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第5章 銀河宇宙との出会い
5.17 銀河防衛軍の戦い3
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ジラーラク連合においては、シラント星とヒタゲ星の脱出行は大きな批判にさらされた。つまり、シラント星にしてもヒタゲ星にしても、結局早い者勝ちになったわけであるが、どうしても権力と権力層に人脈があるものが宇宙港に早く着いて逃げられることになった。
そういう意味では、運よく逃げ出せたものはマスコミの悪意のある取材を受けることになり、とりわけ年若いものは心に大きな傷を負うことになった。惑星シラントから父の人脈のお陰で逃げ出せた少女サーヤも、友人がことごとく死んだ中で、自分だけ助かったということで落ち込んでいる中に、マスコミの強引な取材で余計落ち込んでいた。
そうしたサーヤに対して母は諭して言った。
「サーヤ、あの場合、シラント星には私たちを含めてあれだけの人数を収容できる船しかなかったのよ。私たちは、お父様がいち早く情報を手に入れてすぐに宇宙船に席を取って、家に直ちに帰って私たちを連れて宇宙港に向かったおかげで助かりました。
だけど、同じタイミングで情報を手に入れた人は何百万と居たらしいわ。でも、私たち家族が助かったのは人脈がたまたまあり、それをお父様がすぐ判断してうまく使ってくれたからよ。つまり、運と実力と努力によるものだから、なにも恥ずることはないわ。あなたは、今後自分が助かる値打ちがあったことを証明すればいいのよ」
この母からの言葉で、サーヤはその後懸命に勉強するようになり、もともと優秀であったこともあり、後にジラーラク連合でも有数の学者になった。
このように、この2つの植民惑星がイーターの脅威が判っていながらほぼ全滅したことは、社会的な問題にもなったが、それ以上に6植民惑星のうち3惑星のほぼ全生命が失われたことは、ジラーラク連合全体に深刻な危機感を持たせることにもなった。
また、いままでの調査の結果から、イーターによって汚染された星域の分布から判断すれば、あきらかに次の標的は連合の母星であるジラーラク星系そのものであることは明らかであった。
イーターの対策は、まだ発見されてない現状でのところでは、逃げるのが唯一の選択枝であるが、その場合の避難先である他の植民惑星も安全という保証はないのだ。
ジラーラク連合はイーター対策についての努力を倍加するするとともに、ジラーラク星からイーター汚染区域から最も遠い、アマンドラ星系に向けて避難が、連合の総力を挙げて行われ始めた。その避難者数は避難を開始して3ヶ月後には月に3千万人であり、避難船を増やすことにより一月に3百万人ずつ避難可能人数は増えている。
また、当然調査の一環として、イーターに汚染された星域の方面には多数の調査船が送り出されており、イーター接近の調査を行っていたが、調査船ジラーサル23号が、ついに最新の超高感度重力波検出器によって細く伸びたイーターの先端がほぼ光速でまっしぐらに突進しているのを検知した。
直ちに超空間通信によって、ジラーラク星本部に連絡が行き、本部とも相談の上で調査船にできる熱線砲、電磁銃及び斥力装置による攻撃が実施されたが、今まで判っていた通り斥力装置によりその細い腕を曲げることはできるが、他は全く効果がないことが裏書された。
さらに、観測船、軍艦が集まっての調査と攻撃の結果、このイーターの腕が超空間から出てきていることが判明したが、やはりこれ攻撃による効果はない。結局、十隻の観測船及び戦闘艦が、イーターの検知された8光分程度の腕の周囲に集まったが、結局観測するだけになってしまった。
そうして、ジラーラク星の集まってきた船の研究チームと乗員が、焦りの中でじりじりした気持ちでいる内に、戦闘艦ジーザル225号がワープジャンプを検知した。
「ワープ反応近い!戦闘艦ジーザル227号及び338号は我が艦と共に座標〇〇〇、▽▽▽、×××を警戒せよ」
という軍艦グループの先任船長が命じた。
さらに「映像データ、及び何らかのデータが送られてきています」の知らせと共に、ジラーサル二三号の三次元受像機に映像が現れた。
それは明らかに酸素呼吸生物であり、黒髪、黒目でやや色の濃い肌色で灰色のユニフォームに身を包んだ男性であり、肌や髪、目の色はジラーラク人の中にも似たような種族がいるが、顔と体形はジラーラク人より細身である。
イーターを最初の発見した、調査船ジラーサル23号の船長のカーマスラン・ジースズ自身はやや青白い肌色でややずんぐりして髪は赤茶、目は灰色である。送られてきた映像は説明図で言語データを送るように促しており、同時に彼らが送ったデータを解析して翻訳するように要求している。
相手に害意は無いと判断されたのでそれに応えて、ジラーラク側からもデータが送られ、こうしたお互いの言語データをやり取りして1時間もしない内に英語・ジラーラク語の翻訳ソフトが出来上がり、早速コミュニケーションが始まった。
「こちら、銀河防衛軍イーター拡大防止部隊所属、ガイア335号艦皆川艦長だ。現在増殖移動中のイーターの移動を防ぐためにここに来た。貴船隊はイーター対策のために来たと考えるが、イーター殲滅の技術移転の用意がある」
このガイア335号艦からの連絡に、それを聞いていたジラーラク側船隊の乗員は息が詰まるような思いであった。その技術があれば、少なくともシラント星とヒタゲ星の犠牲は必要なかったのだ。
その思いを押し殺して、現状の司令船の立場にある調査船ジラーサル23号の船長は確認した。
「こちら、船団司令船、ジラーサル23号カーマスラン・ジースズ船長、イーター殲滅の技術を供与できるということは、貴艦のみでイーターを退治出来るということでしょうか」
「いえ、わが艦のみではありません。現在のところ、ここで増殖して次の惑星に移動しようとしているイーターに対しては本艦を含めて全部で5艦が作戦に従事しています。イーターは3ヶ所で超空間に潜って体を伸ばした形であなたたちの惑星のある星系にとりつこうとしています。
私の他の4僚艦はそれぞれ超空間の出口と入口で配置に付こうとしていますし、私の艦は最終の出口の担当です。私どもは、ゼータ線照射砲というイーターを分解することのできておりる砲を持っ、それでイーターの体を分断します。
イーターは分断されると分割して小イーターとなりますので、その全体をゼータ線照射すると分解して死にます。ただ、この方法はイーターが増殖して他の惑星系に移動中にしか使えません。惑星を取り込んだイーターについては、イーター吸引装置という、斥力装置により吸引して内部にゼータ照射をする炉を持っている装置によります。
この、ゼータ線照射砲とイーター吸引装置については設計データを今からお送りしますので、製造にかかってください。また、銀河防衛軍のイーター退治作戦についても、同様に今からデータをお送りします」
皆川艦長の映像を使いながらの説明を聞いていたジラーラク側戦隊では、皆川の言葉の重要ポイントごとにどよめきが起き、話が終わったあとは代表してジースズ船長から感謝の言葉が述べられた。
「皆川艦長、私のみならず我がジラーラク連合の全住民から感謝の言葉を述べさせてください。実は、わが連合ではすでに3つの惑星がイーターに飲み込まれその犠牲は85億人に達します。
最初の惑星のイーター襲撃は突然でしたが、2つの惑星ではすで最初の惑星のイーター襲撃は突然でしたが、2つの惑星ではすでに調査もして、対策を練っている所の襲撃でしたが結局助け出せたのは数千万人のみでした。
そして、今回はっきりしましたが、次の襲撃は我が連合の母星であるジラーラク星が目標となっています。未だ対応策は見出されていないことから、ジラーラク星から今現在総力を挙げて避難を行っている所で、すでに1億5千万人が避難しましたが、55億人の住民の避難のためにはさらに3年かかる予定でした。
しかし、今のイーターの状態を見ればたぶん2カ月以内にはジラーラク星は襲われるでしょうから、結局逃げ出せるのは2億人強だけでしたでしょう。しかも、逃げ出す先が12光年先の惑星系ですから、そちらもいつまで襲撃を受けないで済むことやら判らない状態でした。
それを、あなた方が救ってくれたのです。私にはジラーラク連合を代表して感謝する資格はありませんが、私と乗員の心からの感謝を受け取ってください」
そう、そのニュースは数時間以内にジラーラク連合全体に届けられ、世紀の大ニュースとなった。まだイーターの犠牲になっていない、145億の連合の人々にとって長く垂れこめていた暗雲が一気に晴れた瞬間であった。
「われわれは軍人ですからその義務を果たすのみです。しかし、自分たちの活動が皆さんのお役に立てることはこの上ない喜びでもあります。ジースズ船長と乗員の皆さんの感謝は有難く受け取らせて頂きます」
皆川は頭を下げ続ける。
「さて、我々は任務に戻る必要があります。私どもも出来れば、今後10年余りも続くイーター殲滅作戦に貴ジラーラク連合も加わって頂きたいのです。まあ、その判断は政治家の役割りですが、いずれにせよ貴艦隊にとって我々のイーターに対する戦闘活動を視察することは意義あることと思います。
出来れば、今から座標を示す我々の艦の近くに移動して我々のやることを観察してください。ただし、作戦行動中には質問等のための連絡は最低限にお願いします」
これについては、ジラーラク連合本部からの指示もあり、ちょうど10隻の調査船と戦闘艦を2隻ずつ割り振って、おのおの最大限の観察とその記録を行った。その間にも、ジラーラク本部では受け取ったデータに基づいて、大規模なゼータ線照射砲とイーター吸引装置の製造グループが形成されて、早速設計図の検討と必要機器のリストアップが始まった。
さらに、ジラーラク連合の指導者会議が持たれて、銀河防衛軍への参加が決議され、ジラーラク星からの避難は銀河防衛軍によるイーター攻撃の状況をみて続けるか否かの判断をすることになった。
ガイア335号は、他の艦とタイミングを合わせて、超空間から出てきているイーターの腕の攻撃にかかった。イーターの腕は光速に近い速度で運動するが、超空間の出入口においては大きい運動はできないため、ゼータ照射の狙いをつけることは容易である。
ガイア335号がイーターの腕にゼータ線照射をすると、イーターの輪郭がぼやけて分解していくのであるが、同艦は最大加速により時速10万kmに達したのち定速で飛行しつつうねるイーターの腕を自動追尾しつつゼータ線照射を行っていく。
それを、ジラーラク連合の調査船と戦闘艦が追って記録・観察している。大体100万㎞程度追えばイーターは分断されて小イーターになるであろうと想定されていたが、実際には20万㎞にわたりそうした作業を行った後、イーターは分裂しはじめて細長く伸びていたものが、分断して長楕円形に形を変えていく。
すなわち小イーターへの分裂である。
これは、何カ所も同時にゼータ照射をした結果であろうと想定されたが、照射を始めて僅か2.5時間で小イーターへの分裂は成り立ってしまった。この事象は、ほぼイーターが腕を伸ばしていた5光年余の範囲のことであり、イーターの実際の腕の長さとしては実空間ではせいぜい100光分程度であるが超空間を経ているため全体としてこのような長さになっている。
ガイア型艦は、直ちに小イーターへのゼータ線照射にかかり、どんどんその生命反応を消していくが、その段階の説明を受けたジラーラク連合の艦船は、本部に対してその事象の報告し、それが明らかにイーター殲滅への最終段階に入り、ジラーラク星への脅威が去ったと判断できることも付け加えられた。
この時点を持って、ジラーラク連合はジラーラク星からの避難の停止を命じ、さらに逆に避難先からの帰還の手続きを開始した。さらに、ジラーラク星からアマンドラ星系への航行中の数10隻の避難船は引き返すことを命じられた。
避難船に乗っていた、12歳の少年カマラズラは姉や両親と共に、1時間ごとに入る音声による説明と映像による銀河防衛軍と名乗る艦船のイーターへの攻撃の様子を固唾をのんで見守っている。かれらは、ジラーラク星の首都の郊外の家とペットのアアン(小型の犬のような動物)であるマームを残してきたのだ。
ただ、マームについては、安楽死は余りにむごいということで、本当に万が一の可能性に賭けて仮死状態にする薬剤で眠らせており、15日以内に薬剤を注射して覚醒させ栄養を補給すれば助かるのだが、そのままにしておけばそのまま死んでしまう。
連合の船が、地球防衛軍の艦船と出会った知らせが入ったのは、彼らが出発して直後であり、連合が航行中の避難船に引き返すのを命じたのは、船が超空間じゃジャンプによりアマンドラ星系に入って惑星に向けて加速中であった。
「ただいま、連合よりジラーラク星の安全宣言が出されました。本船には、ジラーラク星に引き返すように命じられております。ただちに加速を停止・反転し、ジャンプ点に向かいます。大体4日後にはジラーラク星に帰還できる予定です」
船内アナウンスに、船内に大歓声が沸き起こった。カマラズラは姉と抱き合って喜んだが、彼にとってはペットのマームが助かったのが何より嬉しかった。
そういう意味では、運よく逃げ出せたものはマスコミの悪意のある取材を受けることになり、とりわけ年若いものは心に大きな傷を負うことになった。惑星シラントから父の人脈のお陰で逃げ出せた少女サーヤも、友人がことごとく死んだ中で、自分だけ助かったということで落ち込んでいる中に、マスコミの強引な取材で余計落ち込んでいた。
そうしたサーヤに対して母は諭して言った。
「サーヤ、あの場合、シラント星には私たちを含めてあれだけの人数を収容できる船しかなかったのよ。私たちは、お父様がいち早く情報を手に入れてすぐに宇宙船に席を取って、家に直ちに帰って私たちを連れて宇宙港に向かったおかげで助かりました。
だけど、同じタイミングで情報を手に入れた人は何百万と居たらしいわ。でも、私たち家族が助かったのは人脈がたまたまあり、それをお父様がすぐ判断してうまく使ってくれたからよ。つまり、運と実力と努力によるものだから、なにも恥ずることはないわ。あなたは、今後自分が助かる値打ちがあったことを証明すればいいのよ」
この母からの言葉で、サーヤはその後懸命に勉強するようになり、もともと優秀であったこともあり、後にジラーラク連合でも有数の学者になった。
このように、この2つの植民惑星がイーターの脅威が判っていながらほぼ全滅したことは、社会的な問題にもなったが、それ以上に6植民惑星のうち3惑星のほぼ全生命が失われたことは、ジラーラク連合全体に深刻な危機感を持たせることにもなった。
また、いままでの調査の結果から、イーターによって汚染された星域の分布から判断すれば、あきらかに次の標的は連合の母星であるジラーラク星系そのものであることは明らかであった。
イーターの対策は、まだ発見されてない現状でのところでは、逃げるのが唯一の選択枝であるが、その場合の避難先である他の植民惑星も安全という保証はないのだ。
ジラーラク連合はイーター対策についての努力を倍加するするとともに、ジラーラク星からイーター汚染区域から最も遠い、アマンドラ星系に向けて避難が、連合の総力を挙げて行われ始めた。その避難者数は避難を開始して3ヶ月後には月に3千万人であり、避難船を増やすことにより一月に3百万人ずつ避難可能人数は増えている。
また、当然調査の一環として、イーターに汚染された星域の方面には多数の調査船が送り出されており、イーター接近の調査を行っていたが、調査船ジラーサル23号が、ついに最新の超高感度重力波検出器によって細く伸びたイーターの先端がほぼ光速でまっしぐらに突進しているのを検知した。
直ちに超空間通信によって、ジラーラク星本部に連絡が行き、本部とも相談の上で調査船にできる熱線砲、電磁銃及び斥力装置による攻撃が実施されたが、今まで判っていた通り斥力装置によりその細い腕を曲げることはできるが、他は全く効果がないことが裏書された。
さらに、観測船、軍艦が集まっての調査と攻撃の結果、このイーターの腕が超空間から出てきていることが判明したが、やはりこれ攻撃による効果はない。結局、十隻の観測船及び戦闘艦が、イーターの検知された8光分程度の腕の周囲に集まったが、結局観測するだけになってしまった。
そうして、ジラーラク星の集まってきた船の研究チームと乗員が、焦りの中でじりじりした気持ちでいる内に、戦闘艦ジーザル225号がワープジャンプを検知した。
「ワープ反応近い!戦闘艦ジーザル227号及び338号は我が艦と共に座標〇〇〇、▽▽▽、×××を警戒せよ」
という軍艦グループの先任船長が命じた。
さらに「映像データ、及び何らかのデータが送られてきています」の知らせと共に、ジラーサル二三号の三次元受像機に映像が現れた。
それは明らかに酸素呼吸生物であり、黒髪、黒目でやや色の濃い肌色で灰色のユニフォームに身を包んだ男性であり、肌や髪、目の色はジラーラク人の中にも似たような種族がいるが、顔と体形はジラーラク人より細身である。
イーターを最初の発見した、調査船ジラーサル23号の船長のカーマスラン・ジースズ自身はやや青白い肌色でややずんぐりして髪は赤茶、目は灰色である。送られてきた映像は説明図で言語データを送るように促しており、同時に彼らが送ったデータを解析して翻訳するように要求している。
相手に害意は無いと判断されたのでそれに応えて、ジラーラク側からもデータが送られ、こうしたお互いの言語データをやり取りして1時間もしない内に英語・ジラーラク語の翻訳ソフトが出来上がり、早速コミュニケーションが始まった。
「こちら、銀河防衛軍イーター拡大防止部隊所属、ガイア335号艦皆川艦長だ。現在増殖移動中のイーターの移動を防ぐためにここに来た。貴船隊はイーター対策のために来たと考えるが、イーター殲滅の技術移転の用意がある」
このガイア335号艦からの連絡に、それを聞いていたジラーラク側船隊の乗員は息が詰まるような思いであった。その技術があれば、少なくともシラント星とヒタゲ星の犠牲は必要なかったのだ。
その思いを押し殺して、現状の司令船の立場にある調査船ジラーサル23号の船長は確認した。
「こちら、船団司令船、ジラーサル23号カーマスラン・ジースズ船長、イーター殲滅の技術を供与できるということは、貴艦のみでイーターを退治出来るということでしょうか」
「いえ、わが艦のみではありません。現在のところ、ここで増殖して次の惑星に移動しようとしているイーターに対しては本艦を含めて全部で5艦が作戦に従事しています。イーターは3ヶ所で超空間に潜って体を伸ばした形であなたたちの惑星のある星系にとりつこうとしています。
私の他の4僚艦はそれぞれ超空間の出口と入口で配置に付こうとしていますし、私の艦は最終の出口の担当です。私どもは、ゼータ線照射砲というイーターを分解することのできておりる砲を持っ、それでイーターの体を分断します。
イーターは分断されると分割して小イーターとなりますので、その全体をゼータ線照射すると分解して死にます。ただ、この方法はイーターが増殖して他の惑星系に移動中にしか使えません。惑星を取り込んだイーターについては、イーター吸引装置という、斥力装置により吸引して内部にゼータ照射をする炉を持っている装置によります。
この、ゼータ線照射砲とイーター吸引装置については設計データを今からお送りしますので、製造にかかってください。また、銀河防衛軍のイーター退治作戦についても、同様に今からデータをお送りします」
皆川艦長の映像を使いながらの説明を聞いていたジラーラク側戦隊では、皆川の言葉の重要ポイントごとにどよめきが起き、話が終わったあとは代表してジースズ船長から感謝の言葉が述べられた。
「皆川艦長、私のみならず我がジラーラク連合の全住民から感謝の言葉を述べさせてください。実は、わが連合ではすでに3つの惑星がイーターに飲み込まれその犠牲は85億人に達します。
最初の惑星のイーター襲撃は突然でしたが、2つの惑星ではすで最初の惑星のイーター襲撃は突然でしたが、2つの惑星ではすでに調査もして、対策を練っている所の襲撃でしたが結局助け出せたのは数千万人のみでした。
そして、今回はっきりしましたが、次の襲撃は我が連合の母星であるジラーラク星が目標となっています。未だ対応策は見出されていないことから、ジラーラク星から今現在総力を挙げて避難を行っている所で、すでに1億5千万人が避難しましたが、55億人の住民の避難のためにはさらに3年かかる予定でした。
しかし、今のイーターの状態を見ればたぶん2カ月以内にはジラーラク星は襲われるでしょうから、結局逃げ出せるのは2億人強だけでしたでしょう。しかも、逃げ出す先が12光年先の惑星系ですから、そちらもいつまで襲撃を受けないで済むことやら判らない状態でした。
それを、あなた方が救ってくれたのです。私にはジラーラク連合を代表して感謝する資格はありませんが、私と乗員の心からの感謝を受け取ってください」
そう、そのニュースは数時間以内にジラーラク連合全体に届けられ、世紀の大ニュースとなった。まだイーターの犠牲になっていない、145億の連合の人々にとって長く垂れこめていた暗雲が一気に晴れた瞬間であった。
「われわれは軍人ですからその義務を果たすのみです。しかし、自分たちの活動が皆さんのお役に立てることはこの上ない喜びでもあります。ジースズ船長と乗員の皆さんの感謝は有難く受け取らせて頂きます」
皆川は頭を下げ続ける。
「さて、我々は任務に戻る必要があります。私どもも出来れば、今後10年余りも続くイーター殲滅作戦に貴ジラーラク連合も加わって頂きたいのです。まあ、その判断は政治家の役割りですが、いずれにせよ貴艦隊にとって我々のイーターに対する戦闘活動を視察することは意義あることと思います。
出来れば、今から座標を示す我々の艦の近くに移動して我々のやることを観察してください。ただし、作戦行動中には質問等のための連絡は最低限にお願いします」
これについては、ジラーラク連合本部からの指示もあり、ちょうど10隻の調査船と戦闘艦を2隻ずつ割り振って、おのおの最大限の観察とその記録を行った。その間にも、ジラーラク本部では受け取ったデータに基づいて、大規模なゼータ線照射砲とイーター吸引装置の製造グループが形成されて、早速設計図の検討と必要機器のリストアップが始まった。
さらに、ジラーラク連合の指導者会議が持たれて、銀河防衛軍への参加が決議され、ジラーラク星からの避難は銀河防衛軍によるイーター攻撃の状況をみて続けるか否かの判断をすることになった。
ガイア335号は、他の艦とタイミングを合わせて、超空間から出てきているイーターの腕の攻撃にかかった。イーターの腕は光速に近い速度で運動するが、超空間の出入口においては大きい運動はできないため、ゼータ照射の狙いをつけることは容易である。
ガイア335号がイーターの腕にゼータ線照射をすると、イーターの輪郭がぼやけて分解していくのであるが、同艦は最大加速により時速10万kmに達したのち定速で飛行しつつうねるイーターの腕を自動追尾しつつゼータ線照射を行っていく。
それを、ジラーラク連合の調査船と戦闘艦が追って記録・観察している。大体100万㎞程度追えばイーターは分断されて小イーターになるであろうと想定されていたが、実際には20万㎞にわたりそうした作業を行った後、イーターは分裂しはじめて細長く伸びていたものが、分断して長楕円形に形を変えていく。
すなわち小イーターへの分裂である。
これは、何カ所も同時にゼータ照射をした結果であろうと想定されたが、照射を始めて僅か2.5時間で小イーターへの分裂は成り立ってしまった。この事象は、ほぼイーターが腕を伸ばしていた5光年余の範囲のことであり、イーターの実際の腕の長さとしては実空間ではせいぜい100光分程度であるが超空間を経ているため全体としてこのような長さになっている。
ガイア型艦は、直ちに小イーターへのゼータ線照射にかかり、どんどんその生命反応を消していくが、その段階の説明を受けたジラーラク連合の艦船は、本部に対してその事象の報告し、それが明らかにイーター殲滅への最終段階に入り、ジラーラク星への脅威が去ったと判断できることも付け加えられた。
この時点を持って、ジラーラク連合はジラーラク星からの避難の停止を命じ、さらに逆に避難先からの帰還の手続きを開始した。さらに、ジラーラク星からアマンドラ星系への航行中の数10隻の避難船は引き返すことを命じられた。
避難船に乗っていた、12歳の少年カマラズラは姉や両親と共に、1時間ごとに入る音声による説明と映像による銀河防衛軍と名乗る艦船のイーターへの攻撃の様子を固唾をのんで見守っている。かれらは、ジラーラク星の首都の郊外の家とペットのアアン(小型の犬のような動物)であるマームを残してきたのだ。
ただ、マームについては、安楽死は余りにむごいということで、本当に万が一の可能性に賭けて仮死状態にする薬剤で眠らせており、15日以内に薬剤を注射して覚醒させ栄養を補給すれば助かるのだが、そのままにしておけばそのまま死んでしまう。
連合の船が、地球防衛軍の艦船と出会った知らせが入ったのは、彼らが出発して直後であり、連合が航行中の避難船に引き返すのを命じたのは、船が超空間じゃジャンプによりアマンドラ星系に入って惑星に向けて加速中であった。
「ただいま、連合よりジラーラク星の安全宣言が出されました。本船には、ジラーラク星に引き返すように命じられております。ただちに加速を停止・反転し、ジャンプ点に向かいます。大体4日後にはジラーラク星に帰還できる予定です」
船内アナウンスに、船内に大歓声が沸き起こった。カマラズラは姉と抱き合って喜んだが、彼にとってはペットのマームが助かったのが何より嬉しかった。
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だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
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