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第2話 君の話を聞かせて
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彼女の部屋は叶美の部屋からも近い。ひょっとしたら二人は顔見知りかもしれないなと思いつつ、ドアをノックして返答を待つ。
「……はい、どうぞ」
落ち着いたアルトボイスで返答がきた。少し間があったような気はしたが気にしてもしかたない。取り敢えず入ると、部屋はいたってシンプルだった。それもそうか、彼女はまだ菊花寮に入ったばかりなのだから。寮のシステムとして、3月の春休みと8月の夏休みのタイミングで寮の部屋割を変更するのだが、桜花寮に関しては双方が変えたいと申し出ない限り、卒業、退寮、転寮によってのみ起こる。菊花寮への選出も同じ時期に行われ、文芸コンクールで賞を取った彼女が菊花寮にやってきたわけだ。今頃、桜花寮では部屋割の変更が行われているかもしれないね。もしくはしばしの一人部屋を満喫しているか。
「さて、自己紹介させてもらおうかな。私は西恵玲奈。高等部2年で新聞部の所属だよ。というわけで、取材させてもらうね。須川美海さん」
須川美海、この部屋の主である高等部1年の女の子。私より少し背が高いがそれでも平均ほどだろうか。肩にかかるかかからないかといった長さの髪は黒く、日焼けと縁遠そうな白い肌との対比が綺麗だ。雰囲気を動物に例えるならば猫だろう。クールな瞳にしなやかな四肢、こちらの動きに意識を張っているのがよく分かる。
「……座りますか?」
「あぁ、ありがとね」
「……飲み物、持ってきます」
「おぉおぉ、ありがとありがと」
部屋に備え付けの勉強机とセットになっている椅子に腰掛けると、須川さんがお盆に飲み物の入ったコップを二つ載せて戻ってきた。
「……麦茶、どうぞ」
「麦茶、好きなの?」
どことなく緊張した面持ちなのでそれをほぐそうと質問する。こくりと頷いた彼女は、自分の分である麦茶を少し飲んでベッドに腰掛けた。コップは床に置かれたお盆の上。まだローテーブルとかチェストはないのだ。
「そう言えば、どうして制服なの?」
今、彼女が来ているのは水色のブラウスとグレーのスカート。ネクタイもグレーベースのものを着用している。ちなみに私は私服の半袖シャツとサロペットのズボンだ。……子供っぽいのは否めない。
「……取材だと聞いたので。正装をと思いまして」
なるほど、真面目で純粋っぽいね。彼女がどんな私服を着るか少し気になるかも。新聞部や放送部以外の後輩と出かけることなんてないから彼女の私服を見る機会はないんだろうなぁ。
「……その、取材まだですか?」
「もう始める? うーん、じゃあ、始めちゃおうか」
もうちょっと打ち解けたかったんだけどねぇ。先方からそう言われては始めるほかないよね。気持ちを切り替えて、メモ帳と愛用のペンを取り出した。
「……はい、どうぞ」
落ち着いたアルトボイスで返答がきた。少し間があったような気はしたが気にしてもしかたない。取り敢えず入ると、部屋はいたってシンプルだった。それもそうか、彼女はまだ菊花寮に入ったばかりなのだから。寮のシステムとして、3月の春休みと8月の夏休みのタイミングで寮の部屋割を変更するのだが、桜花寮に関しては双方が変えたいと申し出ない限り、卒業、退寮、転寮によってのみ起こる。菊花寮への選出も同じ時期に行われ、文芸コンクールで賞を取った彼女が菊花寮にやってきたわけだ。今頃、桜花寮では部屋割の変更が行われているかもしれないね。もしくはしばしの一人部屋を満喫しているか。
「さて、自己紹介させてもらおうかな。私は西恵玲奈。高等部2年で新聞部の所属だよ。というわけで、取材させてもらうね。須川美海さん」
須川美海、この部屋の主である高等部1年の女の子。私より少し背が高いがそれでも平均ほどだろうか。肩にかかるかかからないかといった長さの髪は黒く、日焼けと縁遠そうな白い肌との対比が綺麗だ。雰囲気を動物に例えるならば猫だろう。クールな瞳にしなやかな四肢、こちらの動きに意識を張っているのがよく分かる。
「……座りますか?」
「あぁ、ありがとね」
「……飲み物、持ってきます」
「おぉおぉ、ありがとありがと」
部屋に備え付けの勉強机とセットになっている椅子に腰掛けると、須川さんがお盆に飲み物の入ったコップを二つ載せて戻ってきた。
「……麦茶、どうぞ」
「麦茶、好きなの?」
どことなく緊張した面持ちなのでそれをほぐそうと質問する。こくりと頷いた彼女は、自分の分である麦茶を少し飲んでベッドに腰掛けた。コップは床に置かれたお盆の上。まだローテーブルとかチェストはないのだ。
「そう言えば、どうして制服なの?」
今、彼女が来ているのは水色のブラウスとグレーのスカート。ネクタイもグレーベースのものを着用している。ちなみに私は私服の半袖シャツとサロペットのズボンだ。……子供っぽいのは否めない。
「……取材だと聞いたので。正装をと思いまして」
なるほど、真面目で純粋っぽいね。彼女がどんな私服を着るか少し気になるかも。新聞部や放送部以外の後輩と出かけることなんてないから彼女の私服を見る機会はないんだろうなぁ。
「……その、取材まだですか?」
「もう始める? うーん、じゃあ、始めちゃおうか」
もうちょっと打ち解けたかったんだけどねぇ。先方からそう言われては始めるほかないよね。気持ちを切り替えて、メモ帳と愛用のペンを取り出した。
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