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プロローグ

02 状況を整えよう

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 なにはともあれ、女の子になってしまった僕を両親はどう思うのだろうか。

「そうだ……これ、使って」

 そう言って多希に渡されたのは鈴だった。ミサンガみたいに身に着けられるような感じになっている。

「これを鳴らしながらしゃべると、それに対して疑問を抱かれなくなる錬金具だよ。魔力を持っている人には効かないけど、こっちなら大概の人に行くと思う」
「……これ、どんな素材からできてるんだ?」
「普通の鈴に必要な金属と、魔力を持つ石、それから匂いの強い植物。今回はお土産の鈴に、宝石採取で集めた宝石とパクチーを使った。取り敢えずお母さんに試してみて」

 言われるがまま鈴を手首に巻くと、ちょうど母が多希の部屋の扉を開けた。

「ちょっと多希、朝から友達でも来てるの?」
「なに言ってるの、純だよ。娘の声、忘れちゃった?」

 鈴を鳴らしながらそう言うと、母は顎に指を当てながら、そうだったねと口にした。……なんだろう、この罪悪感は。

「そうだお母さん、お姉ちゃんが新しい下着とかちょっと大人っぽい服とか欲しいって言ってたよ」
「ちょ、多希……?」

 多希の発言の意図を汲み取れずにいると、

「それもそうよね。純ももうじき高校生だし、通販サイトのカートに適当に入れておいて。後で値段見ながら買っておくから」

 そう言い残して部屋を出て行ってしまった。

「お姉ちゃんの服、私も選ぶの手伝うね」

 ……そういうことか、女ものの服がないから通販で買いそろえようということか。多希、もう僕を元に戻すっていう考えを捨てていそうだな。それは困るけど……確かに女ものの服が全くないのも困る。

「お父さんが帰ってきたら、同じように鈴を鳴らしてあげて」
「……困るなぁ、高校どうしよう」

 二週間もすれば高校生だ。制服だって男もので用意してしまっている。

「服は私が錬金するよ。見た目はネットでちゃんと調べておくからさ。下着はちょっと難しいだろうけど、普段着だったら今ある服を全部布に錬成して再構築しちゃおうか」

 多希が使う錬金術は鍋に入れてある錬金液に素材を入れて、その素材を要素に分解して再構築するらしい。例えば服を入れれば布とか繊維とか可燃物とか、そういう要素に分解して新たに構築しなおすらしい。もう着れないであろう男ものの服をただ捨てるだけにならないのはいいし、制服も用意できるなら高校も行けるけど……。

「高校かぁ、知り合いはそう多くないからいいけど……あぁ、もう……二人になんて言おうかな」

 高校は家から電車で一時間近くかかる距離にある私立高校へ行くことになっている。隣の市ということもあって、通っていた中学から進学するのは僕を含めて十人ちょっとくらい。
 幼馴染の二人以外はほぼ喋ったこともないし、同姓同名の別人とかでスルーしてくれるかもしれないが、幼馴染には黙っておくわけにはいかない。

「しょうがないよ、あの二人にも鈴を使って納得してもらおうよ」
「……お前がしょうがないなんて言わないでくれよ……」
「ごめんなさい。一応、戻すための錬金薬も作ってみるから。解毒とか解呪でなんとかなるか、試してみようね」

 それなりに反省はしているようだから……あんまり強く言えないんだよね。多希のブラコンも大概だけど、僕のシスコンも大概なのかな……。
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