのうち、ダブルデートなんて出来たら楽しいかも。こうして、私たちの友好の輪が少し広がった。
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