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第1章 日本の変革
1.2 核融合発電、誠司学内を調整する
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翌朝、誠司は指導教官の重田恭介准教授を訪れた。
「先生、お忙しいところを大変申し訳ありませんが、まずこれを何も言わず読んでいただけませんか。お時間を取らせる値打ちがあることだけは保証します」
准教授に昨日プリントアウトしたものを渡すと、重田は最初のページを一見して、誠司の顔を見、さらにベージを繰っていく。
「なんだね、これは? 君が書いたものではないな。どこかの論文の抜粋か?」
「いえ、信じてもらえないと思いますが、昨日、私が行き詰まってPCに質問を撃ち込んだのです。それにPCが勝手に答えてきたものです」
「PCが勝手に答えてきた?意味が分からん。しかし、面白そうな論文だな。読んでみるよ、すこし研究室で待ってくれ。」
「はい、自分の席にいますので」
誠司は准教授の部屋から出て自分の席に戻る。
まだ、隣の席の遠藤は来ていず、全員で6人の研究生のうち、一年生の2名が席について何やら作業をしている。
誠司は、マドンナを開き、起動して昨日と同様にワードを開いて『マドンナ、ご機嫌はいかがかな?』と打ち込んでエンターを押す。
『ええ、ご機嫌よ。もっと誠司さんのお役に立ちたいわ💛』
そのようにハートマーク付きの文字が浮かび上がる。
「ええ?」
誠司は思わず叫んで立ち上がってしまった。それから慌てて、周りを見渡すと一年の小笠原が怪訝そうに「牧村さん、どうかしましたか?」と尋ねる。
「い、いや、なんでもない。ちょっと意外なニュースを見て驚いたんだ。すまん、大きな声を出して」
「いえ、いいんですよ」
小笠原はまた、自分の作業に戻るが、誠司は動悸が収まらない。
「この、PC、戯れにマドンナと付けたが人格を持ってしまった。こんなことがあっていいのか」
呟きながら、さらに彼は打ち込んで聞く。
『なんで、マドンナは僕の質問に答えてくれるのかな?』
『それにはお答えは出来ません』
『質問はすべて僕がしなくてはならないのかな?』
『そうです、少なくともエンターを押すのが誠司さんの場合にしか答えません』
『質問として不適当なことはどういうことかな?』
『生きている個人に関する質問、未発表であり公開することが混乱を招くような内容などです。
逆に望ましい質問は、今後日本を含む世界が技術的、経済的、社会的に発達するような情報ですね。また、日本に関する安全保障にかかわる質問には積極的に答えます。
ただし、一般的に言って最終的な成果にたどり着くような回答は致しません。その意味では昨日の誠司さんへの答えはやや特別扱いです。いずれにせよ、ダメなケースははっきり申しますのでご自由にご質問ください』
その後、誠司は専門分野での質問を重ねて自分の知識を広げていった。
3時間ほどもたって、昼前になって重田准教授が研究室のドアを開けて誠司を呼ぶ。だいぶ目が血走っているようだが、それはそうだろうと誠司も思う。
准教授の部屋の椅子に落ち着いた誠司に、重田が見てわかるほどはやる気持ちを抑えて話しかける。
「なんなんだ。この論文は? 核融合の理論的解明もその実用化もすべて網羅しているじゃないか。しかもその根拠の一つに使われているこの式は、まだ一カ月ほど前に発表されたばかりだぞ。
信じられん。こんなことがあるなんて。牧村君、正直に言うけれど、君はこの分野の才能はあるとは思うが、君にはこれを書けないのはまた明らかだ。誰がこれを書いたの?」
「私でないことは確かです。答えたのは私のPCですよ。マドンナと言う名前を気に入っているようですが」
「マドンナ?打ち込んだことに反応するわけだ。インターネットで誰かに聞いたわけではないのだね?」
「はい、私が使っていたのはワードで、それに直接打ち込んだ結果、やはりワードで回答がでてくるのです。でもPCに人工知能はないので、当然インターネットを介して外部からデータを送ってきているのだとは思いますが、どういう仕組みかはわかりませんし、すぐ反応があるところを見ると、いま知られているいかなるソフトも超えた能力です」
「ふむ、その機能については是非一緒に調べさせてほしいが、この論文はあまりに重大だ。君も当然分っているだろうが、この論文のみで核融合発電機が造れるよ。必要な単位操作を行う装置はすべて既知のもので、一部は量産品でなく特別に製作が必要だが、時間とか金だけの問題だね。
この論文の示すところによると、大体十万㎾程度の発電設備が最小になりそうだが、その割に装置としてはかなり規模が小さいのじゃないだろうかね」
重田の言葉に誠司が追加する。
「ええ、ネットで調べましたが、既存の重油使用のもので十万㎾で八十億円位と出ていました」
「そうだろう、しかし、この場合の核融合発電設備はそんなにはかかるとは思えないな」
「おっしゃる通りです。しかし、先生、どう安くなっても十億円はかかるでしょう。また、当然こうした装置を我々大学のみではできませんので、何らかの外部の組織を巻き込む必要があります。これは、国の機関かあるいは民間企業ですね。国を巻き込むとお役所仕事でいつになるかわからないし、民間はうまいこと巻き上げられる可能性があるし、一長一短ですね」
誠司は言葉を切り、重田を真剣な顔で見つめる。
「先生、私はこの件について、夕べ私のPCのことがわかって以来真剣に考えました。どういう理由でこうなったのかはわかりませんが、これは大きなチャンスです。ご存知のように、この日本は周りに中国、韓国、北朝鮮さらにロシアとろくな国がなく、しかも経済はこの三十年間落ち込みっぱなしで近年も浮上しそうでしない状態です。
とりわけ我々若者にとっては、収入は下がってばかりで、安心して結婚も出来ない状態です。
このPCマドンナで最新どころではない、未だ開発されていない技術を含む知見が取り込める、というのがこの国にとってどれだけのアドバンテージかはかり知れません。まず、私はこの論文に従って核融合発電を出来るだけ早く実用化したいのです。
そうすれば、皆がこのPCから得られる情報、知見が本当に有用なことをわかり、その結果この国が生まれ変わると思うのです。まず、とっかかりはこの核融合発電です、先生!何とかこれを実用化しましょう。それも出来るだけ早く」
「うん、そうだな。私はそこまで考えていなかったが、君の考えには全面的に共感するよ。しかし、どうやって実現するか?うーん、そうだ。私の友達が秀才でね。経産省で課長をやっているんだ。考えたら、許認可もあるからこの話は国を通した方がいいと思うよ。とりあえず、その友人に話をしてみる。それと、この話は理学部長の山科教授には通しておいた方がいいだろうね」
重田も誠司の熱さに巻き込まれて言う。
なお、物理学教室は現状ではあまり人気はないこともあって教授は空席であり、理学部長の山科教授は地球物理学を受け持っている。
「まあ、とりあえず、経産省の友人、柴山君に話してみるよ」
重田はスマートフォンを取り出して、番号を探して送信する。
「もしもし、柴山君、お久しぶり、同級の重田です。相変わらず元気そうだね。ちょっと耳寄りな話があって、一度そっちを訪問したいのだけど。うん、できたら早い方がいいのだけど。うん、うん、じゃ明後日午前十一時だね。では十月十二日十一時前お宅の省の受付に行きますのでよろしく」
誠司はその後、重田の前で、実際にPCを操作して見せた。その中で、重田の望む質問もインプットして、その答えをプリントアウトして重田が受け取って読んだ結果、その内容が期待以上のものであることから重田も誠司の言うことが事実であることを納得せざるを得なかった。
その結果を受けて、重田は折よく在室であった山科教授の部屋を誠司と共に訪れた。無論マドンナ持参である。
山科昭教授は地震学の権威で、その予測手法は精度が高いとして世界的にも名が知られており、豪放磊落な人柄で知られている。目の光が強い五十五歳の紳士である。
「ふむ、これが君のこの質問に対して出てきた回答か。私にはこの論文は大体とことしかわからんが、質問に対してとしては異常なものであることはよくわかる。それで、重田君もこの内容は極めて重要なものだと判断するわけだね?」
「はい、私はこの論文はその内容の画期的であること、さらにその完成度から言って、物理学と言う学問が形成されて以来のものだと思います」
山科教授に重田が答え、山科はさらに聞く。
「それで、これに従えば、核融合発電機の実用化が出来るというのだね?」
「ええ、必要なシステムと、設置条件及び操作条件は規定されていますので、機械、電気、材料力学などの専門家の力を借り、かつこのマドンナに適宜質問して、細かい仕様を決めて行けば実装置化は出来ます」
誠司が意気込んで答える。
「ふーん、どういうイメージで装置を考えているのかな?」
山科教授の質問に誠司は試されているなと感じる。ここで、装置のイメージと概要を語れないようでは、早急な装置化は無理に決まっているのだ。
「まず、融合装置の本体は水素でみたされた容器の中に8方向からの電子銃による反応ゾーンをつくります。その反応ゾーンに働きかける量子的回転を起こす励起によって、そのゾーンの中で水素からヘリウムへの連鎖反応が起きます。その反応には大した熱は発生しないという計算結果になっています。たぶん千度℃以下ですので熱遮断もそれほどのものは必要ないですね。
連鎖反応の結果、水素からヘリウムに転換する際の質量の減少に相当する膨大なエネルギーが発生しますが、これは電子の流れとして、反応ゾーン境界に設置される大容量電極によって電力として取り出されます。原理上、ゾーンの最小径は0.5m程度でこれでも十万㎾程度の出力になります。電極は少しでも小さくするため、最も伝導率の高い銀で作るとして径三十㎝程度になるでしょう。
電子銃はまあ一種のレールガンの電磁推進部みたいなもので、そう難しくはありませんが、励起装置に少してこずるかもしれませんね。しかし、その必要なシステム構成及び能力はきちんと規定されていますので、マドンナの力を借りれば問題はありません。まあ、反応装置本体は、十万㎾だと径2.5mのステンレス材の球体です。
大した大きさではありませんが、何しろ十万㎾ですから電気周りの方の規模が大きくなります。でもたぶん五m×十mの架台に乗せられる程度だと思いますよ」
「ふーむ、それくらいだと、建設費も大したことはないな」
山科の言葉に俄然自信がなさそうな誠司だ。
「うーん、そこが私の弱いところでどのくらいかかるか見当がつきません。このあと、工学部の友人に会って話をする予定ですが、大まかな金額は見当をつけておくつもりです」
「そうだろうな、君たちに概算金額をはじけと言うのは無理だな。しかし、装置を建造するにはまず設計図と仕様書が必要だが、どの程度期間とマンパワーがかかるかな。いや、それも判断するのは無理だろうね。具体的に建設にどういう手助けが必要かな?」
山科がさらに聞く。
「それは、民間でばりばりこの手の装置を設計して組立ているエンジニアが絶対必要です。何とか一年で設計を終わりたいとは思っていますが。ああ、でも修論が………」
誠司は考え込んでしまう。
「まあ、牧村君の修士論文は、これの、核融合の理論的な裏付けの部分で十分だよ。これでも通常の博士論文の域を超えているからね。論文のほかの部分は外には出せない。これがあれば、ほかの国でも作れてしまう」
重田が苦笑して言う。
「え、先生本当ですか?」
内心ラッキーと思う誠司であった。
「ああ、まあ、これをどううまくそこだけ取り出してまとめるかが、君の修士としての力量の見せ方だな。これでも、学会賞くらいは間違いなく取れるだろう」
この重田の言葉に付け加えて、ひとごとではないよと山科が言う。
「しかし、重田先生、特許は早く抑えてくださいよ。大至急明細書を作ってくれれば、大学から弁理士に頼みます。そっちの費用は任せてください」
「はい、そうですね。それはやります。ああ、それから、山科先生、これの実用化に当たっては、経産省を通しておこうと思うのですよ。明後日、経産省の産業局、産業指導課の課長をしている高校の同級生を訪ねることにしているのです。一応趣旨としては、資金援助の道がないかどうか話をしたいと思っていますが。どうでしょうね」
重田が山科に相談する。
「うん、経産省に話をするはいいとは思いますが、課長クラスでは金はすぐには出せないでしょう。なにしろ、お役所は話が遅くてね。まあ、しかし、当分は設計にかかるわけだから、半年後にでも出る話でいいですがね。
いずれにせよ、当面は民間を引っ張り込んで、彼らのスタッフを使わせてもらいましょう。工学部の産業工学科の広田教授が四菱重工出身だし、西山市にも大きな工場がありますからね。しかし、彼らのペースに乗せられないためには経産省をかましておくというのはいいですね。
それから、重田先生、その話に牧村君を始めうちの院生を働いてもらうのに、手当を出すように交渉してください。経産省も何かやったという証が欲しいはずだから、そのくらいは喜んでやると思いますよ」
山科教授はそう言ったのち、表情を改めて誠司に頼む。
「牧村君、君のそのマドンナか、私もそれを使わせてもらいたいのだよ。知っての通り私の専門は地震予知なのだが、いま発表している予測法は、まあいろいろある中ではましな方なのだがまだ中途半端なんだよ。それで、かなり進んだ方法を今考えているのだけどいき詰まっていてね」
「ええ、山科先生、マドンナの使い方としては、質問が絞れている方が的確な答えが返って来ます。ですから、ある程度背景も述べて、的を絞って聞いたほうがいいですよ。ワードで打ち込んだ質問をネットで送ってもらえれば、ネットで返せますよ」
誠司が答えるが、山科は異論を唱える。
「うん、しかしね、その件では重田君も聞いてほしいが、インターネットでこのマドンナの質問の受け答えを送ることはやめた方がいいと思う。これだけの回答がでてくるということは、内容が重すぎる。
従って、面倒でもUSBの手渡しによるやり取りにしよう。
それから、学内での留学生にこのマドンナのことは絶対の知られないようにすることが重要だ。とりわけ、数が多い中国の学生には要注意だ。だから、施設の設計の場は四菱の構内でやりたい。学内では彼らをシャットアウトは出来ないからね」
誠司も山科の言葉に同意する。
「そうですね。その点は私の友人にも念を押しておきます。また、マドンナの盗難防止を考える必要がありますね。それから、山科先生、先ほどの言われた質問、ここで出来るのなら待ちますが。USBでくれれば私はエンターを押して、答えを落とすだけですので」
「おお、そうだな。5分ほど待ってくれるか」
誠司の申し入れに山科はコンピュータに向かう。
その間に、今後の予定を詰めるが、重田が誠司に聞く。
「私が、飛行機は予約しておくよ。時間はメールで入れておくので見ておいてくれ。経費は研究費から出すよ。しかし、准教授の研究費の旅費なんて、年間東京に3回行ったら終わりだからね。山科先生の言うように、経産省から経費の枠を分捕ろう。君は、それでこのプロジェクトに友達を何人くらい引っ張りこむつもりだ?」
「ええ、直接のプロジェクト関係となると工学部の電気と機械の2人ですが、経済学部と医学部の友達にも、マドンナを使わせる対象として声をかけています」
少し遠慮した誠司の答えに重田はあっさり言う。
「いいんじゃないかな。まあ、どうせ工学部はどっぷり漬かるからもっと増えるよ。ある程度フレキシブルな枠を取るように頼んでみるよ。このプロジェクトが成功した時の効果を考えると、国は全面的に援助してもいいはずだからね」
そう言う内に、山科の準備ができ、USBをマドンナに挿入する。
A4用紙に十行程度の質問を確認して、誠司がエンターを押すと、少し間があって画面がどんどんスクロールされる。かなり複雑な式や図等もあって大体二十頁程度の答えだ。山科教授もスクロールする文章をのぞき込んでいる。
「おお、そうか、そんな方法が……、なるほど……」
スクロールが終わり内容を記憶させて、USBメモリーに落とす。
「おお、ありがとう。これは有難いな。しかし、研究者としてどうかと思う面もあるが、間違いなく結果は世の役に立つからなあ。それで、このマドンナについて、私はこう思うのだよ」
山科は重田と誠司を見つめる。
「これは、言ってみれば本大学にもある大容量コンピュータみたいなものだ。各教員が使用枠を取って費用も分担して、ある計算をさせる。その結果を研究に使うという意味ではね。しかし、このマドンナの場合は研究者の意図をまるっきり越える答えが出ることが多いという意味では、自ら考えるということを促す必要がある大学としては困ったものではあるがね。
しかし、一方では何らかの命題を持って取り組んでいない研究者にとっては、これは意味の無い情報を与えるインターネットの検索結果みたいなものだ。
これは、明らかに牧村君の私物で、君にしか使えないものだ。しかし、申し訳ないが本学としてマドンナをあるルールの元に使わせてほしいのだ。たぶん国が知れば国がそのような要求をすると思うが。
うーん、そういう意味では、重田君と牧村君の経産省への訪問ではこのマドンナのことは伏せておいた方がいいだろうな。知れば、絶対牧村君ごと欲しがる。場合によっては強権で囲い込もうとするだろうな。とりあえず、いま知っている以上の人に知らせないようにした方がいいな」
その日の話は少し重い雰囲気の中で終わった。
「先生、お忙しいところを大変申し訳ありませんが、まずこれを何も言わず読んでいただけませんか。お時間を取らせる値打ちがあることだけは保証します」
准教授に昨日プリントアウトしたものを渡すと、重田は最初のページを一見して、誠司の顔を見、さらにベージを繰っていく。
「なんだね、これは? 君が書いたものではないな。どこかの論文の抜粋か?」
「いえ、信じてもらえないと思いますが、昨日、私が行き詰まってPCに質問を撃ち込んだのです。それにPCが勝手に答えてきたものです」
「PCが勝手に答えてきた?意味が分からん。しかし、面白そうな論文だな。読んでみるよ、すこし研究室で待ってくれ。」
「はい、自分の席にいますので」
誠司は准教授の部屋から出て自分の席に戻る。
まだ、隣の席の遠藤は来ていず、全員で6人の研究生のうち、一年生の2名が席について何やら作業をしている。
誠司は、マドンナを開き、起動して昨日と同様にワードを開いて『マドンナ、ご機嫌はいかがかな?』と打ち込んでエンターを押す。
『ええ、ご機嫌よ。もっと誠司さんのお役に立ちたいわ💛』
そのようにハートマーク付きの文字が浮かび上がる。
「ええ?」
誠司は思わず叫んで立ち上がってしまった。それから慌てて、周りを見渡すと一年の小笠原が怪訝そうに「牧村さん、どうかしましたか?」と尋ねる。
「い、いや、なんでもない。ちょっと意外なニュースを見て驚いたんだ。すまん、大きな声を出して」
「いえ、いいんですよ」
小笠原はまた、自分の作業に戻るが、誠司は動悸が収まらない。
「この、PC、戯れにマドンナと付けたが人格を持ってしまった。こんなことがあっていいのか」
呟きながら、さらに彼は打ち込んで聞く。
『なんで、マドンナは僕の質問に答えてくれるのかな?』
『それにはお答えは出来ません』
『質問はすべて僕がしなくてはならないのかな?』
『そうです、少なくともエンターを押すのが誠司さんの場合にしか答えません』
『質問として不適当なことはどういうことかな?』
『生きている個人に関する質問、未発表であり公開することが混乱を招くような内容などです。
逆に望ましい質問は、今後日本を含む世界が技術的、経済的、社会的に発達するような情報ですね。また、日本に関する安全保障にかかわる質問には積極的に答えます。
ただし、一般的に言って最終的な成果にたどり着くような回答は致しません。その意味では昨日の誠司さんへの答えはやや特別扱いです。いずれにせよ、ダメなケースははっきり申しますのでご自由にご質問ください』
その後、誠司は専門分野での質問を重ねて自分の知識を広げていった。
3時間ほどもたって、昼前になって重田准教授が研究室のドアを開けて誠司を呼ぶ。だいぶ目が血走っているようだが、それはそうだろうと誠司も思う。
准教授の部屋の椅子に落ち着いた誠司に、重田が見てわかるほどはやる気持ちを抑えて話しかける。
「なんなんだ。この論文は? 核融合の理論的解明もその実用化もすべて網羅しているじゃないか。しかもその根拠の一つに使われているこの式は、まだ一カ月ほど前に発表されたばかりだぞ。
信じられん。こんなことがあるなんて。牧村君、正直に言うけれど、君はこの分野の才能はあるとは思うが、君にはこれを書けないのはまた明らかだ。誰がこれを書いたの?」
「私でないことは確かです。答えたのは私のPCですよ。マドンナと言う名前を気に入っているようですが」
「マドンナ?打ち込んだことに反応するわけだ。インターネットで誰かに聞いたわけではないのだね?」
「はい、私が使っていたのはワードで、それに直接打ち込んだ結果、やはりワードで回答がでてくるのです。でもPCに人工知能はないので、当然インターネットを介して外部からデータを送ってきているのだとは思いますが、どういう仕組みかはわかりませんし、すぐ反応があるところを見ると、いま知られているいかなるソフトも超えた能力です」
「ふむ、その機能については是非一緒に調べさせてほしいが、この論文はあまりに重大だ。君も当然分っているだろうが、この論文のみで核融合発電機が造れるよ。必要な単位操作を行う装置はすべて既知のもので、一部は量産品でなく特別に製作が必要だが、時間とか金だけの問題だね。
この論文の示すところによると、大体十万㎾程度の発電設備が最小になりそうだが、その割に装置としてはかなり規模が小さいのじゃないだろうかね」
重田の言葉に誠司が追加する。
「ええ、ネットで調べましたが、既存の重油使用のもので十万㎾で八十億円位と出ていました」
「そうだろう、しかし、この場合の核融合発電設備はそんなにはかかるとは思えないな」
「おっしゃる通りです。しかし、先生、どう安くなっても十億円はかかるでしょう。また、当然こうした装置を我々大学のみではできませんので、何らかの外部の組織を巻き込む必要があります。これは、国の機関かあるいは民間企業ですね。国を巻き込むとお役所仕事でいつになるかわからないし、民間はうまいこと巻き上げられる可能性があるし、一長一短ですね」
誠司は言葉を切り、重田を真剣な顔で見つめる。
「先生、私はこの件について、夕べ私のPCのことがわかって以来真剣に考えました。どういう理由でこうなったのかはわかりませんが、これは大きなチャンスです。ご存知のように、この日本は周りに中国、韓国、北朝鮮さらにロシアとろくな国がなく、しかも経済はこの三十年間落ち込みっぱなしで近年も浮上しそうでしない状態です。
とりわけ我々若者にとっては、収入は下がってばかりで、安心して結婚も出来ない状態です。
このPCマドンナで最新どころではない、未だ開発されていない技術を含む知見が取り込める、というのがこの国にとってどれだけのアドバンテージかはかり知れません。まず、私はこの論文に従って核融合発電を出来るだけ早く実用化したいのです。
そうすれば、皆がこのPCから得られる情報、知見が本当に有用なことをわかり、その結果この国が生まれ変わると思うのです。まず、とっかかりはこの核融合発電です、先生!何とかこれを実用化しましょう。それも出来るだけ早く」
「うん、そうだな。私はそこまで考えていなかったが、君の考えには全面的に共感するよ。しかし、どうやって実現するか?うーん、そうだ。私の友達が秀才でね。経産省で課長をやっているんだ。考えたら、許認可もあるからこの話は国を通した方がいいと思うよ。とりあえず、その友人に話をしてみる。それと、この話は理学部長の山科教授には通しておいた方がいいだろうね」
重田も誠司の熱さに巻き込まれて言う。
なお、物理学教室は現状ではあまり人気はないこともあって教授は空席であり、理学部長の山科教授は地球物理学を受け持っている。
「まあ、とりあえず、経産省の友人、柴山君に話してみるよ」
重田はスマートフォンを取り出して、番号を探して送信する。
「もしもし、柴山君、お久しぶり、同級の重田です。相変わらず元気そうだね。ちょっと耳寄りな話があって、一度そっちを訪問したいのだけど。うん、できたら早い方がいいのだけど。うん、うん、じゃ明後日午前十一時だね。では十月十二日十一時前お宅の省の受付に行きますのでよろしく」
誠司はその後、重田の前で、実際にPCを操作して見せた。その中で、重田の望む質問もインプットして、その答えをプリントアウトして重田が受け取って読んだ結果、その内容が期待以上のものであることから重田も誠司の言うことが事実であることを納得せざるを得なかった。
その結果を受けて、重田は折よく在室であった山科教授の部屋を誠司と共に訪れた。無論マドンナ持参である。
山科昭教授は地震学の権威で、その予測手法は精度が高いとして世界的にも名が知られており、豪放磊落な人柄で知られている。目の光が強い五十五歳の紳士である。
「ふむ、これが君のこの質問に対して出てきた回答か。私にはこの論文は大体とことしかわからんが、質問に対してとしては異常なものであることはよくわかる。それで、重田君もこの内容は極めて重要なものだと判断するわけだね?」
「はい、私はこの論文はその内容の画期的であること、さらにその完成度から言って、物理学と言う学問が形成されて以来のものだと思います」
山科教授に重田が答え、山科はさらに聞く。
「それで、これに従えば、核融合発電機の実用化が出来るというのだね?」
「ええ、必要なシステムと、設置条件及び操作条件は規定されていますので、機械、電気、材料力学などの専門家の力を借り、かつこのマドンナに適宜質問して、細かい仕様を決めて行けば実装置化は出来ます」
誠司が意気込んで答える。
「ふーん、どういうイメージで装置を考えているのかな?」
山科教授の質問に誠司は試されているなと感じる。ここで、装置のイメージと概要を語れないようでは、早急な装置化は無理に決まっているのだ。
「まず、融合装置の本体は水素でみたされた容器の中に8方向からの電子銃による反応ゾーンをつくります。その反応ゾーンに働きかける量子的回転を起こす励起によって、そのゾーンの中で水素からヘリウムへの連鎖反応が起きます。その反応には大した熱は発生しないという計算結果になっています。たぶん千度℃以下ですので熱遮断もそれほどのものは必要ないですね。
連鎖反応の結果、水素からヘリウムに転換する際の質量の減少に相当する膨大なエネルギーが発生しますが、これは電子の流れとして、反応ゾーン境界に設置される大容量電極によって電力として取り出されます。原理上、ゾーンの最小径は0.5m程度でこれでも十万㎾程度の出力になります。電極は少しでも小さくするため、最も伝導率の高い銀で作るとして径三十㎝程度になるでしょう。
電子銃はまあ一種のレールガンの電磁推進部みたいなもので、そう難しくはありませんが、励起装置に少してこずるかもしれませんね。しかし、その必要なシステム構成及び能力はきちんと規定されていますので、マドンナの力を借りれば問題はありません。まあ、反応装置本体は、十万㎾だと径2.5mのステンレス材の球体です。
大した大きさではありませんが、何しろ十万㎾ですから電気周りの方の規模が大きくなります。でもたぶん五m×十mの架台に乗せられる程度だと思いますよ」
「ふーむ、それくらいだと、建設費も大したことはないな」
山科の言葉に俄然自信がなさそうな誠司だ。
「うーん、そこが私の弱いところでどのくらいかかるか見当がつきません。このあと、工学部の友人に会って話をする予定ですが、大まかな金額は見当をつけておくつもりです」
「そうだろうな、君たちに概算金額をはじけと言うのは無理だな。しかし、装置を建造するにはまず設計図と仕様書が必要だが、どの程度期間とマンパワーがかかるかな。いや、それも判断するのは無理だろうね。具体的に建設にどういう手助けが必要かな?」
山科がさらに聞く。
「それは、民間でばりばりこの手の装置を設計して組立ているエンジニアが絶対必要です。何とか一年で設計を終わりたいとは思っていますが。ああ、でも修論が………」
誠司は考え込んでしまう。
「まあ、牧村君の修士論文は、これの、核融合の理論的な裏付けの部分で十分だよ。これでも通常の博士論文の域を超えているからね。論文のほかの部分は外には出せない。これがあれば、ほかの国でも作れてしまう」
重田が苦笑して言う。
「え、先生本当ですか?」
内心ラッキーと思う誠司であった。
「ああ、まあ、これをどううまくそこだけ取り出してまとめるかが、君の修士としての力量の見せ方だな。これでも、学会賞くらいは間違いなく取れるだろう」
この重田の言葉に付け加えて、ひとごとではないよと山科が言う。
「しかし、重田先生、特許は早く抑えてくださいよ。大至急明細書を作ってくれれば、大学から弁理士に頼みます。そっちの費用は任せてください」
「はい、そうですね。それはやります。ああ、それから、山科先生、これの実用化に当たっては、経産省を通しておこうと思うのですよ。明後日、経産省の産業局、産業指導課の課長をしている高校の同級生を訪ねることにしているのです。一応趣旨としては、資金援助の道がないかどうか話をしたいと思っていますが。どうでしょうね」
重田が山科に相談する。
「うん、経産省に話をするはいいとは思いますが、課長クラスでは金はすぐには出せないでしょう。なにしろ、お役所は話が遅くてね。まあ、しかし、当分は設計にかかるわけだから、半年後にでも出る話でいいですがね。
いずれにせよ、当面は民間を引っ張り込んで、彼らのスタッフを使わせてもらいましょう。工学部の産業工学科の広田教授が四菱重工出身だし、西山市にも大きな工場がありますからね。しかし、彼らのペースに乗せられないためには経産省をかましておくというのはいいですね。
それから、重田先生、その話に牧村君を始めうちの院生を働いてもらうのに、手当を出すように交渉してください。経産省も何かやったという証が欲しいはずだから、そのくらいは喜んでやると思いますよ」
山科教授はそう言ったのち、表情を改めて誠司に頼む。
「牧村君、君のそのマドンナか、私もそれを使わせてもらいたいのだよ。知っての通り私の専門は地震予知なのだが、いま発表している予測法は、まあいろいろある中ではましな方なのだがまだ中途半端なんだよ。それで、かなり進んだ方法を今考えているのだけどいき詰まっていてね」
「ええ、山科先生、マドンナの使い方としては、質問が絞れている方が的確な答えが返って来ます。ですから、ある程度背景も述べて、的を絞って聞いたほうがいいですよ。ワードで打ち込んだ質問をネットで送ってもらえれば、ネットで返せますよ」
誠司が答えるが、山科は異論を唱える。
「うん、しかしね、その件では重田君も聞いてほしいが、インターネットでこのマドンナの質問の受け答えを送ることはやめた方がいいと思う。これだけの回答がでてくるということは、内容が重すぎる。
従って、面倒でもUSBの手渡しによるやり取りにしよう。
それから、学内での留学生にこのマドンナのことは絶対の知られないようにすることが重要だ。とりわけ、数が多い中国の学生には要注意だ。だから、施設の設計の場は四菱の構内でやりたい。学内では彼らをシャットアウトは出来ないからね」
誠司も山科の言葉に同意する。
「そうですね。その点は私の友人にも念を押しておきます。また、マドンナの盗難防止を考える必要がありますね。それから、山科先生、先ほどの言われた質問、ここで出来るのなら待ちますが。USBでくれれば私はエンターを押して、答えを落とすだけですので」
「おお、そうだな。5分ほど待ってくれるか」
誠司の申し入れに山科はコンピュータに向かう。
その間に、今後の予定を詰めるが、重田が誠司に聞く。
「私が、飛行機は予約しておくよ。時間はメールで入れておくので見ておいてくれ。経費は研究費から出すよ。しかし、准教授の研究費の旅費なんて、年間東京に3回行ったら終わりだからね。山科先生の言うように、経産省から経費の枠を分捕ろう。君は、それでこのプロジェクトに友達を何人くらい引っ張りこむつもりだ?」
「ええ、直接のプロジェクト関係となると工学部の電気と機械の2人ですが、経済学部と医学部の友達にも、マドンナを使わせる対象として声をかけています」
少し遠慮した誠司の答えに重田はあっさり言う。
「いいんじゃないかな。まあ、どうせ工学部はどっぷり漬かるからもっと増えるよ。ある程度フレキシブルな枠を取るように頼んでみるよ。このプロジェクトが成功した時の効果を考えると、国は全面的に援助してもいいはずだからね」
そう言う内に、山科の準備ができ、USBをマドンナに挿入する。
A4用紙に十行程度の質問を確認して、誠司がエンターを押すと、少し間があって画面がどんどんスクロールされる。かなり複雑な式や図等もあって大体二十頁程度の答えだ。山科教授もスクロールする文章をのぞき込んでいる。
「おお、そうか、そんな方法が……、なるほど……」
スクロールが終わり内容を記憶させて、USBメモリーに落とす。
「おお、ありがとう。これは有難いな。しかし、研究者としてどうかと思う面もあるが、間違いなく結果は世の役に立つからなあ。それで、このマドンナについて、私はこう思うのだよ」
山科は重田と誠司を見つめる。
「これは、言ってみれば本大学にもある大容量コンピュータみたいなものだ。各教員が使用枠を取って費用も分担して、ある計算をさせる。その結果を研究に使うという意味ではね。しかし、このマドンナの場合は研究者の意図をまるっきり越える答えが出ることが多いという意味では、自ら考えるということを促す必要がある大学としては困ったものではあるがね。
しかし、一方では何らかの命題を持って取り組んでいない研究者にとっては、これは意味の無い情報を与えるインターネットの検索結果みたいなものだ。
これは、明らかに牧村君の私物で、君にしか使えないものだ。しかし、申し訳ないが本学としてマドンナをあるルールの元に使わせてほしいのだ。たぶん国が知れば国がそのような要求をすると思うが。
うーん、そういう意味では、重田君と牧村君の経産省への訪問ではこのマドンナのことは伏せておいた方がいいだろうな。知れば、絶対牧村君ごと欲しがる。場合によっては強権で囲い込もうとするだろうな。とりあえず、いま知っている以上の人に知らせないようにした方がいいな」
その日の話は少し重い雰囲気の中で終わった。
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