日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人

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第3章 宇宙との出会い

3.7 来襲!

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 こうした、日米を中心にしたG7による地球防衛軍としての活動を始めた動きに、国連の現事務総長が大きな反発を示した。
「本件は地球全体の問題なので、当然わが国連がリーダーシップをもってやるべき案件である。直ちに、独断専行を止めその地球防衛軍の指揮権を国連軍に渡しなさい」

 世界に向けてこう言い、本会議に非難決議を出そうとした。
 彼は、かってはヨーロッパの小国の首相まで務めたことにある人物であり、それほどものが判らないことはないのだが、もともと権威主義的なところがあって、さらに裏から東アジアの某2国が焚きつけたせいもある。

 しかし、日本の国連大使はこう演説した。
「例えば、準備期間が十年あるというのなら、国連に図って体制を整えたであろうが、今回は残念ながらいつ敵が来るか判らないということで、現在その準備を整える技術がある我が国が始めただけだ。すでに、地球防衛軍は一定の体制は整えており、これに指揮権の問題等で一瞬でも空白を作ることはできない。また、地球防衛軍は参加してくれる能力のある国が加わることは歓迎する。
 今回はG7という既存の仕組みを頼ったが、宇宙の経験があるロシアに対してはそうした能力があると考えているので、お誘いしている所であり、すでに参加いただけるとの回答をもらっている」

 実際はロシアに対しては日本からの働きかけで、彼らもG7の国と同じ判断を下し、すでに人員を派遣してきている。アメリカの国連大使の演説はもっと辛辣であった。
「仮に、最初に国連にこの件は相談し、指揮権を渡したらどうなったであろうか。
 今頃は各国の分担金をどうするかでもめており、何も決まっておらず、何の準備も出来ていないだろう。日本が中心になって設立した地球防衛軍は、今現在既に最低限の防衛体制ができている。どちらの方法が正しいか言うまでもない。
 国連は、日本がまず彼ら自ら素早く地球防衛軍を設立して、とりあえず機能する体制を作りながら他国に参加を呼び掛けたその措置の正しさを賞賛するべきである。このように非難するのではなく」

 さすがに、採決そのものが棄却され、もともと疑問があった国連の機能に対する信頼感がさらに薄れて、事務総長の権威がさらにがた落ちした。
 G7の枠以外では、ロシアが日本の求めに応じて国として地球防衛軍への参加を決めたが、ほとんどあらゆる国々の人々は、始めての全地球的な危機に際して自分の国も参加すべきと国を突き上げ、また国も日本の技術を得られるという思惑もあって殆どすべての国が参加を求めてきた。

 これに対しては、すでに設立されていた防衛軍の装備局と人事局が、非常に特殊な経験を持つ人材のみの提供を求め、一部が受け入れられた。
「現状では、装備の製造については、今ある施設では人員は十分に配置され、訓練を行う人員も、機材の制限から今以上の数を増やせない。このリストにあげる人材のみについて派遣できるなら受け入れる」
 
 しかし、資金による援助はいくらあっても困らないわけで、これは積極的に受け入れており、あらゆる国と個人がそれなりに見栄を張って拠出した結果、その総計は1ヵ月間にアメリカドルで、十億ドルを上回った。
 現在は、地球防衛軍設立から3カ月になろうとするところであり、中期装備の整備が最終段階を迎えている。すでに、迎撃戦術としては潜水艦の艦体をベースにする宇宙機に、各艦4基以上の大口径レールガンと、電磁バリヤー及び斥力装置を設置した宇宙戦闘艦に加えている。

 さらに、戦闘機を改修した機にレールガンを取り付けた宇宙戦闘機と、大型の輸送機を改修してレールガン1基と電磁バリヤーや斥力装置を取りつけた中型戦闘機が新しくラインアップに加わった。この中型戦闘機は、長さ三十五mと大型だけあってバッテリーを数多く積み5名の乗員の生命維持も1週間程度は十分であり、レールガンも五十発程度は撃てるようになっているほか、宇宙戦闘機の人員の回収も出来る機能を備えている。

 さらに、アメリカから原子力機関を取り外したオハイオ級の潜水艦の艦体を持ってきて宇宙空母が完成しつつある。これは長さ百七十mにもなるオハイオ級の巨体を使って戦闘機を十機収容できるもので、電磁バリヤーや斥力装置による防御は固めており、レールガンは取りつけられているが基本的に戦闘には加わらない。

 オハイオ級の艦体は、アメリカから宇宙機の斥力装置で釣り上げて日本までもってきてドックで切り裂いて改修している。現在これら宇宙空母の5艦が殆ど艤装が終わっており、宇宙戦闘艦は当初の5機に加え十機が完成して、これらは2機の宇宙戦闘機の母艦機能を持つ。
 中型戦闘機はアメリカからも機体の提供を受けて五十機が完成しており、宇宙戦闘機は2百機が完成し、百機が最終的な艤装に入っている。

 戦闘艦の訓練を積んだ人員はすでに五百名、戦闘機に関しては千名に達しているが、中型戦闘機はまだ完成したばかりであるため、戦闘艦の訓練を受けた人員と戦闘機の訓練を受けた人員が混合して、大急ぎで訓練を始めている。

    ー*-*-*-*-*-*-*-*-
 遂にその時が来た。
 地球から約四十五億㎞の海王星軌道の距離で、互いに十億㎞離れた位置で哨戒にあたっていた、『らいうん』及び『そうりゅう』、『こくりゅう』の3艦のうちの、『こくりゅう』から地球に向けて重力波送信が送られた。

「質量の突然出現感知、超空間ジャンプによる艦隊飛来と考えられる。 距離は我が艦より3億㎞で座標は108675452-22893056-9923903385、相対速度千㎞/秒で地球方面に向かっている」

 続いて、『らいうん』と『そうりゅう』からも同様な通信が入り、3艦は全力加速で地球軌道に向かいつつ、観測結果を定期的に地球に送る。少ない数で攻撃するのは各個撃破される可能性が高いとして、地球からの艦隊が迎撃するときに共同して攻撃することになっているのだ。

 地球では直ちに送ってきた情報を解析して、侵入者の質量、数、加速度及び速度を分析するとともに、岩木基地ではサイレンが鳴り響き、3時間ごとに更新される配員計画に沿って、必要な私物をもって担当の機に駆け寄る。すぐに離陸するのは、空母3隻、宇宙戦闘艦10機であり、今のところすでに完成しているが足の短い中型50機、小型300機の戦闘機は待機である。

 誠司は、その日はたまたま岩木基地で司令官のシップ中将、副司令官の西野空将と会議があり出席していたので2人及び副官等と一緒に管制室に入る。
「進入してきた艦隊は総重量百八万トンで、十機で構成されていると思われます。現在地球に向けて10Gの加速を行っていますので、地球で速度ゼロになるように運動するとすれば、後23時間で減速に入り、その後28時間すなわち今から2日と3時間で地球に着きます」

 管制官からの報告に対し、シップ中将の激が飛ぶ。
「1機10万トンか相当大型ではあるな。よし、2波で迎撃しよう。
 1波めは全力加速して地球から遠ざかり、計算点で反転して5億km程度の距離で速度を同調して攻撃する。
 これは戦闘艦5艦と空母5隻から飛び立つ戦闘機が五十機で攻撃するが、極力帰ってくる『らいうん』及び『そうりゅう』、『こくりゅう』の3艦と協同して攻撃する。
 2波めは1億㎞程度で残りの戦力全力で叩くが、敵と同程度の速度になっている一波めも合流して戦うことになる。しかし、二波めでは、依然として小型戦闘機では距離的に厳しいので、戦闘艦に乗せられる20機と中型戦闘機が出撃する。

 残った、小型戦闘機は地球の最後の守りだ。少なくとも、1波、2波が全滅することはないので、追いすがってくるこれらと協同して、地球に向けてくる敵艦を殲滅する。
 私は2波までで、殲滅できると信じているが、最後の小型戦闘機は本当の意味で地球の最後の守りなので極めて重要だ。以上了解したか?了解したら、作戦参謀は至急今の私の指示に沿って各艦、各機の作戦を練り上げそれぞれに命令を出せ!」

「了解しました。直ちに作戦を具体化します」
 そこにいた十人ほどが、声をそろえて返事をして敬礼するので、彼らが作戦参謀なのであろう。

 彼らのリーダーらしき士官が指示を飛ばすと、彼らは4つの小グループに別れて、何やら作業を始めるが、ものの10分もたたないうちに、彼らは通信機によって指示を飛ばし始める。
 誠司はそれを見ていて、その訓練が行き届いた動きに感心するとともに大きな安堵感を覚えた。

「地球は、少なくとも今回の攻撃からは守られるな」
 独り言を言う彼に、一緒に居た青山一佐が大きく頷いて言う。
「そうですよ。間違いないです。私たちは守り抜きます」

 ラザニアム帝国の艦艇と思われる艦隊は、予想通りの航路で予想通りの加減速を行って、徐々に地球に近づいてくる。その間に、戦闘艦5艦と空母3隻は加速を続け、相手の艦体の予想遭遇点で同等の速度になるように加減速を調整しながら近づいて行った。『らいうん』『そうりゅう』、『こくりゅう』の3艦も追いすがっており、攻撃点で合流するように加速を調整している。

 距離5千万㎞で、これらの司令艦になる空母、スカイラーク1から相手艦隊に向けて英語の通信が飛んだ。
「こちら地球防衛軍の防衛艦隊の旗艦スカイラーク、そこの艦隊どこの所属か直ちに明らかにせよ。10秒以内に回答がない場合には攻撃する。所属を直ちに明らかにせよ」

 この通信が3回繰り返されたが、回答はない。と、望遠鏡で拡大している艦隊がぼやけたとみると、重力探知の担当官から知らせがある。
「艦隊から数多くの重量物が放たれました」

「たぶん小型の多数のロボット艇だ。数、大きさ、加速度はどの位だ?」
 スカイラークの艦橋で、参謀の一人のジョン・ライカー大尉が通信で尋ねるのに、最も近い戦闘艦から回答がある。

「数はおそらく5百程度、大きさは径が1.5m程度の球形でしょう。加速度は今のところ2G程度のようです」

「たぶん、自走爆弾だと思います。一種の防御用と攻撃を兼ねているのでしょう」
 解答を聞いたライカー参謀が言うと、戦闘群司令官であるロバート・サベル中佐が命令する。

「わが艦の艦載の戦闘機を直ちに射出しろ!僚艦のスカイラーク2およびスカイラーク3に全機射出の命令!敵の射出した小型の機をビーと呼ぶぞ。各戦闘機は機動でビーを避けつつ、敵艦に十万㎞以下の距離に肉薄してレールガンを撃ちこめ!」

 すでに、パイロットは機内に待機している。
 改F15に乗っている山田二尉は機が横方向にアームで押し出されるのを感じ、ハッチが開いて目の前に暗い宇宙空間が見える。

「銀河の閃光五二号発進します!」
 山田は十Gの全力加速を開始するが、重力探査及びレーダー両方によって周りに数機の僚機を探知でき、さらに重力探知で4千万㎞のかなたに敵艦隊を探知する。敵が射出したビーはまだ靄のような感じで探知されている。

 スカイラーク1号の艦橋では、サベル中佐が参謀に話しかけている。
「あれは、自走機能のある一種の機雷だろうな。たぶん艦体の周りを取り巻いて敵の艦を射程距離に近づけないようにしようという事だろう。
 実際わが方の戦闘艦はあれがある限り近づきにくいのは事実だが、機動能力の高い小型の戦闘機なら避けつつ戦闘することも可能だ。ああいうものを出して来るということは、我が方のような小型の戦闘機は積んでいない可能性が高いな」
 これに対してライカー参謀が応じる。

「司令殿、戦闘艦には、百万㎞程度の遠目の距離からレールガンを連射させて、それに相手が斥力装置で応じるのに精一杯の所に、戦闘機に肉薄させて撃ち込ませるという方法になるのではないでしょうか。わが方の戦力を有効に使うのはそれしかないでしょう」

「うん、そうだろうな。では、村井中尉、各戦闘艦にその旨を伝えろ。それから、君は、各艦の射撃点の未来位置を算定して指示しろ」
 サベル中佐は戦術士官の村井二尉に命令する。

 村井の通信に、スカイラークの僚艦5艦と、哨戒飛行から追いついて、一転戦闘に加わろうとする『こくりゅう』以下の3艦で合計8艦は指示通りの射撃点を目指す。その艦にも山田二尉達の戦闘機は急速に敵艦隊に肉薄している。
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