24 / 41
第24話 患者の決断
しおりを挟む「一条は俺を信じてくれるか?」
栄一郎は恐る恐るそう問うた。
「私は間が良いやつだって知ってるよ。トモエが生きてたころ間はいつもトモエを守ってた。そして、今、間は私を守ろうとしてくれてるんでしょ。だから、私は間を信じるよ」
沙耶香の答えに栄一郎は意を決する。
「全ては話せない。話せるところだけ話す。俺にはわかるんだ。一条はこのままだと死んでしまう。明確な説明はできないが、俺にはわかるんだ。だから、手術を受けてほしいんだ」
沙耶香は死の可能性を告げられたのにも関わらず、驚いた様子はなかった。
栄一郎の様子からなんとなるそんな気がしていたのだ。
「そっか……それは、間の医者としての勘?」
「そんな立派なものじゃないが、そのようなものだと思ってもらっていい」
沙耶香は沈黙した。
そして、数秒考えたのちこう言った。
「うん、わかった、受けるよ。手術」
「いいのか?」
栄一郎は不安気に問い直す。
「うん、私、間の話を信じるよ」
沙耶香はそう言って朗らかに微笑んだ。
「ありがとう」
栄一郎は深々と頭を下げ、震える声で心から感謝を述べた。
そして、頭を上げ、期待を込めて、沙耶香の傍らに目を向けた。
しかし、まだそこには、死神がいた。
まだなのか?
何が足りないんだ?
いや、もしかしたら、まだ手術が確定していないからかもしれない。
手術が確定すれば……
「俺、山本先生に連絡するよ」
栄一郎は懐から院内PHSを取り出す。
「待って」
沙耶香が栄一郎の手を止める。
「間から連絡したら、きっと勘繰られるよ。私、今から看護師さんに頼んで山本先生に取り次いでもらうよ」
沙耶香はそう言ってベッドから足を下ろした。
「理由は、ネットで色々調べてたら、やっぱり手術のほうがいいと思ったとか、テキトーにごまかしとくから」
沙耶香は喋りながら立ち上がった。
「すまない」
助けるつもりの沙耶香にそんなふうに気を回してもらって、栄一郎は情けない気持ちでいっぱいだった。
「気にしないで。私だって死にたくないしね」
沙耶香は朗らかにそう言って病室を出た。
栄一郎も少し遅れて病室を後にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる