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第3章 宇宙との出会い
3.4 地球防衛軍設立の動き
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『きぼう』と『おおぞら』が着いたとき、宇宙からの地球への呼びかけの開始からまだ2時間しか経過していないためと、西山市が地方にある関係で、集まったマスコミ関係者は余り多くなかった。しかし、NHKと民放2局がすでに来ていたので、青山一佐と狭山准教授に記者会見の席での発表を頼んで、誠司は来ていた山科教授とすぐに協議に入った。
誠司は、手短に月、火星での調査の結果を報告して、本題の木星からの通信および、ジスカルとの出会いさらに彼からの情報について詳しく説明した。
「うーむ、普通だったら俄かには信じられない話だな。しかし、牧村君の言うようにこれは全力で準備にかかるしかないだろう。もし、言われるような脅威がないとすれば、無駄に兵器をそろえ防衛体制を整えることになったと言われるだろう。だが、星間種族がいることは明らかになったのだから何らかの防御態勢は必要であるので無駄とは言えないだろう。
一方で、本当であった場合、何も準備しないと確実に地球人類の滅亡に繋がるのだから、これは選択の余地はないケースだな。この点は、日本は無論各国も判るだろうし、公表すれば理性的な人は理解するよ。しかし、すぐに全力で必要な機器の生産にかかる必要があるが、実質直ぐに生産体制を整えられるのは日本しかないぞ。
また、政府もとりあえず動かせる予算は知れているはずだから、すぐには大きくは動けんだろう。場合によっては政府の了解のうえで、西山大学技術開発研究所の借金で動きはじめた方が早いかもしれんな」
さすがに、山科教授は理解が早い。
教授は記者会見の様子を覗いたあと、電話を取り出し誠司に言う。
「今は、国会はないな。佐治官房長官に電話してみよう。当然この記者会見は見ているだろう」
この後番号を押して話始める。
「もしもし、佐治官房長官にお願いしたいのですが、私は西山大学の山科ですが。はい、はい。極めて緊急かつ重要なお話です」電話から口を外して誠司に語り掛ける。
「いるようだ。こうなると東京に行くのが不便だな」
「ええ、でもヘリがありますよ。近くの〇〇駐屯地から来ればすぐですよ」
誠司が言っているうちに佐治官房長官が電話に出たようだ。
「はい、ご無沙汰しています。今やっている記者会見のことはご存知だと思います。政府に断りなく発表したことはお詫びします。しかし、これは出来るだけ隠し事なく全世界に知らせるべきという牧村君の判断から発表しております。
少しでも隠しだてをすると後々疑われますから。なお、現場で撮った映像と音声記録も記者にすぐにお渡しするつもりです。この件については、出来るだけ早く首相を交えて、直接現場に立ち会った牧村君と青山一佐と共に協議すべきと思うのですが、いかがですか。
最も早い方法は、近くの〇〇駐屯地からヘリを出してもらってそちらに行くことだと思いますが。はい、はい、ではお待ちしています」
教授は電話を切ったあと誠司を向いて言う。
「間もなく、ヘリが来るだろう。記者会見は、青山一佐と狭山君だけでは気の毒だ。我々も行こうかね」
記者会見場は、どんどん報道関係者が増えてすごい熱気に包まれている。青山一佐が大体の概要を説明し終わったところだったようで、誠司と山科教授が入って席に着くとどっと質問が始まるが、山科はそれを遮って言う。
「すこし、お待ちください。私どもに青山一佐の3人は間もなく出発する必要があります。現場で撮った映像記録と音声記録はコピーして希望者にお渡ししますので、説明なしでも十分状況を把握できると思います。
この中にそのデータが入っています。狭山君、私たちがいなくなったら代わってお話をしてください。またデータを希望者にコピーしてください」
山科は准教授の狭山京子に指示したのち、集まっている報道関係者三十人ほどに向き直る。
「皆さん、今回の調査旅行は防衛省からの協力を得ていますが、当西山大学技術開発研究所が行ったものです。その結果、いわゆるファースト・コンタクトを成し遂げ、かつおそらく人類がかってなかった危機に直面していることがわかったわけです。
今青山一佐から発表した侵攻は明日にでも起きるかもしれません。間違いなく言えることは、今、その侵攻が起きたら、たぶん人類の9割以上は死に絶え、残りも数年のうちには滅ぼされるでしょう。今から我々は全力で迎え撃つ準備をしなくてはなりません。
そのために、私と牧村君及び、青山一佐は政府との協議を行い、どういう方法でその準備をするか決めてすぐ動き出したいと思います。また、今回データをお渡しすることでご理解して頂けると思いますが、いずれにせよ、マスコミの皆さんと日本のみならず世界の人々にこの件について隠しだてをするつもりはありません。
ただし、これはお断りしておきますが準備状況の情報は別です。万が一相手が地球まで探りに来てそれが漏れていたら、好きなようにやられてしまいます。いずれにせよ、この問題は人類全体の問題として考える必要があることはご理解いただけるかと思います。
そこでは報道範囲にも自ずから制限があることをご理解願いたいと思います。今から我々は日本での準備を整えつつ世界中の国の協力をお願いしていく必要がありますが、これについては皆さんの協力が絶対に必要です。今後共よろしくお願い致します」
山科と共に誠司も狭山も頭を下げる。
ちょうどその時、ヘリの近づく音が聞こえる。
「それでは、迎えが来たようなので、我々は出発します」山科が言のに、
「どこへ行かれるのですか?」大勢から来る質問に、
「ご想像の通りですよ」と答えて出発する。
記者たちも映像と音声データを貰えるというので、あまりしつこくはしない。
2時間後に、総理公邸に着陸した山科、誠司、青山一佐は直ちに首相、官房長官、防衛大臣ほか自衛隊の制服組3人の秘書等5人と協議に入った。
「いや、まことに、貴研究所のおかげで大変貴重な情報が手に入りましたが、しかし、これはまた大変重い話ですね」早速首相が自ら言う。
「ええ、まだ今のところは話だけで、マスコミからはまだ映像と音声は出されていないようですから、今からお見せします。プロジェクターを出して頂けますか?」
誠司の頼みにすぐ秘書がプロジェクターを用意をして、ジスカルの映像と実際にしゃべっている所、さらにジスカルの宇宙船の映像等を手短に見せる。
「これで、判って頂けたかと思いますが、少なくも異星人、それも本人が言うには巨大惑星人がいることが判明したわけです。そして、その異星人は少なくとも、その船の責任者的な立場で、親切にも酸素呼吸生物も多く居ることを伝えてくれ、この地球のある太陽系がその一つのラザニアム帝国というテリトリーの端にあるということを伝えてくれたのです。
ラザリアム帝国は、酸素呼吸生物が住む惑星を見つけると、艦隊、これは十隻程度のようですが、を送って攻撃し、それに抵抗できないと都市を破壊して、後に自分たちで植民して結局その住民を滅ぼしてしまうそうです。
実際に最初に送られた艦隊にそうやって破壊された惑星の記録というのがこれです」
誠司はプロジェクターでジスカルにもらった映像を見せる。
それは、軌道から岩石の雨を降らされて、摩擦熱で高温になった岩石の熱で焼け焦げたのであろう、半ば溶解して破壊しつくされたかっての大都市の廃墟であり、住民の姿は全く見えない。
森林は残っているが、海の近くは海に落ちた岩石のために津波に破壊されている。たぶん、それでも植物が残っているということは人も生き残っているだろうがわずかな数だろう。
皆、その無残な様子に言葉もなく見入っており、映像が切れると「ほう!」とため息をつく。
「これは、これは大変なものですね。これを見れば、侵攻に備えるのを反対する人はいないでしょう」
佐川防衛大臣がいうが佐治官房長官が異を唱える。
「しかし、それでも反対するものがいるのが世の中なのだよな。しかし、反対されようがどうしようが、全力で備えは始めないといけないですね。それで、牧村君に聞くが、今度提供された武器の情報と、その実際の準備の見込みについて整理してもらいたい」
「はい、まず今実用化されているのは、レールガンと重力エンジンですね。それから、重力波の精密検出装置で即時に相手の探知と通信も出来ます。さらに、ジスカルから提供されて、実用化可能なのは、防御面ではまず電磁バリヤーで、これは熱線砲なら防げますが、大口径のレールガンは無理です。
それから斥力バリヤーというのは変ですが、要は狙いを着けたある特定の方向に強力な斥力を発生するもので、これと電磁バリヤーの組み合わせでレールガンも防げます。
攻撃面では熱線砲ですが、これは相手が電磁バリヤーを持っていれば無効化されてしまいます。それとこれは武器ではないのですが、超空間通信機で受け手とその位置が特定できないと使えませんので、今の電波による放送のようなことは出来ないのです。
しかし、この技術のおかげでどうやら超空間ジャンプの目途がつきそうですから、何とか早く実用化して、ラザリアム帝国を退けたというアサカラ人の住む星を訪ねたいのですが、どうもジャンプの出来るその宇宙船には百万㎾級の大出力の発電機を積む必要があるらしく、だいぶ時間がかかりますね」
そう誠司は応え、それに対して佐治がまとめる。
「そうすると、防御としては電磁バリヤーと斥力装置があるが、両方で熱線砲とレールガンに対応できるということですね。一方で、熱線砲は電磁バリヤーに対しては有効でない。レールガンは電磁バリヤーと斥力装置で防げるが、斥力装置は効力方向をその方向に向ける必要があるということですね?」
「そうです。従ってレールガンを備えた一定数の艦で集中攻撃をすればその相手は撃破できるでしょう。しかし、最初に来るという十隻程度には対応は出来るでしょうが、その後に続く数百という相手では非常に分が悪いです。
それと不安があるのは、重力エンジン搭載のミサイルです。核爆弾は放射能の汚染があるので、後で占領して植民するつもりの地上には使わないと思いますが、宇宙での戦いでは使ってくるでしょう。これは、いろんなタイプがあるそうで、ステルス性なんかも当然備えているものがあると思います」
誠司が答える。
「それと、いつ侵攻があるか判らないということは、すぐに現在の戦力を直ちに精一杯強化する必要があります。いずれにせよ、この戦いでは最低限度で重力エンジンの備えている必要があるでしょうから、現在その戦力化をしているのは、日本の自衛隊のみです。
基本的には航空自衛艦である『むらくも』『さいうん』『らいうん』の3艦、それに『きぼう』と『おおぞら』の全部で5艦ですが、ジェット機の改修版も近宇宙では使えるかもしれません。これは改F4が五十機、改F15が四十五機あります」
航空自衛隊から出席している若手将校が言うが、誠司が反論する。
「たぶん、今の自衛隊のミサイルでは電磁バリヤーは突破できないでしょう。レールガンが最低必要ですが、ちょっと戦闘機に積むのはサイズ的に無理ですね。電力は何とか電池でいけるとしても、砲弾も百㎜程度ほしいですから。
………でも機体の全長を使えば何とか入るか。砲弾も5発以下だったら積めるだろう。可能性はありますね。しかし、操縦士には相当無理をさせることになります。なにより電磁バリヤーは積めませんから熱線砲がかすっただけでやられます」
途中で意見が変わった誠司だが、操縦士を懸念する。
「もともと、ジェット機の操縦は無理の塊なのです。Gだって最大で7から8かかりますからね。しかし、比べれば重力エンジンに換装した機の操縦は極めて楽なのですよ。いわば、大砲にまたがって敵に突っ込むくらいのことは平気ですし、もともとバリヤーんてものはありませんから、ミサイルが近くで破裂しても墜落です」
その将校は言ってから笑う。
「ところで、すでに実用化している重力エンジン、レールガンは載せる機を選定あるいは想定したうえで増産計画が必要ですし、また出来るだけ早く宇宙船の戦力化を進めるためには場合によって、気密性のある潜水艦を改修した方がいいのかもしれません。
また、先ほど言った電磁バリヤーと斥力装置、熱線砲はすぐに実用化が必要ですが、そこをどうすれば最も効率がいいのか。さらに国際協力をどう進めるのか。これらを包括的に話し合って、早急に方向を決める必要があります。
少なくとも、重力エンジン、レールガンの設計・生産に携わっている人は無論、さらに『きぼう』でこれらの生産の準備をした人たち、さらに生産計画に係る有能な人を集めて明日か明後日にでも会議をやりたいと思います。
でもまとめることを考えると、参加人数はせいぜい最大五十人以下ですね。人選は何とか政府でお願いします。 私は、開発品についてまとめたもののチェックがありますので余裕がありません。会議はやはりここ東京でやらざるを得ないでしょう」
誠司が言うと、皆それはそうだという顔をする。今からの時間は極めて貴重だ。
結局、大至急きぼうで誠司と一緒に作業をした人々、西山市の四菱重工で一緒に開発を行ったメンバーがやはりヘリで東京に呼ばれた。
さらには官房長官の要請に応じて各省庁から及び、学会の若手、企業のこれと言う人材が集められた。予算については、あらゆる省庁の予算をかき集めて使い、補正予算もすぐに組むということで当面不足することはないだろうということであった。
誠司は、手短に月、火星での調査の結果を報告して、本題の木星からの通信および、ジスカルとの出会いさらに彼からの情報について詳しく説明した。
「うーむ、普通だったら俄かには信じられない話だな。しかし、牧村君の言うようにこれは全力で準備にかかるしかないだろう。もし、言われるような脅威がないとすれば、無駄に兵器をそろえ防衛体制を整えることになったと言われるだろう。だが、星間種族がいることは明らかになったのだから何らかの防御態勢は必要であるので無駄とは言えないだろう。
一方で、本当であった場合、何も準備しないと確実に地球人類の滅亡に繋がるのだから、これは選択の余地はないケースだな。この点は、日本は無論各国も判るだろうし、公表すれば理性的な人は理解するよ。しかし、すぐに全力で必要な機器の生産にかかる必要があるが、実質直ぐに生産体制を整えられるのは日本しかないぞ。
また、政府もとりあえず動かせる予算は知れているはずだから、すぐには大きくは動けんだろう。場合によっては政府の了解のうえで、西山大学技術開発研究所の借金で動きはじめた方が早いかもしれんな」
さすがに、山科教授は理解が早い。
教授は記者会見の様子を覗いたあと、電話を取り出し誠司に言う。
「今は、国会はないな。佐治官房長官に電話してみよう。当然この記者会見は見ているだろう」
この後番号を押して話始める。
「もしもし、佐治官房長官にお願いしたいのですが、私は西山大学の山科ですが。はい、はい。極めて緊急かつ重要なお話です」電話から口を外して誠司に語り掛ける。
「いるようだ。こうなると東京に行くのが不便だな」
「ええ、でもヘリがありますよ。近くの〇〇駐屯地から来ればすぐですよ」
誠司が言っているうちに佐治官房長官が電話に出たようだ。
「はい、ご無沙汰しています。今やっている記者会見のことはご存知だと思います。政府に断りなく発表したことはお詫びします。しかし、これは出来るだけ隠し事なく全世界に知らせるべきという牧村君の判断から発表しております。
少しでも隠しだてをすると後々疑われますから。なお、現場で撮った映像と音声記録も記者にすぐにお渡しするつもりです。この件については、出来るだけ早く首相を交えて、直接現場に立ち会った牧村君と青山一佐と共に協議すべきと思うのですが、いかがですか。
最も早い方法は、近くの〇〇駐屯地からヘリを出してもらってそちらに行くことだと思いますが。はい、はい、ではお待ちしています」
教授は電話を切ったあと誠司を向いて言う。
「間もなく、ヘリが来るだろう。記者会見は、青山一佐と狭山君だけでは気の毒だ。我々も行こうかね」
記者会見場は、どんどん報道関係者が増えてすごい熱気に包まれている。青山一佐が大体の概要を説明し終わったところだったようで、誠司と山科教授が入って席に着くとどっと質問が始まるが、山科はそれを遮って言う。
「すこし、お待ちください。私どもに青山一佐の3人は間もなく出発する必要があります。現場で撮った映像記録と音声記録はコピーして希望者にお渡ししますので、説明なしでも十分状況を把握できると思います。
この中にそのデータが入っています。狭山君、私たちがいなくなったら代わってお話をしてください。またデータを希望者にコピーしてください」
山科は准教授の狭山京子に指示したのち、集まっている報道関係者三十人ほどに向き直る。
「皆さん、今回の調査旅行は防衛省からの協力を得ていますが、当西山大学技術開発研究所が行ったものです。その結果、いわゆるファースト・コンタクトを成し遂げ、かつおそらく人類がかってなかった危機に直面していることがわかったわけです。
今青山一佐から発表した侵攻は明日にでも起きるかもしれません。間違いなく言えることは、今、その侵攻が起きたら、たぶん人類の9割以上は死に絶え、残りも数年のうちには滅ぼされるでしょう。今から我々は全力で迎え撃つ準備をしなくてはなりません。
そのために、私と牧村君及び、青山一佐は政府との協議を行い、どういう方法でその準備をするか決めてすぐ動き出したいと思います。また、今回データをお渡しすることでご理解して頂けると思いますが、いずれにせよ、マスコミの皆さんと日本のみならず世界の人々にこの件について隠しだてをするつもりはありません。
ただし、これはお断りしておきますが準備状況の情報は別です。万が一相手が地球まで探りに来てそれが漏れていたら、好きなようにやられてしまいます。いずれにせよ、この問題は人類全体の問題として考える必要があることはご理解いただけるかと思います。
そこでは報道範囲にも自ずから制限があることをご理解願いたいと思います。今から我々は日本での準備を整えつつ世界中の国の協力をお願いしていく必要がありますが、これについては皆さんの協力が絶対に必要です。今後共よろしくお願い致します」
山科と共に誠司も狭山も頭を下げる。
ちょうどその時、ヘリの近づく音が聞こえる。
「それでは、迎えが来たようなので、我々は出発します」山科が言のに、
「どこへ行かれるのですか?」大勢から来る質問に、
「ご想像の通りですよ」と答えて出発する。
記者たちも映像と音声データを貰えるというので、あまりしつこくはしない。
2時間後に、総理公邸に着陸した山科、誠司、青山一佐は直ちに首相、官房長官、防衛大臣ほか自衛隊の制服組3人の秘書等5人と協議に入った。
「いや、まことに、貴研究所のおかげで大変貴重な情報が手に入りましたが、しかし、これはまた大変重い話ですね」早速首相が自ら言う。
「ええ、まだ今のところは話だけで、マスコミからはまだ映像と音声は出されていないようですから、今からお見せします。プロジェクターを出して頂けますか?」
誠司の頼みにすぐ秘書がプロジェクターを用意をして、ジスカルの映像と実際にしゃべっている所、さらにジスカルの宇宙船の映像等を手短に見せる。
「これで、判って頂けたかと思いますが、少なくも異星人、それも本人が言うには巨大惑星人がいることが判明したわけです。そして、その異星人は少なくとも、その船の責任者的な立場で、親切にも酸素呼吸生物も多く居ることを伝えてくれ、この地球のある太陽系がその一つのラザニアム帝国というテリトリーの端にあるということを伝えてくれたのです。
ラザリアム帝国は、酸素呼吸生物が住む惑星を見つけると、艦隊、これは十隻程度のようですが、を送って攻撃し、それに抵抗できないと都市を破壊して、後に自分たちで植民して結局その住民を滅ぼしてしまうそうです。
実際に最初に送られた艦隊にそうやって破壊された惑星の記録というのがこれです」
誠司はプロジェクターでジスカルにもらった映像を見せる。
それは、軌道から岩石の雨を降らされて、摩擦熱で高温になった岩石の熱で焼け焦げたのであろう、半ば溶解して破壊しつくされたかっての大都市の廃墟であり、住民の姿は全く見えない。
森林は残っているが、海の近くは海に落ちた岩石のために津波に破壊されている。たぶん、それでも植物が残っているということは人も生き残っているだろうがわずかな数だろう。
皆、その無残な様子に言葉もなく見入っており、映像が切れると「ほう!」とため息をつく。
「これは、これは大変なものですね。これを見れば、侵攻に備えるのを反対する人はいないでしょう」
佐川防衛大臣がいうが佐治官房長官が異を唱える。
「しかし、それでも反対するものがいるのが世の中なのだよな。しかし、反対されようがどうしようが、全力で備えは始めないといけないですね。それで、牧村君に聞くが、今度提供された武器の情報と、その実際の準備の見込みについて整理してもらいたい」
「はい、まず今実用化されているのは、レールガンと重力エンジンですね。それから、重力波の精密検出装置で即時に相手の探知と通信も出来ます。さらに、ジスカルから提供されて、実用化可能なのは、防御面ではまず電磁バリヤーで、これは熱線砲なら防げますが、大口径のレールガンは無理です。
それから斥力バリヤーというのは変ですが、要は狙いを着けたある特定の方向に強力な斥力を発生するもので、これと電磁バリヤーの組み合わせでレールガンも防げます。
攻撃面では熱線砲ですが、これは相手が電磁バリヤーを持っていれば無効化されてしまいます。それとこれは武器ではないのですが、超空間通信機で受け手とその位置が特定できないと使えませんので、今の電波による放送のようなことは出来ないのです。
しかし、この技術のおかげでどうやら超空間ジャンプの目途がつきそうですから、何とか早く実用化して、ラザリアム帝国を退けたというアサカラ人の住む星を訪ねたいのですが、どうもジャンプの出来るその宇宙船には百万㎾級の大出力の発電機を積む必要があるらしく、だいぶ時間がかかりますね」
そう誠司は応え、それに対して佐治がまとめる。
「そうすると、防御としては電磁バリヤーと斥力装置があるが、両方で熱線砲とレールガンに対応できるということですね。一方で、熱線砲は電磁バリヤーに対しては有効でない。レールガンは電磁バリヤーと斥力装置で防げるが、斥力装置は効力方向をその方向に向ける必要があるということですね?」
「そうです。従ってレールガンを備えた一定数の艦で集中攻撃をすればその相手は撃破できるでしょう。しかし、最初に来るという十隻程度には対応は出来るでしょうが、その後に続く数百という相手では非常に分が悪いです。
それと不安があるのは、重力エンジン搭載のミサイルです。核爆弾は放射能の汚染があるので、後で占領して植民するつもりの地上には使わないと思いますが、宇宙での戦いでは使ってくるでしょう。これは、いろんなタイプがあるそうで、ステルス性なんかも当然備えているものがあると思います」
誠司が答える。
「それと、いつ侵攻があるか判らないということは、すぐに現在の戦力を直ちに精一杯強化する必要があります。いずれにせよ、この戦いでは最低限度で重力エンジンの備えている必要があるでしょうから、現在その戦力化をしているのは、日本の自衛隊のみです。
基本的には航空自衛艦である『むらくも』『さいうん』『らいうん』の3艦、それに『きぼう』と『おおぞら』の全部で5艦ですが、ジェット機の改修版も近宇宙では使えるかもしれません。これは改F4が五十機、改F15が四十五機あります」
航空自衛隊から出席している若手将校が言うが、誠司が反論する。
「たぶん、今の自衛隊のミサイルでは電磁バリヤーは突破できないでしょう。レールガンが最低必要ですが、ちょっと戦闘機に積むのはサイズ的に無理ですね。電力は何とか電池でいけるとしても、砲弾も百㎜程度ほしいですから。
………でも機体の全長を使えば何とか入るか。砲弾も5発以下だったら積めるだろう。可能性はありますね。しかし、操縦士には相当無理をさせることになります。なにより電磁バリヤーは積めませんから熱線砲がかすっただけでやられます」
途中で意見が変わった誠司だが、操縦士を懸念する。
「もともと、ジェット機の操縦は無理の塊なのです。Gだって最大で7から8かかりますからね。しかし、比べれば重力エンジンに換装した機の操縦は極めて楽なのですよ。いわば、大砲にまたがって敵に突っ込むくらいのことは平気ですし、もともとバリヤーんてものはありませんから、ミサイルが近くで破裂しても墜落です」
その将校は言ってから笑う。
「ところで、すでに実用化している重力エンジン、レールガンは載せる機を選定あるいは想定したうえで増産計画が必要ですし、また出来るだけ早く宇宙船の戦力化を進めるためには場合によって、気密性のある潜水艦を改修した方がいいのかもしれません。
また、先ほど言った電磁バリヤーと斥力装置、熱線砲はすぐに実用化が必要ですが、そこをどうすれば最も効率がいいのか。さらに国際協力をどう進めるのか。これらを包括的に話し合って、早急に方向を決める必要があります。
少なくとも、重力エンジン、レールガンの設計・生産に携わっている人は無論、さらに『きぼう』でこれらの生産の準備をした人たち、さらに生産計画に係る有能な人を集めて明日か明後日にでも会議をやりたいと思います。
でもまとめることを考えると、参加人数はせいぜい最大五十人以下ですね。人選は何とか政府でお願いします。 私は、開発品についてまとめたもののチェックがありますので余裕がありません。会議はやはりここ東京でやらざるを得ないでしょう」
誠司が言うと、皆それはそうだという顔をする。今からの時間は極めて貴重だ。
結局、大至急きぼうで誠司と一緒に作業をした人々、西山市の四菱重工で一緒に開発を行ったメンバーがやはりヘリで東京に呼ばれた。
さらには官房長官の要請に応じて各省庁から及び、学会の若手、企業のこれと言う人材が集められた。予算については、あらゆる省庁の予算をかき集めて使い、補正予算もすぐに組むということで当面不足することはないだろうということであった。
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