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12.2030年の日本1
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斎田家一家の4人は、たった今中部国際空港に着いたところだ。稔、涼子の夫婦にいずれも小学生の11歳の翔と8歳のゆかりの一家4人が揃っている。千葉にある㈱アサヒの本社で営業会議があり、それにアフリカ支社・技術本部長の稔が出席するということで、それに合わせて休暇をとって一家で1週間の里帰りすることにしたのだ。
いまは2030年の8月で、子供たちは2週間の冬休みである。アフリカ東岸ジェフティアは、南半球に位置しており、概ね北半球であれば台湾程度の緯度であり、当然季節は北半球の逆である。ジェフティアは日本の一部という考えであるため、基本的には日本の法律・制度はそのまま適用され、休日なども合わせている。
ただ、日本ほど明らかではないが、季節もひっくり返っているので、日本の夏休みが冬休みになって期間も短くなっている。ただ、学校の全体の休みの長さは同じになるように調整されている。
ちなみに、すでに日本の多くの企業がジェフティアには支店など出先を設けているが、年に一度程度の家族での帰省旅費を出す会社が多い。これは、基本的にジェフティアに勤める社員は家族帯同であるが、肉親を日本に残している場合が殆どなので、年1回の帰省の費用を支給しようという福利厚生の一環である。
そのようになっているのは、ジェフティアにおける生産・営業活動が、活力の高いアフリカへの事業展開の拠点になって、十分に利益が得られるものになっているからでもある。
ジェフティアの現状は、当初の予定の農場基地としての機能として見ると、小麦・トウモロコシを主とする穀物の農地2万㎢ではすでに収穫が行われており、さらに2万㎢が追加で開発されて順次作付けが行われている。当初の予定では2万㎢の農地開発で一旦停止する予定であったものが、『食糧安保』の名のもとに倍増させようとしているのだ。
この日本政府の決断は、穀物の生産国から穀物の余剰を招き、価格の低下を招くとして大きな反発を買っているが、最大の穀物輸出国であるアメリカはこの点では沈黙を守っている。これは一つには、アメリカにおいて地下水に頼っていた中西部の農場でその水源枯渇の傾向が顕著に見え始め、輸出余力が無くなってきたという点が大きい。
実際のところ、ジェフティアは内国扱いにしているので、その穀物産出によって最近2年間の日本の穀物輸入はほぼゼロになっている。
さらには、ジェフティアの大規模な養殖漁業と近海漁業がすでに軌道に乗っており、2兆円近かった水産物の日本の輸入はかつての1/4程度まで落ち込んでいる。この点では、日本が農水産物の輸入を急速かつ大幅に減らすことによる摩擦を懸念する意見もあったが、世界的に穀物の生産が落ち込んでおり、さらに海産物の消費量が高まっていることから、特段の問題にはならなかった。
こうして、農水産基地としてのジェフティアの機能はすでに発揮されているが、そのために多数の農家、漁師、養殖漁業者が家族で移り住んできている。さらには、規模が大きくなって収入も普通のサラリーマンより大きいという見込みから、多くの若者や農水産に携わりたいという者達が集まってきた。
彼らは、基本的には日本にある資産を売ってジェフティアの農地、養殖地、さらには漁船などの機材を買うか借りて生産を始めることになる。この際の農地や、家屋、農機具、漁業権、漁船などの資産の処分に当たっては、政府は(財)ジェフティア移転機構を設立して、地方自治体と協力しながら移転者が不利にならないような転売を仲介している。
結果として、日本本土の農地の経営規模は大きく拡大して、半分程度の面積は近隣の農地を買い取った農家が個人経営し、残りは農協を含めた会社組織になった。
漁業については、資産として漁業権に漁船などがあるが、大きなものではないために、結局は多くの漁業従事者は養殖場、さらに漁船と加工場を建設保持する企業に雇われることになる。
こうして、それなりの資産を持った農民は、自分の農地と耕作に必要な機器を買い取り自営となり、同様に漁民は自前の養殖場や船を持ことになる。そして、そうした資産を持たない者は、ジェフティアから土地や機材を借りるか、あるいは運営する企業に勤めることになる。
しかし、いずれの場合も家は必要なので、これも買うか借りるかになる。このような状況で、ジェフティアに相当な借金を抱えて移り住んだ者は数多いが、順調な収穫と世界全体の食料の継続的な値上げ傾向のなかで、順調に返済していっている。
このようにジェフティアの建設によって、食の面での安全保障が脆弱と言われた日本は、2029年のカロリーベースの自給率は95%に達している。さらに農産物について、日本本土の生産物の品質の高さから輸出もそれなりに増加して、食料の輸出入はほぼ均衡するところまで来ている。
一方で、当初からそれなりに期待されていた、工業・商業面での業容拡大は著しいものがあった。資源国であるモザンビーク、ジンバブエの資源を用いて、まず年産5千万トンの製鉄所、大規模な製紙工場、各種レアメタルの精錬所等が建設された。
それに並行して、自動車、バイク、電車等の輸送機械、電気・電子工業、食品加工業などとありとあらゆる産業が、アフリカの旺盛な需要を見込んで立地した。それらは、日本人が主として働く工場でありこともあって、本土と同じレベルの最新鋭の工場であり、品質はメイドインジャパンそのものである。
もちろん、現地のアフリカ人の従業員が多数派ではあるが、日本人も「日本」として位置づけられたジェフティアへの移動には驚くほど抵抗はなく、これらの企業は平均して従業員の3割程度は日本人である。こうしてジェフティアの総生産は昨年末で40兆円に迫り、今後も年率15%程度の成長が続くとみられている。
日本のGDPについては、内国扱いのジェフティアでの増加もあるが、主としてIT関連の技術進歩による設備投資の増加、インフレ傾向による人々のマインドの変化に伴う投資意欲の亢進、さらに購買意欲の増大によって企業活動が大幅に活性化していることが大きい。その中には、ジェフティアにおける工場などの施設建設のための製造業の売り上げ増加も影響として含まれる。
かくして、2029年第2次5ヵ年年計画終了及び、令和所得倍増計画10年目にして日本のGDPは900兆円に届いており、2034年に目標である倍増の1100兆円は確実といわれている。この成長の中で、その莫大な投資と、無から生んだ形の農水産高の劇的な向上により、ジェフティアの果たした役割は非常に大きいと言われている。
ちなみに、2029年の統計でジェフティアの人口は1,750万人であり、その内日本国籍を持つものが350万人であった。日本国籍を持つ者以外の国籍の大部分はアフリカ人であり、このように多数の国民を送り出している国々は、ジェフティアに大使館を設立している。
ただ、これは自国民への対応のみならず、ジェフティアに立地している日本企業への自国への工場や支店設立の勧誘のためである部分が大きい。
またジェフティアが、アフリカの発展に寄与するところが、非常に大きいことがすでにデータ的に裏付けられている。まず、ジェフティアに土地を“売った”ことによってインフラ投資の原資を得た両国は、すぐそばに優れた技術を持った日本人という集団がいるので、その知恵を使うことが可能になった。
このアドバイザリー及び援助のスキムは、両国から土地を入手する際の条件に入っており、このような技術的・財政的なアドバイスの元に、両国は豊富な資源を活用するためのインフラ整備と都市基盤整備、並びに様々な基礎素材の工場を建設している。
彼らが建設を目論んでいる工業は、石油化学工業、コークス工場、アルミ精錬工場などであって、高度なノウハウと人材が必要であるものである。その点で、いわば『隣に日本人がいる』という極めて有利な立場であるわけで、彼らの思惑が的中したことになる。
さらに、両国はジェフティアで整備している農場、あるいは養魚場等に隣接して彼らの農場等を建設して、日本側のノウハウを使いながら、彼ら独自では到底達成できなかった質の高い産物と大きな生産高を挙げるようになった。
これらの産業の有利な点は、ジェフティアで余裕を持って作った巨大な灌漑設備や、すでに原発2基で220万㎾に達した発電設備の余剰能力を活用することが出来る点である。知恵を借り、余った能力を借りて自分の生産を高めるというまさに“コバンザメ”手法が功を奏したわけである。
このことで、両国はまだ工業生産は滑り出し始めたところで殆ど貢献はしていないが、主として大きな投資に伴う建設と農業生産の増加によって、両国のGDPの伸びは最近数年間に渡り20%を超える数値を記録している。また、両国のこのような施設の建設による経済成長の強みは、今後大きな生産高の増加に繋がることである。
さらに、このような建設を通じて上昇する人件費は、人々の所得の増加に繋がるわけであり、このことは内需によるGDPの更なる増加に繋がることになる。このような両国の急速な発展は、周辺諸国及び全アフリカからの羨望と嫉妬を呼び、隣国のいくつかが国境地帯に軍を派遣するという事態も起きた。
しかし、ジェフティアについては、日本本土と基本的には同じ扱いということで、自衛隊も配備されており、護衛艦が4隻、潜水艦が2隻とF15戦闘機36機とF2が20機に5千人の陸上部隊も配備されている。
この中には、様々な野砲の他、戦闘ヘリに加えて、すでに25式戦車が出てはいるがまだ先進性を失っていない10式戦車が40両配備されていて、突出している南アフリカを除けば十分な戦力である。近隣諸国の動きに対して、自衛のため自衛隊が動くと宣言したことで騒ぎは収まっている。
なお、治安は非常に悪いものの、アフリカでは先進国である地域大国の南アフリカはモザンビークの隣国になるが、この国はジェフティアの建設は自らの利益になるとして基本的には歓迎している。とは言え、予想を超えた隣国の発展に複雑な思いもあるようである。
さらに、ジンバブエ領だった高原に建設されたジェフティア大学は、元々ジェフティアの日本人のみを対象に建設されたわけでなく、全アフリカの若者を対象にしており5年前に開校された。教授など教官連は、半分以上が日本人であるが、日本人はそれなりに優秀な人材が集まった。
これは、現在の日本の出生率は上昇しており、近い将来の若者人口は相当増えるが、現在では出生率が非常に低かった時期の若者人口が少ない時期に当たり、教官に余剰が出ていることが影響している。また、実のところ日本の技術レベルには定評があるが、大学の評価はあまり高くはなかった。
しかし、日本政府のこの点は大いに反省して、IT技術の開発に教育への活用を重点テーマとして挙げている。その結果、半覚醒状態においての記憶促進の手法を応用して、記憶に係わる教育時間の大幅な短縮をする手法、さらに教える内容に順序を最適化することで、その効果を高める方法などを確立している。
そのために、日本の大学の声価は急速に高まっており、昨今では留学生が殺到し始めている。その中での、国立大学としてのジェフティア大学であるから、授業料を安くして、援助対象国の国費留学生は無料としたことから、特に貧しい層の学生に極めて人気が高くなった。
その入学試験は、どれだけ物を知っているかより、むしろ学生の潜在的な能力を問うものになっていて、多くの国では入試に合格すれば国費留学生として認めている。その規模も最初の年は1学年2千人であったが、昨年では最終的な人数として学部学生5千人になっているので、最終的には修士2年、博士3年を含めると学生のみで3万人に達するマンモス校になる。
日本政府は、この大学にその莫大な設立費用3千億円に加えて、最終的には年間1千億円の国費を投入することになっており、税金の無駄使いとの批判もあったが、すでにアフリカ最高峰の大学との評価を得ている。
またこの大学は、ジェフティアの社会と産業界との連携も有効に生かすことでアフリカの人材育成に多大な貢献をしたことは間違いない。
『ジェフティア大学なくば、アフリカ大陸の近代化は10年は遅れていた』と言われる所以である。
斎田一家は、日曜日のその日、ひとまず埼玉に住む稔の実家に落ち着いて、稔は翌日から2日間の営業会議に出席して、妻の涼子と子供たちは、2人で暮らしている稔の両親に連れられて東京近辺の見物と、妻の涼子の両親に家に訪問し、同じく涼子の両親とお出かけだ。
ちなみに、斎田一家はジェフティアの西日空港から直行便で到着したが、現在では空路はジェフティアと日本では東京の羽田、中部、関空、福岡、仙台、札幌を結んでおり、日本のみで一日30便が飛んでいる。さらには、西日空港は今や大幅に増えた日本からのアフリカビジネスの玄関口になっているために、アフリカ各地を中心に世界の50空港と結んでいる。
彼らの乗ってきた航空機は新型の高速型であり、機体の気密性と耐圧性を高めて、高度3万mの高空に昇って空気抵抗を減らすことで超音速を達成したものである。その平均速度は時速1600kmに達しているので、西日空港から中部空港まで9時間で結んでいる。
座席についても、人間工学的な研究を進めた結果、従来のエコノミークラスのスペースで最良の快適性を得られるものが開発されている。さらに、ジェフティアと日本では6時間の時差があるが、人体に害がなく夜間の飛行時に快適に眠ることができて、かつ時差を解消することにできる薬が開発されて使われ始めている。
だから、少なくともジェフティアと日本の間の行き来は、肉体的な苦痛はほとんどなくなっている。なお、ジェフティア~日本間の往復の航空運賃は、エコノミークラスで15万円程度になる。これは、一家の分を自己負担としても、経済成長の結果、年収で1千5百万円程度になる斎田一家にとってはそれほど大きな支出ではない。
関東に行く彼らが中部空港に降りたのは、すでにリニアで東京から大阪まで結ばれている現在、関東圏の羽田・成田空港のキャパシティが限界に達している今では実質的に中部空港は関東圏と一体運用されているためだ。
いまは2030年の8月で、子供たちは2週間の冬休みである。アフリカ東岸ジェフティアは、南半球に位置しており、概ね北半球であれば台湾程度の緯度であり、当然季節は北半球の逆である。ジェフティアは日本の一部という考えであるため、基本的には日本の法律・制度はそのまま適用され、休日なども合わせている。
ただ、日本ほど明らかではないが、季節もひっくり返っているので、日本の夏休みが冬休みになって期間も短くなっている。ただ、学校の全体の休みの長さは同じになるように調整されている。
ちなみに、すでに日本の多くの企業がジェフティアには支店など出先を設けているが、年に一度程度の家族での帰省旅費を出す会社が多い。これは、基本的にジェフティアに勤める社員は家族帯同であるが、肉親を日本に残している場合が殆どなので、年1回の帰省の費用を支給しようという福利厚生の一環である。
そのようになっているのは、ジェフティアにおける生産・営業活動が、活力の高いアフリカへの事業展開の拠点になって、十分に利益が得られるものになっているからでもある。
ジェフティアの現状は、当初の予定の農場基地としての機能として見ると、小麦・トウモロコシを主とする穀物の農地2万㎢ではすでに収穫が行われており、さらに2万㎢が追加で開発されて順次作付けが行われている。当初の予定では2万㎢の農地開発で一旦停止する予定であったものが、『食糧安保』の名のもとに倍増させようとしているのだ。
この日本政府の決断は、穀物の生産国から穀物の余剰を招き、価格の低下を招くとして大きな反発を買っているが、最大の穀物輸出国であるアメリカはこの点では沈黙を守っている。これは一つには、アメリカにおいて地下水に頼っていた中西部の農場でその水源枯渇の傾向が顕著に見え始め、輸出余力が無くなってきたという点が大きい。
実際のところ、ジェフティアは内国扱いにしているので、その穀物産出によって最近2年間の日本の穀物輸入はほぼゼロになっている。
さらには、ジェフティアの大規模な養殖漁業と近海漁業がすでに軌道に乗っており、2兆円近かった水産物の日本の輸入はかつての1/4程度まで落ち込んでいる。この点では、日本が農水産物の輸入を急速かつ大幅に減らすことによる摩擦を懸念する意見もあったが、世界的に穀物の生産が落ち込んでおり、さらに海産物の消費量が高まっていることから、特段の問題にはならなかった。
こうして、農水産基地としてのジェフティアの機能はすでに発揮されているが、そのために多数の農家、漁師、養殖漁業者が家族で移り住んできている。さらには、規模が大きくなって収入も普通のサラリーマンより大きいという見込みから、多くの若者や農水産に携わりたいという者達が集まってきた。
彼らは、基本的には日本にある資産を売ってジェフティアの農地、養殖地、さらには漁船などの機材を買うか借りて生産を始めることになる。この際の農地や、家屋、農機具、漁業権、漁船などの資産の処分に当たっては、政府は(財)ジェフティア移転機構を設立して、地方自治体と協力しながら移転者が不利にならないような転売を仲介している。
結果として、日本本土の農地の経営規模は大きく拡大して、半分程度の面積は近隣の農地を買い取った農家が個人経営し、残りは農協を含めた会社組織になった。
漁業については、資産として漁業権に漁船などがあるが、大きなものではないために、結局は多くの漁業従事者は養殖場、さらに漁船と加工場を建設保持する企業に雇われることになる。
こうして、それなりの資産を持った農民は、自分の農地と耕作に必要な機器を買い取り自営となり、同様に漁民は自前の養殖場や船を持ことになる。そして、そうした資産を持たない者は、ジェフティアから土地や機材を借りるか、あるいは運営する企業に勤めることになる。
しかし、いずれの場合も家は必要なので、これも買うか借りるかになる。このような状況で、ジェフティアに相当な借金を抱えて移り住んだ者は数多いが、順調な収穫と世界全体の食料の継続的な値上げ傾向のなかで、順調に返済していっている。
このようにジェフティアの建設によって、食の面での安全保障が脆弱と言われた日本は、2029年のカロリーベースの自給率は95%に達している。さらに農産物について、日本本土の生産物の品質の高さから輸出もそれなりに増加して、食料の輸出入はほぼ均衡するところまで来ている。
一方で、当初からそれなりに期待されていた、工業・商業面での業容拡大は著しいものがあった。資源国であるモザンビーク、ジンバブエの資源を用いて、まず年産5千万トンの製鉄所、大規模な製紙工場、各種レアメタルの精錬所等が建設された。
それに並行して、自動車、バイク、電車等の輸送機械、電気・電子工業、食品加工業などとありとあらゆる産業が、アフリカの旺盛な需要を見込んで立地した。それらは、日本人が主として働く工場でありこともあって、本土と同じレベルの最新鋭の工場であり、品質はメイドインジャパンそのものである。
もちろん、現地のアフリカ人の従業員が多数派ではあるが、日本人も「日本」として位置づけられたジェフティアへの移動には驚くほど抵抗はなく、これらの企業は平均して従業員の3割程度は日本人である。こうしてジェフティアの総生産は昨年末で40兆円に迫り、今後も年率15%程度の成長が続くとみられている。
日本のGDPについては、内国扱いのジェフティアでの増加もあるが、主としてIT関連の技術進歩による設備投資の増加、インフレ傾向による人々のマインドの変化に伴う投資意欲の亢進、さらに購買意欲の増大によって企業活動が大幅に活性化していることが大きい。その中には、ジェフティアにおける工場などの施設建設のための製造業の売り上げ増加も影響として含まれる。
かくして、2029年第2次5ヵ年年計画終了及び、令和所得倍増計画10年目にして日本のGDPは900兆円に届いており、2034年に目標である倍増の1100兆円は確実といわれている。この成長の中で、その莫大な投資と、無から生んだ形の農水産高の劇的な向上により、ジェフティアの果たした役割は非常に大きいと言われている。
ちなみに、2029年の統計でジェフティアの人口は1,750万人であり、その内日本国籍を持つものが350万人であった。日本国籍を持つ者以外の国籍の大部分はアフリカ人であり、このように多数の国民を送り出している国々は、ジェフティアに大使館を設立している。
ただ、これは自国民への対応のみならず、ジェフティアに立地している日本企業への自国への工場や支店設立の勧誘のためである部分が大きい。
またジェフティアが、アフリカの発展に寄与するところが、非常に大きいことがすでにデータ的に裏付けられている。まず、ジェフティアに土地を“売った”ことによってインフラ投資の原資を得た両国は、すぐそばに優れた技術を持った日本人という集団がいるので、その知恵を使うことが可能になった。
このアドバイザリー及び援助のスキムは、両国から土地を入手する際の条件に入っており、このような技術的・財政的なアドバイスの元に、両国は豊富な資源を活用するためのインフラ整備と都市基盤整備、並びに様々な基礎素材の工場を建設している。
彼らが建設を目論んでいる工業は、石油化学工業、コークス工場、アルミ精錬工場などであって、高度なノウハウと人材が必要であるものである。その点で、いわば『隣に日本人がいる』という極めて有利な立場であるわけで、彼らの思惑が的中したことになる。
さらに、両国はジェフティアで整備している農場、あるいは養魚場等に隣接して彼らの農場等を建設して、日本側のノウハウを使いながら、彼ら独自では到底達成できなかった質の高い産物と大きな生産高を挙げるようになった。
これらの産業の有利な点は、ジェフティアで余裕を持って作った巨大な灌漑設備や、すでに原発2基で220万㎾に達した発電設備の余剰能力を活用することが出来る点である。知恵を借り、余った能力を借りて自分の生産を高めるというまさに“コバンザメ”手法が功を奏したわけである。
このことで、両国はまだ工業生産は滑り出し始めたところで殆ど貢献はしていないが、主として大きな投資に伴う建設と農業生産の増加によって、両国のGDPの伸びは最近数年間に渡り20%を超える数値を記録している。また、両国のこのような施設の建設による経済成長の強みは、今後大きな生産高の増加に繋がることである。
さらに、このような建設を通じて上昇する人件費は、人々の所得の増加に繋がるわけであり、このことは内需によるGDPの更なる増加に繋がることになる。このような両国の急速な発展は、周辺諸国及び全アフリカからの羨望と嫉妬を呼び、隣国のいくつかが国境地帯に軍を派遣するという事態も起きた。
しかし、ジェフティアについては、日本本土と基本的には同じ扱いということで、自衛隊も配備されており、護衛艦が4隻、潜水艦が2隻とF15戦闘機36機とF2が20機に5千人の陸上部隊も配備されている。
この中には、様々な野砲の他、戦闘ヘリに加えて、すでに25式戦車が出てはいるがまだ先進性を失っていない10式戦車が40両配備されていて、突出している南アフリカを除けば十分な戦力である。近隣諸国の動きに対して、自衛のため自衛隊が動くと宣言したことで騒ぎは収まっている。
なお、治安は非常に悪いものの、アフリカでは先進国である地域大国の南アフリカはモザンビークの隣国になるが、この国はジェフティアの建設は自らの利益になるとして基本的には歓迎している。とは言え、予想を超えた隣国の発展に複雑な思いもあるようである。
さらに、ジンバブエ領だった高原に建設されたジェフティア大学は、元々ジェフティアの日本人のみを対象に建設されたわけでなく、全アフリカの若者を対象にしており5年前に開校された。教授など教官連は、半分以上が日本人であるが、日本人はそれなりに優秀な人材が集まった。
これは、現在の日本の出生率は上昇しており、近い将来の若者人口は相当増えるが、現在では出生率が非常に低かった時期の若者人口が少ない時期に当たり、教官に余剰が出ていることが影響している。また、実のところ日本の技術レベルには定評があるが、大学の評価はあまり高くはなかった。
しかし、日本政府のこの点は大いに反省して、IT技術の開発に教育への活用を重点テーマとして挙げている。その結果、半覚醒状態においての記憶促進の手法を応用して、記憶に係わる教育時間の大幅な短縮をする手法、さらに教える内容に順序を最適化することで、その効果を高める方法などを確立している。
そのために、日本の大学の声価は急速に高まっており、昨今では留学生が殺到し始めている。その中での、国立大学としてのジェフティア大学であるから、授業料を安くして、援助対象国の国費留学生は無料としたことから、特に貧しい層の学生に極めて人気が高くなった。
その入学試験は、どれだけ物を知っているかより、むしろ学生の潜在的な能力を問うものになっていて、多くの国では入試に合格すれば国費留学生として認めている。その規模も最初の年は1学年2千人であったが、昨年では最終的な人数として学部学生5千人になっているので、最終的には修士2年、博士3年を含めると学生のみで3万人に達するマンモス校になる。
日本政府は、この大学にその莫大な設立費用3千億円に加えて、最終的には年間1千億円の国費を投入することになっており、税金の無駄使いとの批判もあったが、すでにアフリカ最高峰の大学との評価を得ている。
またこの大学は、ジェフティアの社会と産業界との連携も有効に生かすことでアフリカの人材育成に多大な貢献をしたことは間違いない。
『ジェフティア大学なくば、アフリカ大陸の近代化は10年は遅れていた』と言われる所以である。
斎田一家は、日曜日のその日、ひとまず埼玉に住む稔の実家に落ち着いて、稔は翌日から2日間の営業会議に出席して、妻の涼子と子供たちは、2人で暮らしている稔の両親に連れられて東京近辺の見物と、妻の涼子の両親に家に訪問し、同じく涼子の両親とお出かけだ。
ちなみに、斎田一家はジェフティアの西日空港から直行便で到着したが、現在では空路はジェフティアと日本では東京の羽田、中部、関空、福岡、仙台、札幌を結んでおり、日本のみで一日30便が飛んでいる。さらには、西日空港は今や大幅に増えた日本からのアフリカビジネスの玄関口になっているために、アフリカ各地を中心に世界の50空港と結んでいる。
彼らの乗ってきた航空機は新型の高速型であり、機体の気密性と耐圧性を高めて、高度3万mの高空に昇って空気抵抗を減らすことで超音速を達成したものである。その平均速度は時速1600kmに達しているので、西日空港から中部空港まで9時間で結んでいる。
座席についても、人間工学的な研究を進めた結果、従来のエコノミークラスのスペースで最良の快適性を得られるものが開発されている。さらに、ジェフティアと日本では6時間の時差があるが、人体に害がなく夜間の飛行時に快適に眠ることができて、かつ時差を解消することにできる薬が開発されて使われ始めている。
だから、少なくともジェフティアと日本の間の行き来は、肉体的な苦痛はほとんどなくなっている。なお、ジェフティア~日本間の往復の航空運賃は、エコノミークラスで15万円程度になる。これは、一家の分を自己負担としても、経済成長の結果、年収で1千5百万円程度になる斎田一家にとってはそれほど大きな支出ではない。
関東に行く彼らが中部空港に降りたのは、すでにリニアで東京から大阪まで結ばれている現在、関東圏の羽田・成田空港のキャパシティが限界に達している今では実質的に中部空港は関東圏と一体運用されているためだ。
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