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第11話
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「明日、時間あるか?」
なんて明王大との合同練習終わりに泉岳寺に誘われ、俺はその翌日の今日、東京に来ていた。
見渡す限り、ビル、ビル、ビル。
あまりの人多さに息苦しさを覚えるほどだ。
さすがは日本の首都。
神奈川もそれなりに都会だけど、これにはかなわねえな。
待ち合わせ場所でさっそく都会の洗礼を受けていると、駅の方から泉岳寺がやって来た。
「すまない。待ったか?」
「俺も今ついたところだぜ」
……なんかデートみたいだよな。
よくあるやり取りをして、そんな風に考えてしまったが、俺たちの間に色めいた雰囲気などない。
なぜなら服装は互いに学校ジャージ!
手荷物は卓球に必要な道具と財布、それと定期!
ファッションに気を使わなくていい間柄のみに許される特権である。
まあ、とは言っても何も感じてないわけでもねえ。
泉岳寺だからこの格好なわけで、もし朝倉と出会ったりなんかしたら格好の餌食になっちまうだろうからな。
「越谷……お前今、朝倉のこと考えてないか?」
「うっせ。そんなん言ったらお前こそ今宮のこと考えてるだろ」
図星を突かれて咄嗟に話を逸らそうと泉岳寺をいじり返す。
昨日の様子からすれば今宮に好意を抱いていることは間違いねえ。
だが泉岳寺は痛くも痒くもないとばかりにドヤ顔で答えた。
「いや華怜とは2日に1回は二人で出かけてるから問題ない。今日も朝ラインしてから来た」
「考えてたことは認めるっと……やっぱ今宮のこと好きなんじゃねーか」
「ぶふっ!? くそっ! はめられた!」
「いや、泉岳寺がわかりやすいんだよ」
俺が呆れながらツッコミを入れると、泉岳寺は観念して白状する。
「そうだ、越谷の言う通りだ。俺は華怜に……好意を抱いている」
「ひゅー」
話が面白くなってきて、俺は口笛で茶々を入れた。
いつも京介にいじられる立場なので、なおさら面白い。
きっと今の俺の顔は京介みたいに気持ち悪いはずだ。
だが俺の浮ついた気持ちはすぐにしぼむことになる。
「――でも今まで何もない」
それはとてつもなく重い言葉だった。
まるで今までの泉岳寺の人生の鬱憤が全て詰まっているかのような。
……確かに今宮の想い人を考えてみたらなんら不思議じゃねえ。
俺ですら知っているのだから、泉岳寺だって知っているはずだ。
なんなら今宮がこの前「越谷さん以外にも協力者がいましてよ」とかいってたしな。
それを一体どんな気持ちで乗り越えてきたのか?
想像するだけで自然と涙が込み上げてくる。
「越谷。お前はどうなんだ?」
「いや、俺もなんもねえよ。今まで彼女どころか告白されたことすらねえ」
「……そうか」
俺の供述を不憫に思ったのか、同情のまなざしを向けてくる泉岳寺。
「なあ、これ以上はお互い虚しいからやめようぜ」
「そうだな。……とりあえず体育館に行こうか」
「おう」
かくして煽り合戦は平和に終結し、俺たちは当初の目的を果たすべく歩きだした。
*********
体育館についてからはひたすら卓球三昧だった。
昨日の練習で見つかった課題や、俺が取るべき戦術など、泉岳寺から学ぶことは多かった。特に泉岳寺はアンチや粒高などの特殊なラバーに対する見識があり、またドライブも上手いため、ブロックの練習にもなる。
そういった意味合いでは朝倉以上の、まさしく最高の練習相手だ。
休憩を挟みつつ、かれこれ4時間程やっていると、奥の方が突然騒がしくなった。
「君さっきから暇でしょ? 俺らと遊ばない?」
「結構です。私は一人でやりたいので」
「そんなこと言わずにさー。こんな退屈な遊びよりもっと面白いの教えてあげるよ」
見れば、女の子が2人の男に絡まれている。
女の子はそれほど背が高くない感じで、朝倉と同じくらいしかないのに対し、ナンパ野郎たちは2人とも背が高く、引き下がってくれそう雰囲気にない。
……これは危ねえ。
「――泉岳寺」
「ああ、わかっている」
俺と泉岳寺は阿吽の呼吸で、意図を察し、絡まれている女の子と男たちの間に割って入った。
「あのーすいませんね。その子俺たちと先に予定があるんすわ」
「ああん! なんだてめえらは」
「「こいつの兄です」」
もちろん、そんな訳ないのだが、こういうのは言ったもん勝ちだ。
少なくともこれでナンパ野郎は強くでれないはず。
だが女の子はそんな俺の予想を裏切る発言をした。
「あなた方も私とやりたい。お兄ちゃんたちも私とやりたい。……ではこうしましょう。卓球で勝負してあなた方が1点でも私から取れたら私はあなた方と一緒に遊ぶ。私が勝ったらあなた方は大人しく引き下がる。これでいいかしら?」
「へへ、俺らはいいぜ。残念だったなお兄ちゃんたち」
何を考えているのか相手に破格の条件を投げかける女の子。
ナンパ男たちはそれを自分たちの肯定と見なして満足げに笑っている。
ほんとに大丈夫なのか?
てかもしかしたら、俺たちの勘違いだったんじゃ……
そんな風に不安になっていると、その女の子が初めてこちらに目を向ける。
「困っていた所を助けてくれてありがとう。でもここからは私に任せて」
そしてはっきりと強い口調で言い切ると、女の子は卓球台に着いた。
0-0。
いや、1得点も許されない状況からすれば0-10だな。
ラケットを見た感じその女の子は卓球やってそうだが、いくら卓球が経験者有利のスポーツといっても一度もミスをしてはいけないというのはかなり難しい。
しかも……
「おおっ! そういやよっちゃん卓球やってたんだっけ?」
「へへっ、まあな」
ちょうど対戦する方のチャラ男、よっちゃんは経験者だという。
……本当に大丈夫なんかよ?
「ほらよっと!」
俺の心配をよそに二人の勝負は始まった。
相手はボールをラケットにぶち当てるようにしてサーブを放つ。
低い弾道で入った強烈なサーブを、女の子は寸前の所で返して得点。
なんとか返せたからいいものの、明らかに15センチ以上トスが上がっていない反則サーブだ。
「くぅー惜しい! さすがはよっちゃん」
「へへっ、まあな」
「おい、今のサーブは」
未経験ならまだしもてめえはルールは知ってるはずだろうが!
ダーティプレイをしておいて悪びれもしない態度に抗議に行こうとすると、その女の子は俺を制して代わりに言い放った。
「私は平気よ。だってあなたたちでは私から1点を取るのは無理だもの」
「へーいうじゃん。後で泣かされても知らないからなっ!」
これにはナンパ男よっちゃんも黙っていられなかったらしく、その後も執拗に姑息な手で攻め立てる。
――が、その女の子は涼しい顔でそれをねじ伏せていった。
トスの高さなんて比べようもないくらいの反則もされているのに、まるで事前に相手の手の内がとわかっているかのような冷静さだ。
始めこそ不安に思っていた俺ではあったが、ここまで圧倒的な違いを見せられてはもう何も口出しできなかった。
むしろ相手が可哀そうになってきたまである。
「なんでだ? なんで俺の球が通じねえ?」
元卓球経験者の自信が折れたのか、おびえた顔で彼女を見るよっちゃん。
女の子は呆れたとばかりに溜息をついてから、よっちゃんに残った希望さえも消しに行く。
「あなたは狙いが浅すぎる。コースも策略も技術さえもね」
「うっ」
「当ててあげましょうか? あなたは今私のフォア手前に向かってサーブを打とうとしている」
「な、なら」
「あら? 今度はバック側の奥かしら。ほんと単純ね」
「く、くそおおっ! こうなったら」
激高したナンパ男よっちゃんはラケットを振り上げると、女の子に向かって投げつけた。
かばおうと俺も体を投げ出すが、さすがに間に合わない。
くそ。頼む!
俺には外れてくれることを祈ることしかできない。
だがその女の子焦ることもなく、首を横に傾けるだけで飛んでくるラケットを躱してしまった。
「「へ?」」
その場にいた誰もが驚きの声を漏らす中で、女の子は淡々と告げる。
「顔を狙ってくると思ってたわ。今のあなたじゃ私にラケットすらも当てられないってことよ」
皮肉たっぷりのお言葉に、よっちゃんはさぞ怒るかと言えばそうでもなく、むしろ完全にびびってしまったようで、
「ば、ばけもの。覚えてろよー!」
見事な捨て台詞を吐いて退散していった。
これで一件落着……な訳はねえよな。
マジなんなんだよこの人は。
驚嘆と畏怖が入り混じった俺をよそに、女の子はよっちゃんが落としていったラケットを拾う。
そして俺の視線に気づいたのか、顔を上げて俺たちに向き直った。
「改めて御礼を言うわ。ありがとう。越谷廉太郎くん、それと泉岳寺翼くん。私は新波涼香にいなみりょうかよ」
「なんで俺たちの名前を?」
「ふふ、私の趣味が人間観察だからかしら? ……冗談よ。私は細かい分析をもとに戦術を組み立てるデータ卓球を志向しているわ。だから関東のめぼしい選手の情報は男女問わず頭に入っているのよ」
自慢気に語る新波に泉岳寺が反応する。
「なるほど。分析に基づくデータ卓球をする選手がいるとは聞いていたが、まさかお前とはな」
「言い方に気をつけなさい。私はあなたたちより1つ年上なのだから」
「ういっす」
「うっす先輩。これから気を付けます」
「はぁ、まったく反省してないわね。まあいいわ。あなたたちとは試合で当たることもないし」
気の抜けた泉岳寺の返事に、ため息をつく新波先輩ではあったが、そこまで気にしてない様子。
つーか先輩だったんだ。
てっきり同い年かと。
「あら? あなた何か私に対して失礼なこと考えてるでしょう?」
「イイエ、ナニモ」
エスパーか、この人は!
動揺する俺を見て、新波先輩は変に勘違いしたらしく、饒舌になってまくし立てる。
「いい? あなたたちには馴染みがないのかもしれないけれど、分析だってスポーツの一部よ。それは何も卓球に限ったことではないわ。サッカーなどでは戦術の分析はもちろん個人の分析官をつけたりもするもの」
「へーそうなんすね」
「確かにうちのサッカー部もやってますね」
俺たちの相槌を聞いて、気分を良くしたのか、新波先輩はさらに続けた。
「でしょう? 今まではセンスだとか気持ちだとか運とかそういう不確かな言葉でしか表せなかったものが分析によって技術に変えられたりもする。もちろん対戦相手の傾向を把握することだってできるわ」
トントンとラケットで無作法にも台を叩いて、新波先輩は俺を台の前へと誘導する。
「越谷くん……ちょっと私の球を受けてみて」
「ういっす」
俺は先輩の誘いに乗って台に着いた。
さっきの様子からして新波先輩は相当の実力者なはずだ。
今日の成果を実感するにはちょうどいい相手だろう。
「いつでもいいですよ!」
俺は意気込んで先輩のサーブを待った。
「――行くわよ」
先輩は強い下回転がかかった球を俺のフォアに打ち込んでくる。
俺はツッツキで返し、先輩はそれをドライブで入れてくる。
ここまでは予想通り。
「待ってました!」
俺はすかさずラケットを反転させてアンチラバーでブロックした。
「知ってたわよ」
「なっ!?」
だが先輩は平然とその球をスマッシュで打ち込んできて得点。
予期せぬ強烈な一撃に俺は動くことができなかった。
その後も先輩は、俺がアンチで返球した球をスマッシュで打ち抜き続けた。
6球程打ち込まれたところで先輩から声がかかる。
「どう? 私と打った感想は」
「まったく隙がないですね。俺はどうでした?」
「そうね、あなたはアンチでブロックしようとしすぎる傾向があるのわ。特に相手と打ち合いになった際には2球目までにはアンチを入れようとしてるわね」
「ああ、確かに。先輩がその状況を多く作ったおかげで今のは俺にもな」
「うっ……マジかよ」
二人に言われて初めて気づいた。
泉岳寺にも見抜かれるってことはそれくらい露骨なんだろう。
……なんかショックだな。
「2球目までに無回転が来るってわかってたら、返すのは造作もないわ。以後気をつけるように」
「うっす。分析って大事なんですね」
「でしょう? まあ分析が大事というよりかは科学ね。分析はあくまでその1つよ。例えば体なんかだとわかりやすいかしら。体なんてのは生まれに左右されるまさしく才能のようなものだけれど、科学に基づいた練習と適切な睡眠、食事があれば誰でも怪我をしにくい体は手に入るわ」
「それでも全員が身長190センチなんて無理じゃないっすか?」
相変わらずの敬語もどきでツッコミを入れる泉岳寺に対し、先輩は好意的に返す。
「その通りよ。でもただ祈ったり、諦観してるだけよりかはよっぽど良いでしょう? それに卓球だと190センチは必ず必要って訳でもない。必要とされる筋力や柔軟性、反射神経なら鍛えられるもの。だから凡人でも天才たちにも負けない体が手に入る。努力を続ければ才能を超えられるのよ」
「……才能に勝とうだなんて、すいぶんと甘いんですね」
先輩に他意はないとわかっているのに、つい口をはさんでしまった。
努力だけで才能に勝てるならとっくに皆そうなってるはずだろ。
現に今のトッププロは、ほとんどが幼少期から注目されていた天才たちで、後から伸びてきた人はほとんどいない。
体格だとか筋力だとかそんなのは些細なものだ。
皆、才能という残酷な壁の前では無力でしかないのだ。
今宮という才能を日頃から見ている泉岳寺も俺の意見に異論はないようだった。
「そうね……現実は厳しいわね。私だって何度も打ちのめされてきたわ。でも努力はいつか才能に届く、いいえ、超えると信じている」
「そう……ですか」
優しくも気高い新波先輩の言葉に俺は黙るしかなかった。
いや、わかってしまったのだ。
彼女が一体どれだけの挫折を経験してきたかが。
「もう少し話していきたいのだけれど、あいにく時間がないのよ。それじゃあ、今日はここらへんで。朝倉寧々と今宮華怜によろしく伝えといて」
それだけ言って新波先輩は速足で帰っていった。
努力が才能を超えると信じている……か。
先輩の言葉を思い出すと、自然と闘志が湧いてくる。
「俺も負けてらんねえな。……泉岳寺もうちょっとやっていかねえか?」
「今日は華怜との用事もない、お前が満足するまで付き合うとしよう」
「サンキュ」
俺たちはボールをもって、再び台に着く。
結局、その日は体育館が閉まるまで卓球に打ち込んだのだった。
なんて明王大との合同練習終わりに泉岳寺に誘われ、俺はその翌日の今日、東京に来ていた。
見渡す限り、ビル、ビル、ビル。
あまりの人多さに息苦しさを覚えるほどだ。
さすがは日本の首都。
神奈川もそれなりに都会だけど、これにはかなわねえな。
待ち合わせ場所でさっそく都会の洗礼を受けていると、駅の方から泉岳寺がやって来た。
「すまない。待ったか?」
「俺も今ついたところだぜ」
……なんかデートみたいだよな。
よくあるやり取りをして、そんな風に考えてしまったが、俺たちの間に色めいた雰囲気などない。
なぜなら服装は互いに学校ジャージ!
手荷物は卓球に必要な道具と財布、それと定期!
ファッションに気を使わなくていい間柄のみに許される特権である。
まあ、とは言っても何も感じてないわけでもねえ。
泉岳寺だからこの格好なわけで、もし朝倉と出会ったりなんかしたら格好の餌食になっちまうだろうからな。
「越谷……お前今、朝倉のこと考えてないか?」
「うっせ。そんなん言ったらお前こそ今宮のこと考えてるだろ」
図星を突かれて咄嗟に話を逸らそうと泉岳寺をいじり返す。
昨日の様子からすれば今宮に好意を抱いていることは間違いねえ。
だが泉岳寺は痛くも痒くもないとばかりにドヤ顔で答えた。
「いや華怜とは2日に1回は二人で出かけてるから問題ない。今日も朝ラインしてから来た」
「考えてたことは認めるっと……やっぱ今宮のこと好きなんじゃねーか」
「ぶふっ!? くそっ! はめられた!」
「いや、泉岳寺がわかりやすいんだよ」
俺が呆れながらツッコミを入れると、泉岳寺は観念して白状する。
「そうだ、越谷の言う通りだ。俺は華怜に……好意を抱いている」
「ひゅー」
話が面白くなってきて、俺は口笛で茶々を入れた。
いつも京介にいじられる立場なので、なおさら面白い。
きっと今の俺の顔は京介みたいに気持ち悪いはずだ。
だが俺の浮ついた気持ちはすぐにしぼむことになる。
「――でも今まで何もない」
それはとてつもなく重い言葉だった。
まるで今までの泉岳寺の人生の鬱憤が全て詰まっているかのような。
……確かに今宮の想い人を考えてみたらなんら不思議じゃねえ。
俺ですら知っているのだから、泉岳寺だって知っているはずだ。
なんなら今宮がこの前「越谷さん以外にも協力者がいましてよ」とかいってたしな。
それを一体どんな気持ちで乗り越えてきたのか?
想像するだけで自然と涙が込み上げてくる。
「越谷。お前はどうなんだ?」
「いや、俺もなんもねえよ。今まで彼女どころか告白されたことすらねえ」
「……そうか」
俺の供述を不憫に思ったのか、同情のまなざしを向けてくる泉岳寺。
「なあ、これ以上はお互い虚しいからやめようぜ」
「そうだな。……とりあえず体育館に行こうか」
「おう」
かくして煽り合戦は平和に終結し、俺たちは当初の目的を果たすべく歩きだした。
*********
体育館についてからはひたすら卓球三昧だった。
昨日の練習で見つかった課題や、俺が取るべき戦術など、泉岳寺から学ぶことは多かった。特に泉岳寺はアンチや粒高などの特殊なラバーに対する見識があり、またドライブも上手いため、ブロックの練習にもなる。
そういった意味合いでは朝倉以上の、まさしく最高の練習相手だ。
休憩を挟みつつ、かれこれ4時間程やっていると、奥の方が突然騒がしくなった。
「君さっきから暇でしょ? 俺らと遊ばない?」
「結構です。私は一人でやりたいので」
「そんなこと言わずにさー。こんな退屈な遊びよりもっと面白いの教えてあげるよ」
見れば、女の子が2人の男に絡まれている。
女の子はそれほど背が高くない感じで、朝倉と同じくらいしかないのに対し、ナンパ野郎たちは2人とも背が高く、引き下がってくれそう雰囲気にない。
……これは危ねえ。
「――泉岳寺」
「ああ、わかっている」
俺と泉岳寺は阿吽の呼吸で、意図を察し、絡まれている女の子と男たちの間に割って入った。
「あのーすいませんね。その子俺たちと先に予定があるんすわ」
「ああん! なんだてめえらは」
「「こいつの兄です」」
もちろん、そんな訳ないのだが、こういうのは言ったもん勝ちだ。
少なくともこれでナンパ野郎は強くでれないはず。
だが女の子はそんな俺の予想を裏切る発言をした。
「あなた方も私とやりたい。お兄ちゃんたちも私とやりたい。……ではこうしましょう。卓球で勝負してあなた方が1点でも私から取れたら私はあなた方と一緒に遊ぶ。私が勝ったらあなた方は大人しく引き下がる。これでいいかしら?」
「へへ、俺らはいいぜ。残念だったなお兄ちゃんたち」
何を考えているのか相手に破格の条件を投げかける女の子。
ナンパ男たちはそれを自分たちの肯定と見なして満足げに笑っている。
ほんとに大丈夫なのか?
てかもしかしたら、俺たちの勘違いだったんじゃ……
そんな風に不安になっていると、その女の子が初めてこちらに目を向ける。
「困っていた所を助けてくれてありがとう。でもここからは私に任せて」
そしてはっきりと強い口調で言い切ると、女の子は卓球台に着いた。
0-0。
いや、1得点も許されない状況からすれば0-10だな。
ラケットを見た感じその女の子は卓球やってそうだが、いくら卓球が経験者有利のスポーツといっても一度もミスをしてはいけないというのはかなり難しい。
しかも……
「おおっ! そういやよっちゃん卓球やってたんだっけ?」
「へへっ、まあな」
ちょうど対戦する方のチャラ男、よっちゃんは経験者だという。
……本当に大丈夫なんかよ?
「ほらよっと!」
俺の心配をよそに二人の勝負は始まった。
相手はボールをラケットにぶち当てるようにしてサーブを放つ。
低い弾道で入った強烈なサーブを、女の子は寸前の所で返して得点。
なんとか返せたからいいものの、明らかに15センチ以上トスが上がっていない反則サーブだ。
「くぅー惜しい! さすがはよっちゃん」
「へへっ、まあな」
「おい、今のサーブは」
未経験ならまだしもてめえはルールは知ってるはずだろうが!
ダーティプレイをしておいて悪びれもしない態度に抗議に行こうとすると、その女の子は俺を制して代わりに言い放った。
「私は平気よ。だってあなたたちでは私から1点を取るのは無理だもの」
「へーいうじゃん。後で泣かされても知らないからなっ!」
これにはナンパ男よっちゃんも黙っていられなかったらしく、その後も執拗に姑息な手で攻め立てる。
――が、その女の子は涼しい顔でそれをねじ伏せていった。
トスの高さなんて比べようもないくらいの反則もされているのに、まるで事前に相手の手の内がとわかっているかのような冷静さだ。
始めこそ不安に思っていた俺ではあったが、ここまで圧倒的な違いを見せられてはもう何も口出しできなかった。
むしろ相手が可哀そうになってきたまである。
「なんでだ? なんで俺の球が通じねえ?」
元卓球経験者の自信が折れたのか、おびえた顔で彼女を見るよっちゃん。
女の子は呆れたとばかりに溜息をついてから、よっちゃんに残った希望さえも消しに行く。
「あなたは狙いが浅すぎる。コースも策略も技術さえもね」
「うっ」
「当ててあげましょうか? あなたは今私のフォア手前に向かってサーブを打とうとしている」
「な、なら」
「あら? 今度はバック側の奥かしら。ほんと単純ね」
「く、くそおおっ! こうなったら」
激高したナンパ男よっちゃんはラケットを振り上げると、女の子に向かって投げつけた。
かばおうと俺も体を投げ出すが、さすがに間に合わない。
くそ。頼む!
俺には外れてくれることを祈ることしかできない。
だがその女の子焦ることもなく、首を横に傾けるだけで飛んでくるラケットを躱してしまった。
「「へ?」」
その場にいた誰もが驚きの声を漏らす中で、女の子は淡々と告げる。
「顔を狙ってくると思ってたわ。今のあなたじゃ私にラケットすらも当てられないってことよ」
皮肉たっぷりのお言葉に、よっちゃんはさぞ怒るかと言えばそうでもなく、むしろ完全にびびってしまったようで、
「ば、ばけもの。覚えてろよー!」
見事な捨て台詞を吐いて退散していった。
これで一件落着……な訳はねえよな。
マジなんなんだよこの人は。
驚嘆と畏怖が入り混じった俺をよそに、女の子はよっちゃんが落としていったラケットを拾う。
そして俺の視線に気づいたのか、顔を上げて俺たちに向き直った。
「改めて御礼を言うわ。ありがとう。越谷廉太郎くん、それと泉岳寺翼くん。私は新波涼香にいなみりょうかよ」
「なんで俺たちの名前を?」
「ふふ、私の趣味が人間観察だからかしら? ……冗談よ。私は細かい分析をもとに戦術を組み立てるデータ卓球を志向しているわ。だから関東のめぼしい選手の情報は男女問わず頭に入っているのよ」
自慢気に語る新波に泉岳寺が反応する。
「なるほど。分析に基づくデータ卓球をする選手がいるとは聞いていたが、まさかお前とはな」
「言い方に気をつけなさい。私はあなたたちより1つ年上なのだから」
「ういっす」
「うっす先輩。これから気を付けます」
「はぁ、まったく反省してないわね。まあいいわ。あなたたちとは試合で当たることもないし」
気の抜けた泉岳寺の返事に、ため息をつく新波先輩ではあったが、そこまで気にしてない様子。
つーか先輩だったんだ。
てっきり同い年かと。
「あら? あなた何か私に対して失礼なこと考えてるでしょう?」
「イイエ、ナニモ」
エスパーか、この人は!
動揺する俺を見て、新波先輩は変に勘違いしたらしく、饒舌になってまくし立てる。
「いい? あなたたちには馴染みがないのかもしれないけれど、分析だってスポーツの一部よ。それは何も卓球に限ったことではないわ。サッカーなどでは戦術の分析はもちろん個人の分析官をつけたりもするもの」
「へーそうなんすね」
「確かにうちのサッカー部もやってますね」
俺たちの相槌を聞いて、気分を良くしたのか、新波先輩はさらに続けた。
「でしょう? 今まではセンスだとか気持ちだとか運とかそういう不確かな言葉でしか表せなかったものが分析によって技術に変えられたりもする。もちろん対戦相手の傾向を把握することだってできるわ」
トントンとラケットで無作法にも台を叩いて、新波先輩は俺を台の前へと誘導する。
「越谷くん……ちょっと私の球を受けてみて」
「ういっす」
俺は先輩の誘いに乗って台に着いた。
さっきの様子からして新波先輩は相当の実力者なはずだ。
今日の成果を実感するにはちょうどいい相手だろう。
「いつでもいいですよ!」
俺は意気込んで先輩のサーブを待った。
「――行くわよ」
先輩は強い下回転がかかった球を俺のフォアに打ち込んでくる。
俺はツッツキで返し、先輩はそれをドライブで入れてくる。
ここまでは予想通り。
「待ってました!」
俺はすかさずラケットを反転させてアンチラバーでブロックした。
「知ってたわよ」
「なっ!?」
だが先輩は平然とその球をスマッシュで打ち込んできて得点。
予期せぬ強烈な一撃に俺は動くことができなかった。
その後も先輩は、俺がアンチで返球した球をスマッシュで打ち抜き続けた。
6球程打ち込まれたところで先輩から声がかかる。
「どう? 私と打った感想は」
「まったく隙がないですね。俺はどうでした?」
「そうね、あなたはアンチでブロックしようとしすぎる傾向があるのわ。特に相手と打ち合いになった際には2球目までにはアンチを入れようとしてるわね」
「ああ、確かに。先輩がその状況を多く作ったおかげで今のは俺にもな」
「うっ……マジかよ」
二人に言われて初めて気づいた。
泉岳寺にも見抜かれるってことはそれくらい露骨なんだろう。
……なんかショックだな。
「2球目までに無回転が来るってわかってたら、返すのは造作もないわ。以後気をつけるように」
「うっす。分析って大事なんですね」
「でしょう? まあ分析が大事というよりかは科学ね。分析はあくまでその1つよ。例えば体なんかだとわかりやすいかしら。体なんてのは生まれに左右されるまさしく才能のようなものだけれど、科学に基づいた練習と適切な睡眠、食事があれば誰でも怪我をしにくい体は手に入るわ」
「それでも全員が身長190センチなんて無理じゃないっすか?」
相変わらずの敬語もどきでツッコミを入れる泉岳寺に対し、先輩は好意的に返す。
「その通りよ。でもただ祈ったり、諦観してるだけよりかはよっぽど良いでしょう? それに卓球だと190センチは必ず必要って訳でもない。必要とされる筋力や柔軟性、反射神経なら鍛えられるもの。だから凡人でも天才たちにも負けない体が手に入る。努力を続ければ才能を超えられるのよ」
「……才能に勝とうだなんて、すいぶんと甘いんですね」
先輩に他意はないとわかっているのに、つい口をはさんでしまった。
努力だけで才能に勝てるならとっくに皆そうなってるはずだろ。
現に今のトッププロは、ほとんどが幼少期から注目されていた天才たちで、後から伸びてきた人はほとんどいない。
体格だとか筋力だとかそんなのは些細なものだ。
皆、才能という残酷な壁の前では無力でしかないのだ。
今宮という才能を日頃から見ている泉岳寺も俺の意見に異論はないようだった。
「そうね……現実は厳しいわね。私だって何度も打ちのめされてきたわ。でも努力はいつか才能に届く、いいえ、超えると信じている」
「そう……ですか」
優しくも気高い新波先輩の言葉に俺は黙るしかなかった。
いや、わかってしまったのだ。
彼女が一体どれだけの挫折を経験してきたかが。
「もう少し話していきたいのだけれど、あいにく時間がないのよ。それじゃあ、今日はここらへんで。朝倉寧々と今宮華怜によろしく伝えといて」
それだけ言って新波先輩は速足で帰っていった。
努力が才能を超えると信じている……か。
先輩の言葉を思い出すと、自然と闘志が湧いてくる。
「俺も負けてらんねえな。……泉岳寺もうちょっとやっていかねえか?」
「今日は華怜との用事もない、お前が満足するまで付き合うとしよう」
「サンキュ」
俺たちはボールをもって、再び台に着く。
結局、その日は体育館が閉まるまで卓球に打ち込んだのだった。
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工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
Cutie Skip ★
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