午前零時のタイムループ

赤松帝

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-3日目-

「無限タイムループ」

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でもこんな時間、学校の授業はどうしたんだろう?お休みかしら?でも制服姿だし・・・。
場当たり的な思いつきを打ち消して、その疑念が脳裏に浮かんだ矢先に、特急の通過列車がホームに走り込んできた。あっという間の出来事だった。私が見つめていた少女は、近づきつつある通過列車の警笛を振り切る様にして、レールの敷かれている構内へと飛び込んだ。反射的に踏まれた筈のブレーキ音すらも間に合わず、流れるような速度で進入して来た特急列車に、その少女が跳ね上げられる直前、ほんの一瞬だけ彼女の無表情な目と視線が合ってしまった。
その瞬間、そこだけ空間が切り取られた様に私たちの周りの時間が凍結し、私と彼女はその場所に封じ込められたみたいに活動を停止した。ひたすら彼女の虚ろな眼の奥を凝視していると、哀しそうでもあり、恨めしそうでもあるどうにもやるせない感情が、互いの視線を通して私の中へと流れ込んで来る。私は彼女の気持ちを理解した様に感じた。やがてスローモーションの様に時がのろのろと動き始めたかと思った途端、ビシッ!と硝子のヒビ割れる様な音がして、視線ごと彼女の姿は私の視界から飛び去って消えた。あの音は、列車のフロントガラスの破れる音だったのか、それとも時空の歪みでも破れたのか、あとあとその足で家に帰ってからゆっくり考えてみたところでよく判らなかった。

ただひとつだけ解ったのは、私の想像する考えが間違えでなければ、このまま私は今夜彼女の後を追って死に、また明日の朝同じ日を繰り返す事になるいうこと。つまりは、明日以降彼女もまた、永劫、あのホームからあの特急列車に飛び込み続けなければならないという憶測だった。
そんな、無限地獄の様な恐ろしい想いを、まだうら若い高校生の女の子に繰り返させていいものか?
私は夜まで自問自答した。
勿論、言われなくてもよく解ってる。たとえ、私が向こう側のホームへ駆けつけ、彼女を説得して飛び込み自殺を思い留まらせて命を助けたとしても、それはあくまでも一時的な結果でしかあり得ないのは……。
幾度となく試行錯誤を繰り返し、いつかその時空の流れを永続的に変えない限りは、私と同じく彼女の死もまた永遠に繰り返される羽目になる。
また、それだけではない。万が一、説得に失敗した日には、私は人が電車に飛び込んで亡くなるという凄惨な事故死の瞬間の光景を、幾度も幾度も眼前で目の当たりにしなければいけないのである。生半可な覚悟ではとても近づけないと思われた。



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