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第3章 宇宙との出会い
3.9 再度の侵攻への備え
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誠司は、シップ司令官の後押しもあって、直ちに自分の選んだ技術者を呼び集めて『きぼう』に乗って直ちに1日強の行程になる約3億km離れたサルベージ中の敵艦に向かった。
戦闘時の距離は5億kmであったが、もともと地球に近づいていた敵艦の残骸はさらに近づいたのだが、そのままにすると地球を通り過ぎてしまうので、サルベージ対象の2艦に対して、今はそれぞれ戦闘艦2艦でにより斥力装置で掴んで減速を掛けている。全力の加速を掛けられないので、これらは一旦地球から遠くまで行きすぎて再度帰って来るので時間が掛るのだ。
誠司は目標に向かう途中で、完成した超空間通信機でスミラム帝国惑星調査艦ラムス323号艦ジスカル三世に呼びかける。超空間通信機による通信は、出来るだけ惑星等の重力の影響の少ないところが望ましいので当然、惑星上では使えないのだ。通じるかどうか心配であったが、びっくりするほど明瞭に通信でき、映像まで映る。
「おお、きみは、セイジいう地球人だな。どうかね。ラザニアム帝国は現れたかな?」
目に特徴のあるジスカル三世が誠司の呼びかけに答える。
「ええ、ジスカル様の警告のおかげで、準備が間に合い迎撃に成功しました。本当にありがとうございました」
「ほお!それはたいしたものだ。君たちのテクノロジーでたった十隻と言えどよく撃破したものだ。しかし、今度が問題だの」
誠司の言葉に感心して見せるので、彼に今後について相談する。
「それで、我々はまず第一関門は突破したわけですが、今後については、ラザニアム帝国はどういう措置を取って来るのでしょうか。いきなり大艦艇で攻めて来るのか、属国になるように求めて来るのか。また前に1ヵ月と言われましたが何が1ヵ月なのか?」
「うむ、聞いている話では、1ヵ月で連絡船が来るらしい。これは、単にラザニアム帝国の支配下に入るようにということで、結構いいことを言ってくるそうだぞ。
自治を認めるとか、技術を教えるとか。条件は武装解除だ。また、断ったら全面戦争だな。生物を絶滅させるという宣言がある。実際に、6つの惑星が攻撃されて無人の荒廃した姿をさらしている」
ジスカルの言葉に誠司はさらに聞く。
「しかし、断った場合にはラザニアム帝国も数百の戦闘艦を集めての準備が必要だと思うのですが。ある程度時間がかかるとおもいます。それと、その程度相手を撃破すればあきらめるのでしょうか?」
「うむ、確かに、アサカラ人の場合は3ヵ月位の時間があったそうだな。また、彼らは、戦闘はほぼ互角であったらしいな。ラザニアム帝国の艦艇を半分くらい撃破して、彼ら自身も犠牲は大きかったが、まだ自分たちが全滅するまで戦えば相手も全滅するまで追い込めるという状態だったそうだ。
その時点で、ラザニアム帝国は引いて行ってそうだ。そしてしばらく、そうだなお前たちの時間で十五ヵ月ほど後に再度連絡艇が来て、不可侵条約を持ちかけてきたらしい」
ジスカルが答え、誠司はさらに聞く。
「不可侵条約と言っても信用できるのでしょうか?」
「うむ、少なくとも、アサカラ人は信用してはおらんな。防備はさらに固めておるよ」
ジスカルがさらに答えるが、再度誠司が頼みこむ。
「ジスカル様、私たち地球人はジスカル様に大変感謝してあがめています。これ、この通りです」
カメラの画面が移ると神棚がしつらえてあり、見るとジスカルとわかる像が鎮座している。
「地球の守り神のあなたを、このように朝夕拝んでおります」
誠司は拝んで見せる。
「わが地球は、アスカラ人のように、ラザニアム帝国を何とか退けたいのです。どうか、有用な策をまたは技術を授けてください」
誠司は、がばっと再度土下座をする。
今度は最初から一人で映っているので、土下座も誠司一人だ。ジスカルの映像が少し妙な具合に揺れているから、笑っているのかもしれない。
「セイジ、お前はなかなか面白い奴だな。そうだな、一つヒントをやろう。
『超空間の使い方のよっては武器にできる方法がある』
それでは、頑張れ、精々運命に抗うのだな。お前とまた恒星間宇宙で会えることを祈っておるぞ」
通信は切れた。
世界は、ラザニアム帝国の艦隊との迎撃戦に大騒ぎになっていた。
戦闘詳報は地球防衛軍広報部から発表され、ラザニアム帝国の艦隊の十隻の戦闘艦を防衛軍の敷いた三段の防衛線の一段目で退けられたが、わが方にも犠牲がでたことが明らかにされた。
とは、言いながらその名前も侵略目的であるのも、すべてはスミラム帝国惑星調査艦ラムス323号艦長のジスカル三世というものが語った話でのみであるが。
そうは言っても、地球の艦隊が言葉の通りに十隻の艦隊に遭遇し、相手が先に撃ちかけてきて、実際に戦闘が起きたことは事実である。また、その戦闘はいままでの地球で起きたものと全く違うものであり、なにより全く肉眼で見えない戦いである点が異なり、戦果も計器の読みで知ることしかできない。
戦闘の結果として破壊された、丸みを帯びた厚みのある円盤形のラザニアム帝国の艦船および、電磁銃で電子系統を破壊されて捕獲されたビーは後に地球の皆が映像で見たし、地球側の半ば破壊され、パイロットが脱出した戦闘機も同様に放映されている。ただ、ミサイルが直撃されて消滅したハクリュウについては在りし日の映像しか見せようがなかったが。
そして、この戦いで亡くなった四二名については、繰り返しその生前の姿が放映され、黙とうという話もあったが、地球防衛軍の司令官シップ中将の慰霊の言葉に替えられた。
「地球の皆さん。皆さんもご存知の通り、スミラム帝国の調査船の船長と名乗る異星人の言ったことは事実であり、実際に十隻の大きな戦闘能力のある異星船が地球目がけて殺到してきました。
それに対して、わが地球防衛軍は警告を発しましたが、無視されたので、迎撃態勢に入り、実際に最初に撃ちかけてきたのは相手でありましたが、これを撃破しました。
一部にラザニアム帝国の脅威というこの話の信ぴょう性と、地球防衛軍の意味を疑う意見もありましたが、確かにその準備は有効に働いたわけです。その意味で、この情報を知ったと同時に、この組織を立ち上げ、即時に自ら準備にかかってくれた日本政府とその関係者に感謝の意を述べます。
また、到底十分な装備とは言えない兵器をもって、今回敵艦隊を退けてくれた艦隊の将兵、とりわけその中で散っていった将兵四二名に対して、彼らを率いる立場として感謝と十分な装備を与えられなかったお詫びのこころで一杯です。皆さんもどうか戦った将兵、とりわけ不幸にして亡くなった将兵に感謝と、その魂が安らかなることに祈念をお願いいたします。
さて、今回の戦いは残念ながら、前哨戦と言うべきもので、これで終わりではありません。私どもの手に入れた情報によると、ラザニアム帝国は1月後程度後に連絡艇をよこし、帝国の支配下に入るように勧告に来るということです。その内容は、自治を認めるなどの緩い支配体制であるようですが、戦備の放棄が入っており、その後どのように条件を変えられても抵抗できないようになっております。
従って、私ども地球防衛軍は当初の巨大惑星人の情報である、ラザニアム帝国の支配下に入れば過酷な圧政の元でもはや発展は望めず、すべてをラザニアム人のために捧げることになるということを信じております。
私ども地球防衛軍は、全力を挙げて次回の数百機の宇宙艦による侵攻に備えます。そして、かならず彼らの侵攻を跳ね返して見せます。私ども地球防衛軍のものは、この映像を見ている皆さんも私どもに協力して頂けることを信じています」
また、シップ中将の演説に加えて、誠司の追加で得た情報が広報された。これを持って、防衛の機密に係ること以外は隠しだてをしないという約束を守ったわけだ。その結果、地球においては第二次迎撃反対論が巻き起こった。たしかに、現状において、ラザニアム帝国の支配下に入れば奴隷としての生活になるものの生存は出来るわけだが、迎撃を選択して失敗すれば全滅することになるわけだ。
そこで、『生命は地球より重い』というバカなスローガンが日本の場合には某野党から出てきて、直ちに防衛準備を止めるべきだという要求が出された。この要求は、すでに死に体のその野党の支持者のみの主張であれば無視できるが、女性を中心に共感を呼んで高い支持を獲得しはじめている。
それを『平和を求める運動』と称して、日本のみならず、全世界的な運動になってきた。
G7においても、すでにフランスとイタリアがぐらついていて、今の情勢では防衛体制に加われないと言い始めた。日本は、今のところは与党が断固防衛体制を固めると宣言して、野党等の要求を無視している。ラザニアム帝国の破壊された戦闘艦の調査から帰った誠司は、この運動に怒り狂った。
「ゆかり、お前はどう思うね。奴隷になっても生きていたいかな?」
彼は怒りを抑えながら無理に冷静になって妻に問う。
「私は女ではあるけれど、私の意見は防衛省に入ったという私の経歴から考えても、あまり参考にはならないわよ。
でもまず言えることは、すでにラザニアム帝国は地球人類にとって戦争相手国よ。その戦争の相手が、また本格的な戦いが始まってもいないのに『お前たちの命を助けてやるから、武装解除しろ』という話をしてきて、それに乗ろうというのが、あの運動の連中のお花畑の頭の中身よ。
武装解除した後はどんなに過酷な条件を突きつけられても逆らう術はないのに、それからあえて目を逸らしているのよ」
「それで、ゆかり自身はどうしたらいいと思う?」
誠司の質問にゆかりは答える。
「無視すればいいのよ。地球防衛軍はすでに、国家を超えた存在よ。その責務は、地球人類を外敵から守ることで、その外敵の言うことを聞いて、軍備を放棄して降伏しようというものたちなど、ただの裏切者でしかないわ。いずれ、連中は選挙や投票で、その可否を決めようと騒ぐでしょうが、そんな悠長なことをやっている暇はないでしょう。
ここは、シップ司令官が断固とした意志を見せれば、かりに母体のアメリカ合衆国の大統領が軍備を放棄しろと言ったところで無視できるわ。いずれにせよ、ラザニアム帝国の船が来るまでは確実なことは何もわからないのだから、今のペースの迎撃準備は続けるしかないのよ。これは誰もが同意するわ。
それに、ラザニアム帝国の船というのは敵の謀略船よ。だから防衛軍にとっては当然撃破対象の的でしょう?」
ゆかりは、そういって誠司にウインクして見せた。
「うん、そうだな。うん、今度来るという船も敵船だし、当然撃破すべきだ。ラザニアム帝国がそれをどう解釈するかは知らないけどね」
誠司がにこりと笑っていう手を取って、ゆかりは膨らんだおなかに当てる。
「ほら、この子が生まれてくる世界が、異星人の奴隷の種族というわけにいかないわ。人は生きていくだけの存在ではないのよ。プライドをもって、自由に生きることは私にとっては生命より重要よ。
奴隷として、ただ生きていくだけの人生などはない方が幸せだと思う。お父さんも頑張ってね」
「うん、わかっているよ。ラザニアム帝国の船を調べて持って帰った情報をどう生かすか、それとジスカルのサジェッションをどう生かすか、今からだ。アイデアはあるから明日からまた頑張るよ。でもゆかりのこの子のことがあるからほどほどにしないとな。その分は俺が頑張るから」
「ええ、もちろん無理はしないわ。もう寝ましょう。明日も早いから」
ラザニアム帝国の戦闘艦2艦及びビーを調査した結果、1艦の外見は比較的なまともだったが、中はグチャグチャで原型をとどめていなかったものの、幸いもう1艦が被害は大きいが原型は留めていて、その調査は可能であり、以下のようなことがわかった。
⑴彼らの戦闘艦は長さ200m×幅50m×高さ30mの丸みを帯びた厚めの小判型であり、戦闘時の重量は約10万トンであり、乗組員は250名であった(つまり、船内には250人の死体があった)。
⑵乗員は当然ラザニアム帝国人と思われるが、体形、顔つきは地球人の白人に似ているが身長は最大で150㎝余で小柄な人種であり、体重も50㎏以下であった。
⑶動力はやはり核融合発電機であり、大きさからすると百万㎾級が3基設置されており、超空間ジャンプらしき機構が設置されている。
⑷武器はやはりレールガンと熱線砲であるが、レールガンは10基、熱線砲は8基設置されており、戦闘結果からレールガンの威力は地球で作ったものと同等だが、熱線砲は5割ほど威力が高い。
⑸ミサイルとその射出装置が、半ば破壊されてはいるが確保できたので分析中だが、射出装置によってミサイルは初速を与えられ、さらに加速するようになっており、なかなか強敵である。
⑹ビーは移動速度も距離も限定的であるが、母艦の操縦で相当器用に動き回ることができる。爆発力も小型原爆の威力で10㏏程度あり侮れない。
これらの情報を元に誠司は今必死に頭を絞っている所である。
戦闘時の距離は5億kmであったが、もともと地球に近づいていた敵艦の残骸はさらに近づいたのだが、そのままにすると地球を通り過ぎてしまうので、サルベージ対象の2艦に対して、今はそれぞれ戦闘艦2艦でにより斥力装置で掴んで減速を掛けている。全力の加速を掛けられないので、これらは一旦地球から遠くまで行きすぎて再度帰って来るので時間が掛るのだ。
誠司は目標に向かう途中で、完成した超空間通信機でスミラム帝国惑星調査艦ラムス323号艦ジスカル三世に呼びかける。超空間通信機による通信は、出来るだけ惑星等の重力の影響の少ないところが望ましいので当然、惑星上では使えないのだ。通じるかどうか心配であったが、びっくりするほど明瞭に通信でき、映像まで映る。
「おお、きみは、セイジいう地球人だな。どうかね。ラザニアム帝国は現れたかな?」
目に特徴のあるジスカル三世が誠司の呼びかけに答える。
「ええ、ジスカル様の警告のおかげで、準備が間に合い迎撃に成功しました。本当にありがとうございました」
「ほお!それはたいしたものだ。君たちのテクノロジーでたった十隻と言えどよく撃破したものだ。しかし、今度が問題だの」
誠司の言葉に感心して見せるので、彼に今後について相談する。
「それで、我々はまず第一関門は突破したわけですが、今後については、ラザニアム帝国はどういう措置を取って来るのでしょうか。いきなり大艦艇で攻めて来るのか、属国になるように求めて来るのか。また前に1ヵ月と言われましたが何が1ヵ月なのか?」
「うむ、聞いている話では、1ヵ月で連絡船が来るらしい。これは、単にラザニアム帝国の支配下に入るようにということで、結構いいことを言ってくるそうだぞ。
自治を認めるとか、技術を教えるとか。条件は武装解除だ。また、断ったら全面戦争だな。生物を絶滅させるという宣言がある。実際に、6つの惑星が攻撃されて無人の荒廃した姿をさらしている」
ジスカルの言葉に誠司はさらに聞く。
「しかし、断った場合にはラザニアム帝国も数百の戦闘艦を集めての準備が必要だと思うのですが。ある程度時間がかかるとおもいます。それと、その程度相手を撃破すればあきらめるのでしょうか?」
「うむ、確かに、アサカラ人の場合は3ヵ月位の時間があったそうだな。また、彼らは、戦闘はほぼ互角であったらしいな。ラザニアム帝国の艦艇を半分くらい撃破して、彼ら自身も犠牲は大きかったが、まだ自分たちが全滅するまで戦えば相手も全滅するまで追い込めるという状態だったそうだ。
その時点で、ラザニアム帝国は引いて行ってそうだ。そしてしばらく、そうだなお前たちの時間で十五ヵ月ほど後に再度連絡艇が来て、不可侵条約を持ちかけてきたらしい」
ジスカルが答え、誠司はさらに聞く。
「不可侵条約と言っても信用できるのでしょうか?」
「うむ、少なくとも、アサカラ人は信用してはおらんな。防備はさらに固めておるよ」
ジスカルがさらに答えるが、再度誠司が頼みこむ。
「ジスカル様、私たち地球人はジスカル様に大変感謝してあがめています。これ、この通りです」
カメラの画面が移ると神棚がしつらえてあり、見るとジスカルとわかる像が鎮座している。
「地球の守り神のあなたを、このように朝夕拝んでおります」
誠司は拝んで見せる。
「わが地球は、アスカラ人のように、ラザニアム帝国を何とか退けたいのです。どうか、有用な策をまたは技術を授けてください」
誠司は、がばっと再度土下座をする。
今度は最初から一人で映っているので、土下座も誠司一人だ。ジスカルの映像が少し妙な具合に揺れているから、笑っているのかもしれない。
「セイジ、お前はなかなか面白い奴だな。そうだな、一つヒントをやろう。
『超空間の使い方のよっては武器にできる方法がある』
それでは、頑張れ、精々運命に抗うのだな。お前とまた恒星間宇宙で会えることを祈っておるぞ」
通信は切れた。
世界は、ラザニアム帝国の艦隊との迎撃戦に大騒ぎになっていた。
戦闘詳報は地球防衛軍広報部から発表され、ラザニアム帝国の艦隊の十隻の戦闘艦を防衛軍の敷いた三段の防衛線の一段目で退けられたが、わが方にも犠牲がでたことが明らかにされた。
とは、言いながらその名前も侵略目的であるのも、すべてはスミラム帝国惑星調査艦ラムス323号艦長のジスカル三世というものが語った話でのみであるが。
そうは言っても、地球の艦隊が言葉の通りに十隻の艦隊に遭遇し、相手が先に撃ちかけてきて、実際に戦闘が起きたことは事実である。また、その戦闘はいままでの地球で起きたものと全く違うものであり、なにより全く肉眼で見えない戦いである点が異なり、戦果も計器の読みで知ることしかできない。
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「地球の皆さん。皆さんもご存知の通り、スミラム帝国の調査船の船長と名乗る異星人の言ったことは事実であり、実際に十隻の大きな戦闘能力のある異星船が地球目がけて殺到してきました。
それに対して、わが地球防衛軍は警告を発しましたが、無視されたので、迎撃態勢に入り、実際に最初に撃ちかけてきたのは相手でありましたが、これを撃破しました。
一部にラザニアム帝国の脅威というこの話の信ぴょう性と、地球防衛軍の意味を疑う意見もありましたが、確かにその準備は有効に働いたわけです。その意味で、この情報を知ったと同時に、この組織を立ち上げ、即時に自ら準備にかかってくれた日本政府とその関係者に感謝の意を述べます。
また、到底十分な装備とは言えない兵器をもって、今回敵艦隊を退けてくれた艦隊の将兵、とりわけその中で散っていった将兵四二名に対して、彼らを率いる立場として感謝と十分な装備を与えられなかったお詫びのこころで一杯です。皆さんもどうか戦った将兵、とりわけ不幸にして亡くなった将兵に感謝と、その魂が安らかなることに祈念をお願いいたします。
さて、今回の戦いは残念ながら、前哨戦と言うべきもので、これで終わりではありません。私どもの手に入れた情報によると、ラザニアム帝国は1月後程度後に連絡艇をよこし、帝国の支配下に入るように勧告に来るということです。その内容は、自治を認めるなどの緩い支配体制であるようですが、戦備の放棄が入っており、その後どのように条件を変えられても抵抗できないようになっております。
従って、私ども地球防衛軍は当初の巨大惑星人の情報である、ラザニアム帝国の支配下に入れば過酷な圧政の元でもはや発展は望めず、すべてをラザニアム人のために捧げることになるということを信じております。
私ども地球防衛軍は、全力を挙げて次回の数百機の宇宙艦による侵攻に備えます。そして、かならず彼らの侵攻を跳ね返して見せます。私ども地球防衛軍のものは、この映像を見ている皆さんも私どもに協力して頂けることを信じています」
また、シップ中将の演説に加えて、誠司の追加で得た情報が広報された。これを持って、防衛の機密に係ること以外は隠しだてをしないという約束を守ったわけだ。その結果、地球においては第二次迎撃反対論が巻き起こった。たしかに、現状において、ラザニアム帝国の支配下に入れば奴隷としての生活になるものの生存は出来るわけだが、迎撃を選択して失敗すれば全滅することになるわけだ。
そこで、『生命は地球より重い』というバカなスローガンが日本の場合には某野党から出てきて、直ちに防衛準備を止めるべきだという要求が出された。この要求は、すでに死に体のその野党の支持者のみの主張であれば無視できるが、女性を中心に共感を呼んで高い支持を獲得しはじめている。
それを『平和を求める運動』と称して、日本のみならず、全世界的な運動になってきた。
G7においても、すでにフランスとイタリアがぐらついていて、今の情勢では防衛体制に加われないと言い始めた。日本は、今のところは与党が断固防衛体制を固めると宣言して、野党等の要求を無視している。ラザニアム帝国の破壊された戦闘艦の調査から帰った誠司は、この運動に怒り狂った。
「ゆかり、お前はどう思うね。奴隷になっても生きていたいかな?」
彼は怒りを抑えながら無理に冷静になって妻に問う。
「私は女ではあるけれど、私の意見は防衛省に入ったという私の経歴から考えても、あまり参考にはならないわよ。
でもまず言えることは、すでにラザニアム帝国は地球人類にとって戦争相手国よ。その戦争の相手が、また本格的な戦いが始まってもいないのに『お前たちの命を助けてやるから、武装解除しろ』という話をしてきて、それに乗ろうというのが、あの運動の連中のお花畑の頭の中身よ。
武装解除した後はどんなに過酷な条件を突きつけられても逆らう術はないのに、それからあえて目を逸らしているのよ」
「それで、ゆかり自身はどうしたらいいと思う?」
誠司の質問にゆかりは答える。
「無視すればいいのよ。地球防衛軍はすでに、国家を超えた存在よ。その責務は、地球人類を外敵から守ることで、その外敵の言うことを聞いて、軍備を放棄して降伏しようというものたちなど、ただの裏切者でしかないわ。いずれ、連中は選挙や投票で、その可否を決めようと騒ぐでしょうが、そんな悠長なことをやっている暇はないでしょう。
ここは、シップ司令官が断固とした意志を見せれば、かりに母体のアメリカ合衆国の大統領が軍備を放棄しろと言ったところで無視できるわ。いずれにせよ、ラザニアム帝国の船が来るまでは確実なことは何もわからないのだから、今のペースの迎撃準備は続けるしかないのよ。これは誰もが同意するわ。
それに、ラザニアム帝国の船というのは敵の謀略船よ。だから防衛軍にとっては当然撃破対象の的でしょう?」
ゆかりは、そういって誠司にウインクして見せた。
「うん、そうだな。うん、今度来るという船も敵船だし、当然撃破すべきだ。ラザニアム帝国がそれをどう解釈するかは知らないけどね」
誠司がにこりと笑っていう手を取って、ゆかりは膨らんだおなかに当てる。
「ほら、この子が生まれてくる世界が、異星人の奴隷の種族というわけにいかないわ。人は生きていくだけの存在ではないのよ。プライドをもって、自由に生きることは私にとっては生命より重要よ。
奴隷として、ただ生きていくだけの人生などはない方が幸せだと思う。お父さんも頑張ってね」
「うん、わかっているよ。ラザニアム帝国の船を調べて持って帰った情報をどう生かすか、それとジスカルのサジェッションをどう生かすか、今からだ。アイデアはあるから明日からまた頑張るよ。でもゆかりのこの子のことがあるからほどほどにしないとな。その分は俺が頑張るから」
「ええ、もちろん無理はしないわ。もう寝ましょう。明日も早いから」
ラザニアム帝国の戦闘艦2艦及びビーを調査した結果、1艦の外見は比較的なまともだったが、中はグチャグチャで原型をとどめていなかったものの、幸いもう1艦が被害は大きいが原型は留めていて、その調査は可能であり、以下のようなことがわかった。
⑴彼らの戦闘艦は長さ200m×幅50m×高さ30mの丸みを帯びた厚めの小判型であり、戦闘時の重量は約10万トンであり、乗組員は250名であった(つまり、船内には250人の死体があった)。
⑵乗員は当然ラザニアム帝国人と思われるが、体形、顔つきは地球人の白人に似ているが身長は最大で150㎝余で小柄な人種であり、体重も50㎏以下であった。
⑶動力はやはり核融合発電機であり、大きさからすると百万㎾級が3基設置されており、超空間ジャンプらしき機構が設置されている。
⑷武器はやはりレールガンと熱線砲であるが、レールガンは10基、熱線砲は8基設置されており、戦闘結果からレールガンの威力は地球で作ったものと同等だが、熱線砲は5割ほど威力が高い。
⑸ミサイルとその射出装置が、半ば破壊されてはいるが確保できたので分析中だが、射出装置によってミサイルは初速を与えられ、さらに加速するようになっており、なかなか強敵である。
⑹ビーは移動速度も距離も限定的であるが、母艦の操縦で相当器用に動き回ることができる。爆発力も小型原爆の威力で10㏏程度あり侮れない。
これらの情報を元に誠司は今必死に頭を絞っている所である。
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しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
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はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
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勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
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