Dreamin'

４４．祐一

祐一

祐一は躊躇なくビスケットを受け取ると、スーツのポケットにしまい込んでから真剣な表情で静かに立ち上がり、周りの人々以上に臆することなく、腹から声を絞り出して歌い始めた。

「♪ポケットのなかにはビスケットがよっつ

       もひとつたたくとビスケットは・・・？」

目をまん丸くして聴いている瑠璃に歌い掛けながら、祐一はそのポケットを軽く叩いて、彼女にやさしく問いの返答を促した。

「・・・いつつ？」
びっくり戸惑いながらも、瑠璃はおずおずとだがそう答えた。

そこで初めて祐一もこれまでのみんなと同じ満面の笑みになると、魔法のポケットから黒い小箱を取り出すと、彼女の眼の前に跪いて厳かに開けて見せた。
小箱の中には、白いビロードの記事が敷き詰められていて、その真ん中にはキラキラと光り輝く細身でシンプルなデザインの綺麗なダイヤモンドの指輪が鎮座している。