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#14 再編
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私が職務復帰してからはや数日、部隊の再編が完了したということで新生藤城小隊の総会が催された。といっても、学内のブリーフィングルームを一室借りて、ジュースを飲みながらの自己紹介会みたいなものだけれど。
まぁ、実際に命を預ける仲間たちなのだから相互理解ってとても大事なのだけれど。チームの仲が破綻した結果、壊滅するなんてことは時折どうしても生じてしまうようだし。
「いやぁ、三十二人の隊で隊長をするってすごくプレッシャーなんだけど、頑張るね。中等部二年、藤城結歌! 準佐になりました!」
小隊のおおよその人数が十から三十人なので、もはや中隊に近い大所帯だ。春になって学年が一つ上がる頃には正式に中隊になっていることだろう。そもそも隊長が準佐ともなれば、大隊を率いても差し支えないのだけれど。
「副官を務めます、同じく中等部二年の露辺舞美大尉です。班行動の時は班長をすることが多いと思うので、よろしくお願いします」
班長として対応できるのは結歌ちゃんと私、そして宮下中尉と今回の再編で加わった旧・佐々木小隊の佐々木詩織中尉だ。以前、共闘したこともあるので一学年上だが比較的接しやすい人だ。メイガスでもあるから、接近戦主体なうちの隊で、後衛の指揮を執れる貴重な人材だ。
そんな班長級二人を含む隊員全員の自己紹介も済んだところで……。
「あの……なんでいるんですか?」
濃緑の女性に尋ねる。彼女は三十二人全員の自己紹介を熱心にメモを取りながら聞いていた。まるでしばらくこの隊で任務にあたるかのように……。
「トゲのある言い草ね、露辺大尉。これでも上官よ? とまぁ、軽口はさておき――第四魔導学園所属、高等部二年の幸村ゆかり少佐よ。剣の腕には自信があるけど、隊長としての自信は砕けちゃったのよね。しばらく客分としてこの隊でお世話になることになったわ。作戦行動中、よっぽどのことが無い限りは指示に従うから、せいぜい上手に使ってほしいものね」
「というわけで、みんなもよろしくね。……よっぽどのことがこの前あったからねぇ。大型乙種との会敵なんてそうそうないだろうけど、丙種であれば、あるいは指定のない大型種は討伐に参加する可能性があるので、日々の努力をよろしくね」
ここまで話して結歌ちゃんが私に目配せする。ここからの説明は私の担当だ。
「さて、再編間もない我々だけれど、遠征に行きます。来週から十二月なんだけど、帰還する隊と入れ替わりで岐阜の羽島へ行きます。先に言うけれど、寒いです。耐寒装備とりわけ靴のチェックは念入りに。ここで約一か月、合宿のように連携の訓練を重ね、年明け……第四学園と共同で関ケ原に巣食う魔獣の大規模掃討戦を敢行します」
魔獣が多発しやすいスポットが日本全国にあり、東海だと関ケ原や御殿場がそれだ。ここ数か月は岐阜の魔獣が多く、今の遠征班がかなり疲弊してきたということで入れ替わりで藤城隊が遠征することになった。
大規模掃討戦には第三学園からもう一つ―おそらく今の藤城隊と同規模の―小隊が加わり、東西から中隊が一隊ずつ攻め入る形になる。おそらく、二校合同大隊の総指揮を幸村少佐が執るのだろう。今回、やたらメモを取るのも自分が指揮をする際の資料作りとしての側面もあると、私はそう見ている。
「他に質問はないですか?」
軽い質疑応答を挟みつつ、結歌ちゃんに進行を返す。
「じゃあ、解散!!」
解散が宣言され、隊員たちが寮へと帰る。突発的な出撃がなければ、この後はもうフリーだ。
寮の部屋へと戻る道中、結歌ちゃんが私の手をそっと握る。これは……期待してもいいってこと、だよね。
まぁ、実際に命を預ける仲間たちなのだから相互理解ってとても大事なのだけれど。チームの仲が破綻した結果、壊滅するなんてことは時折どうしても生じてしまうようだし。
「いやぁ、三十二人の隊で隊長をするってすごくプレッシャーなんだけど、頑張るね。中等部二年、藤城結歌! 準佐になりました!」
小隊のおおよその人数が十から三十人なので、もはや中隊に近い大所帯だ。春になって学年が一つ上がる頃には正式に中隊になっていることだろう。そもそも隊長が準佐ともなれば、大隊を率いても差し支えないのだけれど。
「副官を務めます、同じく中等部二年の露辺舞美大尉です。班行動の時は班長をすることが多いと思うので、よろしくお願いします」
班長として対応できるのは結歌ちゃんと私、そして宮下中尉と今回の再編で加わった旧・佐々木小隊の佐々木詩織中尉だ。以前、共闘したこともあるので一学年上だが比較的接しやすい人だ。メイガスでもあるから、接近戦主体なうちの隊で、後衛の指揮を執れる貴重な人材だ。
そんな班長級二人を含む隊員全員の自己紹介も済んだところで……。
「あの……なんでいるんですか?」
濃緑の女性に尋ねる。彼女は三十二人全員の自己紹介を熱心にメモを取りながら聞いていた。まるでしばらくこの隊で任務にあたるかのように……。
「トゲのある言い草ね、露辺大尉。これでも上官よ? とまぁ、軽口はさておき――第四魔導学園所属、高等部二年の幸村ゆかり少佐よ。剣の腕には自信があるけど、隊長としての自信は砕けちゃったのよね。しばらく客分としてこの隊でお世話になることになったわ。作戦行動中、よっぽどのことが無い限りは指示に従うから、せいぜい上手に使ってほしいものね」
「というわけで、みんなもよろしくね。……よっぽどのことがこの前あったからねぇ。大型乙種との会敵なんてそうそうないだろうけど、丙種であれば、あるいは指定のない大型種は討伐に参加する可能性があるので、日々の努力をよろしくね」
ここまで話して結歌ちゃんが私に目配せする。ここからの説明は私の担当だ。
「さて、再編間もない我々だけれど、遠征に行きます。来週から十二月なんだけど、帰還する隊と入れ替わりで岐阜の羽島へ行きます。先に言うけれど、寒いです。耐寒装備とりわけ靴のチェックは念入りに。ここで約一か月、合宿のように連携の訓練を重ね、年明け……第四学園と共同で関ケ原に巣食う魔獣の大規模掃討戦を敢行します」
魔獣が多発しやすいスポットが日本全国にあり、東海だと関ケ原や御殿場がそれだ。ここ数か月は岐阜の魔獣が多く、今の遠征班がかなり疲弊してきたということで入れ替わりで藤城隊が遠征することになった。
大規模掃討戦には第三学園からもう一つ―おそらく今の藤城隊と同規模の―小隊が加わり、東西から中隊が一隊ずつ攻め入る形になる。おそらく、二校合同大隊の総指揮を幸村少佐が執るのだろう。今回、やたらメモを取るのも自分が指揮をする際の資料作りとしての側面もあると、私はそう見ている。
「他に質問はないですか?」
軽い質疑応答を挟みつつ、結歌ちゃんに進行を返す。
「じゃあ、解散!!」
解散が宣言され、隊員たちが寮へと帰る。突発的な出撃がなければ、この後はもうフリーだ。
寮の部屋へと戻る道中、結歌ちゃんが私の手をそっと握る。これは……期待してもいいってこと、だよね。
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