6 / 10
春は出会いの季節
06 お弁当タイム
しおりを挟む
それから暫くすると、担任の先生が入ってきた。第一印象は若い。
「この一年二組の担任を務めます、宮瀬奈々子です。ここの卒業生で、教師としては皆さんと同じ一年生です。宜しくお願いします!」
今年で二十三歳ということだろうか。ただ、正直言って同い年くらいにしか見えない。だからかだろうか、
「副担任の藤島です。皆さんの現代文の授業も担当します。宜しくお願いします」
副担任の藤島先生は五十歳前後くらいに見えるベテランっぽい先生だ。ちょっと厳しそうな先生だ。さて、先生の紹介も終わり身体検査となった。
当然男女ごとに、更衣室で着替える。律に連れられるように女子更衣室へ向かうのだが。
「うわぁ……僕は……」
「純は私だけを見ていればいいよ」
……それもアウトでしょうに。微妙に気後れしながらも入った更衣室の窓には厚手のカーテンがされていた。入り口の戸のガラスもすりガラスになっていて、外から決して透けて見えないように気配りされている。また、カギもかけることができる。
部屋はけっこう広く、普通の教室一つ分くらいある。体育は二クラスの女子が合同で行うらしいから、広くしているのだろうか。
棚がずらっと並んでいるが、その棚の方を向いて着替えを始める。取り敢えずスカートの下から短パンを穿き、スカートを下ろす。一息吐いてからブレザーを脱ぎ、ネクタイをしゅるっと外す。ブラウスのボタンを幾つか外すと、
「純、やっぱり大きいね」
律が私の胸を覗きながら耳元でささやく。なんでそういうこと、ここで言うかな……。なるべく無視して体操服を着る。
……肩こりが若干つらい。
体操服に着替えたら学校のアチコチを回って検診を受ける。分かったことは正確な身長と視力が落ちたことくらいかな。席によっては眼鏡が必要になるらしい。女の子になってから視力が落ちたような気はしてたし。
残りの午前は検診に全て費やされた。そうしてお昼休みの時間になったのだが――。
「おいーっす」
わざわざ五組から圭がやってきた。というわけで、お昼は僕と律に加えて圭と――
「お前、田巻圭だろ? 中学ん時の県大会で当たったの覚えてないか? 準決でさ」
「お……あ! お前サーブの鬼だろ!」
どうやら津田君は中学時代テニス部だったらしく、あれよあれよと圭と意気投合する。
というわけで、この四人でお昼を食べることになったのだが……。
「じゃあ圭と夏目さんは付き合ってるわけじゃないのか」
「まぁ、コイツちょっと前まで男――」
「ちょっと圭!!」
危うくとんでもないことを言われてしまいそうになったから圭をさえぎる。
「ふふ、小さい頃の純ちゃん、けっこう男子みたいでさ。圭はそのころの感覚が抜けないんだよね、ガキだからさ」
「ちょ……おま」
律のフォローもあって津田君に僕がちょっと前まで男子だったことは露見せずに済んだ。けれども津田君は首を傾げながら、
「だから自分のことを僕って言うのかって気持ちと……いや、これ以上はセクハラだから言わないけどよ……」
明かに今、視線が胸元にいっていた。……やっぱり大きいみたいだ。さっきの女子更衣室でも思った。背が低いのに胸ばっかり大きくて、ちょっと前まで動画で見ていたそういう女優みたいだって。まぁ……自分のだと思うとあまり興奮とかもないのだけれど。
すこしだけ空気が悪くなったこともあり、津田君は率先して話題を変えた。
「そういや、田巻の双子が同じ弁当食ってるのは分かるけど、夏目も同じ弁当だな」
「そりゃ、純が作ってるからな」
「……おぉ! すげぇな夏目! 三人分の弁当作ってるのか。尊敬するぞ」
すこし過剰なくらい津田君が場を盛り上げてくれたおかげで、学校初日のお昼は楽しく過ごすことができたのだった。
「この一年二組の担任を務めます、宮瀬奈々子です。ここの卒業生で、教師としては皆さんと同じ一年生です。宜しくお願いします!」
今年で二十三歳ということだろうか。ただ、正直言って同い年くらいにしか見えない。だからかだろうか、
「副担任の藤島です。皆さんの現代文の授業も担当します。宜しくお願いします」
副担任の藤島先生は五十歳前後くらいに見えるベテランっぽい先生だ。ちょっと厳しそうな先生だ。さて、先生の紹介も終わり身体検査となった。
当然男女ごとに、更衣室で着替える。律に連れられるように女子更衣室へ向かうのだが。
「うわぁ……僕は……」
「純は私だけを見ていればいいよ」
……それもアウトでしょうに。微妙に気後れしながらも入った更衣室の窓には厚手のカーテンがされていた。入り口の戸のガラスもすりガラスになっていて、外から決して透けて見えないように気配りされている。また、カギもかけることができる。
部屋はけっこう広く、普通の教室一つ分くらいある。体育は二クラスの女子が合同で行うらしいから、広くしているのだろうか。
棚がずらっと並んでいるが、その棚の方を向いて着替えを始める。取り敢えずスカートの下から短パンを穿き、スカートを下ろす。一息吐いてからブレザーを脱ぎ、ネクタイをしゅるっと外す。ブラウスのボタンを幾つか外すと、
「純、やっぱり大きいね」
律が私の胸を覗きながら耳元でささやく。なんでそういうこと、ここで言うかな……。なるべく無視して体操服を着る。
……肩こりが若干つらい。
体操服に着替えたら学校のアチコチを回って検診を受ける。分かったことは正確な身長と視力が落ちたことくらいかな。席によっては眼鏡が必要になるらしい。女の子になってから視力が落ちたような気はしてたし。
残りの午前は検診に全て費やされた。そうしてお昼休みの時間になったのだが――。
「おいーっす」
わざわざ五組から圭がやってきた。というわけで、お昼は僕と律に加えて圭と――
「お前、田巻圭だろ? 中学ん時の県大会で当たったの覚えてないか? 準決でさ」
「お……あ! お前サーブの鬼だろ!」
どうやら津田君は中学時代テニス部だったらしく、あれよあれよと圭と意気投合する。
というわけで、この四人でお昼を食べることになったのだが……。
「じゃあ圭と夏目さんは付き合ってるわけじゃないのか」
「まぁ、コイツちょっと前まで男――」
「ちょっと圭!!」
危うくとんでもないことを言われてしまいそうになったから圭をさえぎる。
「ふふ、小さい頃の純ちゃん、けっこう男子みたいでさ。圭はそのころの感覚が抜けないんだよね、ガキだからさ」
「ちょ……おま」
律のフォローもあって津田君に僕がちょっと前まで男子だったことは露見せずに済んだ。けれども津田君は首を傾げながら、
「だから自分のことを僕って言うのかって気持ちと……いや、これ以上はセクハラだから言わないけどよ……」
明かに今、視線が胸元にいっていた。……やっぱり大きいみたいだ。さっきの女子更衣室でも思った。背が低いのに胸ばっかり大きくて、ちょっと前まで動画で見ていたそういう女優みたいだって。まぁ……自分のだと思うとあまり興奮とかもないのだけれど。
すこしだけ空気が悪くなったこともあり、津田君は率先して話題を変えた。
「そういや、田巻の双子が同じ弁当食ってるのは分かるけど、夏目も同じ弁当だな」
「そりゃ、純が作ってるからな」
「……おぉ! すげぇな夏目! 三人分の弁当作ってるのか。尊敬するぞ」
すこし過剰なくらい津田君が場を盛り上げてくれたおかげで、学校初日のお昼は楽しく過ごすことができたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる