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26.環
環
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「質の悪い冗談です!一体どういうつもりなんですあのコ!?」
環は興奮して噛み付いた。
「君が腹を立てたいのも解る。だが6年も昏睡していて、目覚めたばかりだからな・・・彼女は。詳しくはもう少しヒアリングしてみないと何とも言えないが、私の個人の見解としては本当に全ての記憶を失っている様に見えた。その上で自分を君の亡くなった妹さんだと思い込んでしまっているのだろう。」
「あんな事があったから、バツが悪くて記憶喪失の振りをしてるんじゃありませんか?」
「勿論、その可能性は真っ先に疑ってみたさ。だが、嘘をついているとは思えない。」
「ですけど!」
環は執拗に食い下がった。
「判ってる。脳神経外科は私の範疇だが、人の心の中は私の専門外だ。だから松本君、君を呼んだんだ。」
「エ?」
「君が直接彼女のカウンセリングをしてみたまえ。上司の大島先生には既に許可を得ている。」
「あのコのカウンセリングを!?」
「ああ何が彼女の心を支配しているのか、探り出してもらいたい。」
「私がですか?」
妹の沙織を飛び降り自殺するまでに追い込んだ、いじめのリーダー格であったという莉那という少女と面と向かって顔を合わすのは、正直なところ非常に気が進まなかった。
しかし、何故あのおとなしく控えめだった沙織が、それほどまでに執拗ないじめのターゲットになったのか、環はどうしてもその理由を直接彼女の口から聴きたかった。
「・・・判りました。いえ、是非やらせて下さい!」
環は背筋を伸ばすと、自ら頼み込んだ。
「うむ、これが樹下莉那のカルテだ。」
達筆な英文の筆記体で書かれた書類を差し出すと、是村は環に手渡した。
環は興奮して噛み付いた。
「君が腹を立てたいのも解る。だが6年も昏睡していて、目覚めたばかりだからな・・・彼女は。詳しくはもう少しヒアリングしてみないと何とも言えないが、私の個人の見解としては本当に全ての記憶を失っている様に見えた。その上で自分を君の亡くなった妹さんだと思い込んでしまっているのだろう。」
「あんな事があったから、バツが悪くて記憶喪失の振りをしてるんじゃありませんか?」
「勿論、その可能性は真っ先に疑ってみたさ。だが、嘘をついているとは思えない。」
「ですけど!」
環は執拗に食い下がった。
「判ってる。脳神経外科は私の範疇だが、人の心の中は私の専門外だ。だから松本君、君を呼んだんだ。」
「エ?」
「君が直接彼女のカウンセリングをしてみたまえ。上司の大島先生には既に許可を得ている。」
「あのコのカウンセリングを!?」
「ああ何が彼女の心を支配しているのか、探り出してもらいたい。」
「私がですか?」
妹の沙織を飛び降り自殺するまでに追い込んだ、いじめのリーダー格であったという莉那という少女と面と向かって顔を合わすのは、正直なところ非常に気が進まなかった。
しかし、何故あのおとなしく控えめだった沙織が、それほどまでに執拗ないじめのターゲットになったのか、環はどうしてもその理由を直接彼女の口から聴きたかった。
「・・・判りました。いえ、是非やらせて下さい!」
環は背筋を伸ばすと、自ら頼み込んだ。
「うむ、これが樹下莉那のカルテだ。」
達筆な英文の筆記体で書かれた書類を差し出すと、是村は環に手渡した。
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