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オフの日０２ ラーメン ４月１９日火曜日

「てなわけで、このメンマが昨日もらってきたやつね」
「はぁ、急にメンマもらってきたって言うから何事かと思ったら、竹ってすごいのねぇ」

　働きはじめてかれこれ三週間、最初のうちはなにがなんだかって感じだったけれど、みんな優しいしほとんど残業もないし、けっこう居心地よく仕事をさせてもらっている。まだ分からないこともたくさんあるけど、急かされてないっていうのは本当にありがたい。

「そういえばあんた、先週はどっこも出かけなかったみたいだけど、そんなんでいいの？」

　火曜日の夕食、母とラーメンをすすりながらそんな会話をする。父は学生時代の友人と飲みに行っている。
　昨日の畳の下から生える竹には驚かされたなぁ。そしてさらに驚かされるのは、お客さんからもらったメンマの美味しいことよ。メンマの美味しいラーメン屋さんはなかなか出会えないから、家庭でこの味が楽しめるのは本当にありがたい。
　ラーメンを食べ終えて一息ついていると、母から不意打ちの提案をされた。

「明日、どっか出かけたら？」
「別に……なんの用事もないし」

　平日の休みはどこそこ空いているし、役所とか銀行の用事もさらっと終わらせられるからいいんだけど、友達との予定がなかなか合わない。
　正直な話、平日休みで遊べる友達といったらそこれそ三咲ちゃんか、藍ちゃんくらいだ。三咲ちゃんと休みにも会いたい気持ちはあるが、つい仕事の話をしてしまいそうで……なんか、どうなんだろうって思ってしまう。

「火曜水曜ってラーメン屋さんもお休みなことが多いからなぁ」

　大学時代の趣味にラーメン屋の食べ歩きがあったから、少し寂しい。飲食店は火が出来ないようになんて理由で火曜日を休みにすることが多いらしい。なお不動産屋さんは契約が水に流れないように水曜日を休みにしがちらしい。本当にそうなのかは知らないけれど。

「まぁ、まだお給料も入ってないし遊びにいく軍資金がないか」
「それを言っちゃあおしまいよってね」

　五月十五日が初任給だからまだあと一か月もある。手持ちはちょっと寂しいのである。

「まぁ、出かける出かけないは好きにすればいいけど、仕事以外に楽しめることがないとしんどいわよ？」

　母の言葉には謎の重みがあった。たしかに、二十年以上母の娘をしているが、母の趣味ってなにと尋ねられたら堪えられない。……一時は韓国ドラマをよく見ていた気もするし、大河ドラマにはまっていた時期もある気がする。流行りには敏感だけど、昔からこれっていうものは……あったかな？

「ま、初任給が入るまでは欲しいものがあったら相談するんだよ」
「うん。ありがと。じゃあ、お取り寄せのラーメンとか見ていい？」
「……ほんと、あんたはラーメン好きねぇ」