日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人

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第2章 始まる日本の変革

2.2 尖閣事変後、各国の動き

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 中国の艦隊をレールガン装備の130㎞もの彼方の艦体が撃ち破り、重力エンジン機の戦闘機が2.5倍もの飛行編隊を一撃で葬った日本の自衛隊の攻撃は、攻撃を食らった中国は無論のこと世界の軍事関係者の大きな衝撃を与えた。

 中でも衝撃が大きかったのは、当然のことながら自他ともに世界一の陸・海・空の戦力を持つとされる米軍である。かれらは、日本国の自衛隊への評価は、陸は問題にならず、海・空は鋭い牙はもっているが所詮のところ継戦能力に欠ける戦力で、かつそのいびつな憲法がある以上はその戦力も有効に使えない2流の軍隊とみなしていた。

 しかし、彼らはまず、現時点では圧倒的に強力なレールガンと重力エンジン搭載の戦闘機という武器を初めて使い、しかもまたその使い方が戦術的に最も有効な使い方をしたことに驚嘆した。その結果が、味方の損害がゼロ、敵に対しては抑制した攻撃で完全に戦闘力を奪うという結果になっている。

 さらに、その戦術は実際のところ完全ではないが、彼らの憲法を意図的に踏み越え、さらにその結果を憲法自体の欠陥に押し付けることに成功している。この現実を突きつけられれば、いかに平和ボケした日本国民と言えども、憲法を変えることは拒否しない、いや積極的に変えるという決断をするだろう。

 これは、かの紛争の直後、アメリカ合衆国の大統領スペード、国務長官アランスン、国防長官ジェファーソンに軍関係者の少数が集まった会議で議論された。駐日大使ロバートソンも呼ばれている。
 皮切りに国務長官アランスンが総括する。
「今回の紛争に関して中国は、明らかに戦闘の勝利を持って国内問題から民衆の目をそらそうというものであった。作戦としては雑であったが、数の優位を生かし、かの日本の憲法の制約を活用した無難なものであったと思う。あのレールガンと重力エンジンがなくば、日本自衛隊にも中国と同等の犠牲者が出て、日本の政権は持たずた倒れたであろう。

 あれが、失敗したのは、一つは日本が世界の軍事常識を塗りかえるほどの新兵器を2つも出してきたということと、さらに彼らが憲法の制約を踏み越えたことに尽きる。わが国は、日本が大きな損害を負うことを許容し予想しながら違う日米関係、つまりより日本を従属関係に置くためにこの状況を放置したが、いまや状況は全く異なったものになった。
 今は明らかに日本という国の武器の一部は我が国をしのいでいるし、その上彼らも、とりわけ尖閣諸島については安全保障条約の範囲外とした、この度の我が国の悪意に気付いている」

 国務長官はそう言ってさらに続ける。
「まず、わからないのは、日本があれだけ強力なレールガンと重力エンジンと言う大発明をいつどのように成したのか、そこだ。そして、その技術をどうやって我が国に取り込むのかだ。駐日大使はこれらの発明について、なにか情報を掴んでいるかな?」

 切れ者の国務長官がなおも議論をリードするのに駐日大使が答える。
「はい、最近、日本の地方大学である西山大学からみで様々な発見や発明が生まれています。皆さんも先日の地震予知に成功した西山大学の教授の話を聞かれたかと思います。
 さらに、それに先立って巻き線が不要で効率が際立って良い新型のモーターについても、西山大学発の発明として、我が国のメーカーもかの大学に日参しています。

 それだけではなく、これはごく最近に発表されましたが、原子を変換するタイプのバッテリーが発明されたのです。少し前から週刊誌等では話としては出ていたのですが、あまりに今までのものと桁が違いすぎて、信じ切れなかったというのが正直なところです。
 それらの話の中に、レールガンの話と重力エンジンと言う話はあまり出てきません。ですが、どうも西山大学四菱重工業が共同でもっととんでもないものを開発しているという話は聞こえてきています。ですから、レールガンと重力エンジンみたいなとんでもないものは、やはり西山大学が関与しているというのはあり得ますね」

 ロバートソン大使が言うが、国務長官は不機嫌そうに非難する。
「この場合は我々の関心はレールガンと重力エンジンだが、そのバッテリーも今回の軍事行動に絡んでいるような気がするな。しかし、それに対してすでに報道されていること以外に何一つ具体的なことがわからないというのは、大使館として怠慢すぎるぞ」

 ロバートソン大使は少し慌てて言う。
「いや、エージェントは送り込もうとしたのですが、えらくガードが固く、みな撥ねられてしまったのです。それで………」

「いや、今からエージェントを送り込むようなことをしていてもしょうがない。これは、正攻法が良かろう。私が、阿賀に話をするよ。たしかにロバートソンが言うように、西山大学での開発は異常だ。
 また、これだけとんでもない発明が続々と出てくるとなると、日本のご機嫌を損ねることは国益に反する。

 今回の件は、率直にわが方は助けなかったことを阿賀に謝まったうえで、技術供与を頼むことにするよ。とりわけ、レールガンは基本的に軍事にしか使えないだろうが、重力エンジンは別だ。もし、今から日本が重力エンジンを積んだ航空機を売りだしたら、間違いなく我が国及びヨーロッパの航空機産業は全滅だ。それを、彼らがどう考えているのか知る必要がある。
 また、我が国はこれだけの技術は、いずれにしても手に入れなくてはどうしょうもないだろう?」
 大統領が遮って話し始め、最後に皆の顔を見渡して聞くと、出席者は皆頷く。さすがにビジネスマン出身の大統領のジネス感覚は鋭いと皆は思わざるを得ない。

「大統領閣下、私は言われることに大賛成です。ご決断に感謝します。実は、今まで話がでてきて確実な話が、レールガンと重力エンジン、さらに新型モーター、超バッテリー、加えて地震の完全な予知ですが、そのうえにささやかれているのが核融合発電です」

 ロバートソン駐日大使が言うが、国務長官は否定的だ。
「しかし、いくら何でも核融合発電はないだろう」

「ええ、私も半信半疑なのですが、ここまでいろんな発明や発見があると信じられるような気がします。しかもですね、それは四菱重工の工場内で開発されているというのですよ。ですから、一般に言われているような規模の大きなものではないはずです」
 大使は尚も言う。

「うむ、わかった。その件も含めて近く日本を私自身が訪問しよう。今現在は日本では憲法改正のための選挙中だから、今は無理だが。終わり次第だな。ロバートソン、阿賀の政党の圧勝と彼の首相への再選は間違いないのだな?」
 大統領が大使に聞くのに大使が答える。

「ええ、間違いなく自民党の圧勝ですね。憲法も改正されます」
「しかし、日本人というのは、何で我が国が日本を戦争させず従属させるための憲法を今まで後生大事に持っていたのだ?」
 大統領が不思議そうに誰ともなく聞くが、しかし、皆それなりにそのことは不思議に思っていたので、この問いに答えるものはいない。


 中国・韓国との軍事的な衝突の余波は無論アメリカのみならず全世界に及び、最も大きな危機感を覚えたのは無論、中国軍であった。

 日本にあのレールガン、重力エンジンがあり、我にない限り、我に核ミサイルがあろうとこれはレールガンによって、まず百%撃墜されるであろう。重力エンジン専用機の開発は間近であろうし、それは核ミサイルが飛行する成層圏まで上昇しかつ、ミサイルに対して優速であろう。だから、よしんばそれの迎撃網をかいくぐれたとしても、これは容易に撃破される。

 また、レールガンが対空に使われた場合、もう航空機や対艦ミサイルは自衛隊の艦船に近づくこともできないであろう。無論、艦船の戦闘において、我が方は全く敵わない。
 陸については、いずれにしろ日本が、すでに淡水が飲めなくなり、空気も呼吸すらままならなくなっているわが中国本土を欲しがるとは思えないし、こちらは海を越えることができない以上考えるのも無駄だ。

 中国軍の最も優秀と言われ、『今孔明』とも呼ばれる、孫少将は腹の中で苦笑する。
 いずれにせよ、日本には我が国が同等の能力を手に入れない限り勝てない。さらに、前のように頭にのって、小日本と甘く見て刺激するときっちりやり返される可能性が高い。自分の影響力が及ぶ者たちには、日本を刺激するような真似はするなと釘を刺しておこう。孫少将はそう決心するのだった。
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