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6話
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「情けない話ですが、私は生嶋先輩の私服を見たことがありません」
店の入り口を通って、衣料品を取り扱っているフロアへ移動する。まぁ、エスカレーターで二階へ行くだけなのだが。
「情けないって、別にそんなこと言わなくても……」
「いえいえ、先輩に何をオススメするべきか分からないのは大問題です。藤堂先輩は生嶋先輩の私服、見たことあります?」
「え? 僕は中学から生嶋さんと同じ学校だからなぁ。私服は見たことないや」
……まぁ、小学生の時のコーデを見ていても何の役にも立たないでしょうけどね。そこを気にしたら負けかな。
「じゃ、簡単に見て回りましょうか」
藤堂先輩の服を見るつもりだったけど、意外や意外の合格点なので、デートルートを考えることにしよう。
「初デートだからといって、あまりにもせっついちゃいけませんよ?」
「え……僕、そういうタイプに見える?」
……見えないけど、そういう問題じゃないんだよなぁ。
「そういえば、今回は私から誘っちゃいましたけど、生嶋先輩をどうやってデートに誘うつもりですか?」
うっかり忘れていた重要なポイントを藤堂先輩に尋ねる。ちゃんと考えてあるのかな? ……って、思っていたけど、
「……え、あ……そのぉ」
この表情を見る限りアウトだ。どうすればいいのやら。
「考えてませんでしたね?」
「……うん」
素直でよろしい。
「私が誘ってドタキャン。そこに颯爽と先輩が、っていうのもいいですけど、先輩相手にドタキャンは気が引けます」
「そこまでしてもらったら、僕の立つ瀬がないよ。何とか考えてみるよ。シンプルに映画を見に行こう、でもいいし」
「そうですね。あまり深く考えても意味ないですし」
「じゃあ、映画見に行く?」
「いいですね! 私、見たい映画があるんです!」
「意外な趣味で驚いたよ……」
スタパ三階にある映画館で映画を見終えて、出てきた私と藤堂先輩。先輩は何だか疲れた表情をしているけれど、私はかなり満喫させていただいた。
「時間も時間ですし、お昼にしましょうか」
「……アレを見た後にすぐ食事なの? そ、そっか……」
「どうかしました?」
あんまり恐い映画ではなかったと思うけど、やっぱり先輩は先輩か。
「えっと、どこにする?」
来週は生嶋先輩とのデート本番。今日はあまり出費させてはいけない。
「とりあえず、ファストフードで大丈夫でしょう」
「じゃあ、あっちかな」
ということで、ハンバーガーショップのワックドナルドで昼食。奢るよと言った藤堂先輩を説き伏せ、自分の分が自分で払った。
「先輩、生嶋先輩への告白方法というか……何て言うか決めました?」
「んむ、ぐ……え!? あ……考えてない……」
驚いた表情をした先輩を見て、この人には計画性がないと再認識してしまった。
「あの、来週なんですよ? 来週。なのに、何で全く考えていないんですか?」
「えっとさ……鈴原さん」
「なんでしょう!?」
若干、語気が強くなるのも仕方ない。まさかここまでのヘタレとは。
「告白って初デートでしちゃっていいの?」
……この人はどこまでも朴念仁だなぁ。しょうがない。……でもさ。
「生嶋先輩の人気を考えれば、早い者勝ちですよ。善は急げ、です」
「そっか……。そうだね」
……よし、先輩も大概チョロイからね。言いくるめるのは楽勝。
それからもう少しだけお店を回って時刻は午後の3時半。二人でアイスを食べてから帰ることになった。……帰らなきゃ、だよね。
「先輩に教えられることは全部伝えました。……頑張ってくださいね、悠斗先輩」
私にできる最大限のイジワル。このイジワルは私にとっても、彼にとっても、生嶋先輩にとっても、意地の悪い行動だと思う。この温もりを、少しでも……。だからきっと……もう会わない方がいい。ここから先のやり取りは全部メールにしよう。そう決めてから、そっと彼の背中に回した腕を下ろす。暖かな感触が離れ、秋風が頬を撫ぜる。
「では、さよならです。悠斗先輩」
「鈴原、さん……」
あぁ、このタイミングで名前呼びしないなんて……先輩は本当にダメな人です。なのに、どうしてこんなに惹かれるのかな? 私、分からないや。振り返ることも出来ないまま、私は悠斗先輩から離れていった。あーあ、恋に恋するだけで良かったのに……。
店の入り口を通って、衣料品を取り扱っているフロアへ移動する。まぁ、エスカレーターで二階へ行くだけなのだが。
「情けないって、別にそんなこと言わなくても……」
「いえいえ、先輩に何をオススメするべきか分からないのは大問題です。藤堂先輩は生嶋先輩の私服、見たことあります?」
「え? 僕は中学から生嶋さんと同じ学校だからなぁ。私服は見たことないや」
……まぁ、小学生の時のコーデを見ていても何の役にも立たないでしょうけどね。そこを気にしたら負けかな。
「じゃ、簡単に見て回りましょうか」
藤堂先輩の服を見るつもりだったけど、意外や意外の合格点なので、デートルートを考えることにしよう。
「初デートだからといって、あまりにもせっついちゃいけませんよ?」
「え……僕、そういうタイプに見える?」
……見えないけど、そういう問題じゃないんだよなぁ。
「そういえば、今回は私から誘っちゃいましたけど、生嶋先輩をどうやってデートに誘うつもりですか?」
うっかり忘れていた重要なポイントを藤堂先輩に尋ねる。ちゃんと考えてあるのかな? ……って、思っていたけど、
「……え、あ……そのぉ」
この表情を見る限りアウトだ。どうすればいいのやら。
「考えてませんでしたね?」
「……うん」
素直でよろしい。
「私が誘ってドタキャン。そこに颯爽と先輩が、っていうのもいいですけど、先輩相手にドタキャンは気が引けます」
「そこまでしてもらったら、僕の立つ瀬がないよ。何とか考えてみるよ。シンプルに映画を見に行こう、でもいいし」
「そうですね。あまり深く考えても意味ないですし」
「じゃあ、映画見に行く?」
「いいですね! 私、見たい映画があるんです!」
「意外な趣味で驚いたよ……」
スタパ三階にある映画館で映画を見終えて、出てきた私と藤堂先輩。先輩は何だか疲れた表情をしているけれど、私はかなり満喫させていただいた。
「時間も時間ですし、お昼にしましょうか」
「……アレを見た後にすぐ食事なの? そ、そっか……」
「どうかしました?」
あんまり恐い映画ではなかったと思うけど、やっぱり先輩は先輩か。
「えっと、どこにする?」
来週は生嶋先輩とのデート本番。今日はあまり出費させてはいけない。
「とりあえず、ファストフードで大丈夫でしょう」
「じゃあ、あっちかな」
ということで、ハンバーガーショップのワックドナルドで昼食。奢るよと言った藤堂先輩を説き伏せ、自分の分が自分で払った。
「先輩、生嶋先輩への告白方法というか……何て言うか決めました?」
「んむ、ぐ……え!? あ……考えてない……」
驚いた表情をした先輩を見て、この人には計画性がないと再認識してしまった。
「あの、来週なんですよ? 来週。なのに、何で全く考えていないんですか?」
「えっとさ……鈴原さん」
「なんでしょう!?」
若干、語気が強くなるのも仕方ない。まさかここまでのヘタレとは。
「告白って初デートでしちゃっていいの?」
……この人はどこまでも朴念仁だなぁ。しょうがない。……でもさ。
「生嶋先輩の人気を考えれば、早い者勝ちですよ。善は急げ、です」
「そっか……。そうだね」
……よし、先輩も大概チョロイからね。言いくるめるのは楽勝。
それからもう少しだけお店を回って時刻は午後の3時半。二人でアイスを食べてから帰ることになった。……帰らなきゃ、だよね。
「先輩に教えられることは全部伝えました。……頑張ってくださいね、悠斗先輩」
私にできる最大限のイジワル。このイジワルは私にとっても、彼にとっても、生嶋先輩にとっても、意地の悪い行動だと思う。この温もりを、少しでも……。だからきっと……もう会わない方がいい。ここから先のやり取りは全部メールにしよう。そう決めてから、そっと彼の背中に回した腕を下ろす。暖かな感触が離れ、秋風が頬を撫ぜる。
「では、さよならです。悠斗先輩」
「鈴原、さん……」
あぁ、このタイミングで名前呼びしないなんて……先輩は本当にダメな人です。なのに、どうしてこんなに惹かれるのかな? 私、分からないや。振り返ることも出来ないまま、私は悠斗先輩から離れていった。あーあ、恋に恋するだけで良かったのに……。
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