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第4章 人類の宇宙への進出
4.5 反ラザニアム帝国連合の結成
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皇帝が尋ねる。
「して、軍務大臣、現状のところ彼らの艦隊がこの帝都惑星に接近し、我が防御衛星網を破壊するのを防ぐ方法は無いのだな?」
「はい、残念ながら」
軍務大臣の答えに皇帝が続いて指示する。
「彼らは、帝国に隷属する種族を解放するからには、たぶん超空間ジャンプの技術も与えるであろう。その場合、隷属種族はその恨みから、この惑星を害しようとすることは十分考えられる。
その場合には防衛衛星は、この惑星二十五億の生命を守るために必要である。さらに、防御衛星はその名の通り、防御のための機能しかないから、彼らまたは隷属種族を積極的に害することはあり得ない。この旨を伝えて破壊を思いとどまるように交渉せよ。
また、この点は我々に残されるという二十四個の惑星も同様で、防御のための艦隊を保持するよう交渉せよ。彼らは、我々とは全く違うメンタリティを持っている。我々が彼らの立場であれば、間違いなく、わが帝国は滅ぼされたであろう。
しかし、彼らは我々に対して生き延びることの出来る手法を提案している。してみれば、我々の住民が害されることは好まぬはずだ。この点は、最大限利用するべきである。承知したか?」
「はい、陛下、承知いたしました。その方向で交渉いたします。では、基本的にはかれらの要求である、隷属種族の解放と賠償金の支払い、居住惑星の明け渡しは従われるわけですね?」
宰相が確認する。
「それ以外に方法がないし、彼らには強制する手段がある。ここで抵抗することは、対象の惑星の臣民の虐殺に繋がる恐れがある」
皇帝の言葉に、軍務大臣が異を唱える。
「しかし、このような甘い条件を出して来る彼らにそれは出来ないのでは?」
「確かに、彼ら自身ではそうであろう。しかし、余は、彼らがサルベージした我が帝国の戦闘艦を隷属種族に渡すと見ている。そして、わが帝国が彼らの条件に従わない場合、これは賠償金の支払いも含むが、その措置を彼らに任せる形を取るだろうな」
皇帝の返事に軍務大臣はうやうやしく頷く。
「おっしゃる通りです。今の我々の隷属種族への扱いからすると、我が民の虐殺位はやりそうですな」
「従って、自衛の手段を残すことを交渉で勝ち取る必要があるが、他の項目は積極的に従え。
賠償金はむしろわが方から算出してそれをベースに交渉した方が良い。代価としては、核融合発電等の機器によるものとしたい。その方向で各卿は努力してくれ」
皇帝の言葉で、各閣僚はそれぞれの役割を果たすために散っていった。
数日後、超空間ジャンプで帝都星系に現れたA遠征艦隊に対して、ラザニアム帝国の非武装船からの呼びかけがあり、その結果ガイア型艦での交渉が行われた。
帝国側からは、地球艦隊の要求を基本的に飲むことが伝えられ、その引き換えに帝国にも自衛手段を残してほしいの要請があり、西野大将は地球との協議の結果、超空間通信の存在を隠すために彼の独断の態を装ってこの要請を受け入れた。
ー*-*-*-*-*-*-*-
エクズス星は、恒星エクザスルを周回する惑星であり、エクズス人25億人の住処である。
恒星エクザスルは太陽よりやや大きめであり、全部で12の惑星を持っている。酸素と水がある惑星はエクズス星のみであるが、この星は9割が海面であり陸地は少ない。
エクズス人は、やはり地球人と同様に男女の区別があって、エクズス星が地球と同程度の直径であるものの比重が大きいため重力は1割ほど大きいために、身長は地球人よりかなり低めの筋肉質で、肩幅が広くどちらかというとずんぐりしている。
また、毛深い体毛は茶色で肌色はやや浅黒く、しかも手を動かして物を作るのが好きで得意ときているので地球のファンタジーの世界でいうドワーフに似ている。彼らの歴史は蒸気機関が開発されてからも2万年を超えており、金属加工は大得意で機械も大変複雑なものも平気で作ることができる。
電気・電子技術もそれなりに発達しているが、核技術については、核分裂によって蒸気を作り発電をするという点では、地球のちょっと前までの原子力発電の技術と同等のものであった。しかしこの方法で千年以上の歴史を持っているため、地球に比べると大幅に洗練されたもので安全性も高いうえ、核廃棄物の処理法も持っている。
また、過密な地表人口を養える農業技術も極めて発達しており、さらに海洋を有効に利用して海草の栽培や海洋牧場が発達して、食料に不足はない。宇宙に関する技術としては小型原子力機関による重力エンジンの実用化は出来たが、超空間ジャンプは開発できなかった。
エクズス人は好戦的ではなく、ほとんど武器らしきものが無い状態で、250年前にラザニアム帝国の侵攻を受けて、最初の十艦の戦闘艦は何とか体当たりの自殺攻撃で殲滅したが、その後百艦余りの戦闘艦が押し寄せてきたため、抵抗をあきらめてその支配下に入ったものだ。この頃は、帝国も最初の艦隊が排除された場合は、規模の大きな艦隊を送って屈服を迫ったようだ。
その結果、エクズス人は隣に恒星系に得た植民惑星を奪われ、その恒星系にあった資源の豊富な鉱山惑星も奪われて、すべての人がエクズス星に押し込められることになった。
ラザニアム帝国の支配下に入った結果、最大の問題は、核分裂物質と鉱物資源が足りないことになった。ラザニアム帝国からは、税としてさまざまな工業製品を作ることを強制され、そのためのみの必要な資源はかろうじて供給されるが、自分たちが使う資源は殆どリサイクルで賄なうことになった。
この点で深刻であったのは核分裂物質の供給不足であり、このため常にエネルギー不足であった。このエネルギー不足のため、税として供給する必要のある機械部品等も製作が滞ることもあったが、その時はラザニアム帝国の小型艇に見せしめにいくつかの都市が熱線銃で攻撃されて、死者も毎回数十人のオーダーで生じている。
このため、自分たちの生活を犠牲にしても帝国の要求に応じざるを得なかったが、このような支配体系であったため、エクズス人のラザニアム帝国人への恨みは根深いものがあった。
しかし、そのラザニアム帝国のエクズス人への支配が突然終わる日が来た。
エクズス人の自治政府主席であるルルカム・ジクラムスは、突然ラザニアム帝国総督から呼び出され、女性副官のササカムと共に、また無理難題を言われるかと憂鬱な思いで、総督府の玄関を通って横柄な衛兵の案内で総督室に入った。
しかし、その日の会見の趣はいささか違っていた。
いつもであれば、総督室の大きなデスクの前で立たされて、一方的に要求を突きつけられるのであるが、今日は部屋にある会議机に座るように促され、総督ジークラ貴族第三階梯は部下のシースーラ第五階梯とともに向かい合って座る。
「今日は、どのようなご用件であろうか?」
ルルカムはジークラに尋ねるが、かってなかったことだが、ジークラもスースーラもひどく動揺しているように見える。
「率直に言おう。わが帝国はこの度、帝国の辺境にあるある惑星の種族と戦って敗れた。
その種族の要求はこのエクズス星も含まれるが、わが帝国の支配下に置いていた惑星種族の解放である。貴エクズス星政府へは、かってその植民惑星であった隣接の恒星系の2惑星がその返還対象として含まれる。
加えて、その種族、自ら人類と呼んでいるようだが、その要求は貴惑星を支配下においたことによる損害を賠償するようにというものが含まれている。これは人命の損失を含めてのことである」
ジークラが動揺した様子で額に汗を浮かべながら説明する。
ルルカルは思わず、副官のササカムの顔を見たが、よく意味が分からない。
『帝国が破れた?解放して、さらに賠償もすると?そんなうまい話があるものか?』
寿命が2百年余りと長いルルカムの祖父の時代から、ラザニアム帝国の支配は続いてきたのだ。
それが、全く他律的な理由で終わりを告げるなどということがあるのか。リリカルが反応しきれない内にジークラが説明を続ける。
「貴星のわが支配による損害については、我が財務省の算定によると百八十二兆帝国ルラになる(これは、エクズス星の帝国年(地球年の1.2倍)当たりの、税の七十年分に当たる)。
この根拠は、このメモリーに入っているので、後でじっくり検討してもらいたい。これについては、技術供与も含めた機材の供給をもって半分を一括で支払い、残りを二十年年賦で払いたい。
最初に供与するものの内容も同様にメモリーに含まれている。貴君も我が帝国のやり方には慣れていると思うが、我々は基本的に無駄な駆け引きはしないので、これは提示できる最大のものと考えてほしい。
なお、本日をもって、ラザニアム帝国のエクズス星総督府は廃止される。わが帝国を破った地球の艦船が、間もなくこの惑星に来るはずだが、いずれにせよ、貴君ルルカム氏を首班とする惑星政府が自立して、その地球からの使者に対することだな」
その地球からの使者は、その会見から遅れること二十五日(エクズス星の一日は約二十時間)で現れた。軌道上から、宇宙港へ呼びかけ、その了解のもとに宇宙港に着陸したが、その姿はしばしば訪れていた、帝国の戦闘艦そのものであったが、違う塗装とマークをつけている。
その二十五日間はエクズス星にとってまさに熱狂に包まれた日々であった。その会見の結果は、直ちにルルカムが説明する形で放映された。最初の1~2日は人々が事態には全くピンと来ておらず、殆ど反応らしいものがなかったた。だが、この件に関する放映の中で様々な識者によって繰り返し語られるうちに、事態が人々の頭にもしみ込んでいった。
そして、あちこちの酒場で熱狂的に語られるようになってきた(エクズス人はこれもドワーフに似て男も女も飲兵衛なのだ)。
帝国の支配下にあるときは、政府首班という存在には甚だ人気がなく、なりたがるものなどいなかったので押し付けられる形でが、ルルカルがやっていた。しかし、完全な自治が出来るとなると、今度はグループ(政党)を作って、選挙をして議員や政府要員を決めようという話になってきた。
しかし、ラザニアム帝国を破った、地球という星の住民がどういう出方をするかで、大いに話が変わって来る。ラザニアム帝国からの間接的な話では、征服者という感じではなく、帝国の被支配種族であった自分たちに極めて寛大な存在であるようだが、実際は会って交渉してみないとわからない。
その意味で、ガイア245号艦に乗ってきた、地球政府準備機構の外惑星交渉官2名に随員3名が宇宙軍の護衛十名とともに重力駆動エレベータで地上に降り立った様子は、固唾をのんだ20億人以上が見つめていた。
出迎えの中の代表は、無論現在も政府主席のルルカルであるが、この歴史的瞬間に立ち会いたいとの大騒動があり、その結果、共に迎える人数に含まれた別の5人も宇宙船から百mほど離れて待っている。
地球側の代表団5名が先行し、護衛は十mほど離れているが、代表団は待ち構えている出迎えの代表に相対する。主席代表の吉川英二が英語でしゃべるとラザニアム帝国語で翻訳機から言葉が流れ出る。帝国語が苦手なものは帝国語からエクズス語への翻訳機を持っている。
「私は地球を代表する使節団の首席である吉川英二です。この度は、貴エクズス星政府と国交を開くため友好条約を結びたく参りました」
この様子は、すべて放映され言葉も翻訳されているので、この言葉に放映を見ていた二十億人の大半が「ほお!」と安心のため息をついた。この吉川の言葉から、少なくともラザニアム帝国を屈服させた地球人が、エクズス星を占領下に置くつもりはないことがはっきりしたのだ。
これに対して、迎える責任者の政府主席ルルカムは、余りに持っている情報が少なく、公的にこのような場で言える言葉はなく、通り一遍の歓迎の言葉のみで見ていたものを失望させた。しかし、その苦しい立場は後に公表して、最後には人々の理解を得られた。
その後、地球側の代表団は7日間滞在し、さまざまな協議を繰り返したほか、別途、法体系、社会、医療技術、工業技術、農業技術、軍事技術等の技術調査に来た専門家集団十五人が並行して視察を行っており、かれらは三十日滞在して調査を行っている。
この専門家による調査については、最初の日に代表団が地元政府との交渉の結果、エクズス星の全面的な協力が得られている。地球側は以下のような言葉で合意を得ている。
「私どもの地球は、いまだ、蒸気機関による工業時代に入って僅か4百年、原子力の利用からはまだ百年にならない若い文明です。
無論、居住惑星は一つだけでそこに八十億人がひしめいて暮らしています。今回ラザニアム帝国の侵攻を食い止められたのは、直前に核融合発電や重力エンジンなどの発明があって運が良かったとしか言いようのない結果です。
わが方の計算では、ラザニアム帝国の人口は我が地球の7倍、GDPに至っては2百倍にもなっており、今回は画期的な新兵器のおかげで勝ちましたが、最終的には国力の差で押されてくることは間違いないと考えています。
一方で、人口では我が地球と貴星の人々及び帝国に隷属化されていた惑星の人口の合計は、ラザニアム帝国より大きいのです。しかし、今は彼ら帝国の一人当たりのGDPはわが地球の平均の三十倍程度もあります。
しかし、この差は、わが地球が強制した貴星を始めとして過去に与えた損害の賠償金の支払いによって大きく変わってくると思われます。
いずれにせよ、帝国に隷属化されていた惑星と我が地球が同盟を組んで、その合わせた国力が、早急に帝国に少なくとも匹敵する必要があると考えています。
その意味で、お互いの持つテクノロジー及び知見を活かして、出来るだけ早く成長する必要があるわけです。その意味で、我々は貴星のノウハウのすべてを知りたいのです。また貴星にも超空間飛行が可能な船をお売りしますので、地球に来て調べてください」
「して、軍務大臣、現状のところ彼らの艦隊がこの帝都惑星に接近し、我が防御衛星網を破壊するのを防ぐ方法は無いのだな?」
「はい、残念ながら」
軍務大臣の答えに皇帝が続いて指示する。
「彼らは、帝国に隷属する種族を解放するからには、たぶん超空間ジャンプの技術も与えるであろう。その場合、隷属種族はその恨みから、この惑星を害しようとすることは十分考えられる。
その場合には防衛衛星は、この惑星二十五億の生命を守るために必要である。さらに、防御衛星はその名の通り、防御のための機能しかないから、彼らまたは隷属種族を積極的に害することはあり得ない。この旨を伝えて破壊を思いとどまるように交渉せよ。
また、この点は我々に残されるという二十四個の惑星も同様で、防御のための艦隊を保持するよう交渉せよ。彼らは、我々とは全く違うメンタリティを持っている。我々が彼らの立場であれば、間違いなく、わが帝国は滅ぼされたであろう。
しかし、彼らは我々に対して生き延びることの出来る手法を提案している。してみれば、我々の住民が害されることは好まぬはずだ。この点は、最大限利用するべきである。承知したか?」
「はい、陛下、承知いたしました。その方向で交渉いたします。では、基本的にはかれらの要求である、隷属種族の解放と賠償金の支払い、居住惑星の明け渡しは従われるわけですね?」
宰相が確認する。
「それ以外に方法がないし、彼らには強制する手段がある。ここで抵抗することは、対象の惑星の臣民の虐殺に繋がる恐れがある」
皇帝の言葉に、軍務大臣が異を唱える。
「しかし、このような甘い条件を出して来る彼らにそれは出来ないのでは?」
「確かに、彼ら自身ではそうであろう。しかし、余は、彼らがサルベージした我が帝国の戦闘艦を隷属種族に渡すと見ている。そして、わが帝国が彼らの条件に従わない場合、これは賠償金の支払いも含むが、その措置を彼らに任せる形を取るだろうな」
皇帝の返事に軍務大臣はうやうやしく頷く。
「おっしゃる通りです。今の我々の隷属種族への扱いからすると、我が民の虐殺位はやりそうですな」
「従って、自衛の手段を残すことを交渉で勝ち取る必要があるが、他の項目は積極的に従え。
賠償金はむしろわが方から算出してそれをベースに交渉した方が良い。代価としては、核融合発電等の機器によるものとしたい。その方向で各卿は努力してくれ」
皇帝の言葉で、各閣僚はそれぞれの役割を果たすために散っていった。
数日後、超空間ジャンプで帝都星系に現れたA遠征艦隊に対して、ラザニアム帝国の非武装船からの呼びかけがあり、その結果ガイア型艦での交渉が行われた。
帝国側からは、地球艦隊の要求を基本的に飲むことが伝えられ、その引き換えに帝国にも自衛手段を残してほしいの要請があり、西野大将は地球との協議の結果、超空間通信の存在を隠すために彼の独断の態を装ってこの要請を受け入れた。
ー*-*-*-*-*-*-*-
エクズス星は、恒星エクザスルを周回する惑星であり、エクズス人25億人の住処である。
恒星エクザスルは太陽よりやや大きめであり、全部で12の惑星を持っている。酸素と水がある惑星はエクズス星のみであるが、この星は9割が海面であり陸地は少ない。
エクズス人は、やはり地球人と同様に男女の区別があって、エクズス星が地球と同程度の直径であるものの比重が大きいため重力は1割ほど大きいために、身長は地球人よりかなり低めの筋肉質で、肩幅が広くどちらかというとずんぐりしている。
また、毛深い体毛は茶色で肌色はやや浅黒く、しかも手を動かして物を作るのが好きで得意ときているので地球のファンタジーの世界でいうドワーフに似ている。彼らの歴史は蒸気機関が開発されてからも2万年を超えており、金属加工は大得意で機械も大変複雑なものも平気で作ることができる。
電気・電子技術もそれなりに発達しているが、核技術については、核分裂によって蒸気を作り発電をするという点では、地球のちょっと前までの原子力発電の技術と同等のものであった。しかしこの方法で千年以上の歴史を持っているため、地球に比べると大幅に洗練されたもので安全性も高いうえ、核廃棄物の処理法も持っている。
また、過密な地表人口を養える農業技術も極めて発達しており、さらに海洋を有効に利用して海草の栽培や海洋牧場が発達して、食料に不足はない。宇宙に関する技術としては小型原子力機関による重力エンジンの実用化は出来たが、超空間ジャンプは開発できなかった。
エクズス人は好戦的ではなく、ほとんど武器らしきものが無い状態で、250年前にラザニアム帝国の侵攻を受けて、最初の十艦の戦闘艦は何とか体当たりの自殺攻撃で殲滅したが、その後百艦余りの戦闘艦が押し寄せてきたため、抵抗をあきらめてその支配下に入ったものだ。この頃は、帝国も最初の艦隊が排除された場合は、規模の大きな艦隊を送って屈服を迫ったようだ。
その結果、エクズス人は隣に恒星系に得た植民惑星を奪われ、その恒星系にあった資源の豊富な鉱山惑星も奪われて、すべての人がエクズス星に押し込められることになった。
ラザニアム帝国の支配下に入った結果、最大の問題は、核分裂物質と鉱物資源が足りないことになった。ラザニアム帝国からは、税としてさまざまな工業製品を作ることを強制され、そのためのみの必要な資源はかろうじて供給されるが、自分たちが使う資源は殆どリサイクルで賄なうことになった。
この点で深刻であったのは核分裂物質の供給不足であり、このため常にエネルギー不足であった。このエネルギー不足のため、税として供給する必要のある機械部品等も製作が滞ることもあったが、その時はラザニアム帝国の小型艇に見せしめにいくつかの都市が熱線銃で攻撃されて、死者も毎回数十人のオーダーで生じている。
このため、自分たちの生活を犠牲にしても帝国の要求に応じざるを得なかったが、このような支配体系であったため、エクズス人のラザニアム帝国人への恨みは根深いものがあった。
しかし、そのラザニアム帝国のエクズス人への支配が突然終わる日が来た。
エクズス人の自治政府主席であるルルカム・ジクラムスは、突然ラザニアム帝国総督から呼び出され、女性副官のササカムと共に、また無理難題を言われるかと憂鬱な思いで、総督府の玄関を通って横柄な衛兵の案内で総督室に入った。
しかし、その日の会見の趣はいささか違っていた。
いつもであれば、総督室の大きなデスクの前で立たされて、一方的に要求を突きつけられるのであるが、今日は部屋にある会議机に座るように促され、総督ジークラ貴族第三階梯は部下のシースーラ第五階梯とともに向かい合って座る。
「今日は、どのようなご用件であろうか?」
ルルカムはジークラに尋ねるが、かってなかったことだが、ジークラもスースーラもひどく動揺しているように見える。
「率直に言おう。わが帝国はこの度、帝国の辺境にあるある惑星の種族と戦って敗れた。
その種族の要求はこのエクズス星も含まれるが、わが帝国の支配下に置いていた惑星種族の解放である。貴エクズス星政府へは、かってその植民惑星であった隣接の恒星系の2惑星がその返還対象として含まれる。
加えて、その種族、自ら人類と呼んでいるようだが、その要求は貴惑星を支配下においたことによる損害を賠償するようにというものが含まれている。これは人命の損失を含めてのことである」
ジークラが動揺した様子で額に汗を浮かべながら説明する。
ルルカルは思わず、副官のササカムの顔を見たが、よく意味が分からない。
『帝国が破れた?解放して、さらに賠償もすると?そんなうまい話があるものか?』
寿命が2百年余りと長いルルカムの祖父の時代から、ラザニアム帝国の支配は続いてきたのだ。
それが、全く他律的な理由で終わりを告げるなどということがあるのか。リリカルが反応しきれない内にジークラが説明を続ける。
「貴星のわが支配による損害については、我が財務省の算定によると百八十二兆帝国ルラになる(これは、エクズス星の帝国年(地球年の1.2倍)当たりの、税の七十年分に当たる)。
この根拠は、このメモリーに入っているので、後でじっくり検討してもらいたい。これについては、技術供与も含めた機材の供給をもって半分を一括で支払い、残りを二十年年賦で払いたい。
最初に供与するものの内容も同様にメモリーに含まれている。貴君も我が帝国のやり方には慣れていると思うが、我々は基本的に無駄な駆け引きはしないので、これは提示できる最大のものと考えてほしい。
なお、本日をもって、ラザニアム帝国のエクズス星総督府は廃止される。わが帝国を破った地球の艦船が、間もなくこの惑星に来るはずだが、いずれにせよ、貴君ルルカム氏を首班とする惑星政府が自立して、その地球からの使者に対することだな」
その地球からの使者は、その会見から遅れること二十五日(エクズス星の一日は約二十時間)で現れた。軌道上から、宇宙港へ呼びかけ、その了解のもとに宇宙港に着陸したが、その姿はしばしば訪れていた、帝国の戦闘艦そのものであったが、違う塗装とマークをつけている。
その二十五日間はエクズス星にとってまさに熱狂に包まれた日々であった。その会見の結果は、直ちにルルカムが説明する形で放映された。最初の1~2日は人々が事態には全くピンと来ておらず、殆ど反応らしいものがなかったた。だが、この件に関する放映の中で様々な識者によって繰り返し語られるうちに、事態が人々の頭にもしみ込んでいった。
そして、あちこちの酒場で熱狂的に語られるようになってきた(エクズス人はこれもドワーフに似て男も女も飲兵衛なのだ)。
帝国の支配下にあるときは、政府首班という存在には甚だ人気がなく、なりたがるものなどいなかったので押し付けられる形でが、ルルカルがやっていた。しかし、完全な自治が出来るとなると、今度はグループ(政党)を作って、選挙をして議員や政府要員を決めようという話になってきた。
しかし、ラザニアム帝国を破った、地球という星の住民がどういう出方をするかで、大いに話が変わって来る。ラザニアム帝国からの間接的な話では、征服者という感じではなく、帝国の被支配種族であった自分たちに極めて寛大な存在であるようだが、実際は会って交渉してみないとわからない。
その意味で、ガイア245号艦に乗ってきた、地球政府準備機構の外惑星交渉官2名に随員3名が宇宙軍の護衛十名とともに重力駆動エレベータで地上に降り立った様子は、固唾をのんだ20億人以上が見つめていた。
出迎えの中の代表は、無論現在も政府主席のルルカルであるが、この歴史的瞬間に立ち会いたいとの大騒動があり、その結果、共に迎える人数に含まれた別の5人も宇宙船から百mほど離れて待っている。
地球側の代表団5名が先行し、護衛は十mほど離れているが、代表団は待ち構えている出迎えの代表に相対する。主席代表の吉川英二が英語でしゃべるとラザニアム帝国語で翻訳機から言葉が流れ出る。帝国語が苦手なものは帝国語からエクズス語への翻訳機を持っている。
「私は地球を代表する使節団の首席である吉川英二です。この度は、貴エクズス星政府と国交を開くため友好条約を結びたく参りました」
この様子は、すべて放映され言葉も翻訳されているので、この言葉に放映を見ていた二十億人の大半が「ほお!」と安心のため息をついた。この吉川の言葉から、少なくともラザニアム帝国を屈服させた地球人が、エクズス星を占領下に置くつもりはないことがはっきりしたのだ。
これに対して、迎える責任者の政府主席ルルカムは、余りに持っている情報が少なく、公的にこのような場で言える言葉はなく、通り一遍の歓迎の言葉のみで見ていたものを失望させた。しかし、その苦しい立場は後に公表して、最後には人々の理解を得られた。
その後、地球側の代表団は7日間滞在し、さまざまな協議を繰り返したほか、別途、法体系、社会、医療技術、工業技術、農業技術、軍事技術等の技術調査に来た専門家集団十五人が並行して視察を行っており、かれらは三十日滞在して調査を行っている。
この専門家による調査については、最初の日に代表団が地元政府との交渉の結果、エクズス星の全面的な協力が得られている。地球側は以下のような言葉で合意を得ている。
「私どもの地球は、いまだ、蒸気機関による工業時代に入って僅か4百年、原子力の利用からはまだ百年にならない若い文明です。
無論、居住惑星は一つだけでそこに八十億人がひしめいて暮らしています。今回ラザニアム帝国の侵攻を食い止められたのは、直前に核融合発電や重力エンジンなどの発明があって運が良かったとしか言いようのない結果です。
わが方の計算では、ラザニアム帝国の人口は我が地球の7倍、GDPに至っては2百倍にもなっており、今回は画期的な新兵器のおかげで勝ちましたが、最終的には国力の差で押されてくることは間違いないと考えています。
一方で、人口では我が地球と貴星の人々及び帝国に隷属化されていた惑星の人口の合計は、ラザニアム帝国より大きいのです。しかし、今は彼ら帝国の一人当たりのGDPはわが地球の平均の三十倍程度もあります。
しかし、この差は、わが地球が強制した貴星を始めとして過去に与えた損害の賠償金の支払いによって大きく変わってくると思われます。
いずれにせよ、帝国に隷属化されていた惑星と我が地球が同盟を組んで、その合わせた国力が、早急に帝国に少なくとも匹敵する必要があると考えています。
その意味で、お互いの持つテクノロジー及び知見を活かして、出来るだけ早く成長する必要があるわけです。その意味で、我々は貴星のノウハウのすべてを知りたいのです。また貴星にも超空間飛行が可能な船をお売りしますので、地球に来て調べてください」
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セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
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~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
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沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
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それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
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はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
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勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
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