111 / 248
21.棗
棗
しおりを挟む
出来る限り早足で2ブロックほど来ただろうか。
四つ角の手前付近に誰かがぼーっと立ち尽くしている。
最初、ぎくりとしたものの棗は歩みを緩める事なく進んでいった。
やがて近づくに連れて、その人影の顔の辺りが妙にぼかしがかっているのに気がついた。
黒煙の如くもやもやしたものが、首の上に蠢いている。
あゝ厭だなあ。まただわ。
棗は見えてしまうタイプだった。所謂霊感という奴である。
猫を飼い始めたのも、自分よりも先にその手の存在を察知してくれるからだった。
猫がジーッと視点を定めて固まった様に見つめている時は、その視線の先の空間に何かがいる。
そういう時は大概、その直後に背中から首筋に掛けて、薄ら寒い感覚が這い上ってくるのだ。
今日に限ってはその悪寒がいつも以上に、より強烈にじわじわとまとわりついてくる。
あゝ厭だ厭だ。
今すぐ一目散に逃げ出したい。
だが気持ちに反して、どうにも脚が止まらない。
なにかに憑かれた様にという表現をよく耳にするが、今の棗はまさしくそれで、その得体の知れぬなにかに吸い寄せられていた。
容貌は判らなくとも、容姿から人影は女である事が判った。
怖くて目を瞑りたいが、それもままならない。
とうとう目の前まで来たところで、頭に掛かっていたぼかしの様な煙の様なもやが晴れた。
四つ角の手前付近に誰かがぼーっと立ち尽くしている。
最初、ぎくりとしたものの棗は歩みを緩める事なく進んでいった。
やがて近づくに連れて、その人影の顔の辺りが妙にぼかしがかっているのに気がついた。
黒煙の如くもやもやしたものが、首の上に蠢いている。
あゝ厭だなあ。まただわ。
棗は見えてしまうタイプだった。所謂霊感という奴である。
猫を飼い始めたのも、自分よりも先にその手の存在を察知してくれるからだった。
猫がジーッと視点を定めて固まった様に見つめている時は、その視線の先の空間に何かがいる。
そういう時は大概、その直後に背中から首筋に掛けて、薄ら寒い感覚が這い上ってくるのだ。
今日に限ってはその悪寒がいつも以上に、より強烈にじわじわとまとわりついてくる。
あゝ厭だ厭だ。
今すぐ一目散に逃げ出したい。
だが気持ちに反して、どうにも脚が止まらない。
なにかに憑かれた様にという表現をよく耳にするが、今の棗はまさしくそれで、その得体の知れぬなにかに吸い寄せられていた。
容貌は判らなくとも、容姿から人影は女である事が判った。
怖くて目を瞑りたいが、それもままならない。
とうとう目の前まで来たところで、頭に掛かっていたぼかしの様な煙の様なもやが晴れた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる