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第19話 かおりの想い
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「かおりちゃん……だよね」
玄関を開けると、ぶかっとしたチュニックにスカート姿のかおりがどこか心配そうな表情で立っていた。
「くれはちゃん、女の子の日だから部屋にいるって。わたしだけお泊まり、いいのかな?」
「あ、えっと。大丈夫、ほら、上がって」
かおりを部屋に通すと、ローテーブルに置きっぱなしだった紅葉が飲んでいた抹茶ラテの入ったマグカップが目についた。あまり手をつけられていないそれに、一抹の寂しさを感じながらカップを下げる。それから、かおりのためにココアを淹れる。「かおりちゃんもココアでいいよね? 冷たいの」
「うん! ありがとなの」
二つのマグカップを対面するように置いたら、
「かなみちゃんの隣に座る」
そう言ってかおりは、叶美に寄り添うように座った。
「かなみちゃんは、わたしのこと好き?」
「ふぇ? えっと、うん。好きだよ」
その好きはライクの方だと思い込みながら、叶美は返事をする。自分の気持ちを覆い隠しながら。
「かなみちゃん、こっち向いて」
言われるがまま、叶美はかおりと視線を合わせる。刹那、柔らかな感触が叶美に触れた。叶美の視界の全てがかおりに覆われる。少し色素の薄い瞳や整ったまつげに叶美は見とれてしまった。
「えへへ、キスしちゃった。かなみちゃん、大好き」
「あぅ、え、え!?」
「もし大好きな人を見付けたら、こうしてあげなってママが言ってたの。イヤ……だった?」
普段のあどけない笑みの奥に憂いを帯びたその表情は年相応のそれだった。十四歳の少女、その華奢な体躯を叶美は強く抱き寄せた。
「かなみ、ちゃん……泣いてる? ほんとにイヤだったの?」
「違う……違うよ」
自分が涙を流していることすら自覚せず、叶美は思いの丈を打ち明ける。
「わたし、紅葉ちゃんもかおりちゃんも好きなのに……二人から好きだって言われて…… どうしたらいいか分からなくて……。ごめんね、ごめんね……。今まで恋なんてしたことなかったから、いきなり二人の女の子に恋しちゃうなんて……わけわかんないよ。キスだって、紅葉ちゃんの時は挨拶みたいな感じだったのに、かおりちゃん凄く真剣な表情で……」
「大丈夫だよ。かなみちゃんは自分の気持ちに素直になって大丈夫だよ」
「ふぇ?」
大粒の涙を零す叶美に、かおり優しい声音で言葉を紡ぐ。
「くれはちゃんも分かってくれるよ。だって、かなみちゃんのこと大好きなんだもん」
その言葉は、救い。叶美は迷いもがいた自分の感情を、肯定してもらえたように思えた。
「いこ、くれはちゃんのところに。かなみちゃんの気持ち、伝えてあげなきゃ」
「うん……うん!」
差し伸べられた手を取って立ち上がった叶美に、涙はもうなかった。凜然とした面持ちに勇気を湛え、かおりの手をぎゅっと握った。
「ありがと、かおりちゃん。行こう!」
玄関を開けると、ぶかっとしたチュニックにスカート姿のかおりがどこか心配そうな表情で立っていた。
「くれはちゃん、女の子の日だから部屋にいるって。わたしだけお泊まり、いいのかな?」
「あ、えっと。大丈夫、ほら、上がって」
かおりを部屋に通すと、ローテーブルに置きっぱなしだった紅葉が飲んでいた抹茶ラテの入ったマグカップが目についた。あまり手をつけられていないそれに、一抹の寂しさを感じながらカップを下げる。それから、かおりのためにココアを淹れる。「かおりちゃんもココアでいいよね? 冷たいの」
「うん! ありがとなの」
二つのマグカップを対面するように置いたら、
「かなみちゃんの隣に座る」
そう言ってかおりは、叶美に寄り添うように座った。
「かなみちゃんは、わたしのこと好き?」
「ふぇ? えっと、うん。好きだよ」
その好きはライクの方だと思い込みながら、叶美は返事をする。自分の気持ちを覆い隠しながら。
「かなみちゃん、こっち向いて」
言われるがまま、叶美はかおりと視線を合わせる。刹那、柔らかな感触が叶美に触れた。叶美の視界の全てがかおりに覆われる。少し色素の薄い瞳や整ったまつげに叶美は見とれてしまった。
「えへへ、キスしちゃった。かなみちゃん、大好き」
「あぅ、え、え!?」
「もし大好きな人を見付けたら、こうしてあげなってママが言ってたの。イヤ……だった?」
普段のあどけない笑みの奥に憂いを帯びたその表情は年相応のそれだった。十四歳の少女、その華奢な体躯を叶美は強く抱き寄せた。
「かなみ、ちゃん……泣いてる? ほんとにイヤだったの?」
「違う……違うよ」
自分が涙を流していることすら自覚せず、叶美は思いの丈を打ち明ける。
「わたし、紅葉ちゃんもかおりちゃんも好きなのに……二人から好きだって言われて…… どうしたらいいか分からなくて……。ごめんね、ごめんね……。今まで恋なんてしたことなかったから、いきなり二人の女の子に恋しちゃうなんて……わけわかんないよ。キスだって、紅葉ちゃんの時は挨拶みたいな感じだったのに、かおりちゃん凄く真剣な表情で……」
「大丈夫だよ。かなみちゃんは自分の気持ちに素直になって大丈夫だよ」
「ふぇ?」
大粒の涙を零す叶美に、かおり優しい声音で言葉を紡ぐ。
「くれはちゃんも分かってくれるよ。だって、かなみちゃんのこと大好きなんだもん」
その言葉は、救い。叶美は迷いもがいた自分の感情を、肯定してもらえたように思えた。
「いこ、くれはちゃんのところに。かなみちゃんの気持ち、伝えてあげなきゃ」
「うん……うん!」
差し伸べられた手を取って立ち上がった叶美に、涙はもうなかった。凜然とした面持ちに勇気を湛え、かおりの手をぎゅっと握った。
「ありがと、かおりちゃん。行こう!」
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