無色な私のカラフルな恋

楠富 つかさ

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#4

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―――学園祭に向けて忙しいから合宿よ!―――





 そう聞いていたんですけど……。

「会長? どういうことです?」

 やって来たのは水上先輩の別荘だそうです。移動手段は例の旦那さん兼お兄さんこと、如月きさらぎ春次しゅんじさんの運転するワゴン車。レンタカーだそうです。大きいです。八人乗りというか、三列シートの車に乗るのは初めてです。さっきから驚きと困惑で思考回路が鈍ってます……。ちなみに、助手席に汐波先輩。二列目に波崎先輩、桐生先輩、栗崎先輩の男子組。三列目に志水先輩、御波ちゃん、私が座っている。水上先輩はホストなので、別荘でスタンバイだそうです。
 さて、着いた和風の大きなお屋敷から現れたのは、着物姿の水上先輩でした。

「ようこそ。さぁ取り敢えず上がって下さいな」

 水上先輩、大人っぽいなぁ……。髪もお団子にして、凄いなぁ美人って凄いなぁ……。

「こちらで、おくつろぎになってお待ち下さいな」

 通された客間には高価そうな掛け軸とか壺があって普段ならはしゃぎそうな御波ちゃんも今は緊張で固まっている。
 水上先輩はお茶を持ってきた後、もう少し待ってください、と言ってまた部屋を出た。
 その間に汐波会長に合宿のことを訊いた。

「この合宿はね、生徒会役員の親睦を深める為のもの且つ、学園祭当日の仕事分担を決める為のものよ。毎年恒例なの。去年は……姫葉の家でやったのよ……」

 汐波会長の言葉に志水先輩が口を開いた。

「一年生たちは美詠がお金持ちだと思うかもだけど、資産なら私の家の方がある筈よ。私の祖父は銀行の頭取でね、他にも株で成功してるのよ」

 その言葉に今まで固まっていた御波ちゃんが汐波会長に質問した。

「じゃあ何で今年は水上先輩の家で?」

 その理由……なんか……分かったかも…。答えようとする汐波会長は珍しく苦い顔をした。予感は的中していたようだ。

「それがね……姫葉のお姉さんが……そのぉ姫葉よりガチの人で……。ううん……もう思い出したくもない……」

 うわぁ……。志水先輩のお姉さんって……。それは想定外だった。てっきり志水先輩が暴走したものかと。汐波会長が尋常じゃなく怯えている。ていうか姉妹でその趣味は……あまりお近づきになりたくないなぁ。隣を見ると御波ちゃんが若干怯えた表情をしている。無理もないだろう。
 すると、襖を開けて現れたのは先程とうってかわって制服姿の水上先輩だった。

「あら美詠、着替えたの? 制服姿でも美人ね」

 女子が女子を口説く瞬間を初めて見てしまった。志水先輩……あちこちに手を出すなんて……。
 水上先輩は志水先輩をすっと見ると

「だって今から生徒会の仕事でしょう? 制服で臨まなきゃ」

 そう言った。水上先輩は型にはまるタイプの人なのだろうか?
 その後は波崎先輩を中心に当日の役割分担を決めた。午前と午後の区分に三人ずつ充てる。私の担当は午前。メンバーは私と波崎先輩と御波ちゃん。栗崎先輩と桐生先輩と志水先輩が午後の班になった。水上先輩は茶道部で忙しいらしく、会長の当日は実行委員長としての仕事が少なくないので外すらしい。今だって旦那さんの膝枕でスヤスヤ寝息を立てている。その姿はとても十七歳には見えない。………寝息で上下する胸元を除けばの話だが。
 凄いなぁ……。今日の私は沢山の凄いなにかを見ているんだな……。ここで感じるものではないか。でも、中学の時より価値観は変わったし、視野は広くなった気がする。生徒会に入って、汐波会長に誘ってもらって、本当によかった。
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