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最終話 死神狩り
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「うあああああっ」
栄一郎は叫び声を上げて飛び起きた。
はあはあと息を荒らげながら、周囲を見回す。
そこは、外科外来の点滴室だった。
「おう、気が付いたか」
仕切りのカーテンを開け、山本が顔を出す。
「山本先生……俺はいったい……」
「外来棟のホールを歩いてる最中に倒れたんだよ。周囲のスタッフが対応したが、バイタルは全く問題なし。で、1番近かったここに運んだ。安心しろ、心電図もとったけど、さすがにお前までブルガダなんてことはなかったよ」
「そうですか……」
夢……
だったのか……
栄一郎は状況を理解したあと、顔中に張り付いた汗を拭った。
「お前、もうまる3日帰ってないだろ。さすがに倒れるわ。今日はもういいから、帰れ」
「はい……ありがとうございます……」
山本がその場を去ろうとしたところを、栄一郎はあることが気になり山本を呼び止めた。
「山本先生!!」
「うん、何だ?」
栄一郎は山本の傍らを見た。
そこには何もいない。
やっぱり……
夢か……
「いえ、すみません。なんでもありません」
「お前やっぱり疲れてるよ。早く帰れ」
山本はそう言残して去っていった。
一人残された栄一郎は、その場でゆっくりと息を吐いた。
山本先生の言う通り……
無理し過ぎたかな……
栄一郎はお言葉に甘えて早退しようと考え、ベッドから足を下ろした。
が、そこであることに気が付いた。
先程から背後になんとも言えない嫌な感覚があることに。
栄一郎は恐る恐る自分の背後に目をやり、そして驚愕した。
そこに死神が立っていた。
「なっ……」
栄一郎は声にならない悲鳴を上げた。
死神は何も語らず、ただそこに立っている。
俺に……
死神が憑いたということか……
栄一郎の視界は、死神の胸元の数字を捉えた。
691…
俺の寿命はあと691日ということか……
栄一郎は携帯を取り出し、カレンダーで死亡予定の日を割り出す。
再来年の……
3月31日……
栄一郎にとって、その日は特別な日だった。
俺の……
初期研修が終わる日……
栄一郎は絶望し、泣いた。
ようやく自分が医者になった理由を思い出し、これから頑張って一人前の医者になろうと思っていた。
それなのに……
これからなのに…
神様に逆らうヤツを……
一人前の医者にはさせないってことか……
栄一郎は死神を睨みつける。
が、死神は何も応えない。
『じゃあ、もし、二人ともお医者さんになれたら、一緒に困ってる人を助けようよ』
栄一郎は、トモエとの約束を思い出し、涙を拭った。
691日……
あと、691日もある……
その間に、一人でも多く、死神から患者を救ってやる!!
栄一郎は立ち上がって部屋を出た。
病院内に潜む死神を狩るために……
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