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外伝18話 アスタルテ
しおりを挟む家でテレビを見ていたはずのケインが突然消えて、恭弥は狼狽えていた。
「ど、何処に行ったんだ!?」
「落ち着いて下さい恭弥さん、今のはケインさんの縮地です。恭弥さんも一度体験されたでしょう?」
「田中さん……そうでしたね。しかしケインは一体何処へ?」
「恐らく、今テレビに映っていた男の元でしょうね。ケインさんはああ見えて正義感が強いですから」
「じゃあ僕達に出来る事は何も無いのですか?」
「テレビカメラが壊れて映らなくなってしまったし……祈るしかありません」
「そんな……」
「きっと大丈夫ですよ。ケインさんは強いですから」
「でも、女の子1人に戦わせるなんて……」
「たしかに、私も思うところはあります。しかしね?彼女は一度私達の星を救った英雄です。私達の心配は彼女にとって大きな助けにはならない」
正論だ。これを言われると恭弥は反論の余地をなくして、黙り込んでしまった。
程なくしてケインは少しボロボロになって帰ってきた。隣に大柄な男を連れて……
「ケイン!おかえり!良かった無事で……」
「まあね。割と危なかったけど」
「もう無茶しないでよ……それと、その隣にいる人は一体……?」
「ああ、それも含めて説明するよ。彼からもね」
………………………………
………………
……
「……と言うわけだったんだ」
僕は恭弥達に先ほど起こったことを細かく説明した。
「成る程。つまり、孝勇達はアスタルテと名乗る男にある日突然力を与えられて、人類への攻撃を命じられた……と」
「ああ、正確に言えばアスタルテに従わない人間の抹殺と、強い女を捕まえることだけど」
「強い女を捕まえる?」
「すまない、俺も詳しく聞いたわけじゃ無いんだ。ただ、ケインは間違いなく強い女だ。だからソラと圭吾はこれからもケインを狙うはず」
「ちょっと待て、ソラは目的を知っていたようだが……」
「アイツは特別だ。アスタルテに気に入られていたからな」
「そうか……じゃあ今のソラの居場所は分かる?」
「いいや、それも分からない。すまない……」
「良いよ別に。僕が狙われてるならその内向こうから来るでしょ」
「うん来たよ」
気がつくと、彼等の会話の中に当たり前のように混じっていた者がいた。全員が振り向くと、そこにはソラと圭吾、そして見知らぬ男がいた。
「お前はソラと圭吾!それと……誰だ?」
「はじめまして、余の名前はアスタルテだ」
「アスタルテ……お前がかっ!」
ケインは剣を抜くとアスタルテに向けて斬りかかる……が、それはソラによって止められた。
「チッ!めんどくせぇな」
「そっちこそ、不意打ちなんて卑怯じゃないか?」
「いきなり人様の家に上がり込んでおいて何言いやがる」
しかし、意外な事にアスタルテがこの戦いを止めた。
「やめろソラ、それにケインもそう警戒するな。何も今すぐ殺すというわけでは無いのだからな」
「既に物騒だぞオイ、それで何の用だ?」
「君がケインかい?」
「そうだったらどうした」
「ふむ……それでは君にお願いがあるんだよ」
「お前のお願い?聞くわけないだろ」
「まあそう焦らないで。お願いっていうのはね、僕の子供を産んで欲しいんだ」
「…………は?」
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