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第1章 日本の変革
1.14 自衛隊の兵器改革
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東アジアの政治情勢について解説したい。
東アジアにおいて中国の存在は圧倒的であるが、C型感染症の世界への拡散で世界、とりわけ西側諸国に嫌悪感を抱かせたが、それに対して彼らは全く反省の色を見せなかった。加えて、強圧的な態度を見せて、経済的・技術的覇権を握ろうとしている。
日本に対しても、日本の領土である尖閣諸島にしばしば進入してそれを正当化し、日本国民の中国警戒感の原因を作っている。一方で、軍事力の継続的な増強ですでに量においては日本の自衛隊を大きく凌駕している。
北朝鮮は、相変わらず国境を閉ざすなかで情報を遮断された国民は飢えて、指導者層のみが贅沢をするという姿勢である。その中で、ミサイル・核兵器の開発を続け、弾道ミサイルの発射を見せつけて、周辺諸国の気を引こうと懸命である。ただ、この国は独裁者が追い詰めらたら核を使いかねず、それに対して確実に防衛できるかどうかは不明と言う点が問題である。
韓国は、相変わらずアメリカと中国の間をふらふらと行き来して、双方から信用されないという愚行を繰り返している。また国民の反日は国是となっていて、それに気づいた日本国民からは無視されている。とは言え、韓国の産業は日本の製品・技術なしには成り立たないので、経済的な交流は相変わらず続いている。
ロシアについては、ウクライナ侵攻によって軍事強国の化けの皮が剥がれ、どの程度有効かは疑問符がついているが、その核兵器体系を除いて極東地区ではすでに脅威になりえなくなっている。その核兵器も結局、ウクライナ戦争では脅しには使ったがが、実戦には使えなかった。
このことから、逆説的にはロシアと言えども使えない兵器であることがはっきりした。つまり、その威力と残る放射能という負の影響が大きすぎて、一旦使ったら人類の敵になるかしかないということに国家は耐えられないのだ。
現在、ロシアは国際社会に復帰しようと懸命にあがいているが、ウクライナへの巨額の賠償という大きな障壁の前で立ちすくんでいるという状態だ。
こうしてみると、東アジアにおいて安全保障の面で確実に日本の脅威になるのは、中国と北朝鮮であり、いずれもすでに核兵器を持っている。これに対して日米安全保障条約を結んでいるアメリカが盾になりうるかは疑問符が付く。そもそも、自分の身は自分で守るのが原則であるのだ。
そこにおいて、不安定要因になりうるのが中国経済の明らかな減退である。中国経済の極めて急激な隆盛は『世界の工場化』したことで投資が集まったことが大きな理由であるが、全て国有地で本来無価値であった土地を資産化したことも理由である。しかし、世界の工場も自らの傲慢な姿勢と、技術の剽窃が知れ渡ってきたことで、さらに大きな強みであった人件費の安さが失われて、すでに大きく陰りを見せている。
加えて、不動産については需要を超えた建設によって既に限界である。そして、中国には極めて大きな貧富の差という爆弾があり、一定の成長が無いと社会の安定が保てない。これは一つには共産党の幹部連中が途方もない蓄財をしていることが、すでに人々に知られていることも理由の一つである。
こうした民の反乱を防ぐために、中国はIT化した民警という形で民を監視して取り締まることで秩序を保ってきた。しかし、このシステムは所詮民警職員という人を使う点で、彼らを十分に遇せない段階で崩壊が運命づけられている。
民の収入が目減りする中で、暴動が激化するものの十分に通り締まりもできない状況から、主席の劉は対外的な紛争を起こすことを決心した。その命令による中国軍が動きを見せ始めそれを日本政府も把握している。
尖閣諸島に向け艦隊を送り、上陸して領土化を誇示するというそのXデーを1ヵ月半後と掴んだ政府は、自衛隊に対して今進んでいる急速な技術開発を有効に利用して、反撃手段を策定するように命じた。
防衛研究所において、政府の要請を受けて、防衛大臣佐川が出席して、陸・海・空の各技術責任者に防衛研究所の佐治所長に加えて、水谷ゆかりに牧村誠司も出席して、政府の要請にどう答えるかの会議が開かれている。
ゆかりは、レールガン及び電磁カタパルトの開発を成功させた技術者であり、現在F4ファントムへの重力エンジンのアセンブルにほぼ成功しつつあることから出席を要請され、誠司はゆかりが是非にということで、佐治所長も積極的に賛成して出席が決まった。
最初に、佐治所長が誠司の出席について説明すると大臣の佐川が喜んで言う。
「おお、きみが牧村君か、話は聞いているよ。佐治所長、よく牧村君の出席を要請してくれた。みなも近く知ることになるだろうが、彼、牧村誠司君こそが、今後の我が国の科学立国を支えてくれる人物だ。
今日は彼が事態を打開するアイデアを出してくれることを期待するよ」
その言葉に、誠司を知らない皆が驚いて見ているが、大臣が尚も説明する。
「この際だから、皆に言っておきましょう。みな、当然画期的な性能の電磁砲、レールガンそれに重力エンジンが開発されたのは知っているはずだが、あれらの発明はこの牧村君の手によるものだ。それだけではない。すでに、マスコミにも出始めているが、核融合発電機、あの開発も彼の手になるものだ」
そういう紹介で明るい雰囲気で始まった会議は、重苦しい話題にたちまち暗くなった。
対馬への侵攻にしても、おそらく相手は艦隊でくるから、こちらもそれに応じて艦隊で迎えるがその艦隊戦には、最初の一発は、憲法解釈から専守防衛ということになっているため相手に撃たせるしかないため犠牲はでるであろうが、戦力的には問題なく勝てる。
しかし、間違いなく核ミサイルで脅してくるだろう。たぶん、福岡とかどこかの大都市に反撃したら撃ち込むという脅迫になるであろう。しかし、実際にやったらロシアの例を見ても国として終わりなので脅しではあろうが、万が一のことを考えれば無視はできない。
それに加えてさらに悪いニュースがある、日本で開発していたステルス・ペイントの技術が韓国経由で中国に漏れているという話がある。このペイントは効果としては完ぺきではないが、パトリオット・ミサイルによる迎撃はかなり怪しくなる。
問題は米軍であるが、国内でもあまり評判の良く無いアメリカ大統領は日本に対し敵対的であり、現状では尖閣列島は日米安保の範囲と言う声明を出していない。日本びいきの米軍担当者との接触では、戦力を出せるとしてもある程度戦闘が決着してから、つまり日本に被害が相当に出てからにしろと言うことで相手の担当者も憤慨していたそうだ。
それに対し、我が国は新開発の画期的なレールガンがあるが、大きな電源が必要でまだ使えない。またF4ファントムに重力エンジン搭載は2週間もすれば1号機が、1カ月で二十機くらいは揃うだろうからXデーの四十五日後には戦力化出来るだろう。しかし、まだその性能は計算値のみで実際は未知数である。
「あの、いいですか」
誠司が手を挙げて発言を求める。
「もちろん、いいよ」
議長役をしている佐治所長が発言を認める。
「ええ、レールガンですが、すでに作ってはいるのですよね」
「ああ、すでに5基分の本体は出来ている。1基は電力網から電力を供給して出力を落として試射もしている」
誠司の質問に佐治が答える。
「ええと、それなら、あの発射には連続した電力として8万kWが必要ですが、消費電力としては百㎾時位なのですよ。今既にできているSAバッテリーを少し改造すれば、発射に使えますよ。発射速度十㎞/秒の径百㎜の砲弾て結構すごいと思いませんか?
相手が飛行機ではすこしもったいないですが、船でも相手の位置をちゃんと把握できていれば、2百㎞先でも当てられますよ。まだ、速度は十分残っているので、結構な威力だと思います」
「な、ななに、バッテリーで使えるのか?」
海上自衛隊の技術監の三輪と言う人が興奮して言う。
「ええ、もうSAバッテリーの充電装置は出来ていますから、バッテリーそのものは千㎾時のものは千基でも2千基でも大丈夫ですよ。でも持って帰らないと再充電できませんけど。改造は出力部にアダプターを付ければ大丈夫ですよ」
誠司の答えに三輪技術監は「レールガンは今5基と言うことだが、増やせないか?」
と聞くが、これにはゆかりが答える。
「最初の5基は発注から組み立てで3カ月かかっていますが、今からでしたら急がせれば1カ月で、そう費用を惜しまなければ十基はできます」
「この際費用などは惜しんでおれない。必要な予算は分捕って来るから、費用は気にせず進めてほしい」
大臣が請け負った上で聞く。
「それで、艦船に載せる方は大丈夫として、ミサイル迎撃の方はどうだろう?」
「これは、レーダーと管制機器は護衛艦に載せるものを使えるから大丈夫でしょう。相手が完全なステルスだと無理ですが、今技術流出が言われている程度のものなら、1秒間に1発撃てる開発したレールガンを使えば数打てば迎撃できます」
その管制機器を開発した佐治所長の答えだ。
「それから、F4ファントムに載せる重力エンジンですが、たぶんSAバッテリーの1万㎾時級のものは間に合わないと思いますが、千㎾時のものを3台積んで4時間の戦闘時間ということですね。
それから、機は重力操作のための場に包まれますので、中では重力は1Gに調整できます。さらに、包まれる場の影響で空気抵抗が軽減されますので、最大速度はマッハ4程度までは楽に出せますし、短時間であれば6を超すことが可能です。
つまり、北朝鮮から飛んでくるとみられる弾道ミサイルはいわゆるSRBM(短距離弾道ミサイル)ですから終末速度はせいぜいマッハ6弱です。従って、改F4ファントムはミサイルと同じ速度が出せますから、途中でインターセプトすれば速度はもっと低いので迎撃はそんなに難しくはないでしょう」
さらにゆかりが追加して説明する。
「うん、有難い。ほぼ確実な迎撃手段が2つあれば安心して相手の脅しを跳ね付けられる」
大臣が喜んで言うが、それに合わせて航空自衛隊の技監の福田が喜んで聞く。
「いや、改F4ファントムがGの変化なしでそれほどの速度が出せるなら、当然相当な機動が出来るのではないかな?」
「そう、急加速、急減速、3次元の急旋回はお手のものです」
ゆかりが答えると、
「であれば、中国軍に対して圧倒的に有利な戦が出来る。しかも、4時間の戦闘が出来るというのは有難い。これは、ひゅうがの活用などいろんなバリエーションがあるな」
そういう福田の話である。
こうしてこの会議によって、Xデーまでの四十五日、レールガンを全十五基生産し、2基を地上設置、十三基はイージス艦6隻と最新の護衛艦七隻に1基ずつ設置することになった。
改F4ファントムは全部で二十五機を完成し、これらのうち十五機はひゅうがに積む話になっているが、出来るだけ改修を急いで乗員に訓練をすることになっている。
この点でこの機が有利な点は乗員が2名であることで、多少訓練が不十分でも大きな問題は出ないだろうと思われる。さらに、SAバッテリーの生産もこれら計画の胆なので、これについては防衛省からも正式な依頼を出すが、誠司の方からも確認することになった。
会議が終わる頃は最初の重苦しい空気はぬぐわれて、皆明るい顔で去って行った。
六月二十五日、航空自衛隊小松基地、改F4ファントム1号機に搭乗した、操縦士赤松二佐と管制士二村一尉は操縦席に座って、座学で見せられた映像とまったく一緒だなと思って操縦席を見回している。
散々叩き込まれた手順を思い出して、まず計器をチェックするがこれはわざと日本語で作っている。
主要な内容は主電源:入・切、重力発生操縦器:入・切、重力発生量:0.11、機内重力:0.9~1.1、推力方向:3次元ジャイロで示される、速度計:0.1㎞/秒、電力残量:99.5%、位置計:緯度・経度・高度等である。
操縦はできるだけF4ファントム似せて、推力としての重力発生量はペダルで調整し、推力方向は棒状スティックでコントロールする。
赤松はメインスイッチを入れ、さらに重力発生操縦器を入れ、しばらく緑のランプがついて装置が定常状態になるのを待つ。最初の手続きとしてスティックを最上段中央に固定して、垂直上昇することになっている。この結果、滑走の必要がなく、それこそそこらのグラウンドからでも離陸が可能である。
緑ランプが点き、重力発生操縦器の唸りを感じながら、スティックの位置を確認の後アクセルをそっと踏むと、まだ全く機体は動かないが重力発生量が1を上回ると機体が動くのを感じる。
重力発生量が2になると機体は滑らかにすーと言う感じで上昇する。上昇速度は10m/秒位か。その発生量でしばらく上昇して、遠くなっていく地上を見ると基地内で大勢が見上げているのが見える。
地上千m程度に達したあと、スティックを操縦して斜め前方に進み始める。発生量は2Gに固定したままだが、加速度に従って増速していくものの緩やかだ。やがて発生量を3、4、5、6、7、8と上げて行くと、速度の上昇は著しいが、機内には全く影響がない。
「赤松さん、これ全然戦闘機を飛ばしているという感じがしませんね、勝手に地上が動いている感じで」
二村一尉が話しかける。
「ああ、その通りだ。しかし、操縦しやすいというか、これは自動車免許を持っている人なら誰でも操縦できるな。この3次元運動を飲み込めればな」
赤松二佐が応じる。
その後2人は1時間ほど様々な速度、加速、減速、機動を試して所定の運動試験を終えて基地に着陸した。その際には、最後の試験として地上に描かれた円内に降ろすべく試み、ちょうどど真ん中に降り立った。
降りた後の赤松二佐の感想は以下のようなもので、運用に問題はないことが確かめられた。
「これは操縦しやすい機ですね。何より加速度と戦う必要がないのが最大のメリットです。普通の乗員でも1週間も訓練すれば十分でしょう。
空母?動いている空母でも、経験がない私でも難しくはないでしょう。何しろ安定していますし、落っこちるということがないので失敗すればやり直せばいいのですから」
東アジアにおいて中国の存在は圧倒的であるが、C型感染症の世界への拡散で世界、とりわけ西側諸国に嫌悪感を抱かせたが、それに対して彼らは全く反省の色を見せなかった。加えて、強圧的な態度を見せて、経済的・技術的覇権を握ろうとしている。
日本に対しても、日本の領土である尖閣諸島にしばしば進入してそれを正当化し、日本国民の中国警戒感の原因を作っている。一方で、軍事力の継続的な増強ですでに量においては日本の自衛隊を大きく凌駕している。
北朝鮮は、相変わらず国境を閉ざすなかで情報を遮断された国民は飢えて、指導者層のみが贅沢をするという姿勢である。その中で、ミサイル・核兵器の開発を続け、弾道ミサイルの発射を見せつけて、周辺諸国の気を引こうと懸命である。ただ、この国は独裁者が追い詰めらたら核を使いかねず、それに対して確実に防衛できるかどうかは不明と言う点が問題である。
韓国は、相変わらずアメリカと中国の間をふらふらと行き来して、双方から信用されないという愚行を繰り返している。また国民の反日は国是となっていて、それに気づいた日本国民からは無視されている。とは言え、韓国の産業は日本の製品・技術なしには成り立たないので、経済的な交流は相変わらず続いている。
ロシアについては、ウクライナ侵攻によって軍事強国の化けの皮が剥がれ、どの程度有効かは疑問符がついているが、その核兵器体系を除いて極東地区ではすでに脅威になりえなくなっている。その核兵器も結局、ウクライナ戦争では脅しには使ったがが、実戦には使えなかった。
このことから、逆説的にはロシアと言えども使えない兵器であることがはっきりした。つまり、その威力と残る放射能という負の影響が大きすぎて、一旦使ったら人類の敵になるかしかないということに国家は耐えられないのだ。
現在、ロシアは国際社会に復帰しようと懸命にあがいているが、ウクライナへの巨額の賠償という大きな障壁の前で立ちすくんでいるという状態だ。
こうしてみると、東アジアにおいて安全保障の面で確実に日本の脅威になるのは、中国と北朝鮮であり、いずれもすでに核兵器を持っている。これに対して日米安全保障条約を結んでいるアメリカが盾になりうるかは疑問符が付く。そもそも、自分の身は自分で守るのが原則であるのだ。
そこにおいて、不安定要因になりうるのが中国経済の明らかな減退である。中国経済の極めて急激な隆盛は『世界の工場化』したことで投資が集まったことが大きな理由であるが、全て国有地で本来無価値であった土地を資産化したことも理由である。しかし、世界の工場も自らの傲慢な姿勢と、技術の剽窃が知れ渡ってきたことで、さらに大きな強みであった人件費の安さが失われて、すでに大きく陰りを見せている。
加えて、不動産については需要を超えた建設によって既に限界である。そして、中国には極めて大きな貧富の差という爆弾があり、一定の成長が無いと社会の安定が保てない。これは一つには共産党の幹部連中が途方もない蓄財をしていることが、すでに人々に知られていることも理由の一つである。
こうした民の反乱を防ぐために、中国はIT化した民警という形で民を監視して取り締まることで秩序を保ってきた。しかし、このシステムは所詮民警職員という人を使う点で、彼らを十分に遇せない段階で崩壊が運命づけられている。
民の収入が目減りする中で、暴動が激化するものの十分に通り締まりもできない状況から、主席の劉は対外的な紛争を起こすことを決心した。その命令による中国軍が動きを見せ始めそれを日本政府も把握している。
尖閣諸島に向け艦隊を送り、上陸して領土化を誇示するというそのXデーを1ヵ月半後と掴んだ政府は、自衛隊に対して今進んでいる急速な技術開発を有効に利用して、反撃手段を策定するように命じた。
防衛研究所において、政府の要請を受けて、防衛大臣佐川が出席して、陸・海・空の各技術責任者に防衛研究所の佐治所長に加えて、水谷ゆかりに牧村誠司も出席して、政府の要請にどう答えるかの会議が開かれている。
ゆかりは、レールガン及び電磁カタパルトの開発を成功させた技術者であり、現在F4ファントムへの重力エンジンのアセンブルにほぼ成功しつつあることから出席を要請され、誠司はゆかりが是非にということで、佐治所長も積極的に賛成して出席が決まった。
最初に、佐治所長が誠司の出席について説明すると大臣の佐川が喜んで言う。
「おお、きみが牧村君か、話は聞いているよ。佐治所長、よく牧村君の出席を要請してくれた。みなも近く知ることになるだろうが、彼、牧村誠司君こそが、今後の我が国の科学立国を支えてくれる人物だ。
今日は彼が事態を打開するアイデアを出してくれることを期待するよ」
その言葉に、誠司を知らない皆が驚いて見ているが、大臣が尚も説明する。
「この際だから、皆に言っておきましょう。みな、当然画期的な性能の電磁砲、レールガンそれに重力エンジンが開発されたのは知っているはずだが、あれらの発明はこの牧村君の手によるものだ。それだけではない。すでに、マスコミにも出始めているが、核融合発電機、あの開発も彼の手になるものだ」
そういう紹介で明るい雰囲気で始まった会議は、重苦しい話題にたちまち暗くなった。
対馬への侵攻にしても、おそらく相手は艦隊でくるから、こちらもそれに応じて艦隊で迎えるがその艦隊戦には、最初の一発は、憲法解釈から専守防衛ということになっているため相手に撃たせるしかないため犠牲はでるであろうが、戦力的には問題なく勝てる。
しかし、間違いなく核ミサイルで脅してくるだろう。たぶん、福岡とかどこかの大都市に反撃したら撃ち込むという脅迫になるであろう。しかし、実際にやったらロシアの例を見ても国として終わりなので脅しではあろうが、万が一のことを考えれば無視はできない。
それに加えてさらに悪いニュースがある、日本で開発していたステルス・ペイントの技術が韓国経由で中国に漏れているという話がある。このペイントは効果としては完ぺきではないが、パトリオット・ミサイルによる迎撃はかなり怪しくなる。
問題は米軍であるが、国内でもあまり評判の良く無いアメリカ大統領は日本に対し敵対的であり、現状では尖閣列島は日米安保の範囲と言う声明を出していない。日本びいきの米軍担当者との接触では、戦力を出せるとしてもある程度戦闘が決着してから、つまり日本に被害が相当に出てからにしろと言うことで相手の担当者も憤慨していたそうだ。
それに対し、我が国は新開発の画期的なレールガンがあるが、大きな電源が必要でまだ使えない。またF4ファントムに重力エンジン搭載は2週間もすれば1号機が、1カ月で二十機くらいは揃うだろうからXデーの四十五日後には戦力化出来るだろう。しかし、まだその性能は計算値のみで実際は未知数である。
「あの、いいですか」
誠司が手を挙げて発言を求める。
「もちろん、いいよ」
議長役をしている佐治所長が発言を認める。
「ええ、レールガンですが、すでに作ってはいるのですよね」
「ああ、すでに5基分の本体は出来ている。1基は電力網から電力を供給して出力を落として試射もしている」
誠司の質問に佐治が答える。
「ええと、それなら、あの発射には連続した電力として8万kWが必要ですが、消費電力としては百㎾時位なのですよ。今既にできているSAバッテリーを少し改造すれば、発射に使えますよ。発射速度十㎞/秒の径百㎜の砲弾て結構すごいと思いませんか?
相手が飛行機ではすこしもったいないですが、船でも相手の位置をちゃんと把握できていれば、2百㎞先でも当てられますよ。まだ、速度は十分残っているので、結構な威力だと思います」
「な、ななに、バッテリーで使えるのか?」
海上自衛隊の技術監の三輪と言う人が興奮して言う。
「ええ、もうSAバッテリーの充電装置は出来ていますから、バッテリーそのものは千㎾時のものは千基でも2千基でも大丈夫ですよ。でも持って帰らないと再充電できませんけど。改造は出力部にアダプターを付ければ大丈夫ですよ」
誠司の答えに三輪技術監は「レールガンは今5基と言うことだが、増やせないか?」
と聞くが、これにはゆかりが答える。
「最初の5基は発注から組み立てで3カ月かかっていますが、今からでしたら急がせれば1カ月で、そう費用を惜しまなければ十基はできます」
「この際費用などは惜しんでおれない。必要な予算は分捕って来るから、費用は気にせず進めてほしい」
大臣が請け負った上で聞く。
「それで、艦船に載せる方は大丈夫として、ミサイル迎撃の方はどうだろう?」
「これは、レーダーと管制機器は護衛艦に載せるものを使えるから大丈夫でしょう。相手が完全なステルスだと無理ですが、今技術流出が言われている程度のものなら、1秒間に1発撃てる開発したレールガンを使えば数打てば迎撃できます」
その管制機器を開発した佐治所長の答えだ。
「それから、F4ファントムに載せる重力エンジンですが、たぶんSAバッテリーの1万㎾時級のものは間に合わないと思いますが、千㎾時のものを3台積んで4時間の戦闘時間ということですね。
それから、機は重力操作のための場に包まれますので、中では重力は1Gに調整できます。さらに、包まれる場の影響で空気抵抗が軽減されますので、最大速度はマッハ4程度までは楽に出せますし、短時間であれば6を超すことが可能です。
つまり、北朝鮮から飛んでくるとみられる弾道ミサイルはいわゆるSRBM(短距離弾道ミサイル)ですから終末速度はせいぜいマッハ6弱です。従って、改F4ファントムはミサイルと同じ速度が出せますから、途中でインターセプトすれば速度はもっと低いので迎撃はそんなに難しくはないでしょう」
さらにゆかりが追加して説明する。
「うん、有難い。ほぼ確実な迎撃手段が2つあれば安心して相手の脅しを跳ね付けられる」
大臣が喜んで言うが、それに合わせて航空自衛隊の技監の福田が喜んで聞く。
「いや、改F4ファントムがGの変化なしでそれほどの速度が出せるなら、当然相当な機動が出来るのではないかな?」
「そう、急加速、急減速、3次元の急旋回はお手のものです」
ゆかりが答えると、
「であれば、中国軍に対して圧倒的に有利な戦が出来る。しかも、4時間の戦闘が出来るというのは有難い。これは、ひゅうがの活用などいろんなバリエーションがあるな」
そういう福田の話である。
こうしてこの会議によって、Xデーまでの四十五日、レールガンを全十五基生産し、2基を地上設置、十三基はイージス艦6隻と最新の護衛艦七隻に1基ずつ設置することになった。
改F4ファントムは全部で二十五機を完成し、これらのうち十五機はひゅうがに積む話になっているが、出来るだけ改修を急いで乗員に訓練をすることになっている。
この点でこの機が有利な点は乗員が2名であることで、多少訓練が不十分でも大きな問題は出ないだろうと思われる。さらに、SAバッテリーの生産もこれら計画の胆なので、これについては防衛省からも正式な依頼を出すが、誠司の方からも確認することになった。
会議が終わる頃は最初の重苦しい空気はぬぐわれて、皆明るい顔で去って行った。
六月二十五日、航空自衛隊小松基地、改F4ファントム1号機に搭乗した、操縦士赤松二佐と管制士二村一尉は操縦席に座って、座学で見せられた映像とまったく一緒だなと思って操縦席を見回している。
散々叩き込まれた手順を思い出して、まず計器をチェックするがこれはわざと日本語で作っている。
主要な内容は主電源:入・切、重力発生操縦器:入・切、重力発生量:0.11、機内重力:0.9~1.1、推力方向:3次元ジャイロで示される、速度計:0.1㎞/秒、電力残量:99.5%、位置計:緯度・経度・高度等である。
操縦はできるだけF4ファントム似せて、推力としての重力発生量はペダルで調整し、推力方向は棒状スティックでコントロールする。
赤松はメインスイッチを入れ、さらに重力発生操縦器を入れ、しばらく緑のランプがついて装置が定常状態になるのを待つ。最初の手続きとしてスティックを最上段中央に固定して、垂直上昇することになっている。この結果、滑走の必要がなく、それこそそこらのグラウンドからでも離陸が可能である。
緑ランプが点き、重力発生操縦器の唸りを感じながら、スティックの位置を確認の後アクセルをそっと踏むと、まだ全く機体は動かないが重力発生量が1を上回ると機体が動くのを感じる。
重力発生量が2になると機体は滑らかにすーと言う感じで上昇する。上昇速度は10m/秒位か。その発生量でしばらく上昇して、遠くなっていく地上を見ると基地内で大勢が見上げているのが見える。
地上千m程度に達したあと、スティックを操縦して斜め前方に進み始める。発生量は2Gに固定したままだが、加速度に従って増速していくものの緩やかだ。やがて発生量を3、4、5、6、7、8と上げて行くと、速度の上昇は著しいが、機内には全く影響がない。
「赤松さん、これ全然戦闘機を飛ばしているという感じがしませんね、勝手に地上が動いている感じで」
二村一尉が話しかける。
「ああ、その通りだ。しかし、操縦しやすいというか、これは自動車免許を持っている人なら誰でも操縦できるな。この3次元運動を飲み込めればな」
赤松二佐が応じる。
その後2人は1時間ほど様々な速度、加速、減速、機動を試して所定の運動試験を終えて基地に着陸した。その際には、最後の試験として地上に描かれた円内に降ろすべく試み、ちょうどど真ん中に降り立った。
降りた後の赤松二佐の感想は以下のようなもので、運用に問題はないことが確かめられた。
「これは操縦しやすい機ですね。何より加速度と戦う必要がないのが最大のメリットです。普通の乗員でも1週間も訓練すれば十分でしょう。
空母?動いている空母でも、経験がない私でも難しくはないでしょう。何しろ安定していますし、落っこちるということがないので失敗すればやり直せばいいのですから」
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それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
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沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
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それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
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