日本列島、時震により転移す!

黄昏人

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第2章 過去の文明への干渉開始

24.2023年8月、石山ベース

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 石山ベース場長の日下正司と、地域防衛司令官を兼ねる室田良陸将補は使者を迎えていた。
 彼らの待つ中央管理棟の小会議室に、使者一行5人が案内されてくる。2人が武者髷に冠を被った直垂姿であり、3人は武士としての服装であったが、正使の細川治部大輔実篤の服装はひと際豪華であった。

 部屋の前には威嚇の意味もあって、戦闘服の自衛官が2人小銃を捧げて警備しており、白の制服姿の女性自衛官がニコニコして迎え、入口で全員の長剣を預かる。その部屋には組み立て式の会議机しかないので、布をかけてごまかし、椅子もパイプ椅子ではないが、折りたためるタイプであり、来客用としてはややお粗末だ。しかし、どうせ彼らはそれを最初に見るものであるので、それがどの程度のものかは解らないだろうということだ。

 実際のところは、石山ベースには今現在その程度の什器しかないのだ。最初の挨拶のやり取りの後、正使実篤が文を差し出し、同席している北大講師の皆川がそれを読み解く間、実篤が自らを駆り立てるように要求を述べ始める。

「わが殿、菅領細川勝元様の御通達じゃ。この石山城塞の土地はここを治める佐川正元のものである。佐川殿より、この土地を貴殿ら『日本』に不当に奪われたので、取り返したいという訴えがあった。我が殿は佐川の訴えが正当なものであると認める。従って、直ちにここを立ち退けという殿の御命令である」

 一気に言って、一旦言葉を切って続ける。
「さらに、貴様らは高槻に飛行場というものを作ると一方的に言ってきおった。調べると、勝手に国人と話をつけているようだが、これも菅領様は大いに不同意である」

「ほお、なるほど。皆川先生、文の内容は今言ったことと会っていますか?」
 日下は平気な顔で、横で文を読んでいる日本史の講師にのんびり聞く
「そうですね。ええ、今、細川殿の言ったことと文の内容は合っています」

「なるほど、ではご返事ですが、『お断りします』ということで、お宅の殿様に伝えてください。それに、佐川氏には、この城塞を築くに当たってはそれなりの銀をお渡して、納得してもらっている。さらには、高槻についても、高槻氏と話をして納得してもらった。
 空港が出来れば、高槻氏にも大いに利点があるから説得するのも楽でしたよ。だから、いずれの場合も、今になって不当と言われても納得できない。これらは、いずれにせよ朝廷からは御同意を頂いている」

「な、なに、無礼な。天下を治める菅領様のご命令を何と心得るか!」
 下座に座っていた大柄な武士が肩を怒らせて立ち上がり怒鳴るが、日下は平気だ。

「いや、私は菅領様から命令を受ける立場ではありませんから。天皇陛下の御指示であれば別ですが」
「し、しかしながら京を含む、この地区並びに高槻を支配しているのはわが菅領家である。領民、公家すべからく我らの命に服している」
 今度は副使の浅川亮佐が言う。

「確かに、佐川氏は細川氏の支配下にあるかもしれません。しかし、高槻氏は細川家の支配下とは思っていませんでしたよ。それに、だいぶ前でしたが、京を焼いたのは少なくとも半分は細川家の責任です。そしてその復旧もろくにしていませんよね?
 大勢の人々が、あなた方の下らない争いで苦しんでいますから恨まれていますよ。今後は京には、細川家もそうですが、軍勢は一切入れないようにします。それに朝廷と公家の方々を我々はお守りしています」

「ということは、我らと争うというのだの。そうなれば、戦乱でまた街それに田畑も荒れ果てる」
 実篤が目を光らせて言葉を絞り出すように言うが、それに続けて浅川があざけるように言う。

「貴様らの弱みは解っておるぞ。人を殺せんのだ。我らは数万の軍を催して百姓を先頭に攻めよせてやる!お前らは手を出せんだろう?」

 それに対して、室田陸将補が応える。
「はい、我々は出来るだけ死傷者を出さないように戦いますし、戦うのは人々または施設を守る場合のみです。しかし、その際に優先順位が高いのは守る対象の人々の生命、あるいは施設です。守るために必要であれば、攻める側に犠牲者が生じるのを覚悟して攻撃します。

 そして、その際の攻撃の優先順位は最初に最高指揮官で、順次高位の指揮官から下に下りていきます。指揮官がいなくなっても尚も攻めてくるなら、最後は誰も五体満足のものは残らないでしょうね。
 つまり、仮に5万人の兵を集めてここに攻めてくる場合、その最高指揮官があなたであるとすれば、最初に死ぬのはあなたとその周りの人々です。我々は京で我々の武器を使って見せましたし、持っている武器を使っている映像を見せましたね?」

 室田の言葉に、正使と副使は顔色を悪くして頷くのを見て続ける。
「あの武器を使えば、5里以上の距離からある点を狙って、大威力の弾を打ち込めますし、我々は空からも攻撃できるのです。あなた方にはそれを防ぐ方法はありません。しかし、お断りしておきますが、私達はそういうことはやりたくはありません。でも、必要であればやります。私は指揮官としてそれを命じ、部下は実行します」
 室田は静かに言って、使者たちを見つめる。しばらく沈黙が落ちた。

「では、菅領殿に私どもの拒否をお伝えください。それから、すでに通知しましたが、高槻の飛行場ができれば、誰でも我々の本拠の北海道まで一刻で行き来することができます。そして、地球というこの世界のどこへでも一日で行けるのです。それがどんなに素晴らしいことか、皆さんにもだんだんに解ってくるでしょう」

 使者たちがふくれっ面で帰っていった後、日下が皆川に声をかける。
「先生、ありがとうございました。皆川先生は今日の話を聞いた細川がどう出るか、どのようにお思いですか?」

 35歳の小柄で貧相に見える日本史が専門の皆川は、眼鏡のつるに手をかけて答える。
「ええ、細川勝元は馬鹿ではありませんが、彼は家臣の神輿に乗って振舞う方です。応仁の乱にしてもその通りで、興奮・憤激する周りを抑えきれず戦に踏み切ったと私は見ています。我々は今回、京とその周辺で将軍家もそうですが、京周辺で実質的は武力を握っている細川家をないがしろにして振舞っていますよね。

 私の意見では、細川家が今回の申し入れまでよく我慢したと思っています。彼らも、馬鹿ではありませんから、結局はかれらに見せた自衛隊の映像とデモストレーションが効いているのですよ。
 そして、彼らはすでに、我々が同じ日本人を殺すことを嫌がっているのを見抜いていましたよね。それも馬鹿でない証拠ですが、それに対して、今日は室田さんが真っ先に指揮官を狙うと言ったものですから、打つ手がなくなったのです。私が聞いている限りでは、今日の正使の細川実篤が強硬派の急先鋒ですから、帰る時のあの様子ではまあ少なくとも正面からの軍事行動の話は立ち消えでしょう」

「急襲や、侵入、ゲリラ戦などについては十分備えはしているつもりですが、これについて100%の防御はあり得ませんのでねえ」

 一旦話を切って再度続ける。
「ところで、現地から希望して集まった人たちにほとんど問題はないようですね?」

 これに対して日下が応える。
「ええ、6月初めから集めて、すでに500人強入ってきています。半数以上は中下級の公家です。彼らはなかなか行儀よくてそれなりに教養はありますが、元気は余りないですね。武家の人々は、元気がいいというか、結構反抗的なところも見えますが、追い出されるのを恐れていますから、結局は言うことを聞きます」

「犯罪めいた件は生じていないと聞いていますが?」
 今度は皆川の問いに、再度日下が応える。

「2日酔いで、欠勤というのは結構ありますね。ここで売っているようなアルコール度が10度を超えるような酒は今まで飲んでいないはずですから、しょうがないと言えばしょうがない。その2日酔いが常習に近い者もいますが少数ですね。婦女子に対する扱いは厳しく言っていますので、表ざたになるような話はありません。
 ただ、このベースの海よりにその種の店ができていますね。自衛官も結構通っているとか」

「男っていうのはどうしようもないですね。まあ、他のところのその種のところに比べると、それぞれが出しているお金も多いようだし。色々貢いでいる子も多いようだから、働いている娘はいい生活できているのじゃないかな。地元経済に大いに貢献してはいますね。なぜか、店に風呂まで出来ているようだし」
 使節が帰った後、部屋に入ってきた既婚の婦人自衛官、真田小夜が苦笑して言う。

 石山ベースから1㎞ほど離れた海沿いに、掘っ立て小屋のその種の店ができて、女の子を5人置いて商売を始めたのだ。まずは地元出身者が通い始め、500人いる自衛官の何人かが続いて通い始める。
 とりわけ21世紀人には、ぼっとんトイレと風呂無しが耐えられず、非番の時順次水回りの工事をし、宿主に強制して部屋と建物を見栄えよくしていった。さらに女の子にきちんと休みを取らせ、小遣いを渡し、ベース内売店から贈り物をする。

 かくして、常時10人以上を置くようになった『石山楼』では、いつしか女の子も小ぎれいになって、それなりの言葉使いをするようになる。この店では、彼女らは5年もしない内に借金を返して、相手を見つけて結婚していくようになった。
 これは楼主のお人よしの性格もあるが、客が入れ替わり立ち代わり押しかけてきて強制されたこともある。とは言え、楼主も十分な利益を上げているので、問題はないだろう。

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 仁科の手掛けてきた工場の1次ライン、全体の1/4が完成した。試運転も完了して、当面稼働に必要な工員の100人は揃えている。ラインは、実際には75人で動かせるが、最初はベトナムから呼んだ25人の指導役に現地採用の100人が加わって運転する。この場合には50人が余剰であるが、2か月後に稼働を予定している2次ラインの要員の訓練のためもある。

 会社の名前は、㈱大阪アパレルに改称して、1/5を政府が出資している。この会社はアパレル関係専業であり、基本的には北海道、沖縄と今から文明化する予定の日本列島の人々の需要の1/3程度を賄う程度の規模になる。最終的には、この第1工場で350人の従業員が働くが、原料の糸は全て中国またはベトナムからの輸入となる。

 このような工場は、機械化・電子化による自動化が進んでいるので、その能力は15世紀の綿織物の生産能力に比べれば、100倍以上の人手をかけて生産する染色、織物の量を上回る。製糸、織物共に機械化による自動化によって、20世紀、21世紀を通じて衣類の値段はドラスティックに下がっている。

 21世紀の日本人が、年間に消費する(買う)衣服は重量で一人10㎏、所有量は100kgになるが、15世紀の日本ではいずれも1/10以下であろう。しかし、日本列島に住む1千万と言われる人々の需要は、早期に21世紀の日本人の半分程度にはなっていくと考えられている。

 仁科は会社設立によって、取締役工場長になっており、工場の稼働に責任を持つ立場になっているが、住居は相変わらず1Kのアパート住まいである。梶田も係長から出世して染色課長であり、同じ工場に勤めており、アパートでは隣どおしなので、相変わらずちょくちょく一緒に飲んでいる。

 しかし、最近は仁科の付き合いが悪くなってきている。これは、仁科に彼女ができたということで喜ぶべきことであるが、梶田と同じ時に出会ったのに、仁科の方がもてたということで梶田にとって面白くない面もある。
 これは、彼らが休みを利用して京を旅行しようということで、ベースの京連絡便に乗り込んだ時に、橘由香と息子の良太に出会ったのだ。橘母子は京にある由香の実家への里帰りということで乗っている。連絡便は20人乗りのマイクロバスであり、席が空いていればベースの従業員または居住者は格安で乗れる。

 石山から京までの道は、今は簡易舗装がされているが、片側が本舗装の工事中である。簡易舗装とは、道路部を均してセメントを薄く敷き、その上に3cm程度の瀝青材の舗装を懸けたもので、精々2~3年しか保たず、走り心地は良くない。本舗装は路面を削り取って削った面を転圧して、その上に砂利を20cm~30㎝敷く。

 さらに最後に厚さ5cmのアスファルトの舗装を敷く。これは、飛行場が建設されることが決まったこともあって、京付近の道路のアスファルト舗装をするために、アスファルト合材工場が造られたので可能になった。また道路については、幅20mになるように斜面部、崖部の削り取り、盛り土を行い、移転が必要な家屋等は補償費を払って移転させている。この道路の線形と縦断勾配は一部を除いて設計速度120km/時で決めている。

 石山ベースから京のバスターミナルまで128kmであり、橘母子がベースに来た時より道が良くなっているので、2時間で十分到着する。この時代の人だと普通は3日を要する道なので、この便は信じられないほどに早い。
 仁科達がバスに乗り込むと少年の声がかかった。
「あ!仁科先生、おはようございます!」

「おお、室伏良太君だな。おはよう」
 仁科が応じて隣に座った女性にも声をかける。
「お母さんですか?」

「ええ、橘由香です。いつも良太を教えて頂いてありがとうございます。あの、私の夫だった室伏は亡くなったのですが、私は実家の橘に戻りましたの」
 由香は立ち上がって挨拶するが、姓が違うのに仁科が少し違和感を持ったことを敏感に感じて言葉を付け足す。

「いやいや、良太君は元気でいいですよ。どんどん強くなっています。将来楽しみです」
 仁科は言うが、後ろに立っている梶田を思い出して紹介する。

「ああ、こっちは梶田と言いまして、同じ会社の友人です。今日は一泊で京見物に行こうということでこのバスに乗りました。まあ、お母さんもお座りください。私達はこちらに座らせて頂きます」

「梶田です。京まで一緒によろしく」
 梶田も頭を下げて座るが、視線は由香に釘付けだ。

 それから、京まで2時間、主に仁科と良太が話をしていたが、下級とはいえ公家の娘として育てられた由香の雅さと、少し浅黒いが、21世紀の女性としても滅多にいない美貌と伸びやかな肢体に魅せられた仁科だった。そして、それは梶田も同じことで、2人とも時の彼方に妻子を失った痛みが薄らいできた所であった。

 これは一つには、どうしようもない理由で別れなくてはならなかったが、死別したわけではなく、別の世界で妻子が元気で生きているという確信があった点は気が楽であった。それに、自分たちは日本の大部分と切り離されたが。妻子はその大部分と一緒であるので、適応に苦労することはないだろうとの思いもあった。

 両人は、このように内心で言い訳をしているが、自分にも可能性のある魅力的な女性に出会って、目がハートになったというだけだ。由香にしてみれば、自分の容姿がそれなりに魅力的であることには多少自信がついたが、出戻りかつこぶつきということで、結婚ということにはどうしても自信は持てなかった。

 しかし、隣に座った男2人の今回の騒ぎで妻子を失ったという身の上を聞き、自分に向けた明らかな好意の目を強く意識した。そして、比べてみると、若い方の梶田より息子に剣を教えてくれている仁科の方が、頼りがいがあるように思える。

 なにしろ、この時代の平均寿命は50歳台であるのに、21世紀の日本人の男は80歳に近い。その感覚からすれば、仁科は相手としては十分若く、梶田は聊か若すぎるように思えた。
 彼女には息子良太の父親が必要だ。そして、今後この世の中が激変するのは明らかであり、できるだけ頼りになる人がよいのだ。
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