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第5章 銀河宇宙との出会い
5.13 銀河防衛機構、活動開始2
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ミカサム導師の話に沿って具体的な研究の方針が立てられた。
まず確認されたのは、これらの研究が一刻を争うものであることで、いつ次のイーターの転移があるか判らない以上いずれも研究も致命的に必要であり、出来ることから順次実行していくことだ。
現在、すでに牧村モデルは精度こそ不十分だが組みあがっているので、すでに次の転移点の候補エリアが特定されているため、どのように転移が行われるのか多数の観測船の準備はされている。従って、その観測点の配置及び観測方法を数日中にも決める必要があり、これらを決めるのが第一のタスクになる。
さらに、イーターそのものの研究は観測データなくしては進めようがないということで、先の観測船と並行して、現にイーターが住みついている惑星系に観測船を派遣して様々な試験やデータ採取をする必要がある。
実際には、イーターの体を作っている成分の調査はすでになされており、それは真空と大差がないほど薄いものだが、その莫大な体積から重量としては百万トンくらいにはなる。
ただ、その成分が如何なるメカニズムで体として機能して、一種に知性をもち、物を動かす力がありかつ超空間を操るのかは判っていない。このイーターが住み着いているどの惑星を選び、どういうデータ収集、試験をするかを決めるが第2のタスクになる。
また、この中でもう一つ確認されたことは時間短縮のために、誠司のマドンナを積極的に使うことである。デカタル星の研究所の一般的なことを管理する研究所管理頭脳と研究頭脳の2つの惑星頭脳レベルの超人工頭脳が設置されているが、マドンナの利用については、研究頭脳が管理することになっている。
逆にこれらの質疑は必ず誠司を経由するので、誠司は研究所関係のすべての先進的な研究は掌握することになる。
イーターそのものの研究は、第一と第二のタスクを進める中で順次枝分かれするように計画された。
この研究については、第一研究所においてシーラムム帝国人研究者として、サーマル・デラン師という人が第一研究所長として決められ、研究分野の総責任者で研究総合所長であるミカサム導師は研究の方向については指導することになっている。
また、超空間そのものに関する研究は、先のイーターに関する研究とは基本的には無関係に進められる。誠司と恵一はこちらの方の研究を行う第二研究所に投入されることに決まり、シーラムム帝国の研究者で誠司たちに最初にコンタクトしたシルギア・セマラススが第二研究所長として指名された。
彼女は、いささか頭が固い欠点はあるが、組織上の事務的な指揮は問題ないし、研究の方向については誠司たちの意向が最大限尊重されることになっている。研究所そのものは、すでに現状の研究員2万人を収容するには十分なものが出来ており、必要になる都度5日で2千人収容の建物が出来ることになっている。
なお、軍事的な面はシーラムム帝国の皇帝の弟君である、マサーラ・シーラムム元帥がシーラムム帝国の防衛軍司令官を外れて、銀河防衛軍の指揮を執ることになり、研究陣から一応の研究成果が出て軍事的作戦を取れるようになるまでは艦隊行動等の訓練を行うようになっている。
ここに来て最大の驚きは誠司と恵一に、ロボットが割り当てられたことで、どういうわけかメイドの形をしている。誠司には身長は百五十五㎝あまり細身で、緑の髪に黒いぱっちりした瞳と緑の眉と、自然ではありえない取り合わせの色に、膝まである濃緑のスカートと制服に白のエプロンとまさにメイドそのものである。
そのメイドロボットは、ニコリと可愛い顔で笑って頭を下げる。
「誠司様、メリーでございます。お仕えできて光栄でございます」
誠司はびっくりして、目をぱちくりして、横にいるシルギア・セマラススに目で尋ねると、彼女は横にいる若い男に促す。
「はい、私はセマラスス所長の長年の部下のミックレ・セザムラです。これ、いや彼女はですね。地球のデータを様々に解析しまして、地球にはメイドという存在があることを知りまして、忙しいご主人をサポートするにはぴったりということで、アレンジしご用意しました。
我々は、自由に建物内の設備を使えるので研究には不自由がないのですが、誠司さん、恵一さんはこうしたそうした設備との通訳のためのサポートが必要であると考えてのことです。さて、こちらは。恵一さんに用意しました。セザンヌご挨拶を」
こちらは身長百七十㎝で少し小柄な恵一を考えてか、身長は百五十㎝余りで、すこしぽっちゃりきみで、青の髪と眉、すこしたれきみのバッチリした緑の目の可愛い顔にやはり形は同じだが濃紺の制服にエプロンだ。
「恵一様、私はセザンヌでございます。どうぞよろしくお願い致します」
そう言って、恵一に向かって丁寧に頭を下げる。あまり、女性に免疫のない恵一はすこし顔をあからめて、「い、いや、よろしくね。恵一です」と言って頭を下げる。
それを見て誠司もメリーに向かって「こちらもよろしくね。メリー」と頭を下げる。
ちょっと姿形には戸惑ったが、メリーもセザンヌも実に有能で、極めて有能な助手であった。なにより彼女らは研究所全体と統括する頭脳とつながっているため、研究所に誰かに会う場合、何かの設備があるかどうか確認してそれを使う場合、あるいは他部署に連絡を取る場合などには間違いない手配をしてくれ必要に応じて助言をくれる存在であり、彼女らなしには研究所での仕事は成り立たないほどであった。
ただ、この2人のメイドはあくまで、研究所の中及び、業務中の出先までの奉仕であった。これは誠司はいずれにせよ妻子がいる状態では当然であったが、恵一の場合は独り者であるため、宿舎内でも奉仕された方が何かと便利ではあった。しかし、誠司の妻のゆかりはそんな生活をしているといつまでも結婚しないからと反対して、誠司も同意してそのような決まりになった。恵一は少し残念そうであったが。
なお、誠司と一家は全部で百五十㎡程度の総面積のフラットを与えられている。5歳と星太と2歳のさやかは別のタイプの、ベビーシッターロボットがついているが、これはゆかりも昼間は仕事なので、地球においては人を雇う代わり、にロボットを使うということで供給されたものだ。
ロボットは、サヤという名前で大変有能であり星太には勉強も見てくれる。彼らの入居している建物は5階建てだが、建物各階の中央に小公園があって、樹木、芝生、池もあり幼児が遊ぶには十分である。
さらに、同じ棟には多くの幼児を連れた人々が入っているので、星太とさやかが遊ぶ同じ年齢層の子供も数人いて遊び相手には不自由はしない。
ゆかりは同僚の研究員と第一研究所に部屋を与えられたが、ひとまず地球での研究は棚上げにして、対イーターの研究に特化して研究することになる。そのため、現状ではゆかりは同僚とともにまず状況把握から入っている。
なお、最初のタスクとして挙げられていた、イーターの次の想定移転地点3カ所への調査船の装備と調査内容、また現にイーターに支配されている3惑星への調査船の装備と調査内容について3日間のマドンナも使って集中的な議論を行われた。
それに先立って、誠司はマドンナに、イーターについてその成分など判っていることをインプットして、無力化する方法を尋ねてみたが、結果は「データ不足」であった。それで、データとして何がいるか聞いてみた結果が、今回の調査船で調査する内容として以下に説明する種々の方法である。
まず、想定転移地点は、現状の粗いモデルで確率を計算し、3カ所を観測すれば九十八%は見逃すことはないということで決められた。観測船は大型船に小型機を複数積んだもの各地点で1隻として決められ、イーターがごく密度は低いとしても総体として数十万トンの質量をもつことから、転移現象は質量探知で十分検知は可能と考えられた。
さらにイーターの動きは、超感度かつ広域の重力探知機によって知ることができる。観測船は当然超空間ジャンプを出来るものであるため長さ2百m重量5万トンのもので、小型機を十基、超小型モニターを百基搭載している。
測定項目は重力波の他、星間物質の密度・成分の連続測定、電磁波、波長ごと光線、各種放射線、推力等に加え、8種類程度の波長での映像が連続で行えるようになっている。
なお、超空間への侵入を直接感知して観測できればいいのであるが、現状ではその方法がなく誠司たちのチームが今取り掛かっているが、完成し次第その機器を届けることになっている。
これらの測定結果は、超空間通信で基本的にはリアルタイムでデカタル星に送られることになっている。この調査のための待機は、場合によって非常に長期にわたるために人間もアバターも乗せないことになった。
次にイーターに支配されている惑星での調査は、ある程度の多様性を見るためにイーターの発生ゾーンに加え、その後転移した3カ所にそれぞれ4カ所で合計十二か所が選ばれた。
これは観測船は同じ仕様の船を各場所1隻で、この場合は到着後すぐに測定を開始するので人間の乗員のアバターを各三十人乗せることになった。小型機を十基、超小型モニターを百基搭載する点は同様で、測定項目も同じであるが、この場合は様々な次のような測定、及び試験をすることになっている。
1)イーターの体を形成する範囲の十日程度の連続測定、(1億㎞程度の距離から)
2)実験動物を乗せた船を近づけ体の中まで突入させて、イーターの体の挙動のモニター、実験動物状態、
船内の空気成分の連続測定、電磁波、波長ごと光線、各種放射線、推力等の調査
3)無人船を近づけ仲間で突入した場合の実験動物を除いた観測
4)無人船による熱線、さまざまな波長の光線、さまざまな放射線、けん引力による吸引による攻撃 とその
効果の調査
調査船は、誠司たちがデカタル星に着いた4日後に出発した。
誠司はスミラム帝国からの研究者ミモサスに、惑星調査艦ラムス323号艦長のジスカル3世について聞いてみた。ミモサス氏によると、ジスカル3世は4千億人と言われるスミラム帝国でもなかなかの有名人であり、高位の貴族でありながら惑星調査船の艦長を続けているいわば変わり者らしく、いくつもの重要な発見をしているらしい。
スミラム帝国では、とりわけ外宇宙に行く者達に機密保持の規則が厳しいらしいが、ジスカル三世クラスになると相当に広範な権限があるらしい。その意味でも、誠司にとってジスカル三世との出会いは幸運なものであったのだろう。
誠司も、最近はジスカル三世とは超空間通信がつながらなくなっており、これは彼が惑星調査艦ラムス323号を降りたせいだと思っている。誠司はとりあえず、ミモサス氏に誠司がここにいること、そして彼に感謝をしていたと伝えるようにお願いし、連絡がつくかどうかは定かではないがやってみるとの返答を得た。
さて、第二研究所の活動であるが、当面急ぎたいのは超空間とつながったときそれを直接に感知するシステムの構築、及び宇宙船内の攻撃の防止方法である。
後者についてはイーターを滅ぼす方法と同じである可能性があり、調査船による調査結果がでないと解決できない可能性が高い。従って、まず直接イーターに関係ない前者の解決に、恵一を始め研究室の皆と取り組む。まず誠司が皆に言う。
「通常空間に超空間が繋がったとき、それを検知する方法を開発したい。イーターが支配している惑星に近づいたとき、宇宙船内にいた乗り組み員がイーターに取り込まれたような症状を示し、生命力を吸い取られた。
イーターの体組織は極めて密度の低いガス状のものと考えられるので、これは直接宇宙船の中に入り込むことは不可能だし、宇宙服を着ていれば安全であるはずだ。したがって、イーターが生物に影響を及ぼす手法の可能性は2つある。
一つは、イーターの生命力を吸い取るメカニズムは物質的なシールドに影響されない、もう一つとしてイーターは超空間を通じて中に入り込んだかだ。
無論イーターは物質に浸透するという可能性も考えたがイーター構成成分の大きさから不可能だということが分かった。前者は斥力や吸引力を考えるとあり得る。また、これは力場を形成してそれで作用を及ぼしているわけだから、生命を吸い取るということが同じようにできないという証拠はない。
しかし、ここではイーターは超空間を経由して入り込んでいると仮定して、それを防ぐため超空間と通常空間が繋がったら検知する方法を開発しよう。いずれにしても、これは、イーターの転移を検知するためにも必要だから、開発そのものの必要性は高い」
まず確認されたのは、これらの研究が一刻を争うものであることで、いつ次のイーターの転移があるか判らない以上いずれも研究も致命的に必要であり、出来ることから順次実行していくことだ。
現在、すでに牧村モデルは精度こそ不十分だが組みあがっているので、すでに次の転移点の候補エリアが特定されているため、どのように転移が行われるのか多数の観測船の準備はされている。従って、その観測点の配置及び観測方法を数日中にも決める必要があり、これらを決めるのが第一のタスクになる。
さらに、イーターそのものの研究は観測データなくしては進めようがないということで、先の観測船と並行して、現にイーターが住みついている惑星系に観測船を派遣して様々な試験やデータ採取をする必要がある。
実際には、イーターの体を作っている成分の調査はすでになされており、それは真空と大差がないほど薄いものだが、その莫大な体積から重量としては百万トンくらいにはなる。
ただ、その成分が如何なるメカニズムで体として機能して、一種に知性をもち、物を動かす力がありかつ超空間を操るのかは判っていない。このイーターが住み着いているどの惑星を選び、どういうデータ収集、試験をするかを決めるが第2のタスクになる。
また、この中でもう一つ確認されたことは時間短縮のために、誠司のマドンナを積極的に使うことである。デカタル星の研究所の一般的なことを管理する研究所管理頭脳と研究頭脳の2つの惑星頭脳レベルの超人工頭脳が設置されているが、マドンナの利用については、研究頭脳が管理することになっている。
逆にこれらの質疑は必ず誠司を経由するので、誠司は研究所関係のすべての先進的な研究は掌握することになる。
イーターそのものの研究は、第一と第二のタスクを進める中で順次枝分かれするように計画された。
この研究については、第一研究所においてシーラムム帝国人研究者として、サーマル・デラン師という人が第一研究所長として決められ、研究分野の総責任者で研究総合所長であるミカサム導師は研究の方向については指導することになっている。
また、超空間そのものに関する研究は、先のイーターに関する研究とは基本的には無関係に進められる。誠司と恵一はこちらの方の研究を行う第二研究所に投入されることに決まり、シーラムム帝国の研究者で誠司たちに最初にコンタクトしたシルギア・セマラススが第二研究所長として指名された。
彼女は、いささか頭が固い欠点はあるが、組織上の事務的な指揮は問題ないし、研究の方向については誠司たちの意向が最大限尊重されることになっている。研究所そのものは、すでに現状の研究員2万人を収容するには十分なものが出来ており、必要になる都度5日で2千人収容の建物が出来ることになっている。
なお、軍事的な面はシーラムム帝国の皇帝の弟君である、マサーラ・シーラムム元帥がシーラムム帝国の防衛軍司令官を外れて、銀河防衛軍の指揮を執ることになり、研究陣から一応の研究成果が出て軍事的作戦を取れるようになるまでは艦隊行動等の訓練を行うようになっている。
ここに来て最大の驚きは誠司と恵一に、ロボットが割り当てられたことで、どういうわけかメイドの形をしている。誠司には身長は百五十五㎝あまり細身で、緑の髪に黒いぱっちりした瞳と緑の眉と、自然ではありえない取り合わせの色に、膝まである濃緑のスカートと制服に白のエプロンとまさにメイドそのものである。
そのメイドロボットは、ニコリと可愛い顔で笑って頭を下げる。
「誠司様、メリーでございます。お仕えできて光栄でございます」
誠司はびっくりして、目をぱちくりして、横にいるシルギア・セマラススに目で尋ねると、彼女は横にいる若い男に促す。
「はい、私はセマラスス所長の長年の部下のミックレ・セザムラです。これ、いや彼女はですね。地球のデータを様々に解析しまして、地球にはメイドという存在があることを知りまして、忙しいご主人をサポートするにはぴったりということで、アレンジしご用意しました。
我々は、自由に建物内の設備を使えるので研究には不自由がないのですが、誠司さん、恵一さんはこうしたそうした設備との通訳のためのサポートが必要であると考えてのことです。さて、こちらは。恵一さんに用意しました。セザンヌご挨拶を」
こちらは身長百七十㎝で少し小柄な恵一を考えてか、身長は百五十㎝余りで、すこしぽっちゃりきみで、青の髪と眉、すこしたれきみのバッチリした緑の目の可愛い顔にやはり形は同じだが濃紺の制服にエプロンだ。
「恵一様、私はセザンヌでございます。どうぞよろしくお願い致します」
そう言って、恵一に向かって丁寧に頭を下げる。あまり、女性に免疫のない恵一はすこし顔をあからめて、「い、いや、よろしくね。恵一です」と言って頭を下げる。
それを見て誠司もメリーに向かって「こちらもよろしくね。メリー」と頭を下げる。
ちょっと姿形には戸惑ったが、メリーもセザンヌも実に有能で、極めて有能な助手であった。なにより彼女らは研究所全体と統括する頭脳とつながっているため、研究所に誰かに会う場合、何かの設備があるかどうか確認してそれを使う場合、あるいは他部署に連絡を取る場合などには間違いない手配をしてくれ必要に応じて助言をくれる存在であり、彼女らなしには研究所での仕事は成り立たないほどであった。
ただ、この2人のメイドはあくまで、研究所の中及び、業務中の出先までの奉仕であった。これは誠司はいずれにせよ妻子がいる状態では当然であったが、恵一の場合は独り者であるため、宿舎内でも奉仕された方が何かと便利ではあった。しかし、誠司の妻のゆかりはそんな生活をしているといつまでも結婚しないからと反対して、誠司も同意してそのような決まりになった。恵一は少し残念そうであったが。
なお、誠司と一家は全部で百五十㎡程度の総面積のフラットを与えられている。5歳と星太と2歳のさやかは別のタイプの、ベビーシッターロボットがついているが、これはゆかりも昼間は仕事なので、地球においては人を雇う代わり、にロボットを使うということで供給されたものだ。
ロボットは、サヤという名前で大変有能であり星太には勉強も見てくれる。彼らの入居している建物は5階建てだが、建物各階の中央に小公園があって、樹木、芝生、池もあり幼児が遊ぶには十分である。
さらに、同じ棟には多くの幼児を連れた人々が入っているので、星太とさやかが遊ぶ同じ年齢層の子供も数人いて遊び相手には不自由はしない。
ゆかりは同僚の研究員と第一研究所に部屋を与えられたが、ひとまず地球での研究は棚上げにして、対イーターの研究に特化して研究することになる。そのため、現状ではゆかりは同僚とともにまず状況把握から入っている。
なお、最初のタスクとして挙げられていた、イーターの次の想定移転地点3カ所への調査船の装備と調査内容、また現にイーターに支配されている3惑星への調査船の装備と調査内容について3日間のマドンナも使って集中的な議論を行われた。
それに先立って、誠司はマドンナに、イーターについてその成分など判っていることをインプットして、無力化する方法を尋ねてみたが、結果は「データ不足」であった。それで、データとして何がいるか聞いてみた結果が、今回の調査船で調査する内容として以下に説明する種々の方法である。
まず、想定転移地点は、現状の粗いモデルで確率を計算し、3カ所を観測すれば九十八%は見逃すことはないということで決められた。観測船は大型船に小型機を複数積んだもの各地点で1隻として決められ、イーターがごく密度は低いとしても総体として数十万トンの質量をもつことから、転移現象は質量探知で十分検知は可能と考えられた。
さらにイーターの動きは、超感度かつ広域の重力探知機によって知ることができる。観測船は当然超空間ジャンプを出来るものであるため長さ2百m重量5万トンのもので、小型機を十基、超小型モニターを百基搭載している。
測定項目は重力波の他、星間物質の密度・成分の連続測定、電磁波、波長ごと光線、各種放射線、推力等に加え、8種類程度の波長での映像が連続で行えるようになっている。
なお、超空間への侵入を直接感知して観測できればいいのであるが、現状ではその方法がなく誠司たちのチームが今取り掛かっているが、完成し次第その機器を届けることになっている。
これらの測定結果は、超空間通信で基本的にはリアルタイムでデカタル星に送られることになっている。この調査のための待機は、場合によって非常に長期にわたるために人間もアバターも乗せないことになった。
次にイーターに支配されている惑星での調査は、ある程度の多様性を見るためにイーターの発生ゾーンに加え、その後転移した3カ所にそれぞれ4カ所で合計十二か所が選ばれた。
これは観測船は同じ仕様の船を各場所1隻で、この場合は到着後すぐに測定を開始するので人間の乗員のアバターを各三十人乗せることになった。小型機を十基、超小型モニターを百基搭載する点は同様で、測定項目も同じであるが、この場合は様々な次のような測定、及び試験をすることになっている。
1)イーターの体を形成する範囲の十日程度の連続測定、(1億㎞程度の距離から)
2)実験動物を乗せた船を近づけ体の中まで突入させて、イーターの体の挙動のモニター、実験動物状態、
船内の空気成分の連続測定、電磁波、波長ごと光線、各種放射線、推力等の調査
3)無人船を近づけ仲間で突入した場合の実験動物を除いた観測
4)無人船による熱線、さまざまな波長の光線、さまざまな放射線、けん引力による吸引による攻撃 とその
効果の調査
調査船は、誠司たちがデカタル星に着いた4日後に出発した。
誠司はスミラム帝国からの研究者ミモサスに、惑星調査艦ラムス323号艦長のジスカル3世について聞いてみた。ミモサス氏によると、ジスカル3世は4千億人と言われるスミラム帝国でもなかなかの有名人であり、高位の貴族でありながら惑星調査船の艦長を続けているいわば変わり者らしく、いくつもの重要な発見をしているらしい。
スミラム帝国では、とりわけ外宇宙に行く者達に機密保持の規則が厳しいらしいが、ジスカル三世クラスになると相当に広範な権限があるらしい。その意味でも、誠司にとってジスカル三世との出会いは幸運なものであったのだろう。
誠司も、最近はジスカル三世とは超空間通信がつながらなくなっており、これは彼が惑星調査艦ラムス323号を降りたせいだと思っている。誠司はとりあえず、ミモサス氏に誠司がここにいること、そして彼に感謝をしていたと伝えるようにお願いし、連絡がつくかどうかは定かではないがやってみるとの返答を得た。
さて、第二研究所の活動であるが、当面急ぎたいのは超空間とつながったときそれを直接に感知するシステムの構築、及び宇宙船内の攻撃の防止方法である。
後者についてはイーターを滅ぼす方法と同じである可能性があり、調査船による調査結果がでないと解決できない可能性が高い。従って、まず直接イーターに関係ない前者の解決に、恵一を始め研究室の皆と取り組む。まず誠司が皆に言う。
「通常空間に超空間が繋がったとき、それを検知する方法を開発したい。イーターが支配している惑星に近づいたとき、宇宙船内にいた乗り組み員がイーターに取り込まれたような症状を示し、生命力を吸い取られた。
イーターの体組織は極めて密度の低いガス状のものと考えられるので、これは直接宇宙船の中に入り込むことは不可能だし、宇宙服を着ていれば安全であるはずだ。したがって、イーターが生物に影響を及ぼす手法の可能性は2つある。
一つは、イーターの生命力を吸い取るメカニズムは物質的なシールドに影響されない、もう一つとしてイーターは超空間を通じて中に入り込んだかだ。
無論イーターは物質に浸透するという可能性も考えたがイーター構成成分の大きさから不可能だということが分かった。前者は斥力や吸引力を考えるとあり得る。また、これは力場を形成してそれで作用を及ぼしているわけだから、生命を吸い取るということが同じようにできないという証拠はない。
しかし、ここではイーターは超空間を経由して入り込んでいると仮定して、それを防ぐため超空間と通常空間が繋がったら検知する方法を開発しよう。いずれにしても、これは、イーターの転移を検知するためにも必要だから、開発そのものの必要性は高い」
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