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10.真琴
真琴
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蝉が狂った様に鳴いていた。
時計は24時を少し回ったところである。
「こんな真夜中まで迷惑な蝉。」
虫が大の苦手な篠田真琴(24)は、顔をしかめながら定刻通り到着した深夜バスに乗り込んだ。
軌道に乗り出し忙しくなってきた仕事をようやく切り上げ、自宅へ帰るところだった。
真琴は最後部の座席の窓際に腰を下ろすと、iPhoneのイヤフォンを耳にはめて自分の世界に入り込んだ。
しばらくバス停に停車しアイドリングしていたバスが、ようやく動き出した。
「やっと動いてくれたか。」
ぼやきながら真琴が車窓に目をやると、道の向こうから女が一人駆けて来るのが見えた。
きっとこの深夜バスに乗ろうとしているに違いない。
どうやら運転手は気付いていない様である。
今ならまだ、声を掛ければ間に合いそうだ。
しかし、真琴は目をつぶって寝た振りをした。
口をきくのも億劫だったし、何より一分一秒でも早く家に帰りたかった。
どうせ直ぐに次のバスが来るだろう。
ただほんの少しだけ良心が痛んだので、薄瞼を開けてもう一度彼女の方を見てみた。
ちょうど梶原美園がバスに向かって罵っているところだった。
胸の奥の痛みがスッと消え、
「ツイてなかったわね。」と冷たく呟いた。
今度こそ本当に真琴は眠りに入った。
時計は24時を少し回ったところである。
「こんな真夜中まで迷惑な蝉。」
虫が大の苦手な篠田真琴(24)は、顔をしかめながら定刻通り到着した深夜バスに乗り込んだ。
軌道に乗り出し忙しくなってきた仕事をようやく切り上げ、自宅へ帰るところだった。
真琴は最後部の座席の窓際に腰を下ろすと、iPhoneのイヤフォンを耳にはめて自分の世界に入り込んだ。
しばらくバス停に停車しアイドリングしていたバスが、ようやく動き出した。
「やっと動いてくれたか。」
ぼやきながら真琴が車窓に目をやると、道の向こうから女が一人駆けて来るのが見えた。
きっとこの深夜バスに乗ろうとしているに違いない。
どうやら運転手は気付いていない様である。
今ならまだ、声を掛ければ間に合いそうだ。
しかし、真琴は目をつぶって寝た振りをした。
口をきくのも億劫だったし、何より一分一秒でも早く家に帰りたかった。
どうせ直ぐに次のバスが来るだろう。
ただほんの少しだけ良心が痛んだので、薄瞼を開けてもう一度彼女の方を見てみた。
ちょうど梶原美園がバスに向かって罵っているところだった。
胸の奥の痛みがスッと消え、
「ツイてなかったわね。」と冷たく呟いた。
今度こそ本当に真琴は眠りに入った。
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