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第5章 銀河宇宙との出会い
5.7 シーラムム帝国のラザニアム帝国断罪2
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シーラムム帝国の人々の一人当たりのGDPは十万CDを越えているらしいが、殆どの人がその寿命である百二十歳のうち百十歳程度まで健康であり、学ぶ時期である三十歳までを過ぎてから百歳までの七十年間を働くそうである。帝国の産業は当然高度に自動化されていて、実際のところ人に対する衣食住の原料に関しては人間が関わる必要がない。
一方で、デザイン、構成、調理、接客等に関しては人が取り仕切るようになっており多くの働き口を提供している。また場合によっては生物の生育に係りたいということから農業や漁業に携わる人も多く、これらの人間がかかわる働き口については生産性は独特の考え方になっている。なので、働きさえすれば生活していくことには全く不自由はない。
ここでは、過重な仕事上の要求はないし、過労はあり得ず基本的には仕事で大きなストレスを抱えることもない。これは、一つには自動生産される生活の必需品が極めて低いコスト設定をされて、一方で人の手が加わったものには高い値段が許容されているが故である。
こうした社会では当然レジャーは大変盛んであり、プロによるスポーツ観戦を含むゲーム等様々な創作物などの情報機器を通したもの、あるいはスポーツなど自分の体を動かすもの、さらには自然(当然改造されたものだが)の中のトレッキング等などすべての人が楽しんでいる。
しかし中には、厳しい仕事・専門性のある仕事を求める人もおり、こうした人は、調査・計画・設計・研究開発や政府の仕事などに携わっている。勤務時間は昼食をはさんで午前3時間、午後3時間であるが当然サービスに係る人々の勤務時間は変則で異なる場合が多いようだがいずれにしても1日6時間で4日働き2日休みのペースであるとのことである。
このように、シーラムム帝国の人々は自分のしたい仕事を健康の続く限りして、そのことで暮らしに不自由がないだけの収入もあって余暇のレジャーは種類が多く選択も自由という生活はある意味で地球人は描くユートピアなのかもしれない。
誠司は、シーラムム帝国で研究開発を行う部門に案内されて、それがどのように進められているかを確かめた。そのやり方はまず膨大なデータベースありきのもので、総べてのノウハウはデータベース化されて、シーラムム帝国社会全体で把握されている。
そのデータベースは帝国全体を把握している中央頭脳で管理されており、さらに惑星ごとの惑星頭脳でも管理されて、それに入るには何段階もの許可コードがあって個人毎に与えられている。こうした開発に従事できるのはシーラムム帝国人でも、百万人に一人の選ばれた者たちであり、能力はあっても長く苦しい研究生活に自らが入ろうという適性のあるものはごく少ないのだ。
研究テーマはデータベース上でリスト化されており、通常は大きな最終目的に対して中間で必要な様々な細かい開発テーマが与えられている。解決されたものはこれも直ちにデータベース化されるので、すでに解決されたものを再度開発にかかることはない。
誠司は、開発部門のシルギア・セマラススという先端技術の開発の責任者から、今の開発のテーマ及び開発のやり方を聞こうとするが、まず彼女から誠司が今まで開発してきたものを紹介するように迫られる。
シーラムム帝国人は、目は細く鼻も低く小柄で外見上は美しいとは言えないが、全体の配置に愛嬌があって細い目も良く動き愛嬌があり、また女性は男の場合に頭が皮のようなもので覆われているのに対して、太めの髪に覆われているように見える。
誠司は自分で開発したものということで、全部を言うわけにもいかないだろうがということで、まず重力エンジンを紹介した。理論的な考察から装置の概念図、製作図も一部マドンナで示すと、シルギアはすこし怒ったような顔になる。
「重力エンジンは私も無論知っているけれど、これほどのものを個人で出来るわけはないでしょう。あなたが開発したというのはどの部分よ?」
じゃあということで、理論構築の部分を示したところ、やはり不信感に満ちている。
「この元になった理論から、これほどの理論上の跳躍それも正しい跳躍はあり得ないわ。それが出来るのなら、今私たちがぶつかっている問題だって解けるでしょう」
そう言って、出来ないだろうとばかりに彼女が示したのは、誠司たちがその全体像が判らないなりに少しの応用を行っている超空間の姿の全体像を理論的に示したものだ。無論、英語に翻訳したものを示してくれているが、誠司もしばらくは意味が掴めず1時間ほど恵一と議論しつつ眺めていて、ようやくその意味することがわかった。
誠司たちの極度の集中を見てシルギアはしばらく席を外し、やがて帰ってきたが、今度は誠司たちに質問攻めにされて、その理解力の高さに自分も引き込まれていくのがわかった。ようやく全体像を掴んだ誠司はシルギアを賞賛して聞く。
「超空間に関しては、部分的な利用はしていますが、要は隅っこをひっかいていただけで、全体像については想像もできない彼方だと思っていました。しかしながら、ここまで全体の構造を掴めていれば、今後の応用は無限にありますね。素晴らしい成果です。
それで、今の開発テーマというのは、要はこの中で、通常空間とこのいわゆる超空間の相対的な位置づけの手法ということですね?」
質問に驚いたシルギアが言う。
「この成果は、2万年の研究の結果よ。よくあの時間でこれだけのものを把握できたわね。まして、私たちの今のテーマが判るなんて」
「いや有難い、これだけの成果にたどり着くのは僕の一生では無理だったでしょうね。しかし、通常空間と超空間の相対的な位置づけが出来ないと結局殆ど今の応用、すなわち使えるのはアバウトなジャンプと通信程度ですね。このテーマ、2~3日預からせてください」
誠司の言葉にシルギアが怒って言う。
「2~3日?何を言っているのよ。私は先生からこれを引き継いで二十年かかってまだ殆どゴールが見えていないのよ。あなたたちのような、昨日今日宇宙に出たような種族が2~3日預からせてください?」
誠司も困って返す。
「生意気な事を言って済みません。まあ、少しつつかせてください。3日後にまた来ますのでお話させてください」
「まあ、いいわよ。私もお客さんに失礼なことを言いました。3日後でその後でも私はここにいますので」
シルギアは冷静さを取り戻して言う。その後、誠司と恵一はホテルに閉じこもって、他のメンバーが市内の見物に行こうと誘っても全く出て来なくなった。
シーラムム帝国議会の特別聴聞会、実質の裁判が始まった。
被告はラザニアム帝国であり出席しているのは何と皇帝自らと宰相、軍務大臣の3名であり、参考人として地球から外務大臣ファアガ・フェルナンドにシーラムム帝国担当になったマリア・キャンベルと、シャーナ人代表スズリス・マテルスに議会議長のラパス・グゲンゴ、さらに出席を希望した同盟国の十二か国の代表である。
こうした裁判には検事役と弁護士役がおり、いずれもシーラムム帝国人であって検事がサニヤ・ミズマシイ、弁護士がパースラム・リイースムである。最初に議長からこの特別聴聞会の目的と意義について話があった。
「この特別聴聞会は、ラザニアム帝国なる大きな人口を抱え、かつ進んだ技術を持つ政体が過去数十の惑星に住む知的種族を滅ぼしてその惑星を奪い取った、さらには被支配下に置こうとして抵抗するこれもまた知的種族を滅ぼし、その破壊の過程で惑星を居住に耐えられないものとした。
現在判っている範囲では知的種族を滅ぼして奪った惑星が55、支配下におこうとして逆らったものを滅ぼした種族と居住に耐えられないようにした惑星が6つである。調査の結果、これらの犠牲になった種族の人口は平均して15億人であるからラザニアム帝国が滅ぼした種族の人口は総計900億人を上回る。
さらに、35の知的種族を支配下に置いて明らかに搾取し、逆らう者または背かせないための見せしめのために意図的にその構成員を殺している。
こうした悪質な事例は、二千百年前のサザラジア共和国事案以来である。なお、サザラジア共和国は裁こうとした我が帝国の聴聞に応じず攻撃してきたので、悪質性がきわめて高い事と、反省の色がないことを鑑み、ミマスス帝国と共同でその構成員240億人は抹殺し、その居住惑星15個は被害を受けた諸惑星に分配された。
なお、ラザニアム帝国は、抹殺しようとした地球人に敗れ、結果として主要軍備である戦闘艦を奪い取られ、奪い取った惑星61はすでに地球人により奪われている。さらに、隷属させて搾取していた35種族についてもすでに地球人の手で解き放たれ、さらに地球の圧力のもとに隷属種族に対してその損害に対する賠償を続けている。
本特別聴聞会において、ラザニアム帝国の罪を明らかにして、その罰を決めることになる。この罰及びそれに伴う措置においては少なくとも恒久的に同じことをできないようにする必要がある。
さらに、わが帝国が自らの支配下にないラザニアム帝国に対してこのような裁きを行う根拠であるが、わが帝国も加わっている6つの大規模星間国家による銀河評議会において、量刑は決まっていないが民族抹殺は最高の刑に処すとの取り決めがあり、量刑は聴聞会によって定めるとある。では検事は告発を行うように」
検事サニヤ・ミズマシイが立ち上がる。
「500億の人口を抱え長い歴史を持つラザニアム帝国はその狭い宙域において、国力及び軍事的に絶対的な存在であった。それをいいことに、比較的低い文明段階にある場合には防げないような軍事力を持ってその居住惑星を奪う目的で、予告も無く侵攻し多くの知的生物を絶滅させるという蛮行を行った。
さらには、比較的低レベルの戦力を退けた知的生物には隷属を要求しそれを拒んだものをまた滅ぼした。加えて、自ら高い経済力を持っているにもかかわらず、隷属種族から様々な物資を収奪して、拒むまたは抵抗するとその一部を殺した。
その動機は、もっぱらより物質的に豊かになろうという利己的なもので、実際に自らの民族として、一時期は80もの惑星に居住していたが、それに比して全人口は520億であり、明らかにそのような数の惑星は必要ない。こうした蛮行の動機は、明らかにその度し難い貧欲のためである。
現在、明らかになっているだけでも61の知的種族を絶滅させようとしたが、その内1種族のみはわずかな数が生き残った結果になっている。その過程で虐殺した知的生物は900億人に達する。
銀河評議会、並びに我が帝国法では民族虐殺は最大の罪と定義しているが、これだけの虐殺は類例がなく、これに対する罰は唯一、種族全体の命で贖うのみである」
被告席のラザニアム帝国の軍務大臣が興奮して立ち上がろうとするが、横の皇帝が抑える。
次は弁護人のパースラム・リイースムである。
「まず事実関係について、最初に議長の述べられたラザニアム帝国の行為は正しいものですか?これはまず、ラザニアム帝国の被告人に答えてもらおう」
ラザニアム帝国の宰相が答える。
「民族、惑星数は正しい。ただし、殺した数は855億人である」
弁護人がさらに聞く。
「次は同じ質問に対する答えを地球の参考人に答えてもらおう」
マリア・キャンベルが答える。
「我々が知る限りでは正しいです」
弁護人が尚も聞く。「では、地球の参考人にお聞きしたい。地球がまず絶滅させた種族の惑星55個をラザニアム帝国から取り上げ、自ら10を取り、残り45個については帝国には隷属していた種族に分配したこと、さらに6つのこれら種族のものであった惑星を返させたということ、その結果、ラザニアム帝国は自ら発見して開発した惑星のみを居住惑星としていることは間違いないですか?」
「はい、基本的には間違いありません、しかし、ラザニアム帝国の現在の居住惑星に、過去知的生物がいなかったかどうかはわかりません」
再度マリア・キャンベルが答える。
続けて弁護人の質問である。
「再度、地球の参考人にお聞きします。ラザニアム帝国の戦闘艦を全て奪い取り、隷属していた種族に戦闘艦を作らせないように監視させているということ、並びに隷属していた種族に賠償金を払うようにさせているのは正しいですか?」
これに、再度マリア・キャンベルが答える。
「戦闘艦は、自己防衛のため24艦をラザニアム帝国に残しています。ラザニアム帝国が戦闘艦を建造しないように監視を我々の友好同盟諸国、これは隷属していた種族の国ですが、彼らに主としてお願いしていること、並びに賠償金の件はその通りです」
さらに、弁護人は賠償金の金額とそれが帝国、支払わる側にどの重みのものか及び支払期間を聞いて、出席した地球の友好諸国及び出席していない諸国に関してはマリア・キャンベルから答えた。
一方で、デザイン、構成、調理、接客等に関しては人が取り仕切るようになっており多くの働き口を提供している。また場合によっては生物の生育に係りたいということから農業や漁業に携わる人も多く、これらの人間がかかわる働き口については生産性は独特の考え方になっている。なので、働きさえすれば生活していくことには全く不自由はない。
ここでは、過重な仕事上の要求はないし、過労はあり得ず基本的には仕事で大きなストレスを抱えることもない。これは、一つには自動生産される生活の必需品が極めて低いコスト設定をされて、一方で人の手が加わったものには高い値段が許容されているが故である。
こうした社会では当然レジャーは大変盛んであり、プロによるスポーツ観戦を含むゲーム等様々な創作物などの情報機器を通したもの、あるいはスポーツなど自分の体を動かすもの、さらには自然(当然改造されたものだが)の中のトレッキング等などすべての人が楽しんでいる。
しかし中には、厳しい仕事・専門性のある仕事を求める人もおり、こうした人は、調査・計画・設計・研究開発や政府の仕事などに携わっている。勤務時間は昼食をはさんで午前3時間、午後3時間であるが当然サービスに係る人々の勤務時間は変則で異なる場合が多いようだがいずれにしても1日6時間で4日働き2日休みのペースであるとのことである。
このように、シーラムム帝国の人々は自分のしたい仕事を健康の続く限りして、そのことで暮らしに不自由がないだけの収入もあって余暇のレジャーは種類が多く選択も自由という生活はある意味で地球人は描くユートピアなのかもしれない。
誠司は、シーラムム帝国で研究開発を行う部門に案内されて、それがどのように進められているかを確かめた。そのやり方はまず膨大なデータベースありきのもので、総べてのノウハウはデータベース化されて、シーラムム帝国社会全体で把握されている。
そのデータベースは帝国全体を把握している中央頭脳で管理されており、さらに惑星ごとの惑星頭脳でも管理されて、それに入るには何段階もの許可コードがあって個人毎に与えられている。こうした開発に従事できるのはシーラムム帝国人でも、百万人に一人の選ばれた者たちであり、能力はあっても長く苦しい研究生活に自らが入ろうという適性のあるものはごく少ないのだ。
研究テーマはデータベース上でリスト化されており、通常は大きな最終目的に対して中間で必要な様々な細かい開発テーマが与えられている。解決されたものはこれも直ちにデータベース化されるので、すでに解決されたものを再度開発にかかることはない。
誠司は、開発部門のシルギア・セマラススという先端技術の開発の責任者から、今の開発のテーマ及び開発のやり方を聞こうとするが、まず彼女から誠司が今まで開発してきたものを紹介するように迫られる。
シーラムム帝国人は、目は細く鼻も低く小柄で外見上は美しいとは言えないが、全体の配置に愛嬌があって細い目も良く動き愛嬌があり、また女性は男の場合に頭が皮のようなもので覆われているのに対して、太めの髪に覆われているように見える。
誠司は自分で開発したものということで、全部を言うわけにもいかないだろうがということで、まず重力エンジンを紹介した。理論的な考察から装置の概念図、製作図も一部マドンナで示すと、シルギアはすこし怒ったような顔になる。
「重力エンジンは私も無論知っているけれど、これほどのものを個人で出来るわけはないでしょう。あなたが開発したというのはどの部分よ?」
じゃあということで、理論構築の部分を示したところ、やはり不信感に満ちている。
「この元になった理論から、これほどの理論上の跳躍それも正しい跳躍はあり得ないわ。それが出来るのなら、今私たちがぶつかっている問題だって解けるでしょう」
そう言って、出来ないだろうとばかりに彼女が示したのは、誠司たちがその全体像が判らないなりに少しの応用を行っている超空間の姿の全体像を理論的に示したものだ。無論、英語に翻訳したものを示してくれているが、誠司もしばらくは意味が掴めず1時間ほど恵一と議論しつつ眺めていて、ようやくその意味することがわかった。
誠司たちの極度の集中を見てシルギアはしばらく席を外し、やがて帰ってきたが、今度は誠司たちに質問攻めにされて、その理解力の高さに自分も引き込まれていくのがわかった。ようやく全体像を掴んだ誠司はシルギアを賞賛して聞く。
「超空間に関しては、部分的な利用はしていますが、要は隅っこをひっかいていただけで、全体像については想像もできない彼方だと思っていました。しかしながら、ここまで全体の構造を掴めていれば、今後の応用は無限にありますね。素晴らしい成果です。
それで、今の開発テーマというのは、要はこの中で、通常空間とこのいわゆる超空間の相対的な位置づけの手法ということですね?」
質問に驚いたシルギアが言う。
「この成果は、2万年の研究の結果よ。よくあの時間でこれだけのものを把握できたわね。まして、私たちの今のテーマが判るなんて」
「いや有難い、これだけの成果にたどり着くのは僕の一生では無理だったでしょうね。しかし、通常空間と超空間の相対的な位置づけが出来ないと結局殆ど今の応用、すなわち使えるのはアバウトなジャンプと通信程度ですね。このテーマ、2~3日預からせてください」
誠司の言葉にシルギアが怒って言う。
「2~3日?何を言っているのよ。私は先生からこれを引き継いで二十年かかってまだ殆どゴールが見えていないのよ。あなたたちのような、昨日今日宇宙に出たような種族が2~3日預からせてください?」
誠司も困って返す。
「生意気な事を言って済みません。まあ、少しつつかせてください。3日後にまた来ますのでお話させてください」
「まあ、いいわよ。私もお客さんに失礼なことを言いました。3日後でその後でも私はここにいますので」
シルギアは冷静さを取り戻して言う。その後、誠司と恵一はホテルに閉じこもって、他のメンバーが市内の見物に行こうと誘っても全く出て来なくなった。
シーラムム帝国議会の特別聴聞会、実質の裁判が始まった。
被告はラザニアム帝国であり出席しているのは何と皇帝自らと宰相、軍務大臣の3名であり、参考人として地球から外務大臣ファアガ・フェルナンドにシーラムム帝国担当になったマリア・キャンベルと、シャーナ人代表スズリス・マテルスに議会議長のラパス・グゲンゴ、さらに出席を希望した同盟国の十二か国の代表である。
こうした裁判には検事役と弁護士役がおり、いずれもシーラムム帝国人であって検事がサニヤ・ミズマシイ、弁護士がパースラム・リイースムである。最初に議長からこの特別聴聞会の目的と意義について話があった。
「この特別聴聞会は、ラザニアム帝国なる大きな人口を抱え、かつ進んだ技術を持つ政体が過去数十の惑星に住む知的種族を滅ぼしてその惑星を奪い取った、さらには被支配下に置こうとして抵抗するこれもまた知的種族を滅ぼし、その破壊の過程で惑星を居住に耐えられないものとした。
現在判っている範囲では知的種族を滅ぼして奪った惑星が55、支配下におこうとして逆らったものを滅ぼした種族と居住に耐えられないようにした惑星が6つである。調査の結果、これらの犠牲になった種族の人口は平均して15億人であるからラザニアム帝国が滅ぼした種族の人口は総計900億人を上回る。
さらに、35の知的種族を支配下に置いて明らかに搾取し、逆らう者または背かせないための見せしめのために意図的にその構成員を殺している。
こうした悪質な事例は、二千百年前のサザラジア共和国事案以来である。なお、サザラジア共和国は裁こうとした我が帝国の聴聞に応じず攻撃してきたので、悪質性がきわめて高い事と、反省の色がないことを鑑み、ミマスス帝国と共同でその構成員240億人は抹殺し、その居住惑星15個は被害を受けた諸惑星に分配された。
なお、ラザニアム帝国は、抹殺しようとした地球人に敗れ、結果として主要軍備である戦闘艦を奪い取られ、奪い取った惑星61はすでに地球人により奪われている。さらに、隷属させて搾取していた35種族についてもすでに地球人の手で解き放たれ、さらに地球の圧力のもとに隷属種族に対してその損害に対する賠償を続けている。
本特別聴聞会において、ラザニアム帝国の罪を明らかにして、その罰を決めることになる。この罰及びそれに伴う措置においては少なくとも恒久的に同じことをできないようにする必要がある。
さらに、わが帝国が自らの支配下にないラザニアム帝国に対してこのような裁きを行う根拠であるが、わが帝国も加わっている6つの大規模星間国家による銀河評議会において、量刑は決まっていないが民族抹殺は最高の刑に処すとの取り決めがあり、量刑は聴聞会によって定めるとある。では検事は告発を行うように」
検事サニヤ・ミズマシイが立ち上がる。
「500億の人口を抱え長い歴史を持つラザニアム帝国はその狭い宙域において、国力及び軍事的に絶対的な存在であった。それをいいことに、比較的低い文明段階にある場合には防げないような軍事力を持ってその居住惑星を奪う目的で、予告も無く侵攻し多くの知的生物を絶滅させるという蛮行を行った。
さらには、比較的低レベルの戦力を退けた知的生物には隷属を要求しそれを拒んだものをまた滅ぼした。加えて、自ら高い経済力を持っているにもかかわらず、隷属種族から様々な物資を収奪して、拒むまたは抵抗するとその一部を殺した。
その動機は、もっぱらより物質的に豊かになろうという利己的なもので、実際に自らの民族として、一時期は80もの惑星に居住していたが、それに比して全人口は520億であり、明らかにそのような数の惑星は必要ない。こうした蛮行の動機は、明らかにその度し難い貧欲のためである。
現在、明らかになっているだけでも61の知的種族を絶滅させようとしたが、その内1種族のみはわずかな数が生き残った結果になっている。その過程で虐殺した知的生物は900億人に達する。
銀河評議会、並びに我が帝国法では民族虐殺は最大の罪と定義しているが、これだけの虐殺は類例がなく、これに対する罰は唯一、種族全体の命で贖うのみである」
被告席のラザニアム帝国の軍務大臣が興奮して立ち上がろうとするが、横の皇帝が抑える。
次は弁護人のパースラム・リイースムである。
「まず事実関係について、最初に議長の述べられたラザニアム帝国の行為は正しいものですか?これはまず、ラザニアム帝国の被告人に答えてもらおう」
ラザニアム帝国の宰相が答える。
「民族、惑星数は正しい。ただし、殺した数は855億人である」
弁護人がさらに聞く。
「次は同じ質問に対する答えを地球の参考人に答えてもらおう」
マリア・キャンベルが答える。
「我々が知る限りでは正しいです」
弁護人が尚も聞く。「では、地球の参考人にお聞きしたい。地球がまず絶滅させた種族の惑星55個をラザニアム帝国から取り上げ、自ら10を取り、残り45個については帝国には隷属していた種族に分配したこと、さらに6つのこれら種族のものであった惑星を返させたということ、その結果、ラザニアム帝国は自ら発見して開発した惑星のみを居住惑星としていることは間違いないですか?」
「はい、基本的には間違いありません、しかし、ラザニアム帝国の現在の居住惑星に、過去知的生物がいなかったかどうかはわかりません」
再度マリア・キャンベルが答える。
続けて弁護人の質問である。
「再度、地球の参考人にお聞きします。ラザニアム帝国の戦闘艦を全て奪い取り、隷属していた種族に戦闘艦を作らせないように監視させているということ、並びに隷属していた種族に賠償金を払うようにさせているのは正しいですか?」
これに、再度マリア・キャンベルが答える。
「戦闘艦は、自己防衛のため24艦をラザニアム帝国に残しています。ラザニアム帝国が戦闘艦を建造しないように監視を我々の友好同盟諸国、これは隷属していた種族の国ですが、彼らに主としてお願いしていること、並びに賠償金の件はその通りです」
さらに、弁護人は賠償金の金額とそれが帝国、支払わる側にどの重みのものか及び支払期間を聞いて、出席した地球の友好諸国及び出席していない諸国に関してはマリア・キャンベルから答えた。
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