Dreamin'

４．栞

栞

栞は自分の頭が吹っ飛んだところで、毛布を跳ね上げて目を覚ました。
全力疾走した直後みたいに、心臓がバクバクと鼓動を打っている。
また悪夢を視たのだ。
近頃はいつもこの調子で、熟睡したのはいつのことだったか。
起きた後は興奮して眠りにつくことが出来ず、朝を迎えてしまうことも少なくなかった。
今夜も眠りにつけず目が冴えていた。
ふと栞は幼い頃の事を思い出した。
そういえば、子供の時分もしょっちゅう夜中に怖い夢を視ては泣いていたっけ。
あわてて駆けつけた母はいつも優しく話を聞いてくれ、再び眠りにつける様にとミルクを温めて飲ませてくれたものである。
やがて成長するにつれて、栞は怖い夢を視てもタオルケットを噛みしめて一人我慢する様になった。
彼女にとっては永遠に続くとも思える長く辛い時間を過ごすことになったが、精神的に鍛えられたおかげか、ほどなくして悪夢を視なくなった。

栞は起きだしてキッチンへと向かった。
冷蔵庫を開け取り出したミルクをマグカップに注ぎ、電子レンジで温めた。

チーン。真夜中の静かな空気に電子音がこだました。

扉を開くと湯気に包まれて懐かしい母の香りが漂ってきた。
栞は今宵は心安らかに眠れる気がした。