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7話 気になることは聞いてみよう

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 夏期講習の半分が終わった。二週間の講習と言っても厳密には三日行けば一日休みだから全十二回の講習だ。そんなわけで明日は休みなのだが、愛夢から追加の宿題をもらっているので、明日はそれをやるつもりだ。

「これ全部、愛夢のお手製なの?」
「いえいえ、ほとんどが星花女子で使っているテキストの問題を少し加工したくらいのものですよ。少し難しい問題は二つに分解して難易度を調整していますけど」

 受け取ったのはA4の紙一枚で作られたプリントの束、五教科それぞれあるから五枚なのだが、パソコンで打たれたものではなく、愛夢の可愛らしくも丁寧な手書きの文字だ。シャーペンで下書きした後にボールペンで清書したのだろう、ところどころボールペンのインクがかすれていたりシャーペンの線が残っていたりする。

「愛夢と一緒に高校生活が送れたら楽しいだろうなぁ」
「が、頑張ってみませんか? きさら、まだ受験まで半年くらいありますし」
「いやいや、流石にそれは無理だよ~。それに、お金だってないし」

 すっかり定番になった喫茶フェブラリーの隅っこテーブルで、愛夢の言葉に首を横に振る私。
 セーラーカラーのワンピースにかごバッグというお嬢様然とした恰好の愛夢はメロンソーダをずずっと吸った後、少しだけ寂し気な表情を浮かべた。なんというか、短期間ですっかり懐いたなぁと思う。こんなにすぐ人と打ち解けられるのに、なんで友達が少ないなんて言うんだろう。友達に求めるハードルが高い、とか?

「愛夢は、私に星花女子に来て欲しいの? わりと、最初からそんなこと言ってるよね」
「あ、えっと……それは、その、わたし……友達が少ないから」
「どうして少ないの? 愛夢のことだから、きっと理由は分かってるんだよね」

 私がそう尋ねると、愛夢はゆっくりとだけど確かにうなずいた。

「わたし、たまに言わなくてもいいことを言ってしまうんです。つい、口が滑ったというか……。それが、すごく嫌味に聞こえてしまって」
「うんうん」
「それに、わたし運動が全然できなくて……どんくさくて、迷惑かけてしまったこともあって……本当はもっとみんなと仲良くしたいって思ってたのに」

 そこまで言葉にして、ふと愛夢の視線が私をぎゅっととらえる。

「今は、きさらがいいんです。たくさんの人と友達になるより、きさらと親友になりたいんです。きさらと、高校生活が送りたい。もし、きさらが心に決めた学校があるなら、わたしがそっちに行きます」

 愛夢の目は本気だった。本気だからこそ、聞き返せなかった。

「星花女子はいい学校です。だから、きさらにも選んで欲しい。選択肢から外すことはしてほしくない。明日は部活があるので、午後の……そうですね、三時半くらいには来られると思います。わたしの数少ない友達も連れてきますから、このプリントはそれまでに終わらせてくださいね」

 愛夢のことを、ふんわりとした女の子とかほわほわした女の子だと思ってたけど、そんなきりっとした表情もするんだ……そんなことを思いながら、愛夢を見送った。
 選択肢から外してほしくない、かぁ。星花女子のこと……全然知らないや、私。
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