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第2章 始まる日本の変革
2.1 尖閣事変後、日本の動き
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こうして、Xデーは終わったが、中国中南海では、かなり過激な一幕があった。
主席の劉が無残な敗戦に怒り狂い、日本を核攻撃すると言い張ったのだ。これに対しては、日本があれほどの大威力かつ高精度のレールガンを実用化している以上、仮に核ミサイルを撃っても撃墜される可能性が高く、その場合は中国軍の威信が完全に凋落するという軍関係者の一致した意見がまずあった。
また、劉以外の政治局員は、日本への核攻撃は依然として残っている日米安保条約の完全な対象になるということに気づくだけの冷静さが残っていた。従って、皆で寄ってたかって劉の意向を封じ込めた。
実際には、日本の対中国の核ミサイルの防衛体制はまだ中途半端であり、この時点で全面攻撃されたら、防ぎきれなかった可能性が高いことから、この事態は日本にとってなかなか危ういものであった。
その代わりに、中国外務省からの日本への非難は極めてヒステリックなものであった。
「日本は、我が国の固有の領土である釣魚島にわが軍が正当に上陸しようとするのを防ごうと、不当にも護衛に当たっていたわが軍の軍艦をレールガンという非人道的な兵器で多数破壊した。さらには、正当にわが領土に向かっていたわが軍の航空機をこれまた多数撃墜し、合計でわが兵士を2225名も殺戮した。
これは近代まれにみる日本軍による残虐行為であり、これに対し我が国としては直ちに核ミサイルで報復すべきという意見もあった。しかし、常に平和を希求する我が国の立場としてはこれをとらず、これに対し我が国は日本国に対して千億ドルの賠償を要求するものである。さもなくば、我が国による核報復を覚悟する必要がある」
流石に、この強盗めいた脅しは、アメリカの見逃すところとならず、強い警告が返ってきている。
「尖閣という島をめぐる戦いについては、我が国としては、安全保障条約の範囲であるかどうか、はっきり判断がつかなかったので、争いに介入しなかった。
しかし、この戦いは日本側のはっきりした警告を無視した結果、中国が反撃されて被害を負ったものであり、これを持って日本に損害賠償を求めるのは筋違いである。まして、核をもってわが安全保障条約相手国を脅迫するがごとき言動は看過できない」
これに対しては、中国は無視した形をとり、同時に日本への要求も棚上げの形になった。
中華人民共和国は、さすがに先の声明によって強圧的な強盗国家の本性を現したと世界中から非難を浴びた。日本の行動は、相手の侵略行為に対して宣言通りの行為を行ったにすぎず、戦力からすれば兵員輸送船を含めて相手を全滅させることも容易だってわけで、むしろその攻撃は抑制的であったとみなされた。
これには、政治団体である新世紀日本による、近世の歴史についてすべて根拠を付けた十か国語の説明テキストのインターネット上の公開が世界に行き渡ったことが大きい。このテキストは、中国や韓国の日本に対するネガティブな歴史に関する宣伝の大部分が、全くのねつ造であることは少しでも事実を重んじる人々の前に明らかになるように作られている。
いずれにせよ、国内に多くの不満分子を抱え、毎日膨大な数の暴動に悩まされる劉政権は、またもその足元に大きな穴を掘ったことになる。
その日の午後9時より、阿賀首相の声明があった。
「皆さん、報道等でご存知のように、本日わが自衛隊が設立以来で初めて、侵略してくる外国軍隊を攻撃しました。
この結果、相手側には多数の死者が出ていますが、これは我が国の官房長官のはっきりした警告を無視した結果であります。
さて、皆さん。ご存知のように、尖閣諸島の我が国への帰属は全く疑いないものであります。これらを占領しようとする中華人民共和国の試みは、いかなる見地から見ても不当なものでありますが、一方でこれらの侵略が決心されたのは、我が国が今の憲法に縛られて有効な反撃が出来ないことを見越してのことであります。
今回、中国は我が国を侵略しようとしてみじめに破れたわけでありますが、かの国は全くこれが侵略であることを反省しようとせず、恥知らずな非難を我が国に浴びせています。その非難は、これが国家の言うことかと耳を疑う内容で、まさに強盗の言い分であります。
そして、我が国のなかでも、両国を戦闘によって自らは損害なく退けたその行為を非難するものがおります。そしてその非難のゆえんは憲法に反しているということであります。率直に申します。皆さんは憲法をじっくり読んでおられるでしょうか。
前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」とあります。今般の中国は平和を愛し信頼に値する存在でしょうか?
そして第九条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とあります。その字句のままに解釈すると、自衛隊は明らかに違憲です。
また、同様に憲法の定めるところによると、この度の中国の侵略に武器を持って戦ってはいけないことになります。しかし、我が国では、憲法解釈ということで曲げに曲げて自衛隊は合憲だけど、相手が攻撃したことを確認しないと反撃してはいけないよ、としてきました。
今回はそれを破りました。なぜか。それを守ると自衛隊員がたくさん死ぬからです」
阿賀首相はしばらく言葉を切ったのち、静かに語り始めた。
「我が国は画期的かつ強力なレールガンを開発しました。しかし、相手に先に撃たせるということをしていると、どうしても近づかないといけないわけです。レールガンと重力エンジンを使った戦闘機を除けば我が国は劣勢でした。
近づいて打ち合ったら、わが自衛隊の死者は千人を優に超えたでしょう。この場合は、相手の射程外から一方的に打ちのめしたから犠牲はなかったのです。
私どもは憲法に反する行動をとりました。しかし、私は、そして私の政権の仲間は、この行動を間違っているとは思っていません。むしろ、国を、国民を守るためにすらこのような難しい判断を迫る憲法が間違っていると思っています。
この私たちの考えが間違っているのか、正しいのか、これを国民の皆さんに判断してほしいと思います。この判断をするのは、日本国民である皆さんしかいないのです。私はここに宣言します。明日、衆議院を解散します。そしてその目的はこの大きな問題をはらんだ前文と九条を中心とする憲法を改正することであり、また今回の紛争に当たって取った私どもの政府の行動が正しかったのか、正しくなかったのかを判断して頂きます。
それを決めるのは皆さんです。皆さんがこれらを判断してください」
阿賀首相の声明が終わった。
阿賀首相は実際に翌日の国会で衆議院の解散を宣言し、3週間後の八月四日に衆議院総選挙が決定された。
この時期は、政治集団”新世紀日本“の数カ月の集中的な運動が実際に大きな効果を現し始めた時期に当たり、改憲をうたい文句にした今回の総選挙にとっては実に都合のいい展開になっている。
新聞等のアンケートでは、国民の間の改憲への賛成意見はすでに3分の2を超えており、改憲を訴える自民党、公新党と維新の会に、新たに加わった新政党の新世紀日本で議席数は3分の2を大きく上回ることは確実視されている。しかし、自民党と永く与党として連立を組んでいた公新党との仲が怪しくなり始めている。
これは、公新党としても、巷間ささやかれるようにバックにある宗教団体のための政党である面も否定できないため、自民党の取る政策に合意できない面も多々ある。
その辺は自民党も無理をして擦り合わせてきたが、憲法の改正ということになるとお互いに譲れない部分がある。当然宗教団体と実質一体の公新党は自分の支持団体の意向を汲もうとするし、自民党はドラスティックに近代社会に適合する合理性のみを求めるので、そこで相いれない齟齬が生じてきた。
また、自民党内部でも阿賀首相の人気もあって支持率が高く維持されていることがあり、必ずしも今までいろんな妥協を迫られてきた公新党との連立に意義を見出しにくいということもあった。困ったときには大いに有難いと思ってきたことは、忘れての話であり、人間というのは勝手なものではある。
結局、自民党・公新党はその連立を解消して、選挙協力はしないことになった。
自民党は、憲法について前文と九条については全面的に改訂する内容、及び現在の時代に合わない事項について改正するとしてその内容を掲げて選挙戦に入った。
前文は、「我が国は世界の諸国との平和を希求し、諸国も同様に我が国との平和な共存を希求することを期待する」と言う内容に改められ。九条については「我が国は自らの国土、国民の安全については、必要に応じて武力を用いてもそれを防衛する権利があると明記し、一方で他国・またはその他民族の地方を武力またはその他の手段をもって侵略することは禁じる」と防衛容認、侵略防止を謳った。
さらに、今後憲法改正は時代・時世に合わなくなってくれば、実施するべきであるという考えから、国会と国民の過半数の賛成で改正は成立するように改められた。
政治団体、新世紀日本は、現在代表になっている参議院議員である青木直樹に加えて官房副長官であった村田健吾が自民党から離脱して「新世紀党」として旗揚げをした。村田は、誠司が重力エンジンの特許料を元に新世紀日本の設立を援助した際の影の立役者であるので、自民党での将来を宿望されていたのを振り捨てての鞍替えである。
その上で、かねてから日本の将来を考えて活動してきた同志に加え、日本のこころを大切にする党、維新の会の半数程度など目標を同じくする政治家も糾合して、短時間で八十二人の衆議院立候補者を集めた。
これらの人々はすでに国会議員である者が、衆議院十八名、参議院六名ですでにそれなりの勢力であった。さらに、その他の人々も立候補経験のあるものが多くそれぞれに人望はそれなりにあり、知名度も高いもののいずれも資金的には苦しい人々であった。
しかし、この点は、資金の豊富な新世紀日本の本部からの資金援助により、少なくとも資金的には困らない戦いをすることになる。
一方で、その資金の潤沢さと現状の世論における有利さから、新世紀党に鞍替えしたいという議員または議員を志す者は多くいたが、さまざまな近世の歴史をまとめる段階で政治家の言動等もデータベースが作られており、新世紀日本の方向に反するものについては拒絶している。
一方で、過去2年間与党のやることに非難しかして来なかった野党第1党の新進党は、相かわらず国籍不明の女性党首を立てているが、とりわけ混沌とする東アジア情勢にまったく前向きの対応を見いだせず、ひたすら与党のやること一つ一つにケチをつけることしかできなかった。
そして、Xデーの中国との紛争、これは日本名「尖閣事変」と名付けられたが、これに関しては、中国の兵士を憲法違反の行為で無残に殺戮したということで口を極めて非難した。 しかし、これは民意を野党第1党としては見誤ったとしか言いようがなく、結局のところ「さすがはどこに忠誠心があるかわからない党首とその政党だ」と選挙民から見放された。
ついに衆議院の立候補が締め切られ、「憲法改正選挙」と銘打たれた激しい2週間の選挙戦が始まった。
世論調査の結果では、内閣支持率六十二%を背景に、自民党が圧倒的に有利であり、次いで新政党である新世紀党が2位となる可能性が高いという状態であり、日本維新の会と新進党が第3党争いをするだろうという情勢で、公新党、共産党は固い支持地盤の支えられてそれなりだが、社民党は消えるのではないかとささやかれている。
これらのうち憲法改正に賛成なのは自民党、新世紀党、日本維新の会であり、間違いなく議席の3分の2は押さえきれるだろうという予想になっているので、参議院はすでに3分の2を抑えているため憲法改正は間違いなく成立するだろうという情勢になってきた。
2025年8月4日、衆議院選挙補投票が行われ、即日開票で翌日朝には結果が確定した。
自民党が275名、新世紀党が80名、日本維新の会が52名、新進党が42名、公新党が35名、共産党が12名、その他が社民党の1名を含めて4名である。
予想されていたように新世紀党がなんと80名の当選者を出して第2党の躍進し、新進党についてはその退潮を象徴するように衆議院に鞍替えしていた女性党首は落選し、第4党に落ちぶれた。
選挙後異例のスピードで組閣した阿賀内閣は、すぐに憲法改正の作業に入るように官僚に指示し、九月中には国民投票にかけるという目標を掲げた。
主席の劉が無残な敗戦に怒り狂い、日本を核攻撃すると言い張ったのだ。これに対しては、日本があれほどの大威力かつ高精度のレールガンを実用化している以上、仮に核ミサイルを撃っても撃墜される可能性が高く、その場合は中国軍の威信が完全に凋落するという軍関係者の一致した意見がまずあった。
また、劉以外の政治局員は、日本への核攻撃は依然として残っている日米安保条約の完全な対象になるということに気づくだけの冷静さが残っていた。従って、皆で寄ってたかって劉の意向を封じ込めた。
実際には、日本の対中国の核ミサイルの防衛体制はまだ中途半端であり、この時点で全面攻撃されたら、防ぎきれなかった可能性が高いことから、この事態は日本にとってなかなか危ういものであった。
その代わりに、中国外務省からの日本への非難は極めてヒステリックなものであった。
「日本は、我が国の固有の領土である釣魚島にわが軍が正当に上陸しようとするのを防ごうと、不当にも護衛に当たっていたわが軍の軍艦をレールガンという非人道的な兵器で多数破壊した。さらには、正当にわが領土に向かっていたわが軍の航空機をこれまた多数撃墜し、合計でわが兵士を2225名も殺戮した。
これは近代まれにみる日本軍による残虐行為であり、これに対し我が国としては直ちに核ミサイルで報復すべきという意見もあった。しかし、常に平和を希求する我が国の立場としてはこれをとらず、これに対し我が国は日本国に対して千億ドルの賠償を要求するものである。さもなくば、我が国による核報復を覚悟する必要がある」
流石に、この強盗めいた脅しは、アメリカの見逃すところとならず、強い警告が返ってきている。
「尖閣という島をめぐる戦いについては、我が国としては、安全保障条約の範囲であるかどうか、はっきり判断がつかなかったので、争いに介入しなかった。
しかし、この戦いは日本側のはっきりした警告を無視した結果、中国が反撃されて被害を負ったものであり、これを持って日本に損害賠償を求めるのは筋違いである。まして、核をもってわが安全保障条約相手国を脅迫するがごとき言動は看過できない」
これに対しては、中国は無視した形をとり、同時に日本への要求も棚上げの形になった。
中華人民共和国は、さすがに先の声明によって強圧的な強盗国家の本性を現したと世界中から非難を浴びた。日本の行動は、相手の侵略行為に対して宣言通りの行為を行ったにすぎず、戦力からすれば兵員輸送船を含めて相手を全滅させることも容易だってわけで、むしろその攻撃は抑制的であったとみなされた。
これには、政治団体である新世紀日本による、近世の歴史についてすべて根拠を付けた十か国語の説明テキストのインターネット上の公開が世界に行き渡ったことが大きい。このテキストは、中国や韓国の日本に対するネガティブな歴史に関する宣伝の大部分が、全くのねつ造であることは少しでも事実を重んじる人々の前に明らかになるように作られている。
いずれにせよ、国内に多くの不満分子を抱え、毎日膨大な数の暴動に悩まされる劉政権は、またもその足元に大きな穴を掘ったことになる。
その日の午後9時より、阿賀首相の声明があった。
「皆さん、報道等でご存知のように、本日わが自衛隊が設立以来で初めて、侵略してくる外国軍隊を攻撃しました。
この結果、相手側には多数の死者が出ていますが、これは我が国の官房長官のはっきりした警告を無視した結果であります。
さて、皆さん。ご存知のように、尖閣諸島の我が国への帰属は全く疑いないものであります。これらを占領しようとする中華人民共和国の試みは、いかなる見地から見ても不当なものでありますが、一方でこれらの侵略が決心されたのは、我が国が今の憲法に縛られて有効な反撃が出来ないことを見越してのことであります。
今回、中国は我が国を侵略しようとしてみじめに破れたわけでありますが、かの国は全くこれが侵略であることを反省しようとせず、恥知らずな非難を我が国に浴びせています。その非難は、これが国家の言うことかと耳を疑う内容で、まさに強盗の言い分であります。
そして、我が国のなかでも、両国を戦闘によって自らは損害なく退けたその行為を非難するものがおります。そしてその非難のゆえんは憲法に反しているということであります。率直に申します。皆さんは憲法をじっくり読んでおられるでしょうか。
前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」とあります。今般の中国は平和を愛し信頼に値する存在でしょうか?
そして第九条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とあります。その字句のままに解釈すると、自衛隊は明らかに違憲です。
また、同様に憲法の定めるところによると、この度の中国の侵略に武器を持って戦ってはいけないことになります。しかし、我が国では、憲法解釈ということで曲げに曲げて自衛隊は合憲だけど、相手が攻撃したことを確認しないと反撃してはいけないよ、としてきました。
今回はそれを破りました。なぜか。それを守ると自衛隊員がたくさん死ぬからです」
阿賀首相はしばらく言葉を切ったのち、静かに語り始めた。
「我が国は画期的かつ強力なレールガンを開発しました。しかし、相手に先に撃たせるということをしていると、どうしても近づかないといけないわけです。レールガンと重力エンジンを使った戦闘機を除けば我が国は劣勢でした。
近づいて打ち合ったら、わが自衛隊の死者は千人を優に超えたでしょう。この場合は、相手の射程外から一方的に打ちのめしたから犠牲はなかったのです。
私どもは憲法に反する行動をとりました。しかし、私は、そして私の政権の仲間は、この行動を間違っているとは思っていません。むしろ、国を、国民を守るためにすらこのような難しい判断を迫る憲法が間違っていると思っています。
この私たちの考えが間違っているのか、正しいのか、これを国民の皆さんに判断してほしいと思います。この判断をするのは、日本国民である皆さんしかいないのです。私はここに宣言します。明日、衆議院を解散します。そしてその目的はこの大きな問題をはらんだ前文と九条を中心とする憲法を改正することであり、また今回の紛争に当たって取った私どもの政府の行動が正しかったのか、正しくなかったのかを判断して頂きます。
それを決めるのは皆さんです。皆さんがこれらを判断してください」
阿賀首相の声明が終わった。
阿賀首相は実際に翌日の国会で衆議院の解散を宣言し、3週間後の八月四日に衆議院総選挙が決定された。
この時期は、政治集団”新世紀日本“の数カ月の集中的な運動が実際に大きな効果を現し始めた時期に当たり、改憲をうたい文句にした今回の総選挙にとっては実に都合のいい展開になっている。
新聞等のアンケートでは、国民の間の改憲への賛成意見はすでに3分の2を超えており、改憲を訴える自民党、公新党と維新の会に、新たに加わった新政党の新世紀日本で議席数は3分の2を大きく上回ることは確実視されている。しかし、自民党と永く与党として連立を組んでいた公新党との仲が怪しくなり始めている。
これは、公新党としても、巷間ささやかれるようにバックにある宗教団体のための政党である面も否定できないため、自民党の取る政策に合意できない面も多々ある。
その辺は自民党も無理をして擦り合わせてきたが、憲法の改正ということになるとお互いに譲れない部分がある。当然宗教団体と実質一体の公新党は自分の支持団体の意向を汲もうとするし、自民党はドラスティックに近代社会に適合する合理性のみを求めるので、そこで相いれない齟齬が生じてきた。
また、自民党内部でも阿賀首相の人気もあって支持率が高く維持されていることがあり、必ずしも今までいろんな妥協を迫られてきた公新党との連立に意義を見出しにくいということもあった。困ったときには大いに有難いと思ってきたことは、忘れての話であり、人間というのは勝手なものではある。
結局、自民党・公新党はその連立を解消して、選挙協力はしないことになった。
自民党は、憲法について前文と九条については全面的に改訂する内容、及び現在の時代に合わない事項について改正するとしてその内容を掲げて選挙戦に入った。
前文は、「我が国は世界の諸国との平和を希求し、諸国も同様に我が国との平和な共存を希求することを期待する」と言う内容に改められ。九条については「我が国は自らの国土、国民の安全については、必要に応じて武力を用いてもそれを防衛する権利があると明記し、一方で他国・またはその他民族の地方を武力またはその他の手段をもって侵略することは禁じる」と防衛容認、侵略防止を謳った。
さらに、今後憲法改正は時代・時世に合わなくなってくれば、実施するべきであるという考えから、国会と国民の過半数の賛成で改正は成立するように改められた。
政治団体、新世紀日本は、現在代表になっている参議院議員である青木直樹に加えて官房副長官であった村田健吾が自民党から離脱して「新世紀党」として旗揚げをした。村田は、誠司が重力エンジンの特許料を元に新世紀日本の設立を援助した際の影の立役者であるので、自民党での将来を宿望されていたのを振り捨てての鞍替えである。
その上で、かねてから日本の将来を考えて活動してきた同志に加え、日本のこころを大切にする党、維新の会の半数程度など目標を同じくする政治家も糾合して、短時間で八十二人の衆議院立候補者を集めた。
これらの人々はすでに国会議員である者が、衆議院十八名、参議院六名ですでにそれなりの勢力であった。さらに、その他の人々も立候補経験のあるものが多くそれぞれに人望はそれなりにあり、知名度も高いもののいずれも資金的には苦しい人々であった。
しかし、この点は、資金の豊富な新世紀日本の本部からの資金援助により、少なくとも資金的には困らない戦いをすることになる。
一方で、その資金の潤沢さと現状の世論における有利さから、新世紀党に鞍替えしたいという議員または議員を志す者は多くいたが、さまざまな近世の歴史をまとめる段階で政治家の言動等もデータベースが作られており、新世紀日本の方向に反するものについては拒絶している。
一方で、過去2年間与党のやることに非難しかして来なかった野党第1党の新進党は、相かわらず国籍不明の女性党首を立てているが、とりわけ混沌とする東アジア情勢にまったく前向きの対応を見いだせず、ひたすら与党のやること一つ一つにケチをつけることしかできなかった。
そして、Xデーの中国との紛争、これは日本名「尖閣事変」と名付けられたが、これに関しては、中国の兵士を憲法違反の行為で無残に殺戮したということで口を極めて非難した。 しかし、これは民意を野党第1党としては見誤ったとしか言いようがなく、結局のところ「さすがはどこに忠誠心があるかわからない党首とその政党だ」と選挙民から見放された。
ついに衆議院の立候補が締め切られ、「憲法改正選挙」と銘打たれた激しい2週間の選挙戦が始まった。
世論調査の結果では、内閣支持率六十二%を背景に、自民党が圧倒的に有利であり、次いで新政党である新世紀党が2位となる可能性が高いという状態であり、日本維新の会と新進党が第3党争いをするだろうという情勢で、公新党、共産党は固い支持地盤の支えられてそれなりだが、社民党は消えるのではないかとささやかれている。
これらのうち憲法改正に賛成なのは自民党、新世紀党、日本維新の会であり、間違いなく議席の3分の2は押さえきれるだろうという予想になっているので、参議院はすでに3分の2を抑えているため憲法改正は間違いなく成立するだろうという情勢になってきた。
2025年8月4日、衆議院選挙補投票が行われ、即日開票で翌日朝には結果が確定した。
自民党が275名、新世紀党が80名、日本維新の会が52名、新進党が42名、公新党が35名、共産党が12名、その他が社民党の1名を含めて4名である。
予想されていたように新世紀党がなんと80名の当選者を出して第2党の躍進し、新進党についてはその退潮を象徴するように衆議院に鞍替えしていた女性党首は落選し、第4党に落ちぶれた。
選挙後異例のスピードで組閣した阿賀内閣は、すぐに憲法改正の作業に入るように官僚に指示し、九月中には国民投票にかけるという目標を掲げた。
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さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
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