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第13章 サーダルタ帝国との和解
13.7 新地球の開発2
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山切道彦が、この新地球(NEW EARTH)に降り立ったのは2033年の8月であった。今は2035年の8月であるので、すでに2年が過ぎたわけだ。彼はこの2年間はこの新地球にある巨大大陸の中央大陸(CENTER CONTINENTAL)の新首都中央市(CETRAL CITY)の予定地の都市開発に従事してきた。
彼が、この地に来た時には、未だここは灌木に覆われた低い丘陵であった。目の前が巨大な南東湾であり、午前中はいつも海風が吹きつけてくる。北側には、遠くに霞んでいる山塊から2千㎞ほども流れてきた川幅が1kmほどもある巨大な緑川(GREEN RIVER)が流れている。
一次建設隊は、厳密にいうと入植者ではなく、建設入植者のためのインフラ整備のための部隊であって、約2万人で1千万人の建設入植者のための宿舎と基礎的なインフラを建設しようというものである。しかし、2/3程度の人数は入植者として残り入植者の建設部隊として続けて働くことになっている。
彼は、ハヤトが狭山第2中学校で処方を始めたころの生徒で、おそらく世界で初めて処方を受けた一人だろう。残念ながら魔法は使えるようにはならなかったが、身体強化は非常に高いレベルでできるようになり、知力増強の効果も高かった。
小学生から空手をやっていたこともあって腕力には自信があり、中学でいわゆる不良グループの一員ではあったが、喧嘩には積極的に参加はしても、いじめカツアゲなどは全くやっていなかった。荒れた中学だった彼の母校も、どちらかというと成績の良かった生徒の方が処方の効果が高かったこともあって、処方以来すっかり様相を変えて、進学校になってしまった。
山切も普通に勉強して、利根東校に進学し普通に地元の千葉国大の工学部建設工学科に入学して卒業している。その後、空手は続けて高校の時には身体強化ありの高校選手権でベスト4まで行ったが、大学は国立大学では私立には分が悪く、大学の選手権ではベスト8どまりであった。卒業後は普通にゼネコンに入社して、景気が良くなってきた日本の建設現場を渡り歩いている。
今回の新地球の、第1次建設隊は結局世界のゼネコンに発注して建設を行うことにしている。これは、新地球政府が管理する仕事として滑り出しはしたものの、実際に機能する組織は今から作る段階であるため、手慣れたゼネコンの力を使うことにしたのだ。
新地球については、学術調査が行われた結果、疫学的な危険はまずなく、危険な大型動物はいないということではあったが、地球レベルの大きさの惑星全体を1年弱の調査行ったものである。従って、気候も未だはっきり分かっておらず、さらに動植物からの危険は十分ありうると判断された。
学術調査では、多くの身体強化のできる兵に警備されていたが、建設部隊の警備は限定的であるという条件から、第1次建設隊は身体強化ができる隊員を一定の割合で加える必要があるということになったのだ。そのため、日本のゼネコンが有利になり、最大の仕事である中央市の建設を山切の勤める桐島建設が受注したのだ。
その時、入社3年目で25歳だった彼も、新世界に真っ先に行けるということで手を挙げて、1万人の社員の中でも10番には入る腕力の山切はすんなり選ばれたのだ。現在現場には、3千人のスタッフがいて、身体強化の出来る日本人は8百人、他はアジア・アフリカ等のスタッフである。
現在27歳の彼は、上下水道の工事を担当しているが、設計と並行しながらの工事のため、ジョイントを組んでいる設計会社のスタッフとほぼ毎日協議する必要がある。これは、新地球での仕事は全ての工事がそうであるが、各現場については各発注は完成形のコンセプトのみが示され、それぞれに現場で調査と設計を行いつつ並行して施工を進める方式を取っている。
このような工事形態は、地球でも実施され始めた方式であり、既存市街地では無いような開発地で適用可能な方法である。それは、それぞれにAIが割り当てられてすべての情報を集約して、調査・施工・工費の全てを管理して、最終的に工費も清算することになる。
このため、工事を受注したゼネコンは設計コンサルタントとジョイントを組んで設、共同で計をしながら仕事を進めていくことになる。だから、新たな世界に来たという感慨にふける間もなく、現場に乗り込んで最初の2ヶ月ほどで、最初の作業としてドローンを使った測量を終了させ、地盤は地中に起震装置で振動を与えたリアクションを測定しての調査と、一部については実際のボーリングで確認している。
その調査と並行して、都市計画の街なみのレイアウトを決めていき、地球から持ってきたプレハブの建物の基礎構造、道路構造など最終化して到着後3カ月目には設計と並行して工事に着手している。上下水道施設はそんなに簡単にはいかないが、設計者と共同で水源の調査、浄水施設のレイアウト、下水処理施設のレイアウト、さらに管網のレイアウトを決める。
幸い、浄水施設や下水処理施設の心臓部は全て膜によるものであるため、パッケージ化が進んでおり、建物を造るのとさほどは変わらない。だから山切も現地に着いて半年後にはすでに処理場の基礎工事、管きょも埋設工事に入っている。
この新地球の入植は、当面は新地球の面積の4億㎢の約2/5である陸地の1億5千万㎢の内の約6千万㎢を占める中央大陸に限って行うことになっており、それも熱帯と寒帯及び砂漠など暮らしにくい地域は避けることにしている。それでも、南北に1万5千㎞m、東西に1万㎞の大陸には十分なスペースがあって、概ねその面積の40%程度は十分住むに問題ないとされている。
ちなみに新地球の陸地は単一の大陸であるが、東の未来(FUTURE CONT.)、西の希望(HOPE CONT.)大陸の間に中央大陸の3つの陸塊があって、陸橋で繋がっている。この中では、中央大陸が最も大きく、水に恵まれているせいか砂漠も少なく、さらに様々な資源にも恵まれているということで最初の開発地に選ばれたものだ。
第1次建設部隊は、15班に分かれて各地に散っているが、先述のように当初から首都予定地とされている中央市には約3千人の隊員が配置されている。しかし、これに遠隔操作または自動でも運転できる重機、ロボットがほぼ同数配置されて作業の効率を上げている。
これらの自動機器は24時間運転が可能なので、日中にきちんと作業の手順を決めておけば仕事は夜間も止まることなく続けられるのだ。これらの予定地は、鉱物、山林などの資源が近くにあり、良質な水源が近くで得られることを条件として選ばれている。
中央市の場合は海に面して漁業基地を作るのが容易であること、さらに近くに巨大な鉄鉱山と石炭鉱山も比較的近くに見つかっているので、港と近郊で製鉄所を作ることが決まっている。ただ、近年において地球では、港湾があるということが都市の立地条件としては有利でなくなっている。
これは、かっては船で荷を運ぶコストが、圧倒的に陸上輸送のコストを下回っていたが、重力エンジンとAEバッテリーがそれを変えてしまった。その意味では、中央市は海辺にその位置を決めたが、他の開発地は内陸が多い。
鉱物資源については、学術調査隊によってリモートセンシングを行っているが、さらにハヤトも乗り込んで惑星全体の概査を行っているので、様々な金属、石油・石炭等の資源が幅ひろく見つかっている。地球においては、よく知られているように森林資源の荒廃が進んでおり、木材の乱用は避ける必要が叫ばれている。
そこで、木材に代替するものとして、樹脂と鋼材を組み合わせた材料で建築を行う方法が主体になりつつある。この点で、石油についてはAE発電のある今、燃料としての価値はほぼなくなった点が功を奏した形である。石油は、燃料として使われなくなっても、潤滑油やこうした高分子原料として高い価値がある。
また、石炭についてはハンドリングが石油に比べ難しいが、コークスに加工することで製鉄等のための燃料には引き続いて使われている。このために、石炭についても乾留して、コークスに加工する際の副産物、あるいは最初から分解して高分子材を取り出して石油と同様な樹脂原料にしている。
そこに、地球においては、ハヤトの資源探査によって大量の石油・石炭資源が発見されために、木材の使用に歯止めをかけて、先に述べたような樹脂製の建材を多用する方向に変わってきている。こうなると、今や家は工場で作って現地では基礎工事と組み立てのみという方向に変わってきている。
新地球における宿舎建設も、基礎は現地でコンクリートを打ち込んで製作するが、その鉄筋を含めて建物の部材は全て地球から運び込まれることになっている。これは一戸建てのみならず、アパート形式のビルも同じことであり、そういう方式を取っているので、1千万の人が住める街が2年足らずで完成することになるのだ。
このために、輸送が極めて重要であるが、幸い新地球の中央大陸の位置は、日本の近くに同期しているため、ゲートが日本上空にあれば、日本からは約20時間程度で飛行できる。このために使う輸送船は、AEバッテリ―駆動の貨物専用船であり、径10m長さ100mの円筒形のもので、船倉容量4500m3で重量1万トンまで積め3Gの加速ができる。
量産性を最重視したこの輸送船は、“いわて”シリーズと呼ばれ、日本において月産30隻が作られている。旅客船も同じ形・大きさであるが、これは“はくば”シリーズと呼ばれ3層の客室で1500隻のリクライニングシートが備えられており、こちらは月産20隻が作られている。
このためのゲートは、今のような専用基地ができるまでは、日本で建造した母艦“しなの”がゲートの役割りを担っていた。これは、地上200㎞を軌道速度で回っているため、日本上空へは1時間半に1回しか来ないので、輸送機及び旅客機はその軌道速度に同期して、ゲートを通過するのだ。
従って、日本から出発した旅客機または輸送機は異世界へのゲートを1回の通過できる機数は、“しなの”を使っていたころは5隻が限度であり、専用の基地では10隻である。24時間フルに使っても16回の通過になるので、現在では160隻が通過できることになる。
このうち100隻を貨物、60隻は人を運ぶとすると貨物は30万m3/日(平均3千m3/船とする)、人は9600人/日運べることになる。むろん、山切が来た頃は“しなの”を用いたゲートであり、船も十分な数はなく、多くの枠は貨物船に割り当てられたので、2万人の要員を運ぶのに1ヵ月を要している。
このように、工期を早めるためもあって、地球から運ばれた建材や機材を組み立てる工法によって第1次建設隊は工事を進めている。建物の場合は現地で加工するのは基礎のみである。ちなみに、新地球はまだ手付かずの森林資源があり、その資源量は莫大であるので、十分木材も建材として利用できる。
この点は、移住者による建設が始まってからは、当然木材の加工工場も建設され、さらには地元産の石油・石炭を用いた樹脂工場も建設されるので、新地球政府として、きちんと計画をたてて最適な材料を選択する必要がある。
なお、建物や道路・さらに様々なインフラの建設に当たっては、石、砂利や砂及びコンクリートが必要である。
初期においてセメントはやむを得ないとしても、石、砂利や砂については容量も重量も嵩むので現地調達が必要である。山切の現地に到着後の最初の仕事が、このような石や砂、砂利の調査とその採取の段取りであったが、砂は目論見通り川辺にすぐに見つかり、砂利も緑川を数km遡った川辺で見つかった。
ちなみに、こうした建設には莫大な費用が必要であり、新地球政府はそれぞれ請け負ったゼネコンに工費の支払いが必要である。新地球政府はそのために、地球同盟諸国と金融市場からの融資で莫大な資金を調達している。なにしろ、新地球政府は惑星一つを丸々保有しているのだ。
彼が、この地に来た時には、未だここは灌木に覆われた低い丘陵であった。目の前が巨大な南東湾であり、午前中はいつも海風が吹きつけてくる。北側には、遠くに霞んでいる山塊から2千㎞ほども流れてきた川幅が1kmほどもある巨大な緑川(GREEN RIVER)が流れている。
一次建設隊は、厳密にいうと入植者ではなく、建設入植者のためのインフラ整備のための部隊であって、約2万人で1千万人の建設入植者のための宿舎と基礎的なインフラを建設しようというものである。しかし、2/3程度の人数は入植者として残り入植者の建設部隊として続けて働くことになっている。
彼は、ハヤトが狭山第2中学校で処方を始めたころの生徒で、おそらく世界で初めて処方を受けた一人だろう。残念ながら魔法は使えるようにはならなかったが、身体強化は非常に高いレベルでできるようになり、知力増強の効果も高かった。
小学生から空手をやっていたこともあって腕力には自信があり、中学でいわゆる不良グループの一員ではあったが、喧嘩には積極的に参加はしても、いじめカツアゲなどは全くやっていなかった。荒れた中学だった彼の母校も、どちらかというと成績の良かった生徒の方が処方の効果が高かったこともあって、処方以来すっかり様相を変えて、進学校になってしまった。
山切も普通に勉強して、利根東校に進学し普通に地元の千葉国大の工学部建設工学科に入学して卒業している。その後、空手は続けて高校の時には身体強化ありの高校選手権でベスト4まで行ったが、大学は国立大学では私立には分が悪く、大学の選手権ではベスト8どまりであった。卒業後は普通にゼネコンに入社して、景気が良くなってきた日本の建設現場を渡り歩いている。
今回の新地球の、第1次建設隊は結局世界のゼネコンに発注して建設を行うことにしている。これは、新地球政府が管理する仕事として滑り出しはしたものの、実際に機能する組織は今から作る段階であるため、手慣れたゼネコンの力を使うことにしたのだ。
新地球については、学術調査が行われた結果、疫学的な危険はまずなく、危険な大型動物はいないということではあったが、地球レベルの大きさの惑星全体を1年弱の調査行ったものである。従って、気候も未だはっきり分かっておらず、さらに動植物からの危険は十分ありうると判断された。
学術調査では、多くの身体強化のできる兵に警備されていたが、建設部隊の警備は限定的であるという条件から、第1次建設隊は身体強化ができる隊員を一定の割合で加える必要があるということになったのだ。そのため、日本のゼネコンが有利になり、最大の仕事である中央市の建設を山切の勤める桐島建設が受注したのだ。
その時、入社3年目で25歳だった彼も、新世界に真っ先に行けるということで手を挙げて、1万人の社員の中でも10番には入る腕力の山切はすんなり選ばれたのだ。現在現場には、3千人のスタッフがいて、身体強化の出来る日本人は8百人、他はアジア・アフリカ等のスタッフである。
現在27歳の彼は、上下水道の工事を担当しているが、設計と並行しながらの工事のため、ジョイントを組んでいる設計会社のスタッフとほぼ毎日協議する必要がある。これは、新地球での仕事は全ての工事がそうであるが、各現場については各発注は完成形のコンセプトのみが示され、それぞれに現場で調査と設計を行いつつ並行して施工を進める方式を取っている。
このような工事形態は、地球でも実施され始めた方式であり、既存市街地では無いような開発地で適用可能な方法である。それは、それぞれにAIが割り当てられてすべての情報を集約して、調査・施工・工費の全てを管理して、最終的に工費も清算することになる。
このため、工事を受注したゼネコンは設計コンサルタントとジョイントを組んで設、共同で計をしながら仕事を進めていくことになる。だから、新たな世界に来たという感慨にふける間もなく、現場に乗り込んで最初の2ヶ月ほどで、最初の作業としてドローンを使った測量を終了させ、地盤は地中に起震装置で振動を与えたリアクションを測定しての調査と、一部については実際のボーリングで確認している。
その調査と並行して、都市計画の街なみのレイアウトを決めていき、地球から持ってきたプレハブの建物の基礎構造、道路構造など最終化して到着後3カ月目には設計と並行して工事に着手している。上下水道施設はそんなに簡単にはいかないが、設計者と共同で水源の調査、浄水施設のレイアウト、下水処理施設のレイアウト、さらに管網のレイアウトを決める。
幸い、浄水施設や下水処理施設の心臓部は全て膜によるものであるため、パッケージ化が進んでおり、建物を造るのとさほどは変わらない。だから山切も現地に着いて半年後にはすでに処理場の基礎工事、管きょも埋設工事に入っている。
この新地球の入植は、当面は新地球の面積の4億㎢の約2/5である陸地の1億5千万㎢の内の約6千万㎢を占める中央大陸に限って行うことになっており、それも熱帯と寒帯及び砂漠など暮らしにくい地域は避けることにしている。それでも、南北に1万5千㎞m、東西に1万㎞の大陸には十分なスペースがあって、概ねその面積の40%程度は十分住むに問題ないとされている。
ちなみに新地球の陸地は単一の大陸であるが、東の未来(FUTURE CONT.)、西の希望(HOPE CONT.)大陸の間に中央大陸の3つの陸塊があって、陸橋で繋がっている。この中では、中央大陸が最も大きく、水に恵まれているせいか砂漠も少なく、さらに様々な資源にも恵まれているということで最初の開発地に選ばれたものだ。
第1次建設部隊は、15班に分かれて各地に散っているが、先述のように当初から首都予定地とされている中央市には約3千人の隊員が配置されている。しかし、これに遠隔操作または自動でも運転できる重機、ロボットがほぼ同数配置されて作業の効率を上げている。
これらの自動機器は24時間運転が可能なので、日中にきちんと作業の手順を決めておけば仕事は夜間も止まることなく続けられるのだ。これらの予定地は、鉱物、山林などの資源が近くにあり、良質な水源が近くで得られることを条件として選ばれている。
中央市の場合は海に面して漁業基地を作るのが容易であること、さらに近くに巨大な鉄鉱山と石炭鉱山も比較的近くに見つかっているので、港と近郊で製鉄所を作ることが決まっている。ただ、近年において地球では、港湾があるということが都市の立地条件としては有利でなくなっている。
これは、かっては船で荷を運ぶコストが、圧倒的に陸上輸送のコストを下回っていたが、重力エンジンとAEバッテリーがそれを変えてしまった。その意味では、中央市は海辺にその位置を決めたが、他の開発地は内陸が多い。
鉱物資源については、学術調査隊によってリモートセンシングを行っているが、さらにハヤトも乗り込んで惑星全体の概査を行っているので、様々な金属、石油・石炭等の資源が幅ひろく見つかっている。地球においては、よく知られているように森林資源の荒廃が進んでおり、木材の乱用は避ける必要が叫ばれている。
そこで、木材に代替するものとして、樹脂と鋼材を組み合わせた材料で建築を行う方法が主体になりつつある。この点で、石油についてはAE発電のある今、燃料としての価値はほぼなくなった点が功を奏した形である。石油は、燃料として使われなくなっても、潤滑油やこうした高分子原料として高い価値がある。
また、石炭についてはハンドリングが石油に比べ難しいが、コークスに加工することで製鉄等のための燃料には引き続いて使われている。このために、石炭についても乾留して、コークスに加工する際の副産物、あるいは最初から分解して高分子材を取り出して石油と同様な樹脂原料にしている。
そこに、地球においては、ハヤトの資源探査によって大量の石油・石炭資源が発見されために、木材の使用に歯止めをかけて、先に述べたような樹脂製の建材を多用する方向に変わってきている。こうなると、今や家は工場で作って現地では基礎工事と組み立てのみという方向に変わってきている。
新地球における宿舎建設も、基礎は現地でコンクリートを打ち込んで製作するが、その鉄筋を含めて建物の部材は全て地球から運び込まれることになっている。これは一戸建てのみならず、アパート形式のビルも同じことであり、そういう方式を取っているので、1千万の人が住める街が2年足らずで完成することになるのだ。
このために、輸送が極めて重要であるが、幸い新地球の中央大陸の位置は、日本の近くに同期しているため、ゲートが日本上空にあれば、日本からは約20時間程度で飛行できる。このために使う輸送船は、AEバッテリ―駆動の貨物専用船であり、径10m長さ100mの円筒形のもので、船倉容量4500m3で重量1万トンまで積め3Gの加速ができる。
量産性を最重視したこの輸送船は、“いわて”シリーズと呼ばれ、日本において月産30隻が作られている。旅客船も同じ形・大きさであるが、これは“はくば”シリーズと呼ばれ3層の客室で1500隻のリクライニングシートが備えられており、こちらは月産20隻が作られている。
このためのゲートは、今のような専用基地ができるまでは、日本で建造した母艦“しなの”がゲートの役割りを担っていた。これは、地上200㎞を軌道速度で回っているため、日本上空へは1時間半に1回しか来ないので、輸送機及び旅客機はその軌道速度に同期して、ゲートを通過するのだ。
従って、日本から出発した旅客機または輸送機は異世界へのゲートを1回の通過できる機数は、“しなの”を使っていたころは5隻が限度であり、専用の基地では10隻である。24時間フルに使っても16回の通過になるので、現在では160隻が通過できることになる。
このうち100隻を貨物、60隻は人を運ぶとすると貨物は30万m3/日(平均3千m3/船とする)、人は9600人/日運べることになる。むろん、山切が来た頃は“しなの”を用いたゲートであり、船も十分な数はなく、多くの枠は貨物船に割り当てられたので、2万人の要員を運ぶのに1ヵ月を要している。
このように、工期を早めるためもあって、地球から運ばれた建材や機材を組み立てる工法によって第1次建設隊は工事を進めている。建物の場合は現地で加工するのは基礎のみである。ちなみに、新地球はまだ手付かずの森林資源があり、その資源量は莫大であるので、十分木材も建材として利用できる。
この点は、移住者による建設が始まってからは、当然木材の加工工場も建設され、さらには地元産の石油・石炭を用いた樹脂工場も建設されるので、新地球政府として、きちんと計画をたてて最適な材料を選択する必要がある。
なお、建物や道路・さらに様々なインフラの建設に当たっては、石、砂利や砂及びコンクリートが必要である。
初期においてセメントはやむを得ないとしても、石、砂利や砂については容量も重量も嵩むので現地調達が必要である。山切の現地に到着後の最初の仕事が、このような石や砂、砂利の調査とその採取の段取りであったが、砂は目論見通り川辺にすぐに見つかり、砂利も緑川を数km遡った川辺で見つかった。
ちなみに、こうした建設には莫大な費用が必要であり、新地球政府はそれぞれ請け負ったゼネコンに工費の支払いが必要である。新地球政府はそのために、地球同盟諸国と金融市場からの融資で莫大な資金を調達している。なにしろ、新地球政府は惑星一つを丸々保有しているのだ。
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