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第八夜
もののけ姫
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こんな夢を見た。
谷に架けられた一本の真っ直ぐに伸びる吊り橋のたもとに、うら若い女が一人佇んでいる。
なにやら途方に暮れている様である。
「もし、どうかされましたか?」
気になった私は声を掛けてみる事にした。
「この大きな橋が恐ろしくて、渡れませんで困っております。」
うっすら潤んだ瞳が愛らしい。
確かに高さは相当ありそうだが、鉄の橋で道幅もそれなりにある。
「そうですか。でもそれ程揺れることもなさそうですよ。」
「そうかもしれません。でも何故だか足が震えて踏み出せないのです。」
女は懇願する眼差しを私に向けるとこう言った。
「ご迷惑かも知れませんが、宜しければ私の手を引いて、どうか一緒にこの橋を渡って頂けませんでしょうか?」
願っても無い。私は迷う事なく即答した。
「喜んで。いえ失礼。実は私も向こう岸の村へ用事があって向かう道中なのです。是非お供致しましょう。」
私は彼女へ手を差し出した。
「ご親切にどうも有難うございます。とてもたすかりますわ。」
「どうかお気遣いなく。さあ参りましょう。」
随分と長い間この場所に立っていたのだろう。彼女の手は凍えた様にひんやりとしている。
少しでも温めてやろうと、包み込む様にして手を握ると、彼女もまたしっかりと握り返してきた。
こうして、私と女は歩を共にして吊り橋を渡り始めた。
道すがら、私はいろいろと話し掛けた。
女は素性についてはのらりくらりと交わすばかりで、橋を渡る理由についても明かそうとはしなかった。
何か人には言いづらいよんどころなき事情でもあるのだろう。
私もあまり深く追求する事はやめておこうと思い返した。
さて、橋の中腹まで来ただろうか。
突然、女が立ち止まった。
「おやどうかしました?」
「ご親切にどうも有難うございました。私は此処に来たかったのです。」
「ここへ?」
「あなたはこの辺りの方ではない様ですね。」
「ええ。さっきも言いました様に所用で来たのです。」
「そうでしたか。それは残念ですね。」
「え?一体どういう意味です?」
「貴方は先程一緒に来て下さると仰ったではありませんか。」
女は尋常ではない強さで手を握ってきた。
谷に架けられた一本の真っ直ぐに伸びる吊り橋のたもとに、うら若い女が一人佇んでいる。
なにやら途方に暮れている様である。
「もし、どうかされましたか?」
気になった私は声を掛けてみる事にした。
「この大きな橋が恐ろしくて、渡れませんで困っております。」
うっすら潤んだ瞳が愛らしい。
確かに高さは相当ありそうだが、鉄の橋で道幅もそれなりにある。
「そうですか。でもそれ程揺れることもなさそうですよ。」
「そうかもしれません。でも何故だか足が震えて踏み出せないのです。」
女は懇願する眼差しを私に向けるとこう言った。
「ご迷惑かも知れませんが、宜しければ私の手を引いて、どうか一緒にこの橋を渡って頂けませんでしょうか?」
願っても無い。私は迷う事なく即答した。
「喜んで。いえ失礼。実は私も向こう岸の村へ用事があって向かう道中なのです。是非お供致しましょう。」
私は彼女へ手を差し出した。
「ご親切にどうも有難うございます。とてもたすかりますわ。」
「どうかお気遣いなく。さあ参りましょう。」
随分と長い間この場所に立っていたのだろう。彼女の手は凍えた様にひんやりとしている。
少しでも温めてやろうと、包み込む様にして手を握ると、彼女もまたしっかりと握り返してきた。
こうして、私と女は歩を共にして吊り橋を渡り始めた。
道すがら、私はいろいろと話し掛けた。
女は素性についてはのらりくらりと交わすばかりで、橋を渡る理由についても明かそうとはしなかった。
何か人には言いづらいよんどころなき事情でもあるのだろう。
私もあまり深く追求する事はやめておこうと思い返した。
さて、橋の中腹まで来ただろうか。
突然、女が立ち止まった。
「おやどうかしました?」
「ご親切にどうも有難うございました。私は此処に来たかったのです。」
「ここへ?」
「あなたはこの辺りの方ではない様ですね。」
「ええ。さっきも言いました様に所用で来たのです。」
「そうでしたか。それは残念ですね。」
「え?一体どういう意味です?」
「貴方は先程一緒に来て下さると仰ったではありませんか。」
女は尋常ではない強さで手を握ってきた。
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