上 下
163 / 192

外伝36話 クローン

しおりを挟む

とても信じられない話だ。
ルーナの持つスキルを作り続けるスキルなんて、とてもじゃ無いがそんなアホみたいなスキル信じられない。それでも馬鹿みたいなスキルなのに、何でも好き勝手に作れる『創造』なんて、もっとあり得ない。

「で、ルーナさんはどうして助かったんですか?」

「過程から話すよ。アタシとルーナはね、戦いが終わってようやく、互いの名前を知った。というかお互いにフルネームを知らなかったんだよ。アタシは鈴木マヒロ、ルーナは市橋瑠奈だ」

「ルーナの本名……?今は偽名なんですか?」

「いいや違う、これはアタシ達が思いついた解決法に関わる事なんだけど、自分の持つスキルの数に耐えられない市橋瑠奈に行った解決法は転生だった。要するに、アタシが色々と条件を付けて精神を他の人に移すスキル『憑依転生』を作ったのさ。それで肉体を乗り換えることによって、スキルの数をリセットし、市橋瑠奈は生きてきた……」

「成る程……ルーナはルーナだけど、市橋瑠奈でもあるのか」

「だけど、この方法にも問題があった。一つはルーナの持つ本来のオリジナルスキルだけは何故か消すことが出来ずに残ってしまったんだ。だから、結局10数年程生きたらまた肉体の限界が来て転生する羽目になってしまう。安定はしてたけどね」

「……でも、安定してるならそれでいいんじゃ?」

「良くないよ、だってこの方法はつまり、新生児の魂を殺している事になるんだからね」

「あっ……」

「当然彼等には自我も記憶も無い……けど、これから自己を手に入れていく彼等の人生を、そこで終わらせるのは流石に忍びないんだ」

確かにその通りだ。転生などとと言っても、結局それは他人の身体を乗っ取って乗っ取られた本人を殺しているに過ぎないのだ。

「それともう一つ弱点があってさ。ルーナの持つ強靭な精神に並みの肉体では耐えられないということだ。だから、あの星を作った」

「え?ど、どういう事ですか?」

「惑星ジムダ等と言ったが、あの星は簡単に言えばルーナの転生体を作る為の実験場だったんだよ。アタシのスキルで星を作り、地球からは察知されない様に操作し、誰にも観測されない宇宙空間に特定の条件を満たすとスキルを与えてくれるシステムを作った。こうする事によって惑星ジムダに住む人間はどんどんスキルに耐性が付いていく」

成る程、それなら確かに市橋瑠奈の精神に耐えられる人間も現れるだろう

「案の定、結構早い段階で生まれてきてくれたんだ。それに瑠奈は転生した。……が、やはり10数年で肉体は限界を迎えるんだ」

「じゃあ……今もルーナさんは」

「いや、結論から言うともう肉体の崩壊は収まった。11回目の転生で彼女が都合良くスキルを制御するスキル『完全操作』を手に入れたんだ」

「そう言う事だったんですか……でも、おかしく無いですか?」

「おや、何がだい?」

「先程惑星ジムダを作ったと言っていましたが、その人間は一体どこから来たんですか?あの星の人口だって、馬鹿にならないでしょう?」

「ああ……怒らないで聞いてほしい」

突然神妙な面持ちになって、鈴木マヒロは語った。

「君達の先祖はクローン人間だ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

灰色の冒険者

水室二人
ファンタジー
 異世界にに召喚された主人公達、  1年間過ごす間に、色々と教えて欲しいと頼まれ、特に危険は無いと思いそのまま異世界に。  だが、次々と消えていく異世界人。  1年後、のこったのは二人だけ。  刈谷正義(かりやまさよし)は、残った一人だったが、最後の最後で殺されてしまう。  ただ、彼は、1年過ごすその裏で、殺されないための準備をしていた。  正義と言う名前だけど正義は、嫌い。  そんな彼の、異世界での物語り。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...