君の瞳のその奥に

楠富 つかさ

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第4話 金髪女神との邂逅

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「さてさて、原稿書かないと」

インタビューの内容をまとめて記事にするのが新聞部のお仕事。原稿を書くためのパソコンは旧校舎にある新聞部の部室に設置されている。寮から行くととても遠いのだが、まぁ致し方ない。歩きながら文章をまとめてみようと考えていると……。

「おや、あの金髪……」

自然な金色にあの素晴らしいスタイル、そして制服にトートバッグを肩にかけているだけで絵になる存在感……高等部一年のエヴァンジェリン・ノースフィールドちゃんじゃないか。私も二ヶ月くらい前に取材をさせてもらった時に

「Yeah Elena, it's been a long time ago!  I missed you. Here, let's hug you?」

百合談義の結果かなり意気投合してこうして会う度に情熱的なハグをする仲なのだ。キスをせがまれることも多々あるけれど流石に遠慮している。あと、洋風な名前のせいか英語で声をかけられることがある。

「英語で声かけられても全部は理解出来ないって言ったでしょ? ハグは分かったけど」

流石にネイティブのナチュラルなクイーンズイングリッシュを英検すら取ったことない一般的な高校生が理解するのは難しいって。一応はちゃんと勉強してるし酷く不得意でもないけれど。

「そうでしたわ。エレナ相手だとついつい」
「あと、私こう見えて先輩なんだよねぇ」

私はエヴァちゃんより身長もおっぱいも小さいけれどさ。学年は一個上なわけだし、少しくらい敬って欲しいわけよ。

「それもそうでしたわね。日本人は先輩に対して礼儀正しくしなければって恋葉も言ってましたわ」

このはちゃん……ああ、ルームメイトの娘か。ちょくちょくエヴァちゃんの話題に上がるのだが、私は会ったことない。部活には所属してないらしく特に目立つ部分もないため知らない部分が多い。そういえば、エヴァちゃんに聞きたいことがあったんだった。

「漫研で作ったアンソロが生徒会の検閲で不可くらったって本当?」

臨海及び林間学校のごたごたでちょっと裏を取るのが遅れているネタなのだが、生徒会が漫研の作品を星花祭で頒布するなと命じたらしい。その辺をせっかくだし当人から聞いてみよう。

「oh その件ですか。はい、事実ですわ。渾身の出来だったのですが……」
「そっかあ。残念だったね。エヴァちゃんの描く絵は私も好きだから。……まぁ内容はともかく、ね」

ちょっとしょんぼりとしたように見えたエヴァちゃんは一瞬で表情を明るいものへ変えた。

「でも大丈夫です。生徒会の人たち全員が読んで下さったということは、多くの人に読んでもらうという目標は達成できたということですから!」

彼女の金髪と同じくらいの煌めきが溢れる笑顔に、私もつい笑顔になる。

「困っているとすれば在庫ですわね。エレナ……先輩も一冊どうぞ。そういえば先輩って桜花寮でしたかしら?」

一冊手渡された冊子の表紙はむつみ合う二人の女の子。前回のは確かノーパンだったからパンツを二人ともちゃんと穿いているだけ成長はしているのか……ただ陰影なのか色の濃淡なのか、その……クロッチにあたる部分だけ濃く塗られてるのは……ねぇ。

「まさかルームメイトにも渡せと」
「はい、そういうことです。よろしくお願いしますね、セ・ン・パ・イ♡」

まぁ後輩の頼みを断るというのも野暮だし、せっかくなのだから二冊受け取ってあげよう。

「そう言えばお金は? いいの?」

そう聞きつつ私も自前のトートに百合アンソロを収める。夏休みの課題が見えなくなる位置に入れた。現実逃避ではない……というか財布……どこだ?

「お金は結構ですわ。では、そろそろ部屋に戻りますわ。ごきげんよう」

そう言って立ち去るエヴァちゃん。相変わらず良い匂いするなぁ。クラクラしちゃうよ。これルームメイトの女の子、大丈夫かな? 色んな意味で。と、財布は……。

「……あ!」

須川さんの部屋か。ペンケースと間違えて出しちゃったのを思い出した。こりゃ思ってた以上に早い再会になっちゃったや。そんなことを思いつつ、私も寮へ向かうのだった。
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