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第11話 検査結果
しおりを挟む1時間後、山本は診察室のパソコンモニターを食い入るように見入っていた。
斜め後ろに栄一郎が立っており、山本の言葉を待っている。
「間先生、君の見解は?」
山本はモニターから目をはずさず、栄一郎に問いかけた。
「虫垂の直径は8mm弱、糞石はなく、周囲の炎症像はありません」
栄一郎は山本が戻ってくる前に読影した所見を述べた。
「つまり?」
「虫垂炎と断定できません」
「その通りだ」
栄一郎は青ざめる。
虫垂炎の線が外れた。
振り出しからやり直しだ。
でも、次の手がかりがない……
どうすればいい……
「CT所見だけだったらな」
青ざめている栄一郎をよそに、山本はそう呟きながら、パソコン画面を操作する。
数秒後、机の下のプリンターから1枚の紙が吐き出される。
山本はその紙を取り、立ち上がる。
「言ったろ、CTを撮っても初期だと画像所見がはっきりしないこともざらだって」
山本はそう言って、隣の部屋に向けて歩き始め、栄一郎も慌てて後に続く。
隣室は点滴室になっており、ベッドが3つあり、それぞれカーテンで仕切られていた。
「一条さん、お待たせしました」
山本はそう声をかけて、カーテンの一つを引いた。
その中で、沙耶香が点滴を受けながら、ベッドに横たわっていた。
「結果をご説明する前に、もう一度体温を測らせて頂いてよろしいですか?」
そう言って、来る途中で取ってきた体温計を沙耶香に手渡した。
沙耶香は言われるまま、体温を測る。37.8℃。
「熱が上がってきましたね」
山本は納得という顔をしている。
「一条さん、CTの結果は虫垂炎を断定も否定もできない微妙な所見でした。しかし……」
そう言いながら、先ほど印刷してきた紙を沙耶香に渡す。
「点滴を入れるときに採取させて頂いた血液の検査結果です。ここと、ここを見てください。白血球が14000、CRPが11。これらの数値は、炎症反応と言って、体の中に感染症などの炎症性疾患があり、それもそこそこ勢いがあることを示しています。それに熱も上がってきている。私が最初に言った胃腸炎では、ここまで熱や炎症所見は上がりません」
そこで山本は栄一郎の方をちらりと見た後、こう告げた。
「むしろ、間先生の言う虫垂炎に合致する所見です」
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