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「姉御ぉ、てぇへんだ!! 静山会のやつらがカチコミに来ました!!」
「まったく……あの子たちは宣戦布告ってものを知らないわね。被害状況は?」
この場にいる全員が慌ただしく動き始める中、ただ一人だけ冷静な女性がいた。名を横浜姫希、十九歳の美しき乙女である。事務所の最奥たる執務室で豪奢な椅子に座り、部下の少女に報告を促す。
「かすり傷にも満たないのが大半ですが、三人ほど無策で突撃して軽傷を負って引いています」
「なるほど、木刀を。私がじきじきに出ます。相手は間違いなく三代目水沢しずかでしょうから」
彼女は部下からの報告を聞くと、すぐに椅子から立ち上がる。そして、不敵な笑みを浮かべながら部屋を後にした。
数分後、姫希が率いる少女たちが事務所前に陣取ると、そこには血を流している少女の姿があった。その数は三人、いずれも腕っぷしには自信がある武闘派揃いだ。だが、姫希を前にするとさすがに顔色が変わる。
それは、彼女の放つカリスマ性ゆえだろう。圧倒的な威圧感、そしてそれを裏付ける実力。それが自然と周囲をひれ伏させるのだ。
「姉御、申し訳ございません」
無策で突撃した三人の部下が揃って膝をついて詫びる。自分たちが主とあがめる姫希にわざわざ出陣させてしまったことが、部下たちに不甲斐ないと自責の念をもたらすのだ。それに対し、姫希はそっと首を横に振る。艶やかな黒髪がふわりとなびく、
「よくやってくれました。下がって身体を休めなさい」
ほどなくして姫希の前に少女の集団が姿を現した。セーラー服にくるぶしほどまで長いスカート、揃いのスカーフの色は――青。その集団の中で一人、一歩前に進み名乗りを上げる。黒のショートヘアに青のメッシュを入れた年の頃で言えば十五か十六といった少女だ。
「青木ヶ原組傘下静山会、代表の三代目水沢しずかだ。あんたが横浜組代表の横浜姫希だな」
「ええそうよ。まさかあなたみたいな小娘が本当に来るとは思わなかったけど」
「あんたに負けた先代の仇、取らせてもらう!」
刹那、二人の拳が交錯する。初撃は完全に互角だった。互いの左ストレートがぶつかり合い、衝撃波を生む。あまりの威力に二人は後方に吹き飛び、一旦間合いを取るように距離を取った。
姫希は思う。これはなかなか骨のある相手だと。外見こそ幼いが、自らが率いる横浜組のライバルである静山会を率いるのに、相応しき人物であると姫希は認識を改めた。そんな彼女に対し、しずかは不敵に笑ってみせる。
「せぃ!!」
鋭い踏み込みと低い位置からの掌底、小柄な体躯を活かす攻めを姫希は恵まれた体格で封殺する。姫希の鋭い手刀による反撃を、しずかは左手一本で受け止める。刹那、しずかのセーラー服の左袖が破れ落ちた。
「氣を込めた一撃、こっちも氣を込めないと骨まで持っていかれてたな」
しずかは苦笑いしながら自らの左腕を見やる。先ほどの攻防で受けたダメージは相当なものだった。だが、痛みに耐えながらも戦いを止めることはない。間合いを切るとしずかは部下から一振りの木刀を受け取る。それに合わせて、姫希をまた部下から木刀を受け取る。
しずかと姫希、二人は同時に駆け出し互いに間合いに入った瞬間に渾身の力を込めて斬撃を放った。その衝撃により、周囲の地面に亀裂が入る。二人は後ろに下がりながら再び構え直す。
今度は二人とも武器を構えて対峙していた。両者共に油断なく相手の出方を伺う中、先に動いたのはしずかの方であった。
地面を蹴り上げ、一気に距離を詰めると神速の一閃を放つ。対する姫希はその攻撃を難なくかわす。そして、カウンターとして強烈な突きをお見舞いするが、それを紙一重で回避したしずかはお返しとばかりに姫希に向けて上段斬りを繰り出す。その攻撃すら見切って避けると、姫希は回し蹴りを繰り出した。
「足癖の悪いお嬢様だ!」
「ふふ、あなたは口が悪いわね」
だが、その蹴撃を予期していたかのように、しずかは身を屈めてその攻撃を受け止める。そして、その体勢のまま木刀を腰だめに構えて、柄頭で姫希の腹部を狙ってきた。姫希はそれを察知すると、片手側転で間合いを切る。白いワンピースがめくれてレモンイエローの下着が見えることもお構いなしだ。
「デカい乳ぶら下げて結構動けるじゃねぇか」
「あなたには分からないでしょうね。ふふ、先代は着痩せするのか意外と大きくて楽しませてくれたわね」
「ちきしょう……先代は無事なんだろうな!?」
「当然よ、私の子を孕んでいるのだもの」
この世界には女性しかいない。彼女たちは性行為の最中に氣を用いて相手の子宮に自らの遺伝子を叩き込む。そうやって子を産み増やしてきた。
そして彼女らは極道に生きる少女達。抗争に敗れれば地位も名誉も金もそして尊厳すら奪われる。これは血よりも濃いつながりで結ばれた”侠花”と呼ばれる極道に生きる少女達の愛と戦の物語。
「まったく……あの子たちは宣戦布告ってものを知らないわね。被害状況は?」
この場にいる全員が慌ただしく動き始める中、ただ一人だけ冷静な女性がいた。名を横浜姫希、十九歳の美しき乙女である。事務所の最奥たる執務室で豪奢な椅子に座り、部下の少女に報告を促す。
「かすり傷にも満たないのが大半ですが、三人ほど無策で突撃して軽傷を負って引いています」
「なるほど、木刀を。私がじきじきに出ます。相手は間違いなく三代目水沢しずかでしょうから」
彼女は部下からの報告を聞くと、すぐに椅子から立ち上がる。そして、不敵な笑みを浮かべながら部屋を後にした。
数分後、姫希が率いる少女たちが事務所前に陣取ると、そこには血を流している少女の姿があった。その数は三人、いずれも腕っぷしには自信がある武闘派揃いだ。だが、姫希を前にするとさすがに顔色が変わる。
それは、彼女の放つカリスマ性ゆえだろう。圧倒的な威圧感、そしてそれを裏付ける実力。それが自然と周囲をひれ伏させるのだ。
「姉御、申し訳ございません」
無策で突撃した三人の部下が揃って膝をついて詫びる。自分たちが主とあがめる姫希にわざわざ出陣させてしまったことが、部下たちに不甲斐ないと自責の念をもたらすのだ。それに対し、姫希はそっと首を横に振る。艶やかな黒髪がふわりとなびく、
「よくやってくれました。下がって身体を休めなさい」
ほどなくして姫希の前に少女の集団が姿を現した。セーラー服にくるぶしほどまで長いスカート、揃いのスカーフの色は――青。その集団の中で一人、一歩前に進み名乗りを上げる。黒のショートヘアに青のメッシュを入れた年の頃で言えば十五か十六といった少女だ。
「青木ヶ原組傘下静山会、代表の三代目水沢しずかだ。あんたが横浜組代表の横浜姫希だな」
「ええそうよ。まさかあなたみたいな小娘が本当に来るとは思わなかったけど」
「あんたに負けた先代の仇、取らせてもらう!」
刹那、二人の拳が交錯する。初撃は完全に互角だった。互いの左ストレートがぶつかり合い、衝撃波を生む。あまりの威力に二人は後方に吹き飛び、一旦間合いを取るように距離を取った。
姫希は思う。これはなかなか骨のある相手だと。外見こそ幼いが、自らが率いる横浜組のライバルである静山会を率いるのに、相応しき人物であると姫希は認識を改めた。そんな彼女に対し、しずかは不敵に笑ってみせる。
「せぃ!!」
鋭い踏み込みと低い位置からの掌底、小柄な体躯を活かす攻めを姫希は恵まれた体格で封殺する。姫希の鋭い手刀による反撃を、しずかは左手一本で受け止める。刹那、しずかのセーラー服の左袖が破れ落ちた。
「氣を込めた一撃、こっちも氣を込めないと骨まで持っていかれてたな」
しずかは苦笑いしながら自らの左腕を見やる。先ほどの攻防で受けたダメージは相当なものだった。だが、痛みに耐えながらも戦いを止めることはない。間合いを切るとしずかは部下から一振りの木刀を受け取る。それに合わせて、姫希をまた部下から木刀を受け取る。
しずかと姫希、二人は同時に駆け出し互いに間合いに入った瞬間に渾身の力を込めて斬撃を放った。その衝撃により、周囲の地面に亀裂が入る。二人は後ろに下がりながら再び構え直す。
今度は二人とも武器を構えて対峙していた。両者共に油断なく相手の出方を伺う中、先に動いたのはしずかの方であった。
地面を蹴り上げ、一気に距離を詰めると神速の一閃を放つ。対する姫希はその攻撃を難なくかわす。そして、カウンターとして強烈な突きをお見舞いするが、それを紙一重で回避したしずかはお返しとばかりに姫希に向けて上段斬りを繰り出す。その攻撃すら見切って避けると、姫希は回し蹴りを繰り出した。
「足癖の悪いお嬢様だ!」
「ふふ、あなたは口が悪いわね」
だが、その蹴撃を予期していたかのように、しずかは身を屈めてその攻撃を受け止める。そして、その体勢のまま木刀を腰だめに構えて、柄頭で姫希の腹部を狙ってきた。姫希はそれを察知すると、片手側転で間合いを切る。白いワンピースがめくれてレモンイエローの下着が見えることもお構いなしだ。
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「当然よ、私の子を孕んでいるのだもの」
この世界には女性しかいない。彼女たちは性行為の最中に氣を用いて相手の子宮に自らの遺伝子を叩き込む。そうやって子を産み増やしてきた。
そして彼女らは極道に生きる少女達。抗争に敗れれば地位も名誉も金もそして尊厳すら奪われる。これは血よりも濃いつながりで結ばれた”侠花”と呼ばれる極道に生きる少女達の愛と戦の物語。
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